2015/07/17

医療ジャーナリスト 伊藤隼也さんについて その1

先日、医療ジャーナリストの伊藤隼也さんの「認知症予防のための簡単レッスン20」が朝日新聞で紹介されていたから購入した。ざっと目を通していたら、これまでのことが頭に浮かんできた。伊藤さんに出会ってからのことだ。


久しぶりにブログを書こうと思いたった。


認知症予防のための簡単レッスン20 - 文藝春秋BOOKS

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いまや65歳以上の4人に1人、約800万人が認知症およびその予備軍とされ、患者数は激増している。ひとたび認知症となれば、本人は徘徊や失禁等で日常生活に大きな支障をきたすばかりか、介護する家族には金銭、精神、肉体面で多大な負担がのしかかります。


では、認知症にならないために、どうすればいいのでしょうか?


じつは食事や運動など日頃の生活習慣に気をつけるだけで、認知症リスクは劇的に減らせることがわかってきました。とくに有効なのは、有酸素運動と脳内記憶の喚起を組み合わせた「デュアルタスク」と呼ばれるトレーニングです。さらに、常識を覆す「脳にいい植物油、わるい植物油」もわかってきました。


本書は最新医学研究が発見した認知症予防のノウハウを凝縮して一挙公開。テストや図解も豊富で、見てすぐわかります。まさに認知症予防のバイブルです。



これから日本には認知症の患者さんが爆発的に増えるそうだ。この前、友人の医師が私に言っていた。彼は四国地方にある大学病院に勤務している。「だいたい僕の病院に、患者さんになってやってくるお年寄りは畑仕事をしていても、ほとんど歩いていません。万歩計をつけてもらうと、一日1000歩とか1500歩とかなんですよ。田舎よりも、東京のお年寄りのほうが歩いていると思います」。


運動生理学者の夫も隣で頷いていた。家にはスポーツクラブにおいてあるようなエアロバイクがある。私が買って欲しいとお願いして買ってもらったものだ。だから「エアロバイクでもあればいいのにね」と私が言ったら、「お年寄りの場合は単に体を動かすよりも、とにかく外に出ることが大事なんだ」と教えてくれた。


伊藤さんの本を読んで「お年寄りが外に出ないといけない」という理由がよくわかった。



●「認知症予防のための簡単レッスン20」と「うつを治したければ医者を疑え!」


ふと、伊藤さんがかいた「うつを治したければ医者を疑え!」のあとがきが頭に浮かんだ。伊藤さんがこうして認知症について熱心に取材されたのは、きっと亡くなったお父様のことを考えておられるからだろうと思ったからだ。


「うつを治したければ医者を疑え!」 あとがき 伊藤隼也


実は当初、『SAPIO』の大型連載で精神医療を取りあげることには逡巡がありました。


僕は94年に父親を亡くしました。老人性の抑うつ状態にあった父親は精神科を受診しました。父や母は必ず治ると信じていました。ところが、通院を重ねるごとに状態は悪くなり、そのまま死を迎えたのです。「気分が落ち込んでいる」と精神科を受診した結果、「死」に至るという現実がどうしても納得できませんでした。


そのことが発端となり、僕は医療ジャーナリストとして活動を始め、医療分野の問題点を多角的に取材するようになりました。


しかし精神医療の問題だけには、他分野に比べ、積極的に立ち入ることができませんでした。つらい過去に遺族として正面から向き合うことができなかったからです。


この本を世の中に出すことが出来たのは、取材に協力してくれた方々のおかげです。とくに被害者となったご本人やご家族が、つらい経験と対峙して過去を語ってくれたことで、本書は多くの体験談を折り込んで、精神医療の実態に迫ることが出来ました。


また、現在の精神医療に危機感を抱く現場の精神科医や研究者による情報提供・取材協力がなければ、本書の論旨は成り立ちませんでした。立ちはだかる多くの難題に僕と共に果敢に挑んでくれた取材班にも深く感謝いたします。


本書は、「これ以上、新たな被害者を生みだしてはならない」、「自分がしたつらい経験を他人に味合わせたくない」という、精神医療の関係者や体験者の強い思いが込められた書籍です。約20年前に父親を亡くしたぼくにとっても、医療ジャーナリストとしての責任を果たす、感慨深い一冊となりました。


