2016/06/29

『山本一郎』さんは物事の本質をみて批判しているのか その3 自死遺族の訴え

●精神医療に疑問を持つ自死遺族の訴え


(※ 2015年5月18日に行われた全国自死遺族連絡会が主催した「第4回 自死遺族等の権利保護シンポジウム~改めて自死への差別・偏見を考える~」の記録です)


次はご遺族の講演。昨年の6月に、20代のお嬢さんを亡くしたお母様の講演。


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亡くなる前日、お母さんとメールで言い争いになったそうだ。お母さんはすぐに返信をせず、翌日メールを送ろうと考えたそうだ。しかし、なぜか翌朝、妙に胸騒ぎがして連絡をしたところ、返事がない。急いでお嬢さんのアパートに向かうと、部屋の中にはいない。


「出かけたのか」とホッとしたのも束の間。背中に視線を感じる。振り返ると、クローゼットの中で縊死したお嬢さんの姿が・・・。


やはりお母さんは、お嬢さんが通院していた精神科と薬に疑問を持っておられた。精神科に通院した途端、人格が変わったようなことをおっしゃっておらた。


不動産屋さんをはじめ、アパートのオーナーの対応や、請求される金銭について、いろいろ考えさせられた。タブーにされているから、遺族は二重三重に被害にあうようだ。当日配布された資料の中に、野田正彰先生が『中外日報』に投稿した、「社会の非情な考え」があった。私が下手な文章を書き連ねるより、読んだ人の心に響くと思うので一部引用させていただく。


●平成25年(2013年)4月11日 中外日報 論壇 『自死への差別 故人のみならず遺族にも 社会に非情な考え 宗教界の対応望む』 精神病理学者 野田正彰 


どうして死んだのか、民事上の手続きで書き残されたものや証言等から自殺した人への精神鑑定書を作成するよう頼まれたとき、私は故人に向かって語りかける。どんなに無念な思いを残して亡くなっていったことか、私たちの社会はあなたの苦しみを聞きとる力がなかった、私は少しでも貴方の死の意味を知り伝えます、と手を合わせる。


日本社会は毎年3 万人ほどの老若男女を死に追い込んできた。ところが、故人を苦しめただけでなく、亡くなった後、遺族をさらに追い詰める社会であることを知っておられるだろうか。遺族は故人の思い出を整理しながら、遺失の悲哀に耐えていかなければならない。


同時に経済的な困難にも耐えていかなければならない。精神的にも、社会=経済的にも、二つの喪の仕事をやり遂げなければならない遺族に、私たちの社会はさらに非情な仕打ちを加えている。


(中略:家主や不動産会社からの補償要求に、自死遺族が苦しんでいる事例がいくつか紹介される)


借り主が損耗したものを回復するための費用請求は当然のことであるが、それをはるかに超え、お祓い料、過度のリフォーム費、精神的苦痛への慰謝料、近隣への慰謝料、数年にわたる家賃補償金などが請求されている。これらの法令上の裏付けとなっているのは、国土交通省による賃借契約に当たっての重要事項説明書であり、心理的瑕疵は告知しないといけないことになっている。


自殺は心理的瑕疵であり、告知しなければならず、告知すれば大きな損害が生じるというわけだ。国交省の法令は、自殺は心理的瑕疵とするという最高裁の判例によるとされている。


自殺がなぜ心理的瑕疵なのか。病死や孤独死した場合と、どのように違うのか。ここには死を差別し、自殺を穢れた死とする考えが流れている。


遺族がなぜお祓い料を支払わないといけないのか。一体、何をお祓いし、何を清めているのか。家主や不動産業者は借り手が遠のくことを理由に、過剰な補償を求めているが、それを動機づけているのは彼ら自身の差別や偏見ではないのか。


さらに自殺のあった建物を特別に忌み嫌う人々は、その理由を振り返ってみたことがあるのだろうか。病院に近づくのを恐れず、人の亡くなったベッドや病室で治療を受けることを拒んだり、入院費の減額を請求しないのは何故か。


国交省や裁判所は、自殺をなぜ重要な心理的瑕疵と主張するのか。私たちは切腹や特攻隊の自爆死のような権力の側によって強いられた死を美化しながら、私たちの社会の矛盾が強いた死を差別するのだろうか。


多くの宗教者は葬儀にたずさわっている。とりわけ僧侶は徳川時代からの宗門改め制度により、ほとんどが日本人の葬儀で読経などの重要な役割を果たしてきた。1998年度より2011年度まで14年間、毎年3万人を超す自殺者を出してきた日本社会。自殺された葬儀で読経し、遺族と会話をもたれたお坊さまは少なくないと思われる。


これらの亡くなられた人が、なぜ死ななければならなかったのか。そして遺族はどんな社会的、経済的負荷をかけられているか、関心を持っていただきたい。亡くなられた人への悲苦を想うよりも、自殺を穢れた死とする習慣がどれだけ遺族を苦しめているか、各宗教教団で調べ、それはいけないと教えてほしい。各宗門、全日本仏教会がそれを教えるだけでも、大きな力になるだろう。


遺された遺族への重圧は、借家の場合に尽きるわけではない。自宅で死亡し医師に往診してもらっていなかった場合、検死となる。県によっては、診断書を十数万の死体検案料を即金で要求するところもある。葬儀の後、遺族が子育て支援、奨学金申請、債務整理の相談、労災申請の手続き、法的な相談などを求めても、自死遺族と告げるだけで精神保険福祉センターへ行くように言われ、結局うつ病扱いされると訴えている。


私たちの社会は亡くなった人に対してだけでなく、遺族に対してもあまりにも理不尽である。せめて遺族への負担を少しでも減らすことで、故人に「安らかに」と手を合わせられる社会に変わっていこうではないか。



●『うつ』だから死を選ぶのか?


その他に、細川弁護士と和泉弁護士から労災認定や生命保険における差別、家主からの不当な補償要求などの話が続く。


左から斎藤司法書士 大熊弁護士 細川弁護士 和泉弁護士
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自死した方の精神科受診率が高いせいだからだろうか。様々な社会問題を抱え精神的に追い詰められている人達に精神科の受診をすすめても、逆に自死のリスクが高くなるかもしれない、ということが、法律の専門家の間でも認知されているようだ。


そのため、会場からも、そして精神科医である野田先生からも、「(今さら精神科を受診しないほうがいいというけれど)『うつ病』という診断があれば、『労災認定』が受けられる、としてきたのは、あなた方法律家じゃないですか!」という批判が集中した。私もずっとその矛盾に怒りを感じてきた一人だから、その通りだと思っていた。


●『自殺防止キャンペーン』 製薬企業に責任はないのか?


