2016/05/31

『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その8

様々なメディアで一方的にバッシングされた牧本医師。報道が真実なのか検証していきます。

●2011年8月10日 第7回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室

牧本敦医師の発言を一部引用 


○議題

1 これまでの小児がん専門委員会における議論についての報告
2 今後の小児がん対策のあり方について(小児がん専門委員会報告書)のまとめの審議
3 その他 

資料3(PDF)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001luyv-att/2r9852000001lv3j.pdf

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◆  ◆  ◆

(※ 今回は小児がん専門委員会の最後のまとめです。こちらは牧本敦医師を批判しておられる上昌広医師のツイートの『拠点病院』の検索結果です。ご覧のように、上医師は小児がんに限らず、『拠点病院』には批判的な立場です。ただ議事録を読む限り、牧本医師は国がんの限界を認識していらっしゃるようですし、症例数の少ない小児がんの特殊性を考えると、『拠点病院』という発想が一概に悪いものだと思えません。双方の主張をご覧になって、皆さんはどう思いますか?)


http://twilog.org/KamiMasahiro/search?word=拠点病院&ao=a
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〇牧本委員

2点あるのですけれども、1点は、常々階層化あるいはヒエラルキーという言葉を使ってきているのですけど。地域の診療連携拠点病院が、檜山委員が言われたように、その地域で診る患者さんのいろいろな情報を集めて知っておいて、問題点も把握していくというような機能、つまりコーディネーター的機能とコマンダー的機能を持っているという前提で考えてよろしいのですね。


地域の拠点病院がその地域の小児がん医療に責任を持つことは多分必要だと思うのですね。治療はあくまで疾患の難易度、治療の難易度によって、家の近くで受けたいという場合もあると思うし、その患者さん側のニーズによっていろいろ変わり得ると思うので、一定決めるとしても、多分ガイドライン式に決めるしかなくなると思うのです。ただ、その機能分化をしっかり定義することの方が大事だと思うのですね。それが1点です。


 もう一つは、この資料内に「都道府県」という言葉が出てきますので、その「地域」は何を指すかということは、一度しっかり議論をしていただいた方がいいと思うのですね。というのは、都道府県でやるとすると、結局、そういうコマンダー機能を持つような病院は47要ることになってしまいます。今までの議論を考えますと、恐らくそれよりは数が少ないものであろうと思われるので、都道府県を越えたそのネットワークをどう構築するかとか、その指揮命令系統をどういうふうに構築するかという議論がそこで起こってくるので、「地域」の定義も必要かなと思います。これが2点目です。以上です。


〇牧本委員

難治の定義について、天野委員の言われることが本当にそのとおりだと思うのですけど。恐らく医学的に絶対的な難治がんはなかなか対策は難しいわけで、そこは、また、研究の議論に渡すとして、制度対応が可能な、標準治療がしっかりできる体制をつくれば救える、そういうタイプのがんを治すのがもっとプライオリティーが高い使命だと思うのですね。


決して僕は造血器腫瘍を治すのは簡単だと言っているわけではないのですけど、固形がんで特に手術が難しい部位にできるとか、脳腫瘍や骨軟部肉腫がそうだと思うのですけど、そのような病気にしっかり対応できるチームを持った病院は、今現在もすごく少ないと思うのです。そういうところで困っていらっしゃる患者さんは非常に多いと我々は実感していますので、資料2の3ページ、先ほど檜山委員が説明された最後の方ですけど、臓器別の専門施設が重要になってくるのかなとは思っています。


これは、今、総論的な話になっていますから、余り議論されてないところですけど、例えば造血器腫瘍であれば、恐らく造血幹細胞移植がしっかりできるとか、そちらの方に専門化していく必要があると思うし、脳腫瘍であれば小児の脳外科医がしっかり患者をみていることが必要になると思いますし、肉腫であれば、腫瘍の専門の整形外科医、しかも、若年に対応できる整形外科医が必要ということになってくると思うので、そういう極めて特殊な技能を持った外科医を擁する施設は、全国でもかなり希なのではないかと思われますので、その辺は、現実と将来像の兼ね合いが多少議論されないと、さっきの天野委員の要求に応えられないのかなと思いました。


〇牧本委員

確認みたいな形になるのですが、今日の議論だとちょっと弱いかなと思う部分をちょっと指摘したいのです。原委員長の意見で、拠点病院は、今現在十分患者数を診ていて、経験が豊かな施設を暫定的にという話があったのですけど、そもそもフルスペックとかいう言葉が出てきたのはなぜかというと、そのような病院ですら、例えばアメリカのキャンンサーセンターや小児病院に比べれば、まだ足りないところがいっぱいあるのではないかということから始まったような気がしますので、そこを忘れてはいけないと思うのですね。


単に、今あるリソースを積み上げて、あるいは統廃合をして大きくすれば解決するのではなくて、そこに問題点と7つの要件があるのですけれど、恐らくそこで最も重要なところが?番専門医療の提供体制だと思うのですね。どうしてもいろいろな問題が山積みしていますので、そこでいろいろな議論をしてきたから薄まっている感じがしますけれども、そもそも拠点病院化しないといけないという議論が起こったのは、我々医療者側では少なくとも?がまだそのレベルに達していないのではないかという議論から発したものだと思うので、そこの議論は忘れないで、ずっと行っていただきたいなと思うんです。


〇牧本委員

ちょっと外れるのですけれども、同じ部分なので言いますと、そこの4行ですね。1番の(1)の一番下の4行、さっき見たところですが、そこのところだけがどうしてもクローズアップされるような感じがするのですけど、小児がんと成人がんの違いは、その上の段落も書いてあるので、恐らくその2段落目と3段落目をつなげるような形にして、その理由で特別な対策が必要であると言わないと、まるで、ほかのことはあまり問題はないけれども、先ほど議論したような晩期合併症の問題で特別な対策が必要であるというふうな結論に見えてしまうから、そこを配慮いただいたらと思います。様々な問題がたくさんあって、成人がんとは異なる対策が必要であるというふうな流れにしていただきたいと思います。


〇牧本委員

割と詳細な議論がされているので、その詳細さでいくと、先ほどから議論のある2の(1)の2段落目の1行目です。「また、小児がんに適応のある薬剤は極めて限られており」これは事実ですが、「ドラッグラグ」という言葉をここで使われると、薬事的なドラッグラグはほとんどないのです。薬事法上の小児がんの承認を受けている薬剤は欧米でも少ないのですね。だから、「ドラッグラグ」という言葉をどの意味で使うかが非常に問題になるのですけれども、結局、特に米国は、早期の臨床試験が積極的にされているために、新薬の臨床試験を含めての臨床現場への導入が早いということが現状であって、それの結果、患者さん、特に難治がんの患者さんがその恩恵を受けていることがあるのです。


書き方は非常に難しいのですけど、「ドラッグラグ」という言葉をここに出すと、成人のように行政的に動けばいいのではないかというふうな話になってしまう恐れがあるのですが、最近厚労省主導でやられています「医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会」では解決できない問題をはらんでいるので、ちょっと用語を考えておいた方がいいかなと思います。


〇牧本委員

つまり、「小児がんに適応のある薬剤はきわめて限られており」これは事実なので。例えば「難治がんに対して試験的に新薬を使用できる体制もない」と。実際にはないんです。そういう表現でいいと思うのですけどね。それによって「治療の選択肢が非常に限られる現状にある」ということ、それでいいと思います。「ドラッグラグ」と言うと、ちょっとその言葉が先走ってしまって、一般の方が見たときに、何で成人はドラッグラグが解消されつつあるのに、小児は解消されないのかというところがわかりにくいので。


〇牧本委員

全くそのとおりですけれども、私が国立がん研究センターの職員として、同時に、小児腫瘍科長として思うことは、今の病院体系の中で、仮に我々が拠点をやれと言われた場合に、全く新しい病院を併設するとか、それぐらいのパラダイムシフトを考えなければ、さっき私自身が申し上げたような、例えばアメリカとかに追いつくような拠点病院、胸を張って「これは日本代表です」と言われるような拠点病院にはなり得ないと思っています。