社会は効率を際限まで求め、多様性を認めるゆとりを失っています。その結果個人にしわ寄せがいき、大きなストレスを抱えている人は少なくありません。本書に取りあげた悲劇は誰にでも起こり得ることです。私達は解決策を模索しなければなりません。


本書が生きづらさを抱える多くの人にとって、そして私達の社会にとって、深い闇を照らす一筋の光となることを切に願っています。


15年3月



●ご遺族の悲しみ 大きな岩のような悲しみはやがてポケットの中の小石に変わる


「うつを治したければ医者を疑え!」が世に出たきっかけを作ったのは、私かもしれない。私は私自身が、伊藤さんのような、(医療において)不幸な結果になられた方々を支援するための募金活動、「周産期医療の崩壊をくい止める会」の活動に関わってきた。だから、あとがきを読んだ時「よかった」と思った。


そして、あるご遺族に紹介していただいた「ラビット・ホール」という映画を思い出した。この映画のテーマは「グリーフケア(Grief care)」だ。私は遺族ではないから伊藤さんの悲しみや苦しみを想像するしかない。伊藤さんの歩んでこられた長い年月にも、同じような苦労があったのだろうと思う。





先月レセプトの開示請求をしたばかりだ。今までしようと思っても、なかなか勇気がなくて、実行にうつすまで3年という年月が必要だった。今でも開示請求をするには様々な困難がある。それでも私が医療機関にカルテやレセプトの開示請求ができるようになったのは、伊藤さんのような方々が活動してきたからだ。


でもーーーー


ネットで『伊藤隼也』と検索すると、これでもか、というほど沢山の悪口を目にする。根拠のない憶測も多いし噂話が真実のように書かれていたり。伊藤さんの人格を否定するような言葉も見当たる。


よく目にするのはこのような意見。



「父親が亡くなったのは医療事故だと裁判をしたけれど一審で負けた。だからその恨みから、煽るような批判記事ばかり書くようになった」


「医療不信を煽って儲けている」


「女優やモデルなど、女性の性を商品化するような写真をとっていたのに、いつのまにか医療ジャーナリストを名乗っている」



●伊藤さんに取材を受けた被害者の中で、伊藤さんを悪くいう人をきいたことがない


私は伊藤さんをよく知っているから、こういった書き込みを目にするたびに悲しい気持ちになる。


なぜなら「現場を取材しない」も「マトモな医師達から相手にされていない」も事実ではないからだ。私や夫の共通の知りあいの医師をはじめ、日本を代表するような名医とよばれる先生方と仲が良いことを知っている。


それに、伊藤さんに取材を受けた被害者の中で、伊藤さんを悪くいう人を私はきいたことがない。


伊藤さんが仕事をしておられる週刊誌やテレビは、ニュース性や特ダネ性を重視するので、よく取材対象とトラブルを起こす。被害者は覚悟して取材を受けるものの、出版社や局の事情で内容に制約を受けたり、掲載や放送が見送られることも度々ある。TV取材の場合は、放映された映像が被害者の意図とずれることも。にも関わらず、伊藤さんを悪くいう人はほとんどいないのだ。



私も言葉が少々キツいと思うことはある。けれどもそれは、悲惨な状況にある被害者を、素早く救済するためだと思っている。


でも、ふと立ち止まって考える。


伊藤さんご本人だけでなく、書き込みを目にするご家族は一体どんなお気持ちになるだろうか・・・


「認知症の予防レッスン」を手にとって、久しぶりにブログを更新しようと思ったのは、「うつを治したければ医者を疑え」のあとがきが浮かんだからだ。伊藤さんについて書いたら私もまた悪口を書かれるかもしれないけれど、それでもいいか・・・。


伊藤さんへの心ない書き込みは、そのまま私達被害者への差別や偏見へとつながっていくから。


(次回に続く)
2015/06/26

厚労省がカルテ開示をすすめている??? 厚労省調査 カルテ開示義務浸透せず

6月23日、日経新聞を読んでいたら、目が点になるニュースを発見!!


カルテ開示義務、患者の4割「知らない」 厚労省調査


何をいっているんだろう???このブログは厚労省の方もやってくるようだけれど・・・。私はナショナルセンターとよばれる第三次救急にカルテ開示をしたんだよ。開示してくれたけれどこんな感じだったんだよ。ナショナルセンターは厚労省の管轄なんだよね?「患者の権利を守れ」というけれど、私の権利を侵害しているのは一体どこの誰なんだろう!