静岡県富士市のキャンペーンのポスターを見ればよくわかると思う。仕事のストレスを抱え、眠れないほど悩んでいたり、疲れているお父さんに一番必要なことはなんなんだろう?薬を服用すれば問題が解決するのだろうか・・・。


静岡県富士市『パパ、ちゃんと寝てる?』のポスター (野田正彰著 『うつに非ず』より引用)

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ガンバッてるお父さん
二週間以上の不眠は『うつ病』かも



でも、野田先生の追求がどんどん厳しくなり、ボランティアで発言してくださった先生達が少し気の毒になってしまう。


会場からも「先ほどから、精神科や向精神薬が問題だと話が出ているのだから、法律の専門家の先生達も、個人個人の問題で闘わないで、製薬企業を相手に闘えばいいじゃないですか!」という発言が出た。その通りだと皆賛成し、大きな拍手が。


最後に全国自死遺族連絡会代表の田中幸子さんの挨拶で終わりになった。「自死する人は一年間で3万人にもなりました。山のようなグラフがあるでしょう?3万人ていうけれど、一人一人の命でできているグラフなんですよ」という言葉がつきささる。


野田先生がおっしゃるように、自殺防止対策が間違っていたのなら、関わってきた方々はきちんと反省してほしい。そうじゃないと、亡くなった方々は報われないと思った。

2016/06/29

『山本一郎』さんは物事の本質をみて批判しているのか その2 自死遺族の訴え

●「『自殺者』と『抗うつ剤の売り上げ』がほぼ同じ時期から増え始めていた!」がトンデモとはいえない理由


山本一郎さんのブログではトンデモな意見かのように紹介されていた。まだこんなことをいう方がいるのか、と悲しくなったので、昨年出かけた議員会館で行われた自死遺族の集会の記事を書きなおしてUPしておこう。この集会では、自死遺族だけでなく、精神科医の野田正彰医師をはじめ、弁護士や司法書士が国の自殺防止対策が間違っていたとおっしゃっていた。野田医師は精神医療の改善に熱心に取り組んでこられた精神科医のお一人だ。野田医師だけでなく、弁護士や司法書士が相談者に「精神科をすすめなければよかった」と言っているのだから、トンデモな意見とは言えないはず。


左から斎藤司法書士 大熊弁護士 細川弁護士 和泉弁護士
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●改善に向けて努力してくれた厚生労働省


ここに書いたことは、国もよくわかっていて、今は私達よりも、国の方がこの問題に熱心に取り組んでくれている。先日、精神医療被害連絡会の中川聡さんと話して、はじめて気づいた。今まで厚労省とナショナルセンターを批判してばかりだったけれど、山本一郎さんの炎上事件のせいで、これまでのことを振り返った。厚労省は、私達の訴えをよくみていて、改善に向けて努力してくれた。今は、一番お礼を言うべき人達なのかもしれない。


衆議院第1議員会館

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全国自死遺族連絡会

第4回 自死遺族等の権利保護シンポジウム~改めて自死への差別・偏見を考える~

【日時】2015年5月18日(月)12時~15時
【場所】衆議院第1議員会館 多目的ホール
【プログラム】

第1部 12時~13時 人の死をいたぶる社会 野田正彰先生
13時~13時20分 自死遺族の体験から
休憩 10分
第2部 13時30分~15時 法律家の立場から 現状と差別・偏見について

和泉弁護士  大熊弁護士  斎藤司法書士  細川弁護士

主催 自死遺族等の権利保護研究会
共催 全国自死遺族連絡会



●自死遺族の訴え 『自死遺族を苦しめる行政の対応を見直してください』


自死遺族連絡会の代表の田中幸子さんは精神医療に丸投げされてきた「こころのケア」に反対の立場で、国の審議会の構成員だ。当日、入り口で配布される資料の中に、過去に配布されたチラシが入っていた。『遺された人の苦痛を和らげるという前に自死遺族を苦しめる行政の対応を見直してください』とタイトルがついている。


チラシを読んで驚いた。「超低出生体重児(未熟児)の育児支援と同じ!」と思ったからだ。私が困っていたのは、超低出生体重児を育てる上で正しい情報がないことと、教育支援がないことだった。それなに、相談にいくとなぜか「精神科」で治療となってしまうからだ。いくつか抜粋する。


「自死遺族は精神福祉保健センターに行ってください」

子育て支援を求めても、奨学金申請がしたくても、債務整理の相談がしたくても、労災申請の手続きが知りたくても、法的な相談がしたくても、「自死遺族」というだけで、「精神福祉保健センター」へ送られてしまうのは何故でしょうか。


心理カウンセラーによる傾聴では具体的な問題解決に結びつきません。「自死遺族=精神障害者」ではありません。心のケアよりも先に、普通の行政相談をさせてください。心のケアばかりに偏った自死遺族支援を見直してください。


「自死遺族だけの集まりは危険である」

自死遺族のわかちあいの会の運営について、「専門家」を自称する方々がおっしゃっていることです。自死遺族の多くは普通に社会生活を送っている普通の市民です。


全国で活動をしている自死遺族のセルフヘルプグループは今年既に20を超えています。偏見と誤解を生む根拠のない発言をやめてください。



シンポジウムがはじまる。


●野田正彰医師の基調講演


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一部は、山口県光市母子殺害事件の精神鑑定などで有名な、精神科医の野田正彰医師の基調講演とご遺族のお話。


野田先生は、自殺の原因を『うつ』だとする現在の精神医療の考え方には、否定的な立場の精神科医として知られている。先生の活動の原点は、『サラ金』による自殺問題だったそうだ。


借金に追われ、精神的に追い詰められている方は、不眠、食欲不振、憂鬱の気持ちを抱えている。野田先生はとにかく一時的に病院で休ませた。その一方で、家族には借金の整理をするよう、説得したそうだ。単に休ませ、薬を投与するだけでは借金は膨らむ一方だ。


借金の事例はわかりやすい。一口に自死といっても、死を選ぶ人はそれぞれが深刻な問題を抱えている。抱えている問題を軽くするなり、解消しなければ、『うつ』の状態からは抜け出せない。