それは同時に、例えばほかの施設が拠点になるということに関しても同様で、今ある病院の体制、今ある自称専門病院の体制では、とてもここにいらっしゃる患者さん代表の方々の必要と考える要件を満たすことはできないと思っています
ので、その点、僕は局長の御意見は非常に賛成します。そういうふうな視点がなければ、何施設になるかわかりませんが、今まで議論してきた拠点病院の方向性を決めたり、モデルとなったりすることは不可能だと思っていますので、是非積極的に考えていくべきだと思います。


〇牧本委員

そもそも議論があって、途中からですけれども、小児がん情報センターの緑枠は診療機能を含まないという前提があったと思うのですね。第何回かちょっと忘れてしまいましたけれども、私が申し上げた発言の中に、病院機能と情報センター機能は一応明確に切り分けることは可能であると申し上げたと思うのです。実際、今でもその意見は変わっていません。勿論、情報センター機能を持つ拠点病院があれば、そこが小児がんセンターになるのは間違いないことですけれども、実際、その予算づけとか、いろいろな流れからしてそのようなことができるのかどうかということが私自身もわからなかったのですが。


もし厚生労働省の考えとして、先ほど局長が言われたような、しっかりした御意見がおありであれば、それは一つの施設の中に診療の拠点プラス情報及び行政の拠点があってしかるべきで、それが健全な形だとは思っています。ただ、それを言い出すと、今まで議論してきたこの図が全く違って、情報センター/小児がんセンターが全く中心に出てきて、その下に今中心にある拠点病院が、統制とまではいかなくても、その指導を受けながら構築していくという図になってしまうと思うので、その辺をどう整理するのかなというのがちょっとあります。


〇牧本委員

情報センターに関してはちょっと誤解があると思うのですけど。今の国立がん研究センターの情報センターは、原委員長の言われた機能を全部含んでいるんです。ただ、実行のステップが国民の満足を得られるレベルまで行ってないだけで、それをしようとしているのです。


あの案が出てきた2003~2004年当時は、あれはNCI構想とまで言われていて、つまり、アメリカの国立がん研究所を模したような、つまり、行政機能を有するセンターをどう構築するかということを目標に予算づけもされたはずなんですね。そこのところが、どうしてもできるところから段階的にやっているために、今すごく目標が見えにくい状況にあると思うんですけど、あれが本来の目標を見失わず、ずっと発達していけば、恐らく成人がんにおいてはNCIと同等の機能を果たすようになるというふうな目標を少なくとも持っていたのですね。


実際、情報センターを我々が誤解しているということは、それはすなわち、まだ達成されてないことの裏返しだと思うのですけれども、単に情報センターは情報を扱うセンターではなくて、そういう行政機能まで全部持ったセンターであると思っています。


〇牧本委員

もし僕がこのポンチ絵を変えろと言われたときに描くのは、下の緑枠が情報センターで診療外のものを多く含んでいますので、赤枠と緑枠を橋渡しするような丸か何かを描いて、それが一応全国唯一の小児がんセンターであるという枠をそこにつくってしまうと思います。もし、今のポンチ絵を利用するのであればですね。つまり、今書いてある緑色の情報センター機能は全部有する形のがん拠点病院が小児がんセンターというふうなことを示すために、がん拠点病院の方まで赤枠か何かで囲ったようなものを1つつくって、それを小児がんセンター全国唯一というふうな形で書けば明確かなと思います。


〇牧本委員

海外というか、私は米国事情しかよくわかりませんけれども、COG(Children’s Oncology Group)というグループの中で、どちらかというとQOLは看護師さん、リサーチ・ナースが主体となっている形ですが、幾つかの研究が立ち上がってやられているのですが、ただ、まだ結果が十分出てきてないのですね。COGとは違いますけれども、最近晩期合併症のデータがどんどん出てきたのを覚えていらっしゃると思うのですが、ああいう形で、恐らく向こう5年間にそういうものがどんどん出てくる状況だと思います。ですから、そういうところを我が国でも進めないといけないということは、気持ちとしてはあるのですけれども。


〇牧本委員

もし、その値を公表していくと問題になる点があると思うのですけれど。ひと昔前に、造血細胞移植学会で移植の成功率をとったときに、難しい手技をしている、あるいは難しい患者さんを受け入れている施設ほど本当はいい施設のはずですが、その成功率が低くなるという現象が見られたのですね。ですから、やり方を非常によく考えてやらないと、例えば再発患者さんと新規発症患者さんの治療をした場合を分けるとかしないと、この数字がひとり歩きして、拠点化が進むに従って数字が悪くなっていくことが起こると思います。ですから、そこは十分考えないといけないと思います。


2016/05/31

『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その7

様々なメディアで一方的にバッシングされた牧本医師。報道が真実なのか検証していきます。


●2011年7月26日 第6回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室


牧本敦医師の発言を一部引用 

○議題

1 第5回小児がん専門委員会の報告
2 小児がんにおける難治がん、研究、教育・研修等の審議
3 小児がん対策についてのまとめの審議
4 その他


◆  ◆  ◆

(※ 牧本敦医師が、ドラッグ・ラグの深刻な現状を訴えていらっしゃいます)


○牧本委員

全体的に医師がする研究の範囲内の治療開発ということと、企業がされる治験ということと、あと、政策という3つのファクターが書かれているので、そのように分けて考えていただければいいと思います。医師は患者さんの診断・治療に注力すべきであって、企業がやるべき新薬の小児への適応をどうするかとか、そういうところまで介入していくのは本来の業務ではないということはさっき指摘されましたけれども、もう一つは法整備ですね、欧米に比べると日本はほとんど認識されていない。


特に小児がんを対象とした場合の法整備の重要さは認識されていないというところを言いたかったんですけれど。この資料の中でその結果は、最後のA3の紙に書いてあるように、必要とされそうなお薬でも小児適応が取れているお薬が一部しかない。そして、それに対する対策としては、医師主導治験などかなり医師に負担がかかる解決策しか示されていないのが現状ですので、これに対して法的にどう対処するのか、あるいはそれを介して企業にどう対処していただくのかというところをやっていただきたいというのが趣旨だと思っています。


 そして、もう一つ、原先生が説明された中で1行あえて飛ばしたのだと思いますが、4ページの表の一番下の「治験関連」と書いてあるところで、On site monitoringとCentral monitoring、臨床試験のデータの品質を管理するために第三者的にモニタリングというものを入れるんですけれども、日本では治験において必ず第三者が医療機関に行ってチェックしないといけないという規制がかかっています。そうすると、交通費やいろいろなものを含めて非常にお金がかかるのが現状で、そのために治験を行うのに足踏みをする。これは企業にとっても、医師主導治験の医師にとっても同じなんですが、お金がかかるし、手間もかかるし、時間もかかるという状況になっています。


 一方で、欧米では法的にそこは規制しておらず、中央のデータセンターから問い合わせを中心とするモニタリングで対応が可能であるということがありますので、これは勿論、臨床研究の専門委員会で検討されるべきことだとは思うんですが、ここのところは企業にせよ、医師主導にせよ、新薬の開発を行っていく上で非常に足かせになっているということは確かだと思います。
 以上です。


○牧本委員

天野委員から医療上必要性の高い未承認薬・適用外薬の話が出ましたので、先週の7月22日が締め切りで各学会等々から要望が出されたところだと思いますが、小児の方も小児血液学会、小児がん学会の評議員を中心にアンケートをしましたが、候補薬剤に上げるところのハードルが非常に高いんですね。


つまり、成人がんでドラッグラグが生じる、つまり最先端のお薬で、例えば、アメリカとかヨーロッパで承認されているけれども、日本では開発予定の段階で早期承認を求めるようなお薬はリストに挙げることができるんですが、一方で、原委員長が4ページの保険制度のところで説明されたんですけれども、つまり、公に欧州、米国で保険はきいていても添付文書に書いていないとか、あるいは公的保険はあからさまには認めていないというお薬のレベルでは、あの検討会に要望することができない規則だったんです。