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※   ※   ※



総合病院の国立病院とは、どんなところ? 総合病院で働きたい 総合病院に関する様々な情報をご紹介します。


厚生労働省直轄


国立病院機構に引き継がれなかった部分は、主に研究センター的な位置づけの病院で、国立高度専門医療センター(通称ナショナルセンター)として、現在も厚生労働省が直轄しています。


国立がんセンター、国立循環器病センター、国立精神神経センター、国立国際医療センター、国立成育医療センター、国立長寿医療センターの6つがそれにあたります。がんセンターなどはよく耳にするところですね。


これらはとくに国を挙げて研究すべき分野の病気を専門的に治療、研究する病院とされています。


このように、国立病院というものの範疇は少々複雑なものとなっているのですが、一般的にただ「国立病院」とよぶときには、独立行政法人である国立病院機構のもとにある病院と、国立高度専門医療センターの医療施設をまとめて指していると考えれば間違いありません。



※   ※   ※



医療機関のカルテ開示義務、患者の4割知らず 2015年5月8日 読売新聞の医療サイト ヨミドクター


カルテ開示が医療機関の義務であることを知らない患者が4割を超えていることが、厚生労働省のハンセン病問題再発防止検討会による大規模意識調査でわかった。カルテ開示を求めたことがあるのは1割にも満たず、患者の権利が十分に認識されていない実態が浮き彫りになった。


 調査は、患者への深刻な差別があったハンセン病問題を教訓に、患者の権利を守る方策を研究する同検討会が実施。昨年12月~今年1月、何らかの病気を持つ患者5000人からインターネットで回答を得た。


 患者へのカルテ開示は、個人情報保護法で、5000件以上の個人情報を保有する医療機関に義務づけられている。調査結果によると、医療機関のカルテ開示義務を「知らない」とした患者は42・2%に上った。実際に開示を求めた経験が「ある」としたのはわずか6・2%だった。


 また、主治医の診断や治療について他の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」を利用したことが「ある」とした患者は22・4%にとどまっていた。


 同検討会座長の多田羅浩三・阪大名誉教授は「患者の権利を守るためには、カルテ開示を求めることやセカンドオピニオンを得ることが国民にとって常識にならなければならない。いかに普及させていくかが今後の課題だ」と話している。




※   ※   ※


2015/06/22

レセプト開示請求 私が第一号 国民皆保険制度のこれから

大学の健康保険組合でレセプトを開示請求したのは、私が一番最初だったそうだ。担当の方が最後におっしゃってた言葉が印象的だった。


電通健康保険組合ーレセプト開示

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アサヒグループ健康保険組合 ーレセプト開示

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「今までレセプトの開示請求というと、医療過誤などネガティブなイメージを持っていましたが、今回の請求をきっかけにいろいろと勉強しました。どこの健康保険組合でも、今は開示請求を積極的に行っていこうと考えているようですね。それがなぜなのかがよくわかりました」。


大学の歴史は明治にさかのぼる。現在までに社会に送り出した卒業生は50万人を超えるそうだ。夫が母校で教員をしているという特殊な事情はあるけれど、母校の健康保険組合は学生も利用できる学生健康保険もあり、ひじょうに規模が大きい。だから建学以来長い歴史のなかで私が第一号というのはとても感慨深い。


「私もはじめて母校に貢献できた気がする!」と夫に報告したら驚いていたけれど、喜んでくれた。


かつて母校は、学生運動がとても盛んだった。


しかし私は学生運動があまり好きではない。学内に残り活動を続けていた活動家とよばれる方々のやっておられたことをみると、活動のための活動をしているように思えたからだ。人を暴力で傷つけたり、建物を破壊したりという非合法の活動が、本当に社会のためになっているのか疑問だった。


そういう校風にも関わらず、レセプト開示をしようとする人が私しかいなかったいうことが意外だ。


それにしても、これから、日本の国民皆保険制度はどうなるのだろう?