●自殺者を大幅に減らした、新潟県東頸城松之山町の自殺防止対策


講演の中で、野田先生が『すぐれた自殺研究』として、新潟県東頸城松之山町での取り組みを紹介してくださった。


(※ 野田先生のご著書「うつに非ず うつ病の真実と精神医療の罪」を参考にまとめました)


新潟県東頸城松之山町(現・十日町市)で行われた取り組みで、後に新潟大学医学部教授となった後藤雅博氏ら国立療養助所犀潟病院(現・国立病院機構さいがた病院)の精神科医と東洋大学の社会学者が1980年代後半から1990年代後半にかけて行った。


日本の高齢者の自殺率は一環して高いことが知られている。都市部よりも農村部、特に雪の多い東北や新潟で多いことがわかっていた。松之山町も雪深く、お年寄りの自殺率が高く、1973年から1984年までの12年間における65歳以上の自殺率は222.7であった。1984年382.1、全国の高齢者平均の47.8の自殺率に比べて8倍も高かった。


この事実に注目した研究チームは、町の保健師とともに調査をはじめる。当時、高齢者の自殺が多い理由は、農村部では子ども達が都市へでていき、高齢者は生きる意欲を失い亡くなっていくと考えられていた。


しかし実際は、独居世帯には一人もおらず、二世代、三世代が一緒にくらす家族に、自死が多いことがわかった。息子や孫などと一緒に住むお年寄りが、脳梗塞なで体が不自由になると「迷惑をかけたくない」と縊死をするのだ。裏山の木にヒモをかけて縊死するため、「瓢簞病」という隠語さえあったという。


そこで研究チームが目指したのは、文化を変えることだった。


「働けないのなら死んだ方がいい」「子ども達に迷惑をかけたくない」という価値観を変えるため、集落全体に働きかけた。老人クラブをつくって連日食事会をひらき、歌って騒ぎ、温泉へのバス旅行を企画した。「楽しく生きる」という価値観に変えるためだ。同時に、保健師がふさぎがちな人を、見つけ、集中的に働きかけるという取り組みを行った。その結果、自殺者はいっきに減少した。


この事例は精神科医によって紹介されることもある。だが、自殺について論文を書く精神科医たちは、医療の視点でしかものを見ないために、「保健師たちが訪問して自殺リスクが高い人を見つけたから」「うつ病対策がすすんだから自殺が減った」などと書くのだ。彼らが、地域の文化を変えたことは理解していない。


松之山町の事例をそのまま模倣すればいいというわけでもない。後藤医師や東洋大学社会学の研究チームは個別の地域で何が問題であるかを実証的に捉えたうえで、見いだした課題に取り組んだ結果、自殺が減ったのである。ところがこのような取り組みを髙く評価する力が日本の社会にはなかった。



●自殺者を増やした静岡県富士市の「富士モデル」


次に、自殺対策が、逆に自殺を増やしてしまった失敗例として、有名な静岡県富士市と、大津市の取り組みが紹介された。再び、野田先生の本から引用する。


静岡県富士市は、「富士モデル」と呼ばれ、県と市、市医師会、富士労働基準監督署が共同して「パパちゃんと眠れてる?」という呼びかけを。リーフレットポスター、路線バスの広告、地場産業のトイレットペーパーで繰り広げた。薬局も加わった。睡眠薬を買いにくる客に、リーフレットを配ったのだ。

(略)

医師で労働衛生コンサルタントの櫻澤博文氏が、2011年5月の日本精神神経学会総会におけるシンポジウムで(「富士モデル」を)厳しく批判した。


櫻澤氏は自殺へ至る要因分析を経て抽出された対策ではなく、科学的な裏付けもなかったと指摘する。「不眠」を根拠に精神科医による加療をさせたことが、自殺者増につながったのではないかと批判した。


加えていかに自殺者増という不都合なデータを隠したのかも指摘している。


2008年に富士市の自殺者は前年比1.37倍増になったことが、翌09年7月の「一般医から精神科医への紹介システム」運営委員会で報告されていたにもかかわらず、そのまま富士モデルは続けられた。問題を検討するどころか代わりに同年9月の「自殺対策シンポジウムinしずおか」では富士市の自殺者は「不明」として公表せず、静岡県のホームページ上では削除されていたという。


結果を隠し、検証もしないまま、富士モデル、つまり睡眠薬キャンペーンと一般開業医(かかりつけ医)、精神科医の連携運動は、内閣府の自殺対策推進室や各字自体の自殺対策として行われ続けてきた。


富士モデルを見習って、09 年から滋賀県大津市が内閣府の地域自殺対策緊急強化基金を使い、「こころやからだの不調」なるものを精神科医につなぐ、キャンペーンを行った。しかしはじめた翌年の自殺者は前年比15人増の81人となった。

(中略)

富士モデルと共に自殺者が増えているという事実が知られてくると、富士モデルはまるでなかったかのように自殺対策のなかで言及されなくなった。


だが、施策によって引き起こされた事態には責任がある。亡くなった人への責任もある。何が問題であったのか、キャンペーンを行ってきた者たち、内閣府自殺対策推進室やライフリンクは答えなければならない。


眠れないとか不調ということから不安にさせて、それを「うつ」につなげたことをふりかえらなければならない。自分たちの都合の悪い結果が出ると、それを検討しようとはぜず、隠す。社会の病理はこのようなことから拡大していく。



続く



2016/06/27

『山本一郎』さんは物事の本質をみて批判しているのか 

●面白おかしく喧伝しているのは誰なのか


『山本一郎』さんというブロガーが医療ジャーナリストの伊藤隼也さんのご著書『うつをなおしたければ医者を疑え!』を批判し騒動になっている。(アドレスは掲載しません)


ブログを読んでなんともいえない嫌な気持ちになる。


山本さんは伊藤さんと同じ『とくダネ!』 に出演している。それなのに、ネットの匿名のツイートを根拠に、ここまで批判することが、私には理解できない。はっきり言って、騒動をつくっているのは『山本一郎』さんのほうじゃないのだろうか?この本が世に出たきっかけは、私にあると思うので、感想を書いておこう。


(※ 出版までの経緯は、こちらに書いてあります)

『報道』と『インターネット』の力 マイナスの経験をプラスに変える


山本さんのブログをのぞいてみたら、 『空のとびかた』プロジェクト代表人のHyogo Kurumi さんという当時者の方がコメントをしていらっしゃる。まるで私が書いたのかと思うような意見なので私は簡単に。私も記事を読んで真っ先に思ったのは、グラビア写真家だという過去を強調し、揶揄するような文章の書き出しだった。批判というよりも偏りや悪意を感じる。


そして、山本さんが根拠だと紹介している、ツイッターのアカウントの方々には同じように困惑していた。被害を口にする人達を「反医療」とか「カルト」とでも言いたいのだろうか?