実は、そのレベルのお薬が小児の難治がんの方が非常に欲しているお薬であって、現在の行政的な解決策では、小児がんの困っているところは救えないという結論です。でも、そういうリストに挙がらないとわかっていながら10薬剤ほど挙げさせていただきました。恐らくはそれらはワーキンググループの一番最初のところで、これらは基準に合っていないのでだめですと切り落とされるのが関の山なのですけれども、それでも一応、現実を知らせるためにリストアップさせていただいています。それをまたホームページ等々でチェックしていただければと思います。



○牧本委員

簡単に言いますと、ヨーロッパはコンパッショネートユースと言って、つまり、どうしても必要とする未承認薬があった場合に、企業等々で開発中の薬剤でも使っていいという法律があるんですね。つまり、法的整備がなされていてコンパッショネートユース法みたいなものがあると。米国は、そういうお薬に関してはやはり臨床試験薬のような位置づけでやるべきということで、IND(Investigational New Drugの略)、すなわち研究用新薬として扱われているので、やや研究寄りの扱いではありますが、それで使っていい、つまり臨床試験の亜型みたいな形での扱いになるということです。


しかし、どちらの国もそういう未承認薬を法的にこういう場合には使ってよろしいという要件が定められていてできるということです。
 一方で、日本はオーファン制度ありとは書いてありますけれども、結局のところは患者ないし担当医が個人輸入をするということが実際の解決策なので、そういうことでは将来につながっていかないし、実際にはやりにくくてやれない施設も多いと思います。


○牧本委員

情報センターと拠点病院とすごく大きい枠の議論が二つあるんですけれども、もう既に要望で皆さん書かれているんですが、やはり地域ネットワークがなければ、特に長期フォローアップは成り立たないので、当然、拠点病院を中心とするネットワークというソフトの部分が必要で、予算化とはまた別だと思いますが、拠点病院と情報センターがあれば全部うまくいくということではないということは含みを持たせた方がいいと思います。


◆  ◆  ◆

続く


2016/05/31

『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その6

様々なメディアで一方的にバッシングされた牧本医師。報道が真実なのか検証していきます。

●2011年7月13日 第5回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室

牧本敦医師の発言を一部引用


(※ 一定の年齢に達した小児がんの子ども達を、どうやってフォローアップしていくか、についてお話しています。後半では治せない、治せなかったがんの患者さんのために「ドラッグラグを解消していきましょう」と牧本医師がおしゃっています)


○牧本委員

私が電話相談を受けている肉腫の状況と似ていますけれども、結局、患者さんがどの病院の何科を受診したらいいかわからないというのが問題です。電話相談を受けているので感じるんですが、もともと電話相談体制(肉腫ホットライン)ができた理由もそこなんですけれども、「肉腫」といわれても部位がわからないですね。何肉腫だったらどこにできやすいという傾向しかなくて、その肉腫はそこにはできないという除外はできなくて、つまり、いろいろ細かく個人個人の患者さんの特徴を聞かなければ、最初に行く診療科が決まらないんです。


小児がんの場合は、小児科。15歳未満であれば小児科で受けることができるけれども、16歳になった途端に日本の診療科の分け方では、あぶれてしまう。多分馬上委員が言われたことも同じだと思うんですが、一番入口のところで受入れが明確化されていないところが原因だから、堀部委員が言われたように、診療科を標榜させることは非常に重要だと思っています。


 その考えは今の国立がん研究センターの肉腫診療グループというものにつながるんですが、ここで原委員長がよくされるお話、英国には小児センターの中に思春期を診るというセンターをつくっているということがあります。


 例えば16歳~25歳という枠を堀部委員が提示されていますけれども、私の考えでは、30歳ぐらいまで別にあってもいい。明確に分ける必要は全くないのではないかと思っていて、そのような患者さんがどこに行ったらいいかわからない場合に、受診できる思春期センターがあれば
、死亡統計を見れば死亡率が高い年齢層ですから、その患者さんが迷わなくて済む一番いい方法かなと思っていますので、是非御検討いただければと思います。


○牧本委員

追加ですが、原委員長が言われている地域の医療機関についても、多分標榜をしっかりすることでアピールになるので、実際には肉腫ホットラインとか肉腫診療グループを標榜することで患者さんは集まってきますし、それほど困っている患者さんがたくさんいらっしゃるということの裏返しだとは思っているというのが1点。


 もう一つは、当院で高校生がたくさん受診、あるいは入院できる背景に、先ほどのお話に戻って、分教室で高校生を受け入れられる事実があるんです。分教室に高校があるから、あそこへ行ったらという言われ方をして来られる方も逆にいらっしゃいます。


 ですから、先ほどの話に戻ってしまったんですけれども、思春期の患者さんでも学校教育のできる制度を取り入れることも1つ、そういう思春期を標榜するセンターであれば、考慮いただきたいところかなと思います。


○牧本委員

この意見書を書いていて迷ったのが、先ほどのお話とかぶりますけれども、青年期に多い肉腫の患者が診療体制の整わない病院にまず、行ってしまって、何とか頑張って治療したが、不適切な治療だったという例が非常に多いんです。


 そういう場合は社会的な難治というか、科学的には適切に初期に治療されれば治るはずの人が進行期に入ってしまい、それで高次病院に送られてくるという例が年間でも何例か経験されますので、こういうケースは我が国で社会的に難治かなと思います。それも含めて書こうとしたらものすごく長くなったのでやめたんですけれども、檜山委員が言われたような定義であれば議論はしやすいので、この場の議論は標準的な治療が確立されていないものに限るでもいいのかなと思います。一方で、そういう制度的・社会的な難治がんを考える時間があれば、考えてもいいのかなと思います。


○牧本委員

結局多分はっきり言うと、臨床試験の議論になると思います。なぜならば、標準的な治療で治らないわけですから、すべて試験治療といってもいい部分になってくるので。


 森委員の御発言はファーストラインの治療も臨床試験によって改善し得るという話だと思うんですが、そこのところが臨床試験の世界では、後期治療開発という部分になるから、そこのところはある程度成熟したがんの治療センターが幾つかあって、診療体制が整っていればおのずと上がっていく部分だとは思われるんです。


 一方で、再発を繰り返したり、初めから薬が効かないものに対しては、薬の開発から始まるんです。あるいは集学的治療であれば、新しい放射線治療とか、そういうところを十分なデータがなくても開発していかないといけないという、レベルの違った議論になってしまうので、両方議論しても構わないんですけれども、多分もともとの意とは後者。つまり、標準的には治っていかない、よくなっていかない部分。しかも、日本で新しい治験も進まなくて、新しい治療薬も新しい治療技術も出てこないというところに、どうやってアプローチしていくのかという議論の方がよっぽど難しい問題になるので、そこにある程度スポットを当てていくべきかとは思っています。


○牧本委員

責任の問題と森委員もおっしゃっているので、同じような意見なんですけれども、結局診断は1施設でどこか責任を持つしかないと思っているし、我々もがんの専門病院で考えると、やはり自施設の病理医がうんと言ってくれなければ、最終的に治療を開始できないと思うんです。


 我々が勿論、臨床情報はほかの臨床情報も加味して、そこと議論することが可能なんですけれども、逆に遠く離れた中央診断施設と議論することは不可能だと思います。事実上限られた時間の中ではですよ。


 ですから、最終的に実地診療で使える病理診断のデータは、自施設で最終的に確定してほしい、というか、それができなければ拠点病院の機能としては不十分だと思いますので、それは絶対に守られるべきだと思います。


 一方、診断が難しい病気はあるんです。ですから、当院でも乳児の例は少ないですから、肝臓にしても腎臓にしても未熟な正常組織から出たがんというのは、特別な所見があるらしくて、がんセンターの腎臓の専門の病理医ですら、子どもの腎臓のがんは難しいという考えを持っているんです。


 ですから、その場合は当然こども病院、あるいは成育医療研究センターの先生に相談に行きます。すなわち、限界を知っているある程度成熟した病理医であれば、自分の限界もわかっていて、どこでコンサルテーションをかけて、最終的にはそのデータを併せて自分で診断しているんですよ。