もう誰の目にもあきらかだと思う。だましだまし、問題を先送りしているに過ぎない状態であり、すでに崩壊している。


大手企業の健康保険組合が「レセプト」の開示請求の方法を、公式サイトなどに記載しているのは、自分の受けた治療に、もっとコスト意識を持って欲しいというあらわれなんだと思う。


家で安静にしてればそのうち治癒するような病の治療費は全額自己負担にし、がんをはじめとする重い病に手厚く支援をする。あるいは、ある一定以上の年齢の方への積極的な治療を保険では行わない、など、子ども世代につけをまわさないようにするためにどうすればいのか、議論をしないといけない時期だと思う。


私は超低出生体重児の親だから切実に思う。支援がないと生きていけない人達がいる。そいう人達を守ために、メリハリをつけないとどこの組合ももたないんじゃないかと思うから。


そして、患者も勉強しなくてはいけない。


薬害団体代表の方が私によく言っておられる。処方薬の治験で安全性が認められているのは単剤で、まれに2剤間で行われているににすぎない。それを、3剤、4剤と増やしていったら、別の薬だと考えるべきだ。安全性や有効性なんてわからないよ。


日本ならではの、漫然と行われてきた多剤大量処方は、患者が自ら学ばなかったことにも原因がある。自分の支払う医療費に対して、何にどれだけかかっているのか、コスト意識を持たなかったことにもある。だから医師や製薬企業に変われ!TPP反対!というばかりでなく、「その薬は私には必要ありません」といえるようになることも必要だと思う。


日本に変革を促すために、『外圧』に頼ってきたのは、私たち自身でもある。


今回のレセプト開示請求が問いかけたのは、そういうことだ。学生運動に疑問を抱いてきた私にとって、第一号になったことは、とても名誉なことだ。

2015/06/05

私が 診療報酬明細書(レセプト)を開示請求した理由 

今年、ある社会学者の方の、向精神薬の被害の実態についての調査研究に協力することになっている。そこで改めて「同意書」と「お願い」を読んでいたら、「レセプト」を用意して欲しいと書いてあることに気づいた・・・。私はまだレセプトの開示請求を一度もしたことがない。






①調査対象者の方への事前準備としてのお願い


・事前調査票(様式4)への記入

受診した時期やその時の年齢、各時期の処方内容やその時の体調等について、あらかじめ事前調査票にご記入をお願いします。

・処方歴がわかる資料の準備

レセプト、お薬手帳、薬局の調剤明細書、カルテ、日記等、受診期間中の処方内容がわかる資料の準備をお願いします。受診期間中の処方内容については事前調査票に記入していただきますが、調査当日にも、必要に応じて記録を確認させていただきたいので記録のご準備をお願いします。ただし、保険組合のレセプト保管期間切れ等の理由のために一部の記録が揃わない場合には、どのぐらいの記録があるかを事前にお知らせ下さい。



必要だと思っていても実際に行動に移すのは難しい。請求手続きをしてくれるのは加入している保険の種類によって異なる。私の場合は夫の勤め先の大学。


心のハードルが高い・・・。「いつかやればいいや」と先送りしているうちに、一番最初の第三次救急の保存期間は過ぎている。「もう揃えなくてもいいかな」と思っていた。


でも先日、自死遺族のシンポジウムに参加し、精神科医の野田正彰先生をはじめ弁護士の先生、そしてご遺族の話を伺い、考えが変わった。亡くなった方のためにも、このままじゃいけない。もう少しきちんと声を上げていかないと改善されないと思うようになった。


そして先週行動にうつした。


健康保険組合を訪ねたら、はじめは「医療過誤ですか?」と驚かれたから「そうじゃないんです」と一生懸命説明した。
今までいろいろな働きかけをしてきて、その結果多剤大量処方やベンゾジアゼピンの長期服用の弊害が知られるようになったことなどについて。


内心、「健康保険組合の方でも向精神薬の様々な問題をご存じないのか」とがっかりする気持ちもあった。でも、こんなことでいちいち落ち込んでいられない。


国民健康保険に加入している場合の開示方法は、ネットでも詳しく解説してある。しかし、独立した健康保険組合の場合は組合によって、対応の温度差があるようだ。例えば電通やアサヒなどのように開示請求の方法を組合員向けにサイトで説明しているところもあるけれど、私のように「今まで誰も請求したことがない」といわれる組合もあるようだ。


ただ社会保障費が国民経済を圧迫する中で、たとえ大企業であっても健康保険組合はどこも大変なのだろう。最後は「今日、この場で申請はできませんが、前向きに検討してみます」と言っていただけた。


そして昨日連絡があり、いよいよ医療機関に請求するための書類に記入することになった。


私は社会学者の方の説明同意書をプリントアウトし、もう一度詳しい説明をさせていただいた。逆に言えば、精神医療で、今、何が起きているのか知っていただけるチャンスでもある。今回私が請求していただくのはここに書いたB医師のクリニックだ。