●多剤大量処方は規制されベゲタミンは販売中止 ベンゾジアゼピン系薬の常用量依存も社会に認知された


先日、私に処方されたベゲタミンが販売中止になったそうだ。


「飲む拘束衣」販売中止へ 読売新聞 佐藤記者の「新・精神医療ルネサンス」 2016年6月30日


多罪大量処方に歯止めがかかったのも、ベンゾジアゼピンの常用量依存が社会に認知されたのも、伊藤さんの力なくしてはなし得なかっただろう。山本さんはブロガーとして有名だけれど、ブログを書くときに情報収集をしないのだろうか?こちらの動画は、山本さんも出演している『とくダネ!』で放送された特集がきっかけで誕生した。すでに視聴回数は338,516 回。




うつと診断され、一日34錠もの薬を処方されていたわたしの体験をもとに制作した動画です。最近になって、薬をたくさん出す治療が、まだ行われていることを知りました。(医療ジャーナリスト 伊藤隼也氏 取材・出演・監修 フジテレビ「とくダネ!とくスペ 抗精神薬大量多剤処方」)
薬で、人生の一部をつぶされた人間としては、早急に多剤大量処方がなくなることを望みます。2012/1/14



●多剤大量処方の被害者が登壇者に


つくったのは吉村亜希子さんという女性だ。私は実際にお目にかかったこともある。吉村さんは、今年の第8回日本不安症学会学術大会のシンポジウムで登壇者に撰ばれている。登壇者の中には、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦医師もいらっしゃる。松本医師といえば、薬物依存症研究の第一人者であり、思春期の子どもを持つ親の間で、圧倒的に支持される精神科医だ。


第8回日本不安症学会学術大会  シンポジウム7 2016年2月7日(日)10:30~12:00 B会場(第一講義室)

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もし私達が本当に反医療とか、カルトのような活動をしていたら、精神科医も被害者を参加させようと思わないだろう。精神科医にも「このままではいけない」という危機感があるから参加させたのだろう。


そういえば、松本医師は、私も出演した(声だけです)報道特集(2012年4月28日放送 『精神薬大量処方の暗部』)でコメントをして下さった。2012年といえば、まだ精神医療の被害がテレビでは扱われていない頃だから、バッシングは今より激しかった。そういう空気があったにも関わらず、松本医師をはじめ、数名の医師が、多剤大量処方を批判して下さった。あの時も驚いたけれど、今は、被害者と一緒に登壇するようになるなんて。

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せっかく時間をかけて、コツコツ改善のために地道に活動してきたのに。それこそ、松本医師のような良識派と呼ばれる精神科医の先生方と一緒に、二人三脚で改善してきたようなものなのに。山本さんのブログの記事のために、また振り出しに戻されたような気分・・・。


先ほど、本でも取り上げられている、精神医療被害連絡会の中川聡さんとお話した。伊藤さんの本は、伊藤さん一人でつくったわけじゃない。私達被害者や遺族も取材や制作に協力している。だから、このまま放置していいのか、正式に抗議をしないといけないんじゃないのか相談した。


亡くなった奥様の名誉のためにも、私は声をあげて欲しいとお願いした。


2016/06/22

『牧本事件』と国の戦略 その4

●『研究不正改訂案』というワード文書と黒岩祐治神奈川県知事


ところで、先日見つけた『研究不正改訂案』という文書。

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冒頭にこのようにある。




1) 日本版NIHの強化
・ 安倍総理主導で、メッセージを出す。
 「科学技術は、我が国の成長戦略の根幹。公正な競争が必要であり、不正は許さない」

・ 論文不正に関する有識者会議を立ち上げる。
世論が盛り上がれば、調査・処罰権限を有する組織の立ち上げ(米国の政府機関に倣う。研究公正局(ORI)といいます)も念頭に置く。





驚くことに『牧本事件』について、かなり詳しく記してある。



・ 厚労省: 一部研究者と技官の癒着
 今年二月、国立がん研究センターの牧本敦・小児科医長が科研費の流用で懲戒解雇されました。複数の愛人や家族に家電製品を買っていました。国がんを巻き込む組織的な問題の筈ですが、厚労省・国がんは第三者委員会も設置せず、刑事告発もしていません。牧本医師は流用した金を返し、普通に働いています。

 彼は、医師主導治験として公的研究費も貰っています。この治験を用いて、滋賀県の大原薬品が承認申請予定です。両者は接待漬けです。捜査二課は、ここで立件しようと考えていました。今年の春です。最近の状況は知りません。警視庁記者クラブに出入りする知人の話では、「検察が二の足を踏んでいる」とか。



誰が、何のために、作成したのだろうとプロパティーを調べたら修正者が『KAMI』と記入されていた。


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●黒岩祐治神奈川県知事は健康・医療戦略参与会合のメンバー


先日、ネットである情報をみつけ少々驚く。あの、黒岩祐治神奈川県知事健康・医療戦略推進本部に政策的助言を与える健康・医療戦略参与会合のメンバーだそうだ。ということは、『研究不正改訂案』は、本当に、安倍総理に向けられ作成されたのかもしれない。


『牧本事件』が『事件』になったのは、医療や健康が成長産業と位置づけられたことと無関係ではないだろう。私が思うよりも大きな力が動いていたようだ。


◆  ◆  ◆

安倍内閣の健康・医療戦略室トップが施策の実行状況を報告 日経デジタルヘルス 2015/07/27

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(略)

挨拶に立つ神奈川県知事の黒岩祐治氏。黒岩氏は健康・医療戦略推進本部に政策的助言を与える健康・医療戦略参与会合のメンバーでもある

(中略)

「健康・医療戦略の実行状況と今後の取組方針2015」は、2014年7月22日に閣議決定した「健康・医療戦略」の実行状況をフォローアップするとともに、主要な施策についての方針を取りまとめたものとなる。施策には「医療分野の研究開発」「新産業の創出」「医療のICT化」などがある。