 施設の最終診断がどの時点で確定されてというのは、施設の能力にも関わりますけれども、最終的には自施設の診断に基づいてやるのが今の医療の在り方ですし、そこは外せないかなと考えています。


○牧本委員

私がこの資料に書きましたのは、檜山委員にまとめていただいた資料で見ますと、臨床試験施設の集約化ということなんですが、これはまた数が出てしまうんですけれども、拠点病院が例えば10施設だとして、それぐらいの施設でないと適用外薬を扱う臨床試験とか対象患者の少ない治験とかいうものを、うまく実行、あるいは成功できないということは、臨床試験の領域では常識だと思っていますので、拠点病院は早期治療開発というところもしっかり役割として担っていく必要があると思っています。


 そういうことによって、標準的なものでは治せない患者を集約すると、そこではそういう治療オプションが提示できますという、アメリカなどではある程度実現している体制になるんだと思います。今までは、そういう治験もなかったですし、臨床試験にしても標準的な治療を改善するような後期開発臨床試験が主だったために、全然そういうオプションがなかったのが現状なんです。


 ところが、この10年ぐらいで適用外薬の問題、あるいは未承認薬の問題が成人がんの分野でも出てきて、我々も何とかしたいと思って、厚生労働省の研究費や日本医師会の治験推進研究事業などを利用して早期開発の臨床試験や医師主導治験をやってきた。


 でも、やはり数えるほどしかできないんです。1人の研究者では2~3しかできないのが現状ですので、こういう拠点病院の医師、研究者が力を合わせて、体系的に幾つもの多がん種を対象に、多くの薬を対象として臨床試験を幾つも立てて、それを共有して受け入れていくという体制が必要だと思っています。


○牧本委員

未承認薬の方が当然問題になるわけです。適用外薬は何とか薬(現物)がありますので、ですから、医師の裁量の範囲内で使っていけるということなんです。未承認薬に至っては、特に日本の企業、あるいは関連企業が開発中の薬剤であれば、コンパッショネートユースは可能だと思いますが、実際に日本の企業、我々がコンタクトできる企業が全くタッチしていない未承認薬でも、既に標準治療薬になりつつあるものが複数あります。


 だから、そういうものに関してどうしていくかというと、結局幾つかしか対策がなくて、そのような薬剤は研究レベルだという政府の見なしがあると思いますので、我々は研究者として海外と共同するか、あるいは海外のベンチャーに直接交渉して医師主導治験などをやるかという2種類しかなくて、
そんな事実を成人がんの先生が聞いたら多分びっくりされると思います。なぜそんなことをしないと開発できないのか。それは先ほど申し上げた理由によるものです。


 ですから、成人がんの世界では市場が大きいために、企業がどんどん新しい薬を入れてくださる。ところが、小児の世界では本当に有効なもので、第?相試験でそれを加えたら優越性が証明されたようなすごい薬であっても、まだ日本からコンタクトできる企業はだれも手を出そうとしない状況があって、それは完全なドラッグラグなんです。


 なぜならば、原委員長が言われたように、アメリカでは9割方の小児がんの患者さんがすべて臨床試験に入っているので、逆に言うと、9割方の患者さんはその治療を受けているわけなんです。ですから、標準治療なんです。


 その薬すら使えない状況がある。それに対して、「小児がん専門委員会」というメンバーになるような我々は、何ができるかというと、先ほどの2つの方法しかない。これだけたくさん(成人も含めた)がんの専門医がいらっしゃる中で、最も先鋭化した活動をしていかないと解決しない。解決もしないですが、それ以前に、手がかりもつかめないような状況にあるということがおわかりいただいた方がいいかなと思って、発言させていただきました。


 つまり、小児、希少疾患の分野というのは、未承認薬で、しかも手がかりすらつかめないものがたくさんあって、そこは世界的にも研究段階と見なされるために、臨床研究、臨床試験を推進していかなければ、患者さんに届けることは不可能なんです。


 コンパッショネートユースはあくまで海外で少なくとも製品になっていないと手が届かないということですが、小児がんの世界では海外で製品になっていないものも、かなり有効なものがまだ複数あるという状況になっている。


 科学が進めば進むほど、それは増えてくるだろうと思いますので、そういう問題を酌み上げて、対策を立てていけるものが欲しくて、私は小児がんセンターがもしできるであれば、そこの機能は絶対担うべきだと思うし、唯一で構わないので、指導とか戦略を立てていくということができないと、日本がどんどん米国、欧州に比べて遅れていくだろうと思います。
 是非、お願いします。


◆  ◆  ◆

続く




2016/05/31

『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その5

様々なメディアで一方的にバッシングされた牧本医師。報道が真実なのか検証していきます。

●2011年6月29日 第4回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室

牧本敦医師の発言を一部引用


○議題

【協議事項】
1 小児がん診療体制の今後の在り方等について
2 小児がんの患者支援、長期フォローアップ等の集中審議


◆  ◆  ◆


(※ 国立がんセンターに設置された、サルコーマセンターで電話相談を受けていたのは牧本敦医師だそうです。ご自身が受け持つ患者さんだけでなく、全国の患者さんの不安に寄り添っていらしたようです。こうした経験があるから、牧本医師は、教育の問題から、交通費の問題まで、患者さんやご家族が、何に困っているかをご存じなのでしょう)


○牧本委員

私はサルコーマのコールセンターをやっておりますので、どういう状況になるかよくわかっております。国立がん研究センターのホームページに載っているサルコーマのホットラインは、ほとんど私が受けていますから、どういう状況になるかというと、広報が行き渡ると物すごい数がきます。行き渡らないと、全く忘れ去られます。


 国が主導でやられることであれば、一定の質を確保して、一定のサービスを提供できるとは思うんですけれども、相談内容の幅がすごくあって、単に不安だから電話してきた方から、すごく高度な疑問をお持ちの方までいらっしゃるので、コールセンターをやるときに、どういうタイプのコールセンターであって、もし一定以上のレベルの質問がきた場合にはどこにどう回すかというところまで全部考えないといけない。


コールセンターという名前はすごく受け入れやすいし、利用しやすそうに見えるんですが、逆に非常に事務的な質問をされたときに、私は医師なので、事務手続きについては事務の方にもう一度かけ直してくださいと言った場合には、かなりクレームが出ます。そういうこともあるので、コールセンターというのは、簡単なようですごく難しいことだという実感を持っています。


 セカンドオピニオン体制のコンサルテーションシステムというのは、ある程度そういうところで網というか、振り分けをした上で、どうしても学問的、医学的に専門的なことをコンサルテーションするためのシステムということで書いております。


○牧本委員

私がコンサルテーションシステムと書いたものは、実はセカンドオピニオンとは違うんです。特にホットラインをやっていての話なんですけれども、今、診てもらっている先生の紹介状は必要ですかと必ず聞かれます。特に若い親御さんなどはお悩みになっていると馬上委員からも聞いています。


つまり、今、確立している医師との関係が崩れるのではないかということを心配されている方がいっぱいいらっしゃって、勿論情報があった方が正確に答えられるので、そうしてくださいと答えるんですけれども、だから、コールセンターとセカンドオピニオンの間ぐらいの位置づけを考えて、そういうシステムがあればいいと思って書いた次第です。


○牧本委員

前回も話題になったんですけれども、いわゆる複籍です。堀部委員の考え方がもし実現できればベストだと思うんですけれども、実際には籍を置いていない学校での教育が教育として認められるかというところがあるようです。だから、転校して籍を移さないといけないという議論になっているみたいなんです。これが現実です。


 今、その間の橋渡しとしては、複籍といって2つ籍を持つ。原籍校と特別支援学校のようなところの2つの籍を持って、両方の単位を認めてもらう。1週単位で行き来をしても、両方認めてくれるんだったらそれでいいのではないかという考えがあって、勿論堀部先生が言われるみたいに、籍を移す必要がないというのがもっといい、煩雑な手続を必要としないベターな方法だとは思います。


 今、東京都が病弱児教育でそういう動きをされているのは御存じのとおりだと思うんですけれども、そういうことがモデルになって、複籍というものが実用化されていけばいいのではないかと、今のステップとしては思っています。これが現状です。