『うつを治したければ医者を疑え! 』を読んで その2 処方した薬には最後まで責任を持つ


それまで精神科医でない内科医のB医師のレセプトまでは必要ないと考えていた。しかし数ヶ月前、ブログに書いた、処方履歴や断薬の方法への反響が大きく、いろいろな方に感想を教えてもらった。圧倒的に多かったのは「断薬や減薬をしてくれる医師などいないのかもしれない。患者が育てるような気持ちで働きかけないとダメなんですね」だった。


医師はやはり他の医師がどんな処方をしているのか興味があるようだ。ある精神科医の先生には「いろいろ試行錯誤してみたんだけれど、自分が今まで受け持ってきた患者さんじゃないと、断薬や減薬はやっぱり難しい」と言われた。


先生が申し訳なさそうに言うから「自分で処方した薬には最後まで責任を持つですね。それでいいんだと思います。他の医師が処方した患者さんの責任まで、私は先生には求めません」と言ったら笑ってくれた。


「自分で処方した薬には最後まで責任を持つ」という言葉に、医師はハッとするようだ。そんなに真剣に考えてくれている精神科医もいるんだ・・・


だから健康保険組合の方にも、精神科医でないB医師に開示を求める理由を詳しく説明した。


「精神医療について勉強し、精神科医のお話を伺っていると、薬の怖さをよく知らず処方している他科の医師にも問題があると思うようになりました。開示したら先方は嫌な気持ちになると思い、今までずっと行動しませんでした。


しかし人生の一番いい時間を薬で失った被害者も大勢います。断薬や減薬まで指導できる医師が少ないのなら、入り口を狭める努力もしていかないといけないと思うようになったんです。


この先生は、ベンゾジアゼピンを『いつまで飲んでも害はない』と私に言って処方していました。私に処方したように、学生に気軽に処方して欲しくありません。しかし思っているだけでは伝わりません。気づいてもらうためにも開示請求をしないといけないと思ったんです」と言ったら、大きく頷いてくれた。


「自分の無知とはいえ、長期にわたり健康保険組合に負担をかけたことを申し訳なく思います」と最後に頭を下げ部屋を後にした。健康保険組合の方だから精神科を受診すると、いつまでも薬を飲み続けなくなることが多い事実をご存じなのだと思う。


たった一年半で私のブログへのアクセスが急激に伸び、「ブログを読んだことがある」と言われる機会が増えたのは、裏を返せばそれだけ被害が社会に広がった、ということでもある。


はじめて要望書を断三次救急に送った時に、話し合いに応じてもらえず、失望して泣く私に夫はこういって慰めた。「仕方がない。被害者を増やすしかない」ーーーーーーー


被害が社会に認知されることはいいけれど、だからといって失った時間が戻るわけでもない。未だに断薬や減薬のために、途方にくれる被害者も多い。被害者にとって、もう少しやさしい医療に変わって欲しいと願う。

2015/05/22

第4回 自死遺族等の権利保護シンポジウム その3 自死への差別のない社会へ

第4回 自死遺族等の権利保護シンポジウム その2  『いじめ』による自死が、個人や家庭の問題にすり替えられる! の続き


最後は、今回のシンポジウムのテーマである、自死遺族が抱えている様々な、差別や偏見について。


全国自死遺族連絡会 田中幸子代表

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●医療者や支援者の持つ、『精神科への差別や偏見』


私は亡くなった方と、遺された遺族のための支援活動、「周産期医療の崩壊をくい止める会」に参加していた。だから野田正彰先生の主張にこころから賛同する。


ちなみに、これは私がある薬害シンポジウムで発言した時に書いた原稿の一部。私も精神科に通院歴があるということで、ずいぶんと差別や偏見に苦しめられてきた。それも、日頃精神科の受診をすすめている、医療者や支援者の持つ差別や偏見にだった。


精神科の被害者がいつまでたっても救われないのは、その深刻さが社会に見えないことにあります。死に至る重大な副作用があっても、亡くなった方は訴えることができません。


また、自死遺族が訴えても、「「うつ」はもともと死に至る病だから自殺しても仕方がない」と議論になりません。多剤大量処方で中毒死した被害者のご遺族には、「薬を欲しがる中毒患者だから死んでも仕方がない」という、聞くに堪えない言葉が投げかけられます。