このうち医療分野の研究開発の施策としては、「日本医療研究開発機構」が2015年4月に発足・始動した。同機構は医療分野の研究開発を戦略的に推進していくための組織であり、医療分野の研究開発予算は基礎から実用化まで同機構に集約されることになる(関連記事「日本版NIHで医療研究費のワンストップサービスを実現」)。このほか、薬事法(医薬品医療機器等法)の改正やPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)の体制強化を通じて、研究開発の成果を実用化に迅速に結び付ける施策も実行してきたという。


◆  ◆  ◆
2016/06/22

『牧本事件』と国の戦略 その3

●『お手盛り』と捉えるのか、『小児がんの子ども達のため』と捉えるのか


さて、前回紹介した研究費流用問題では、科研費の使い方が『お手盛り』と批判されていた。


◆  ◆  ◆

2013.3 研究費流用問題_19I3.docx
http://ow.ly/d/19I3

2010年度の同事業では、63課題のうち、29課題で国がん関係者が主任研究者を務めた。総額32億8千万円の予算のうち、19億7千万円(60%)が彼らに交付されている。

なぜ、こんなお手盛りになるのだろうか厚労科研が厚労省のアリバイとして利用されることが多いからだ。医師不足やドラッグラグなどがメディアで話題になると、厚労省は対策を取らざるをえない。多くの場合、予算を増やし、研究班を立ち上げる。その際、班長は、国がんなど厚労省関連の施設から選出されることが多い。

厚労省の意向を忖度して動くからだ。現に、牧本医師が主任研究者として獲得した厚労科研は、臨床試験の基盤整備(2002年)、医師主導治験(2007年)、適応外医薬品の臨床導入(2008年)など、行政課題と関係したものばかりだ。

そもそも、がん難民やドラッグラグの一因は厚労省の失敗にある。ところが、問題が社会問題化すれば、彼らの責任は追及されることなく、厚労省と、その下部組織である国がんが焼け太る構造になっている。



◆  ◆  ◆

そこで、厚生労働省の公式サイトに残る記録をあたる。牧本医師がはじめて主任研究者に撰ばれたのは、平成14年(2002年)度だろうか。

◆  ◆  ◆


平成14年(2002年)度 厚生労働科学研究費補助金の概要
http://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/gaiyo02/index.html

2. 各研究事業の概要
http://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/gaiyo02/2.html

6 効果的医療技術の確立推進臨床研究経費

がん、心筋梗塞、脳卒中、痴呆、小児疾患等について、より効果的な保健医療技術の確立を目指した臨床研究を推進し、根拠に基づく医療の推進を図ることを目的とする研究

効果的医療技術の確立推進臨床研究事業(小児疾患分野)採択課題一覧
http://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/gaiyo02/kenkyu/14.html


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厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/05/s0509-6c11.html

研究事業の目的

根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine)の推進を図るため、がん、心筋梗塞・脳卒中等の生活習慣病、痴呆・骨折、小児疾患に関して、より効果的な保健医療技術の確立を目指し、研究体制の整備を図りつつ、日本人の特性や小児における安全性に留意した質の高い大規模な臨床研究を実施することを目的とする。

<平成14年度新規採択方針>

がん、心筋梗塞、脳卒中、その他の生活習慣病、小児疾患について、より効果的かつ効率的な予防、診断、治療等を確立するための質の高い臨床研究


◆  ◆  ◆

上医師の批判は、一般論としては、間違っていないと思う。研究者なら、同様の疑問や不満を感じることもあるだろう。また、私自身が、厚生労働省の「こころの健康科学研究事業」のせいで酷い目にあった。「アリバイ工作」という批判は必ずしも、的外れではないだろう。しかしそんな私でも、小児がんの子どものための事業が「お手盛り」だと、どうしても思えない。むしろ、国も本腰を入れて、小児がんの子ども達のために、がんばろうとしているようにみえる。


こちらは前回紹介した、特定非営利活動法人サクセスこども総合基金(SUCCESS)アピールポイント。同じ景色をみていても、とらえ方が全く違う。


◆  ◆  ◆

特定非営利活動法人サクセスこども総合基金 SUCCESS CANPAN

患者家族、市民、多様な実務家・専門家、医療者など、マルチステークホルダーの協働により、こどものがんの治療環境改善に取り組んできました。

「より多くの患者とその家族が、十分な診断と治療を受けることができる社会システムの構築」が弊会の目的であり、そのために具体的な治療開発を進める団体であることがアピールポイントです。

治療開発は医師だけでも出来ません。製薬会社だけも出来ません。患者だけでも出来ません。弊会では多様なステークホルダーの力を結集し、まさに市民総力戦で治療を開発することにチャレンジしてきました。


◆  ◆  ◆


子どもの病気は、患者さんの数が限られる。製薬企業は利益にならないから、開発をしたがらない。予算も少ない。あれもこれも足りないのだ。だから利権やお手盛りというよりも、国も一緒になって、皆で困難を乗り越えていこうよ、ということだったんじゃないのだろうか?私のイメージは、昨年の年末大ヒットしたTBSのドラマ『下町ロケット』のような感じだ。

(※ 『下町ロケット』の第7話から最終話までは『臨床試験』がテーマです。心臓病の子ども達のためにがんばる医師と、お嬢さんを心臓病で亡くした中小企業の経営者が登場します)



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◆  ◆  ◆

臨床試験とは 特定非営利活動法人サクセスこども総合基金(SUCCESS)


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小児がんの分野においてはそれぞれの病気の患者数がきわめて少ないため、我が国だけで第Ⅲ相試験を行うことは困難です。このためSUCCESSでは、医学常識を変えるような大規模な臨床試験は欧米に任せ、我が国では第Ⅰ相試験や第Ⅱ相試験を数多く行って、小児がんに使える薬剤を増やすことに貢献すべきと考えています。このような理由から、SUCCESS治療開発支援センターでは医学研究者が臨床試験を行うために必要なデータ登録や解析などの業務を受託し、事務支援を行っています。

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続く


2016/06/21

『牧本事件』と国の戦略 その2

●牧本医師が撰ばれた理由


そういえば、上昌広医師は、政治的な後ろ盾があるから、研究業績が乏しい牧本医師が億という巨額の研究費を手にできたんだ、と批判していらした。


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2013.3 研究費流用問題_19I3.docx
http://ow.ly/d/19I3