○牧本委員

国に全部頼ると難しい部分があって、あと不平等性が生まれる。言う人はリクエストするけれども、言わない人、美徳として言いにくい人などがいらっしゃると思うので、言わない人には保障されないということでは話になりませんし、制度化するのは非常に難しい可能性があると思います。多分民間の財団法人とか、こちらにもいらっしゃるようですけれども、少額ではありますが、そういう交通費補助を出している団体もあります。


 それから、例えば航空会社とかJRなどに呼びかけてそういうことをするには、国から呼びかけるわけにはいかないと思うので、民間の力、産官連携をしていくというのは1つの模索方法だとは思います。だから、こういう協議会がそういうところに呼びかけていく、社会活動みたいなものも多少必要になるのではないかと思います。


 産官連携のもう一つなんですけれども、民間の保険として、例えば医療費以外の部分をカバーするような商品開発などを考えていただいてもいいと思います。国の予算の範囲内でできることと、できないことがあると思うので、何とかみんなで共同して、小児がんのみんなを救いましょうという活動ができればいいと思っています。


○牧本委員

原委員長と森委員の中間的意見になると思うんですけれども、先ほどの2-1にも関連するんですが、専門職を置いた方がいいという話の中で、多分最も身近な専門職は看護師なんです。ですから、ナースプラクティショナーという制度はまだないですけれども、例えばがん専門看護師あるいは小児専門看護師というのは両方あるんです。小児がん専門看護師というのは要らないのかという話は出してもいいと思いますけれども、いずれかの看護師が長期フォローアップのようなものに関わっていくというビジョンはあってもいいと思います。


 もう一つ言うと、いわゆるフィジシャンアシスタント、PAと呼ばれる職種もナースプラクティショナーと並行して、我々臨床医の仕事をかなり肩代わりしてくださる役割として有用だと思います。私が米国の医療機関に行って、どうしたら日本の医療がよくなるだろうという質問をしたときに、そういう職種を導入しろというのがダイレクトなアドバイスとして出るんです。認定看護師制度はどんどん発達していると思うので、そういうところを進めていただくと同時に、それをこの分野でどう運用していくかということを考えていただくのがいいと思います。


◆  ◆  ◆


続く




2016/05/30

『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その4

様々なメディアで一方的にバッシングされた牧本医師。報道が真実なのか検証していきます。

●2011年6月8日 第3回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室

牧本敦医師と馬上祐子『小児脳腫瘍の会』代表の発言を一部引用


議題

【協議事項】

1 小児がん診療体制の在り方等について
2 小児がんの患者支援、長期フォローアップ等の参考人意見聴取等
 (1)小児がんの長期フォローアップ等について(石田参考人)
 (2)こどもの療養環境等について(梶山参考人)
 (3)「小児がん 新たなリスク」について(馬上委員)
3 その他


◆  ◆  ◆


(※小児がんの経験者が、どうすれば生き生きとくらしていけるかについてお話しています。患者会の代表馬上委員が「『クローズアップ現代 小児がん 新たなリスク』をご覧下さい」と発言していらっしゃるので、その部分も引用いたしました)


〇牧本委員

 小児がん専門委員会で議論をすべきかどうかは、委員長にお任せするとしても、私たちが自分の病院の分教室で常に抱えている問題点が先ほどの質問の中にあるんですけれども、1つは小児がんの拠点施設をつくったときに、そこは必ず小児がんの患者のための学校のようなものが併設になるわけです。周辺施設も勿論がんのフォローアップをしたり、いろんなことでそういう患者さんを抱えることになると思われるんです。


 外来患者さんが多くなってくるだろうと予想される中で、1つは院内学級という形を取っていると、院外から菌を持ち込む市中感染の問題とかがあって、やはり院内のためだけにやるのが院内感染対策上はいいんですけれども、同時にやはり外来患者も受け入れないといけなくなってくるだろうと思われるので、そのような疑問を今思ったわけです。


〇牧本委員

つまり病棟で、今例えば1年入院して治療をしています。その間に、短期の外泊とか退院があるというのではなくて、強いフェーズも外来で治療していく際には、当然そのような方というのは、いわゆる先ほど石田先生が言われたディスエイブルドに入ってくると思われるので、学校教育をしっかり行っていくためには、通常の学校では無理ではないか。つまり特別支援学校のような体制でないといけない。しかも、病院が併設されているべきではないかという観点が今感じているところなので、議論していくべきかなと思い、提案させていただきました。


〇牧本委員

ちょっとだけ、反論みたいになってしまうんですけれども、それでも一応幾つかの病院には分教室が置かれていて、それが先生おっしゃるような状態になってきているのが事実なんですね。我々の病院の中の分教室もそういうふうなことではあると。


 一方で、訪問教育を充実させるというのは1つのソリューションなんですけれども、訪問教育だとやはりマンツーマンで、集団生活を学ぶとか、友達といろんな話をするとかいう機会が失われてしまうので、そちらの方だけにいくとちょっと問題があると思われます。


 実際具体的に我々の病院の中の分教室というのは、ある一定期間区切って外部から通っている方もいらっしゃるんですね。喜んで通ってくるんですね。やはりそういうところを求めて通ってこられるのだと思うので、そういうふうな観点から、やはり在り方を考え直していくべきかなと思っています。


 そうした毎日通えない問題に関しては、特別養護学校というのは肢体不自由の方も多いので、大体バスとか持っていますので、そういうふうなものを例えば病院の分教室まで回してもらうとか、考えていくべきかなと思っています。


〇馬上委員 (馬上祐子『小児脳腫瘍の会』代表)

資料6の方に、天野委員、小俣委員、私で参考資料として出させていただきましたのは、2011年、今年の1月31日、NHK総合テレビで放映されました「クローズアップ現代『小児がん 新たなリスク』について」の要約と、あとそれに対する患者家族の感想でございます。


 この番組によって今現在も多くの経験者が生きることに困難を抱えているということ、そしてそれは治療に由来する晩期合併症、後遺症などの重荷、そしてそれによる精神的な疲弊、また自立できないことによる経済的な窮乏により起こっているという、そういう問題を世に改めて問うていただいたというふうに思っております。


 番組中登場した英国の経験者は、晩期合併症と折り合いながら、自分の人生を生き、「幸せです」と断言していました。大変すばらしいことだと思います。うらやましいことだと思います。そして、これは国民一人ひとりの権利であるとも思います。


(※ 馬上委員のご発言にある 『NHK クローズアップ現代「小児がん 新たなリスク」』を文字におこしてあります。ぞうぞご覧下さい)


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「私は小児がんの晩期合併症がありますが、上手く付き合っていけていると思います。やりたいことができて、自分の人生を生きています。幸せです」


番組中、垣添前会長が極めて高い専門性について、「経験が豊かであれば非常に微妙なさじかげんができる」とおっしゃっていましたが、晩期合併症にも配慮した、真に専門的な治療の行える拠点の整備、そして腫瘍別の腫瘍を熟知した確かな経験の専門医、そして専門スタッフによる治療、そしてその育成。そして、経験者一人ひとりの治療後の長い人生を見守る体制の整備により、日本でもより多くの経験者が自立し、社会に貢献していくことになると考えております。


 この番組を見て、一日も早く整備をお願いしたいというふうに願いました。患者家族の感想は載っておりますので、見ていただければと思います。
 

◆  ◆  ◆

続く

2016/05/30

『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その3

様々なメディアで一方的にバッシングされた牧本医師。牧本医師の講演を文字におこし、報道が真実なのか検証していきます。

●2011年2月9日 第2回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室

牧本敦医師の発言を一部引用


○議題

【参考人意見聴取】
1 小児がん緩和ケアのシステムについて
2 医療における子どもの権利等について

【協議事項】
  小児がんの診療体制について


◆  ◆  ◆


(※ がんの疑いのあるお子さん達を、どうしたら、素早く治療に結びつけられるか、についてお話していらっしゃいます)