例え、被害者本人が訴えたとしても、精神科の通院歴のために差別や偏見、言葉では言い尽くせぬ数々の困難が待ち受けています。医療者と一部の患者さんからは、あなた達の行動は精神科に対する差別や偏見を助長する、あるいは医療崩壊を加速させると、行く手を阻まれます。


だからこそ、私は今日、発言する決意をしました。



元主治医は私に向かって「私も向精神薬を服用しているけれど、私はあなたと違って、精神障害者じゃない」と思わず口にしていたことがある。他にも「どうせあなたに薬は効かない」と暗に私の人格に問題があるのだというような言葉を投げかける医師もいた。


しかし、私の後ろには、もっともっと、差別や偏見に苦しむ方がおられたようだ。本当に「私には差別や偏見がない」というのなら、自死遺族の声に耳を傾け、遺族の心の負担を一緒に減らしてほしい。


当日配布された資料の中に、野田正彰先生が『中外日報』に投稿した、「社会の非情な考え」があった。私が下手な文章を書き連ねるより、読んだ人の心に響くと思うので一部引用させていただく。


平成25年(2013年)4月11日 中外日報 論壇

自死への差別 故人のみならず遺族にも 社会に非情な考え 宗教界の対応望む 精神病理学者 野田正彰  



どうして死んだのか、民事上の手続きで書き残されたものや証言等から自殺した人への精神鑑定書を作成するよう頼まれたとき、私は故人に向かって語りかける。どんなに無念な思いを残して亡くなっていったことか、私たちの社会はあなたの苦しみを聞きとる力がなかった、私は少しでも貴方の死の意味を知り伝えます、と手を合わせる。


日本社会は毎年3 万人ほどの老若男女を死に追い込んできた。ところが、故人を苦しめただけでなく、亡くなった後、遺族をさらに追い詰める社会であることを知っておられるだろうか。遺族は故人の思い出を整理しながら、遺失の悲哀に耐えていかなければならない。


同時に経済的な困難にも耐えていかなければならない。精神的にも、社会=経済的にも、二つの喪の仕事をやり遂げなければならない遺族に、私たちの社会はさらに非情な仕打ちを加えている。


(中略:家主や不動産会社からの補償要求に、自死遺族が苦しんでいる事例がいくつか紹介される)


借り主が損耗したものを回復するための費用請求は当然のことであるが、それをはるかに超え、お祓い料、過度のリフォーム費、精神的苦痛への慰謝料、近隣への慰謝料、数年にわたる家賃補償金などが請求されている。これらの法令上の裏付けとなっているのは、国土交通省による賃借契約に当たっての重要事項説明書であり、心理的瑕疵は告知しないといけないことになっている。


自殺は心理的瑕疵であり、告知しなければならず、告知すれば大きな損害が生じるというわけだ。国交省の法令は、自殺は心理的瑕疵とするという最高裁の判例によるとされている。


自殺がなぜ心理的瑕疵なのか。病死や孤独死した場合と、どのように違うのか。ここには死を差別し、自殺を穢れた死とする考えが流れている。


遺族がなぜお祓い料を支払わないといけないのか。一体、何をお祓いし、何を清めているのか。家主や不動産業者は借り手が遠のくことを理由に、過剰な補償を求めているが、それを動機づけているのは彼ら自身の差別や偏見ではないのか。


さらに自殺のあった建物を特別に忌み嫌う人々は、その理由を振り返ってみたことがあるのだろうか。病院に近づくのを恐れず、人の亡くなったベッドや病室で治療を受けることを拒んだり、入院費の減額を請求しないのは何故か。


国交省や裁判所は、自殺をなぜ重要な心理的瑕疵と主張するのか。私たちは切腹や特攻隊の自爆死のような権力の側によって強いられた死を美化しながら、私たちの社会の矛盾が強いた死を差別するのだろうか。


多くの宗教者は葬儀にたずさわっている。とりわけ僧侶は徳川時代からの宗門改め制度により、ほとんどが日本人の葬儀で読経などの重要な役割を果たしてきた。


1998年度より2011年度まで14年間、毎年3万人を超す自殺者を出してきた日本社会。自殺された葬儀で読経し、遺族と会話をもたれたお坊さまは少なくないと思われる。