牧本医師は、垣添元総長が「間接的」に抜擢したようなものだ。垣添氏は1997年、徳島大学小児科講師を「大抜擢」し、国がんに幹細胞療法室を立ち上げた(この医師は嘉山孝正・前理事長時代に依願退職。嘉山改革の象徴的人事と言わた)。牧本医師は、この医師の徳島大の医局の後輩だ。米国のMDアンダーソンがんセンター留学中に、国がんに呼ばれた。地元徳島では「大抜擢」が話題となった。その後、垣添氏の支援のもと、30歳代半ばで厚労省の研究班の班長となる。当時、「史上、最年少」と言われた。牧本医師は、こうやって厚労科研を獲得していく。研究業績が乏しい牧本医師が恒常的に研究費を獲得できたのは、強い後ろ盾がいたからだ。


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しかし私は秦氏の経歴を拝見し違和感を覚える。上医師の解説では説明がつかないというか、しっくりこないのだ。「秦順一の中学生の知識でわかる 私たちの身体の不思議」というWebサイトに、秦氏の自己紹介が掲載されている。生い立ちが書かれた文章を読んだ時に違和感がどこからくるのかわかる気がした。


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秦順一の中学生の知識でわかる 私たちの身体の不思議 自己紹介


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またスウェーデンには大学の医学部が七つありますが、学生の平均年齢は四〇歳程度です。これは医学部に入学する資格の一つに、会社などに勤務して社会生活を送った経験があることが含まれているためで、医者になるためには通常の大学を出て就業し、社会人としての経験を積んでからでないと、医学部への入学もできないわけです。

この資格制度には、若者が医学部に入ることを阻害しているという意見もありましたが、客観的に見れば、やはり非常に合理的な制度だと思います。確かに長時間の外科的手術を行う場合など、若い方が体力的に有利な分野もありますが、患者さんが老若男女それぞれいて、性格も病気も症状もそれぞれ違うのですから、医者にも若い人、熟年の人、さまざまな経験を積んだ人間がいるべきです。医学には臨床も研究もあり、また病気そのものの研究ばかりでなく疫学的な研究も、その病気を俯瞰的に考えるためにはとても大切なのですから。

留学したカロリンスカ研究所病理学部門では、それまで日本でやっていた研究とは少し分野の異なる、「免疫病理学」という分野の研究に加わりました。当時は、リンパ球には色々な種類があるのだ、ということが解明され始めたところで、実際に行っていたのは電子顕微鏡を使ってリンパ球の微細構造を形態学的に解析する仕事です。


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「研究に妥協は許さない」という厳しさが伝わってくるのだ。秦氏のような研究者が、社会活動とはいえ、実力のない医師と一緒に活動するだろうか?


私は牧本医師が国立がんセンターに抜擢された理由は、専門にあったのではないかと推察する。患者さんのご家族が書いてくださったように固形腫瘍が専門の小児科医だったからーーーーー


実績がないというけれど、若い才能を見いだし育てることもまた、大切な使命だと思う。そこで、厚生労働省のサイトで、牧本医師が獲得した研究費について調べてみることにした。


続く




2016/06/21

『牧本事件』と国の戦略 その1

●『牧本事件』の背景を探る


前回は、小児がんの子ども達の人権について考えた。


患者の人権を考える時に、忘れてはならないのは、医療者の人権だ。私達の人権を考えて欲しいと願うなら、医療者の人権も同じように考えていかないといけない。今回は牧本敦医師の名誉の回復や人権を考える時に、何が必要なのかを考えていく。


私がこれまでしてきたのは『牧本事件』の報道の検証。何が正しくて、何が間違っているのかを、はっきりさせていくこと。今すぐに名誉の回復は難しくても、未来は変えられる。小さな事実をコツコツ積み上げていくことで、きっと、違う未来が待っているはずだ。


はじめに、コメントを下さった先生が臨床試験について書いて下さったので、牧本敦医師が関わったNPO法人や患者会などを調べてみた。前回紹介させていただいた『NPO法人エスビューロー』は小児がんでお子さんを亡くしたお母様がつくった団体。


●『特定非営利活動法人サクセスこども総合基金 SUCCESS』 創設者 秦順一氏は国立成育医療研究センター名誉総長


もう1つ、気になった団体があった。レモネードスタンドで有名な『特定非営利活動法人サクセスこども総合基金 SUCCESS』(※ 情報提供がありました。2015年 『NPO法人 小児がん治療開発サポート SUCCESS』から名称が変更されたそうです)


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特定非営利活動法人サクセスこども総合基金 SUCCESS

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SUCCESSは、若い世代のがんに関して、患者さんとご家族の支援、新しい診断・治療方法の開発などを展開する目的で設立されました。その後、がん以外の難病や、様々な困難と向き合う青少年のサポートの取り組みも進めています。

本法人の特徴は、患者家族、市民、医療関係者、ビジネスパーソン、行政の各界で働いている方が会員や役員となっていることです。異なる専門性をもった人材によって構成されていることで、狭義の「医療」「福祉」を超えて、若い世代を取り巻く多くの問題点を市民に知らせ、支援を包括的に幅広く展開できると考えています。


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こちらの日本財団が提供する公益事業コミュニティサイトCANPANは、NPO法人の事業内容などを検索できる。法人の代表者役員をはじめ、定款事業報告書収支報告書などをみることができる便利なサイトだ。さっそく『特定非営利活動法人サクセスこども総合基金 SUCCESS』を調べる。


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特定非営利活動法人サクセスこども総合基金 SUCCESS CANPAN

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代表者役職 理事長

代表者兼職 公益財団法人実験動物中央研究所所長、国立成育医療研究センター名誉総長、慶応義塾大学名誉教授

代表者氏名 秦順一



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SUCCESSの情報をみて、私が驚いたのは、理事長の秦順一氏の経歴だった。なぜなら、私達がお世話になった病院の名誉総長と書いてあるから。


●法人格取得年月日 2007年7月12日


法人格取得年月日を確かめると2007年7月12日。国立成育医療センターは息子が生まれた2002年、国立大蔵病院と国立小児病院を統合し、国立成育医療センターとして新規設立された。その後、2010年4月に独立行政法人へ移行し、国立成育医療研究センターとなった。


成育は、『国立』と名前がつくくらいだ。もちろん、総長先生や院長先生は、国の政策などに深く関与しているのだろう。秦氏の経歴を拝見すると、病理学がご専門であることがわかる。臨床一筋ではないので、少々意外な感じがした。けれど、一方で、匿名でコメントをよせてくださった先生の言葉が蘇ってくる。