○牧本専門委員

 多分一般のクリニックとかであればやはりそのまま、じゃあCT撮りましょうとできないですよね、つまりCTがないので。より高次病院に紹介をすると。高次病院に行ったときに、多分元に戻っちゃうんですね。子供がそんな重病するのはまれであるからもうちょっと様子を見ましょうと、そうやって結局引き伸ばし。恐らく医者の心理、一般医の心理、私も若いとき一般医でしたから、としては本当にやはり元気な子供がそういう重病するということは非常にまれであるというのがまず1点。


 頭痛とか吐き気とかというのはやはり頻度からするとほかの理由のほうがよほど多いわけですから、僕らはそういう訓練を受けて、頻度からまずナンバー1が感染症でとかそういうふうな患児でカンベ診断行っていって、検査をできるだけセレクトするように頭を働かせてしまうので、それが専門家というものなので。そこをちょっと経験というものがあればそれを打ち破ることができるんですけれども、そこのところをどう打ち破るかというところで、天野委員は連携パスという話を出してこられたんですが。やはり地域でそれはつくらないといけないし、地域にそれだけの専門家がいらっしゃるのかという話になると、その方法が難しいということだろうと思うんですね。


 だから、今なぜ撮らないのかというかなぜそうなるのかという話を説明したわけなんですけれども。そうなると、本当に腫瘍を疑って撮るという、もし腫瘍じゃなかったら腫瘍じゃなかった、よかったねと言ってあげられるような施設が幾つあるかという問題になってきて、それはもうほとんどがんを専門と自負しているような人が言わないといけないと思うし、そういう人の役割だと思うんですね。そうなるとがん専門病院あるいは地域の小児医療センター、あるいはもう地域のコア病院であってもそういう専門を自負する先生がいらっしゃるところというところにリーチするしかなくなるので。そこの閾値をどこまで低くするかという議論になってきます。


 一方、低くしすぎると何でもかんでも頭のCTということになって、医療のリソースの無駄使いになるので。その辺は、もちろん議論で決めることでは絶対ないんですけれども、一つは小児科全体の、一次医療圏の先生も含めた人への教育、あるいは情報の公開であって、それは恐らく患者さんへの情報公開と同じようなレベルで行わないといけないんだろうと思いますし、そこはベースとして。


 もう一つはやはり高次病院がそこの二次医療圏まで下りてくるかということを私さっき申し上げたんですけれども。例えば、アメリカの私も行ってましたが、MDアンダーソンがんセンターなんかではもうコールセンターがあるんですね、小児がんの。だから、小児がんかもしれない、私の子供小児がんかもしれませんと、もう熱が長引いていますだけでも構わないんですね、コールセンターにコールを送れればそういう相談にのっていただける。そこまで言うんだったらもうCTを撮りましょうかとCTを撮る。


ただ、じゃあ、変な話、国立がんセンターでそれをやったら今どうなるかというと、やはり特定機能病院という問題があって、加算が取られちゃうんですね。
もしそれで、お金の問題ではないとおっしゃるかもしれないけれども、普通の病院以上に敷居が高い病院というのは何個か存在していて、恐らく成育医療センターなんかでも飛び込みで行ったら同じようなことが起こるんじゃないかと思いますが。


 だから、その医療体制自体に例外をつくるべきではないかということをさっきから僕は申し上げていて。それは二つしかないんです。地域連携の中でうまく底上げをして対処するか、高次病院と言われて高く止まっているのではなくて、高次病院でそういう疑い例まで受け入れるような体制をつくっていくか、どちらか、両方すると思うんですが、両方しないと多分そういう問題は解決していかないと思うので。


 だから、今の現状ではちょっとそこの求められるところは無理で、対策はその二つと思っています。


○牧本専門委員

 私の個人の意見の資料の中、資料4の18ページに私がずっと申し上げているようなことが書いてあるんですが。一つ、全然申し上げてないことが、やはり小児科医の能力というものですね、総合小児科医ですよ、小児がんの医者ではなくて。あらゆる、僕らが小児科ストレート研修をしているころは大学病院に根ざした研修でしたけれども、あらゆる難病を症例を経験していくんですね。一方で、今の初期研修生度ですと、やはり初期研修のうちに小児科を学ぶ期間というのは長くても多分半年、特殊な病院では1年とかあると思うんですが。その中でとても最初の2年間でがんを見られる機会はほとんどないと思うんですね。


 一方で、米国だと最初の3年間はもう1年目から小児科系と内科系に内科系が分かれてしまう。つまり、成人を見るか小児を見るかを決めてしまうので。小児科の中で総合研修の中でがんセンターに行ったり。小児がんを学ぶ期間が必ず一定期間あるんですね。これはもちろん病院とかのシステムの違いの問題がありますけれども、やはり小児医療というのは、小児科の専門医というのは短期間であってもそういう経験を積めるような、システムの中で教育されるべきじゃないかなと思うので、今は2年行った後、後期研修で小児科にまた行ってしまうので、すごく時間がかかってしまうためにまた専門医が遠のくという状況にありますから。


 僕はここでもうちょっと各国の教育状況というものを見て、厚生労働省から外れていきますけれども、文部科学省のほうにも検討いただいたほうがいいんじゃないかなと思ったりはします。


○牧本専門委員

 最善の治療とおっしゃったのと、標準の治療が必ずしも最善の治療ではないというのががんの一般論なんですね。やはり標準治療というのは多数を対象として、しかもある程度状態のいい患者さんを対象として行われた臨床試験結果に基づいて定められるもので、原先生がガイドラインとおっしゃったのは、そういう幾つものそういうデータに基づいていろいろなバイヤスとかを排除した結果、こういうものがいいだろう、例えば手術をして術後化学療法4コースするのがいいだろうとか、この薬は何を含まないといけないとか、そういう割と粗いところで決める線がガイドラインなんですね。

 
ただ、ガイドラインのとおりやったら必ずしも最善かというと、やはり固形がんの場合は例えば部位が微妙に異なる部位に出ていたり、あるいはある人は簡単に取れたけれども、ある人は取れないとか、脳腫瘍も同じだと思うんですけれども。あるいは、やはり進行しすぎていて手術が不能であるとかいうことで、必ずしも標準治療の道筋に乗れない患者さんもたくさんいらっしゃるので、ガイドラインとか標準治療というのはある程度幅を持たせていくということがもう前提になってくるので、そこの幅をここの患者さんに最適化するのは医師の能力、専門医の能力にほかならないと思っています。


 ですから、何か紙ベースでポンと決めたから、それで全部がうまくいくという考えではもちろんないと、もちろんお分かりだと思うんですけれども。そこの個人の医師のベースをどこまで上げていくかということが多分課題なんだろうと思っています。


◆  ◆  ◆


続く


2016/05/30

『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その2

様々なメディアで一方的にバッシングされた牧本医師。報道が真実なのか検証していきます。

●2011年1月11日 第1回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室  

牧本敦医師の発言を一部引用

○議題
1.がん対策推進協議会小児がん専門委員会運営規程(案)について
2.小児がんの今後の検討課題について

○議事
 出席委員:垣添会長、檜山委員長、天野委員、小俣専門委員、原専門委員、堀部専門委員、牧本専門委員、馬上専門委員、森専門委員

◆  ◆  ◆


(※ 牧本敦医師がご自身の経歴をはじめ、小児腫瘍科で治療にあたる小児科医が、 なぜ社会に働きかけるかについてお話していらっしゃいます)


○牧本専門委員

 国立がん研究センター中央病院小児腫瘍科長をしております牧本です。

 私は、大学を卒業した後、数年の研修を経て1998年から2000年まで米国のテキサス大学MDアンダーソンがんセンターで小児血液腫瘍のクリニカルフェロー、臨床研修を行ってまいりました。その間、隣のテキサス小児病院で遺伝子治療の研究なども行いましたが、その中でやはり我が国の体制と、もちろん米国の体制というのはかなり規模が違う体制ですけれども、差に愕然とした経験がございます。その後、本日ご出席の垣添先生が院長をされていた国立がんセンター中央病院のほうに医員として勤務いたしまして、ことし11年目となります。現在は小児腫瘍科の科長として独立行政法人国立がん研究センターの中央病院で小児腫瘍を考える立場でおります。