これらの亡くなられた人が、なぜ死ななければならなかったのか。そして遺族はどんな社会的、経済的負荷をかけられているか、関心を持っていただきたい。亡くなられた人への悲苦を想うよりも、自殺を穢れた死とする習慣がどれだけ遺族を苦しめているか、各宗教教団で調べ、それはいけないと教えてほしい。各宗門、全日本仏教会がそれを教えるだけでも、大きな力になるだろう。


遺された遺族への重圧は、借家の場合に尽きるわけではない。自宅で死亡し医師に往診してもらっていなかった場合、検死となる。県によっては、診断書を十数万の死体検案料を即金で要求するところもある。葬儀の後、遺族が子育て支援、奨学金申請、債務整理の相談、労災申請の手続き、法的な相談などを求めても、自死遺族と告げるだけで精神保険福祉センターへ行くように言われ、結局うつ病扱いされると訴えている。


私たちの社会は亡くなった人に対してだけでなく、遺族に対してもあまりにも理不尽である。せめて遺族への負担を少しでも減らすことで、故人に「安らかに」と手を合わせられる社会に変わっていこうではないか。



●『うつ』だから死を選ぶのか?


その他に、細川弁護士と和泉弁護士から労災認定や生命保険における差別、家主からの不当な補償要求などの話が続く。


左から斎藤司法書士 大熊弁護士 細川弁護士 和泉弁護士


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自死した方の精神科受診率が高いせいだからだろうか。様々な社会問題を抱え精神的に追い詰められている人達に精神科の受診をすすめても、逆に自死のリスクが高くなるかもしれない、ということが、法律の専門家の間でも認知されているようだ。


そのため、会場からも、そして精神科医である野田先生からも、「(今さら精神科を受診しないほうがいいというけれど)『うつ病』という診断があれば、『労災認定』が受けられる、としてきたのは、あなた方法律家じゃないですか!」という批判が集中した。私もずっとその矛盾に怒りを感じてきた一人だから、その通りだと思っていた。


●『自殺防止キャンペーン』 製薬企業に責任はないのか?


静岡県富士市のキャンペーンのポスターを見ればよくわかると思う。仕事のストレスを抱え、眠れないほど悩んでいたり、疲れているお父さんは、仕事を休ませてあげないとダメなのだ。それを、薬を服用すれば仕事が続けられる、というようなキャンペーンをするなんて。ただでさえ、日本のお父さん達は、家族思いでまじめな働き者が多い・・・私はこのポスターを思い出すだけで、泣けてくる。


静岡県富士市『パパ、ちゃんと寝てる?』のポスター (野田正彰著 『うつに非ず』より引用)

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ガンバッてるお父さん
二週間以上の不眠は『うつ病』かも



でも、野田先生の追求がどんどん厳しくなり、ボランティアで発言してくださった先生達が少し気の毒になってしまう。


会場からも「先ほどから、精神科や向精神薬が問題だと話が出ているのだから、法律の専門家の先生達も、個人個人の問題で闘わないで、製薬企業を相手に闘えばいいじゃないですか!」という発言が出た。その通りだと皆賛成し、大きな拍手が。


最後に全国自死遺族連絡会代表の田中幸子さんの挨拶で終わりになった。「自死する人は一年間で3万人にもなりました。山のようなグラフがあるでしょう?3万人ていうけれど、一人一人の命でできているグラフなんですよ」という言葉がつきささる。


野田先生がおっしゃるように、自殺防止対策が間違っていたのなら、関わってきた方々はきちんと反省してほしい。そうじゃないと、亡くなった方々は報われないと思った。


*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*


自殺遺族に突きつけられる高額請求 おはよう日本 NHK 2013年11月29日(金)


阿部

「今日(29日)から、ある電話相談が横浜で行われます。対象となっているのは、家族を自殺で亡くした遺族です。こうした人たちが直面する経済的なトラブルの相談に答えようというものです。」


鈴木

「その背景には、自殺した人の遺族が高額な賠償金を請求され、悩みを声に出せずに苦しむケースが相次いでいることがあります。」


自殺遺族を苦しめる 損害賠償請求


2年前に自殺した女性です。アパートで一人暮らしをしていました。うつ病が原因と見られています。母親は、女性と数日間連絡が取れず、心配になって部屋を訪ねましたが、すでに亡くなっていました。