誰だって副作用の強い化学療法などしたくありません。でも、それしか方法がないとしたら、無治療を選ばないのであればそれしかないのです。


設立されたばかりの成育は希望に満ち溢れ光り輝いていた。あの頃国は、新たな治療法や治療薬の開発を真剣に目指そうとしていたのかもしれない。秦先生が総長先生だったということは、そういったメッセージが込められているのかもしれないーーーーーそんなことを考えた。


続く

2016/06/17

牧本医師と『小児がん患児支援 NPO法人エスビューロー』 インクルーシブ 「仲間はずれにしない」という考え方 その2

●私達がなぜ、新たな治療薬・治療法の開発を目指したのか 小児がんの子供達は、元々の治療法が限られているので選ぶことができない


ところで非公開のコメントには、重要なことが書かれていた。サルコーマをはじめとする大人の稀少がんと、小児がんとの違いだ。


私は小児がんは稀少がんの1つ、ということをつい最近知ったばかり。牧本医師の講演を文字におこしてショックを受けた。小児がんはドラマなどではよくとりあげられるし、「治る」というイメージがあるから考えもしなかった。しかし、小児がんは、大人の稀少がんよりも、さらに厳しい現状があるのだそうだ。


小児がんのお子さんはそもそも「治療法」がほとんど選べないという。


●子どもの患者の『自己決定権』 増子孝徳弁護士のご発言


ここで思い出したのは、厚生労働省の公式サイトに残されている、議事録だった。


『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その1


私が議事録を読んで、小児がんの治療に関わる医師が立派だと思ったのは、子どもの患者の「自己決定権」を真剣に考えているからだった。もちろん、コメントを下さった先生もそのお一人。子どもの権利に対する意識が、私が喧嘩した児童精神科医と決定的に違う。確かに先生のおっしゃる通りだと思った。治療の決断をするのは親であっても、子ども達の「自己決定権」のためにも、せめて、治療法に選択肢を増やしてあげたい。だから「新しい治療薬・治療法の開発を目指そう」だったのだ。


(※第2回小児がん専門委員会議事録から、増子孝徳参考人のご発言を一部引用します。増子氏は、日弁連の人権擁護委員会の医療部会に所属し、人権擁護活動をしていらした弁護士で、尚かつ、お子さんが小児がんの経験者だそうです)


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2011年2月9日 第2回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室

○議題
【参考人意見聴取】
1 小児がん緩和ケアのシステムについて
2 医療における子どもの権利等について

【協議事項】
  小児がんの診療体制について


○議事
出席委員:檜山委員長、天野委員、小俣専門委員、原専門委員、堀部専門委員、牧本専門委員、馬上専門委員、森専門委員、多田羅参考人、増子参考人



増子参考人

医療における子供の権利もしくは人権ということで、あえて申し上げなければならないのには一つ理由がございまして。皆さん患者の権利とかあるいは子供の権利というふうに切り分けますと、それぞれきちっとした専門家といいますか、日ごろ活動している方がたくさんいらしていろいろな主張がなされているわけでございます。


しかしながら、これが子供さんであるということになりますとちょっと状況が変わってくると。それはなぜかといいますと、まず患者の権利といいますのはいろいろありますけれども、メインはやはり自己決定権を中心としたものでございます。ところが、子供であるからというようなことが理由となって、説明もいいかげんであったり、ましてやご本人さんの決定を得るというふうなことがなかなかなされないという傾向がございます。


それから、子供ということですと、ご案内のように子どもの権利条約というのがありまして、成長発達権を中心としたもろもろの子供の権利というものが定めされておりますけれども。再三指摘されているように、入院中であるから、あるいは患者なんだから、病気なんだからということでいろいろな制約があるわけでございます。


そういった中で、遊びへの参加ですとか、教育への参加というものが顕著に制限されていると言っていいかと思います。こういったことはしばしば問題として指摘されながらも、これが人権であるという認識にまでなかなか至らないものですから、ついつい後退していくという傾向があろうかと思います。


そこで、この二つをきちんと見据えて、医療を受ける子供、つまり患者でありかつ子供であるという、こういう二重に弱い立場に着目をして、医療における子供の人権もしくは権利という考え方をきちっと認識する必要があるだろうというふうに思っております。



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●亡くなった方は私達の中で今も生き続けている


改めて議事録を振り返ると、エスビューローの活動は、議事録で議論されていたようなことを、実現するためにあるんだと思う。もう1つ、気づいたことがある。エスビューローの代表者は、お子さんを亡くされた方だそうだ。ということは「亡くなった方のために」はじめたこのblogの趣旨にも通じている。


先日、blogについてある方に質問された。どうして「天国」というタイトルなのか不思議に思ったそうだ。「もともと周産期医療で亡くなった方にはじめた募金活動が原点だから」そう答えた。その後に起きた「アルジェリア人質事件」で父の友人が亡くなったこともある。亡くなった方に「あなたのことを忘れていません」と届くように「天国」という言葉を入れたのだ。


亡くなった方は強いと思う。大切な人を失うという喪失体験は悲しいけれど、いつか生きる原動力に変わるかもしれない。亡くなっても、私達の中で生き続けているんだと思う。
2016/06/17

牧本医師と『小児がん患児支援 NPO法人エスビューロー』 インクルーシブ 「仲間はずれにしない」という考え方 その1

●バッシングと非公開のコメント


先日、ある方が心配してメールを送ってくれた。「ご家族のプライバシーを晒して、批判している人がいる」と書かれていた。私が匿名なのは、名前を出して活動する必要がなかったから。調べればどこの誰だかすぐにわかると思う。


批判はこれまでにも沢山あって、(一度もあったことがない医師に)「助けてやったのに文句をいうな」などの言葉からはじまり「あなたのお子さんには学習障害がある」など、たくさん頂戴した。朝起きたら首が動かなくなり、痛み止めを処方してもらったこともある。それでも少々の批判はあたり前。むしろ健全なことだと考えてきた。


だけど、批判が私じゃなくて、家族なのか、と少々落ち込んでいた・・・。ため息をついて、届いたメールに目を通した。また批判のメールかな、と思って開く。


●牧本医師を心配する言葉


届いたのは、批判のメールではなかった。牧本敦医師とお仕事をしていた方が、「あなたのblogを読みました」とコメントを寄せて下さった。非公開のコメントなので、紹介できないけれど、牧本医師を心配する言葉が並んでいた。