 臨床的には国立がん研究センター中央病院ですから、全てのがん腫を扱うべきですけれども、先ほど来議論にあります特に当院では15歳から20歳までの患者さんも全て小児腫瘍科で治療しておりますので、特にその辺で多い、それこそ造血器腫瘍でその年齢で発症した方とか、ユーイング肉腫や横紋筋肉腫、骨肉腫等のいわゆる整形外科あるいは他の外科領域との境界領域で治療がしにくい患者さん、それから我々と一緒に眼腫瘍科、目の腫瘍ですね。網膜芽腫の患者さんも眼腫瘍科を中心としてたくさん見ております。


 研究分野といたしましては、先ほどもちょっと発言いたしましたけれども、他施設内、医師少数施設での治療開発を行うための臨床試験、体制整備も含めて厚生労働科学研究の補助金もいただきまして、もうこれも9年来行ってまいっております。その間適用外薬問題とか未承認薬問題に関しては、情報収集による解決、抗がん剤併用療法検討委員会による解決とか、あと医師主導治験も手がけたことがございますし、この分野に関してはある程度経験と知識を持ったものとして考えております。


それに伴いまして、学会活動でも例えば小児血液学会の保険診療委員会の委員長を拝命しておるとか、どうしてもそこの薬事法的なところに重きが置かれていますが、一方で一応臨床医として勤務しておりますので、全てのがんに関して何が標準治療で何が試験的な治療かというところの切り分けは、自分ではできているつもりでございます。


 また、先ほど留学中に遺伝子治療をやっていたという話もありますが、厚生科学審議界の遺伝子治療専門委員も拝命しておりますし、当院でもいわゆる先端医療をこれから進めていくという目標もございますので、小児の分野でもそういう先端医療を臨床試験としてですけれども、届けることができるような活動というところにも手がけておりますのと、もう一つ特徴的なのは、やはりそういう研究とか診療の延長だけではなかなか救われない部分、馬上委員からも強いお言葉がありましたけれども、実際小児患者を人間としてとらえた場合には、やはり社会全体で守っていくという姿勢が必要だと思いますので、そういうことから研究だけではなくて社会活動として小児を支援していこうということで、NPO法人小児がん治療開発サポートなどのNPO法人に積極的に協力をして、社会活動として小児がんの子供たちを救おうという活動もしております。


 そのようなバックグラウンドから取りまとめた図がこのお配りの資料の中の16ページにひとまとめにしてございますが、この図で言いたいことは、今までがん対策推進基本計画の中で述べられてきた成人を中心としたがん対策と、この小児が抱える問題点というのは多少ずれがあるということをこの図で示したかったんですね。その一番根本にあるのは、もう既に原委員、堀部委員が触れられたように、これは医療施設、医療体制の問題であると。


 つまりがん対策基本法等が述べたがん拠点病院を中心とするがんのネットワークというのは必ずしも小児がんをちゃんとこれまで歴史上、きちっと治療してきたと自負する施設群ネットワークと重ならないので、それがやはり国がつまり拠点病院に予算を投じて整備をしようとしているところと小児がんの医療体制の整備が合わなかったということの根本だと思いますので、これが先ほど来私が申し上げている治療の開発にしても治療のレベル、つまり専門医の教育も含めて医師の能力や経験、治療のレベルにしても、その周囲にある支持療法や長期フォローアップも含めて、そういうふうなものが全てちょっと小児のところでなぜか立ち遅れているという原因だと思っております。


○牧本専門委員

 そういうものもありますが、結局何十年も前に治療を受けてということもありますが、治療自体もやはりどんどん進歩していますので、原先生なんかがおっしゃるように、必要な放射線量だって下がってくる。ただ、それを例えば20年前の治療をずっとしている先生がいらっしゃったら、その晩期障害は減らないわけですよね。


ですから、とにかく今できる、今これから発生してくるあるいは再発してくる患者さんに最善を尽くすことで恐らくそういう生活の保護、それから長期フォローアップにかけるコスト、そういうものも恐らく下がっていくだろうと予想されるので、やはり重点的な課題としては一応この質の高い医療をどう提供するかということをまず議論いただきたいなというのが1つです。


続く



2016/05/30

『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その1

●患者さんのお父様からのメール


牧本敦医師の患者さんのお父様からメールをいただいた。今日のタイトルにつけさせていただいた『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 という言葉は報道直後、奥様がおっしゃった一言だそうだ。


●『晩期障害』 を減らすには、医師の経験が必要


いただいた長いメールを読むうちに自然に涙がこぼれてきた。やはり牧本医師は、私が想像していた通り、誠実な仕事をしてきた方だと思ったからだ。メールを一部引用させていただく。ここに書いたら牧本医師に届くかもしれない。牧本医師には、どなたが心配して、メールを下さったのかわかるかもしれない。


牧本先生に診ていただけたから、ポートに入れ換え、手術前に海水浴も行けました。晩期障害を考慮して、三回分の化療を少なくしていただけました。


ユーイング肉腫の治療計画と治療変更基準及びプロトコール治療の概要に精通されていた牧本先生だから安心して息子を委ねることができました。報道直後、「どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生だ」と言っていた家内の言葉が忘れられません。



化学療法についても詳しく教えていただいた。具体的には、IE(1回)とVC(2回)分。標準プロトコール17回ところ14回となったそうだ。


メールの最後は、牧本医師の業績について書かれていた。私と同様に「巨額の研究費を扱うに相応しい人物だったのか」などと批判されたことに、心を痛めたそうだ。


『牧本事件』を追う その1 「拠点病院の研究者たちには、何もしなくてもカネが降ってくる」は本当か


●『小児がん専門委員会の議事録』 拠点病院事業と牧本医師の提案


あることを教えていただいた。小児がん専門委員会の議事録には、牧本医師の発言が残されているという。拠点病院事業には、牧本医師の提案が取り入れられたそうだ。


いただいたメールに突き動かされるように、厚生労働省のサイトで『小児がん専門委員会』の議事録を探す。


◆  ◆  ◆

がん対策推進協議会(小児がん専門委員会) |厚生労働省

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◆  ◆  ◆


第一回から読み進めるうちに、次第に引き込まれていった。子どもの自己決定権から、未承認薬の問題まで、幅広い内容が真剣に話し合われているからだ。とりわけ牧本医師の提言は的確で驚く。


この会議で話し合われた内容は、小児がんだけでなく、病気や障害を抱えているすべての子ども達に必要な議論だと思った。


「僕はいろいろな省庁に取材をしているけれど、厚生労働省はよくやっていると思います」という、あるジャーナリストの言葉を思い出した。厚生労働省は確かに良いことをしている。


せっかくだから、第一回から、重要だと思う牧本医師の発言を引用させていただこう。


もしも、患者さんのご家族に、心のこもったメールをいただかなかったら、私は議事録を読もうと思わなかっただろう。


牧本医師に、患者さんとご家族のお気持ちが届くといいな、と思う。


続く
2016/05/28

 『あなたなんかに何ができるのか!』から10年 発達障害者支援法改正案が成立 生物学的精神医学モデルから社会モデルへ

●発達障害者支援法改正案が成立 「治療」という文言が削除される


5月26日、某団体から、一通のメールが送られてきた。


発達障害者支援法改正案が成立がしたそうだ。その団体は、発達障害者の支援が名ばかりで、精神医療へ安易につなげられていることを危惧し、長い間政治に働きかけてきた。


今回の法改正が画期的だったのは、「治療」という文言が削除されたことにあるという


その一方で、新たに加えられたのが、社会的障壁という概念だ。つまり、発達障害者支援は医学モデルから社会モデルへと移行するということだ。当事者の権利利益の擁護が強化され社会参加の機会確保や共生が強調されている点も素晴らしい。


●求めているのは医療的支援ではなく、教育的支援


精神医療を批判すると必ず言われるのが「反精神医学」という批判だった。


けれど今の子ども達を取り巻く環境はどこかおかしい。例えば、算数ができないと「1度病院にいってみてもらえば?」などと言われるからだ。息子のような超低出生体重児はまだいい。「小さく生まれたから、発達が遅れているんです」と母親の私が言えば、理解してもらえるからだ。