母親

「つらかったです。親として、なぜ自分の命を絶たなきゃいけないんだという気持ちになって、悲しいより、悔しかったほうが多いですね。」


悲しみにくれる間もなく、遺族には思いもかけない事態がふりかかりました。遺体が見つかったその日から、アパートの家主が賠償金を支払うよう求めてきたのです。資産価値の減少は大きく、長期間にわたって借り手が見つからない恐れがあるとして、5年分の家賃と部屋の改修費。


さらに、隣接した部屋の住人にも精神的苦痛を与えたとして、200万円の慰謝料。あわせて420万円を連帯保証人である遺族が払うよう求めていました。こうした場合、遺族がどこまで責任を負うかは、明確な基準がありません。


自殺をめぐる問題に詳しい弁護士によりますと、判例では家賃の損害賠償や改修費用は認められても、隣人への慰謝料の支払いを認めた例はないということです。


母親

「(娘が)亡くなって、親としては、すごくつらくて。なにしろ、パニック状態でいたときに、そういうふうに言われて、ただ『すみません、すみません』と言うことしかできなかった。」


母親は弁護士を通して1年間にわたって交渉した結果、家主が減額を受け入れ、家賃2年分と改修費、あわせて100万円あまりを支払うことで決着しました。しかし、その後も心の傷は癒えていないと言います。


母親

「長かったです。家主との対話がどうなるか、不安になるのが先立って、子どものことを考える暇もなかったですし。すごく(負担が)大きいです。いまだに、もう2年たちますけれど、ダメージが残っています。そう簡単には、消えないかもしれないですね。」


遺族にさまざまな名目で請求がつきつけられるケースは相次いでいます。


仙台市の田中幸子(たなか・さちこ)さんです。長男を自殺で失ったことをきっかけに、5年前、全国の遺族を支える連絡会を作りました。当初は遺族の心のケアが目的でしたが、家主からの損害賠償の請求に苦しむ相談が毎年50件以上も寄せられ、驚いたと言います。


「金額は?」


全国自死遺族連絡会 田中幸子さん

「1,200万円。震えが止まりませんでしたって書いてあるけど、まさしくそうだと思いますね。」


このケースでは、外壁や屋根を改修した上で、建物と土地をすべて買い取るよう要求されました。他にも、マンションを丸ごと建て替える費用として1億円あまりを請求されたケースもあります。田中さんは、声を上げられない遺族は多いと考えています。


全国自死遺族連絡会 田中幸子さん

「恐れおののいているわけですよね、それはものすごく感じますね。怖いんだろうなと思います。何千万、何億(請求が)来るかわからない。私1人で受けて、年間40~50件。ほんの氷山の一角だと私は思っています。まだまだ、たくさん泣き寝入りして、本当に誰にも言わずに支払っている人たちも、たくさんいるんだと思います。」


一方、家主などでつくる団体は、法外な請求を行うケースは一部だとした上で、借り主の自殺による影響は極めて大きいと訴えています。


日本賃貸住宅管理協会 長井和夫さん

「事故物件に当たれば、すぐに次の方が決まるとは考えにくい。あるいは1年、2年、下手したら3年も覚悟しなければならない。請求できなければ、全部オーナーがかぶることになりますから、オーナーにとっては死活問題になりかねないです。」


阿部

「取材にあたった生活情報チームの山本記者です。こうしたトラブル見てますと、胸が痛みますよね。」


山本記者

「家族を失った遺族が高額の損害賠償に対応するのは、とてもつらいものがありますし、家主の側にとっても負担は大きいものがあります。問題は、どこまでを損害と認めるかなどの明確な基準がないことなんです。」


上野晃弁護士

「オーナーにもオーナーの事情があって、金銭的な請求を出来るだけしたいと。連帯保証人になっている遺族からすると、実際にどの程度負担すれば、自分が責任を果たしたと言えるのかが明確ではないのです。双方が不安に駆られ、過剰な争いになるのを防止するには、行政機関がガイドラインを示すといった対応が早急に求められていると思います。」



鈴木

「国は何か対応しようとしてるんでしょうか?」


山本記者

「国も問題を把握はしていますが、具体的な解決法を定める道筋は、まだ見えていません。遺族の中には、家族を自殺で失ったことを打ち明けられない人も多いため、こうした問題をこれまであまり表面化してきませんでした。


遺族を支援している田中さんの団体では、今日から弁護士などと電話相談を行い、多くの事例を集めて、不当な請求が行われないよう国に対策づくりを働きかけることにしています。」



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