こうやって、批判と賛同の声が同時に起こるということは、きっと良い兆候なんだろう。社会に問題提起する時、人の心を揺さぶらなければ注目もされない。


●牧本医師の関わった患者会・NPO法人


コメントは、小児がんの臨床試験について書かれていた。文章の端々から、ただ者ではないオーラを感じる。気になったので、メールに書かれた情報を頼りに調べてみる。


一緒に活動していらした方だということで、牧本医師が関わっていらした患者会やNPO法人などを調べる。代表的な団体は次の3つだ。1つ目は『NPO法人 小児がん治療開発サポート SUCCESS』。レモネードスタンドの活動で知られる団体だ。次に、お子さんを小児がんで亡くされたお母様が代表理事をつとめていらっしゃる『小児がん患児支援 NPO法人エスビューロー』。そして3つ目が『日本に「サルコーマセンターを設立する会」』だ。


●エスビューローが大切にする『インクルーシブ』という考え方


私が注目したのは2番目の『小児がん患児支援 NPO法人エスビューロー』という団体だ。役員のリストに、牧本医師のお名前を見つけたからだ。


小児がん患児支援 NPO法人エスビューロー スタッフ紹介

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コメントを寄せて下さった方が、エスビューローに関係するかわからないけれど、公開されているパンフレットに「インクルーシブ」という言葉を見つけた。「インクルーシブ」は、すべてを含むという意味。亡くなった子ども達のことも忘れないし、今、闘病中のお子さん、治療後に晩期合併症を抱えて生きている方、互が対等で信頼できる、そういった社会をめざし活動していらしゃるのだそう。


小児がん患児・家族サポート 非特定営利法人 エスビューロー

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なるほど「仲間はずれにしない」という考えがはじめにあるから、牧本医師の肩書きに『元』と記載されているのだろうか。エスビューローのサイトを拝見すると、「インクルーシブ」って良い考え方だなぁと思う。もっともっと日本社会に浸透して欲しいと思う。本当は、小児がんだけじゃなくて、副題にある重度のアレルギー、超低出生体重児にも同様の問題がある。すべての病気そして障害を抱えて生きる子ども達に必要だと思う。


続く

2016/06/14

週刊金曜日 「子宮頸がん予防ワクチンを推進する『Wedge』に怒りの声続出」 を読んで  その2

村中氏の記事が紹介された後、関係者の証言が並ぶ。あまりの食い違いに村中氏を「ジャーナリスト」と呼んでいいのか疑ってしまう。しかも事実とは異なる情報が、ネットで次々拡散されていくなんて。もし自分だったらと思うと、怖くなる。私が『牧本事件』と似ていると思ったのは、不確実な情報が、短期間のうちに、次々拡散されている点だ。それではジャーナリストの野中氏が取材した、現地の方々の証言を引用させていただく。


●Aさんの担任の先生のお話


「ビックリすると同時に怒りがわいてきました、母親が突然娘を転向させた?補習も受けさせずに卒業した?考えてみて下さい。母親の一存で転向が可能だと思いますか?補習も受けずに卒業で可能だと思いますか?


彼女には皆と一緒に卒業したいという強い気持ちがありました。だから私達もなんとかしなければならないと方法を考えました。そんな時、病院内に院内学級を持つ養護学校があることがわかったのです。ベッドのサイドテーブルで補習が受けられる環境でした。ここなら補習が受けられるということで彼女は一時的な転校を決意し、バックアップできる体制を整えたのです」


●地元記者の解説


「学校は、Aさんが院内学級で補習を受けられるかどうか教育委員会に相談し、確認を受けたそうです。課題をクリアしたことで元の高校に戻り、校長先生が卒業認定を出したのです。これが事の経緯であて、村中氏の記事は事実をあまりにもかけ離れている。学校側は『よくこんな内容を全国で発売される雑誌に載せるものだ、訴えたいくらいだ』」


●被害を訴えるAさんのお母様のお話


「養護学校の先生方には。とてもよくしてもらいましたし、病院の看護師、主治医、チームの先生方も最後まで全力で応援してくれました。元の高校で卒業できることが決まった時には皆さん泣いて喜んでくださったのです」



週刊金曜日が『ウェッジ』や村中氏に記事の事実確認を問うと「『プライバシーの保護と取材源秘匿の観点から』答えられない」といわれたそうだ。


●『落ち目の政治家』とは、田中康夫氏のことなのか?


びっくりしたのが、最後に引用されていた村中氏のツイート。


週刊金曜日とかいう雑誌から、また変てこな質問状が編集部に届いたみたい。母に言ったら「えっ!?フライデーでしょ?知ってるわよ」と、笑。最近、売れない雑誌や落ち目の政治家に絡まれることが多い…。


「落ち目の政治家」とは、もしかしたら村中氏を批判した田中康夫氏のことだろうか?


しかし、「落ち目」だなんて言葉は、ジャーナリストや医師である前に人として使ったらいけないと思う。田中氏が「倫理を伴わない科学は、想像もできない邪悪なものに利用されかねない」とおっしゃっていたけれど、邪悪なものとはまさに・・・『Wedge』の記事なんじゃないのかな。


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モーニングCROSS - ひとこと言いたい! 田中康夫氏「子宮頸がんワクチン 新手の公共事業」その3


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じゃあ医学界はどういう風に言っているかというと「接種した二週間後までの痛みは副反応のです」と。「でもそれ以降の痛みは心身の反応です」って、これ、祈祷師のような話になってきてしまうわけ!


で、だからいろいろなことを言っている人達がいて、(「あの激しい痙攣は、本当に子宮頸がんワクチンの副反応なのか? 村中璃子女史」と書かれた手書きのフリップが紹介される)、子宮頸がんワクチンを打った後に起きている人達に対して、じゃあ、それ以外の理由はなんですか?ってことは、こういう評論家(村中璃子氏)も何も言っていない、ということになると、やはり僕は、


先ほどのイギリスがすごいということじゃなくて、イギリスは科学を用いて技術を越える、一方日本は科学を信じて技術を疑わず、それが人が人をお世話をする福祉や医療ですし、もっというと、先ほどの広島の話にあったように、元ウルグアイ大統領、ホセ・ムヒカさんが言ったけれどーーーーー


「倫理を伴わない科学は、想像もできない邪悪なものに利用されかねない。歴史は人間が同じ石でつまずく唯一の動物と教えている。私達は過去の過ちから学んだだろうか」



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