算数ができないのだから、どうすれば算数ができるようになるかを、一緒に考えるとか、算数を子どもに教えてくれればいいのに。どうして、治療を受けないといけないのか私にはさっぱり理解できなかった。


仕方がないから、今は私が勉強をみているけれど、ほらこの通り!塾の先生も「がんばっています」と書いてくれている。こういう手間暇をかけないと理解できない子ども達がいるということなのだ。


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グレーゾーンの子ども達の中には、息子と同じように、支援級などでは伸びなくなる子がいるはずだ。大人は子どもを変えようと躍起になるけれど、変わらないといけないのは、むしろ大人達じゃないの。日本の教育現場に、精神的・時間的余裕がないことのほうが問題だと常々思っていた。だって、海外の学校はもっと自由だもの。それに年齢も国籍もバラバラな子ども達が集まっていたりする。


でも、ひとまずホッとした。相変わらず超低出生体重児の子育ての苦労は続いているけれど、これまでの苦労が少しは報われた気がする。


● 『小児がん専門委員会』の議事録に残る牧本敦医師の業績 


今、牧本敦医師の患者さんのご家族に教えていただいて、『小児がん専門委員会の議事録』を読んでいる。


牧本医師の発言を読んで少し驚いた。お金の問題から、治療体制、子ども達の教育問題、そして薬のことまで、幅広く発言しているからだ。忙しい仕事の合間には、なんと!サルコーマの患者さんからの電話相談にもこたえていたそうだ。診療だけでなく、NPOなどで活動した経験があるから、患者や家族が何を求めているのかがよくわかっている。だから提言が的確なのだろう。


牧本医師は、私が国立成育医療研究センターの児童精神科医に訴えたようなことを、形にしようと活動してくれていたんだ・・・。


2007年(平成19年)、私は、児童精神科医と言い合いになって、「あなたなんかに何ができるのか!私達がやるから、あなたは黙っていて。迷惑だから出ていって」と障害名までつけられて追い出された。


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そういう不条理で、辛い経験が私を本気にさせたのだ。何ができるの!と言われたけれど、この10年で、どちらの主張が世の中に受け入れられたのだろう?


次回から牧本敦医師の議事録の発言を、引用させていただこうと思う。私は超低出生体重児の親であると同時に被害者でもある。ここまで患者や家族のために活動してくれた医師を、素通りできない。したらいけないと思う。




2016/05/26

小児の治験 薬害被害者になって 『子どもは小さな大人ではない』という意味を知る その2

●ナショナルセンターの心の専門家 安易に向精神薬を処方する一方で、断薬の方法を知らない


こちらは私も取材に協力した、東京新聞(2012年09月03日 )の記事。産後うつと、中川聡さんを取り上げている。


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私のような被害者は、断薬するために必死に勉強しないといけない。成育のような国を代表する医療機関の心の専門家でも、患者の同意を得ず、向精神薬を簡単に処方する。しかしその一方で、断薬の方法を知らない。特に私の主治医となった児童精神科医は、古い考えの医師だったから、「統合失調症」の患者には自己決定権など必要ないと考えていたようだ。


●なぜ小児に治験に、莫大な費用がかかるのか


仕方がないから、治験に関する文書にも目を通すようになった。当時読んだ資料を、一部文字におこした。最後に引用させていただくので、興味がある方は読んで欲しい。はじめて読んだ時は驚いてしまった。子どもの身体は発展途上だから、CYPが劇的に変化するそうだ。


牧本医師の講演で印象に残ったのは、薬の開発だけでなく、治験に莫大な費用がかかることだった。CYPをみても、これだけ複雑に変化するなら、時間やお金がかかることも納得できる。私が小児の治験の重要性を知ったのは、皮肉なことに薬害被害者になったからだ。自分が薬の副作用で苦しんだからこそ、わかることがある。息子が産まれてNICUに入院した時に、山のような同意書にサインをした。けれどあの時私はどこまで理解していたのだろう。


今は、厳しい環境の中で、地道に誠実な研究を行ってきた薬の専門家に感謝せずにはいられない。


◆  ◆  ◆


第27回 日本TDM学会・学術大会 「小児の薬物動態、用量設定とTDM」 国立成育医療研究センター臨床研究センター 中村秀文

子どもは小さな大人ではない。


低出生体重児・新生児から思春期までの幅広い年齢群が含まれており、その薬物動態は発達に伴う生理的変化の影響を受ける。成人における個人差に加えてさらに発達の要素が加わるわけである。


薬物分布も、成人と小児で異なることがある。水溶性の薬物では、新生児あるいは未熟児など水分率が高いために、アミノグリコシドなどのように体重あたりの投与量が高めに設定されているものもある。また、新生児は生理的に血中アルブミン濃度が低い。このため、アルブミンとの淡白結合率が高いフェニトインのような医薬品では、血中濃度の評価に注意を要する。すなわち、低アルブミン血症では、フェニトインの総血中濃度は下がるけれども遊離の血中濃度は、血中アルブミン濃度が正常な場合とさほど変わらない。


薬物代謝酵素の活性の成熟における変化についても少しずつ解明されつつある。例えば、フェニトイン(商品名 : アレビアチン)の代謝をつかさどるCYP2C9は、胎児期にはほとんど存在せず、出生後一周間以内に発現を開始する。


一方CYP 1A2の発現は遅く、生後1-3ヶ月で初めて発現を開始する。


成人の肝臓で最も豊富に存在するCYPであるCYP 3A4は胎児の肝臓にはほとんどなく、CYP3A7が主なCYP3Aである。出生後は、CYP3A7は生後1週間をピークにその後徐々に消失し、一方CYP3A4 は生後一週間以内に発現し、生後3ヶ月の間に急速に増加する。CYP3A4により主に代謝されるカルバマゼピンのクリアランスはむしろ成人より小児期が高いために、体重当たり投与量は小児期のほうが高い。


出生後は、日齢の増加にともない次第に心拍出量が増加し、また末梢血管抵抗が減少していく。このために日齢とともに腎血流量は徐々に増加する。そして体表面積あたりに換算した腎血流量は出生後30週位までに成人の値に近づくとされている。


糸球体濾過量(GFR)は、妊娠34週以降は妊娠集数と相関して増えていくといわれている。出生後のGFRの増加は生日よりもむしろ妊娠後週数と良く相関するようで、満期産児では体表面積に換算したGFRは出生後2.5-5か月位までに、ほぼ成人に近づく。


近位尿細管におけるp-アミノ馬尿酸の体重あたりで補正した排泄能は新生児期には低く出生後30週位までに成人値に達する。その他の、排泄機能についての発達による変化についてはまだ解明されていないことが多いが、一般的にみると多くの薬物の(体表面積で補正した)尿中への排泄能は、生後6ヶ月から2 歳位までに成人値に近づくということがいえる。これら発達による薬物動態の変化を念頭に置いて、薬物の用量設定やTDMはおこなわねばならない。


また、添付文書についても小児についての記載は乏しいものも多いため、鵜呑みにできないことも多い。例えば、ゲンタマイシンの添付文書を見てみると、用法・用量の項に「小児では1回0.4~0.8mg(力価)/kgを1日2〜3回筋肉注射する」とある一方で、使用上の注意の項には、「低出生体重児、新生児における筋肉内注射での安全性は確立していない」とあり、さらに、「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児における点滴静注で使用しないこと」とされている。


実際には、筋肉内投与を行うことはなく、点滴静注で投与することが世界標準であり、投与量も添付文書に記載された用量より多く、特に低出生体重児では、細かい調整が必要である。


腎排泄の薬の投与量設定にしばしば用いられるクレアチニンクリアランスも小児では正確に測定できないことが多い。また血清クレアチニン値も成人値よりも低く、正常値の幅の中でも、その変化から腎機能の変化を用心深く読み取る注意が必要である。

(以下略)



※ TDMとは

薬学用語解説 公益社団法人日本薬学会
therapeutic drug monitoring、治療薬物モニタリング


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