2016/07/27

『牧本事件』 1つだけ足りない活動

牧本事件について、書き続けて約半年。牧本医師の活動を振り返った時に、一番心が動かされたのは、社会活動に力を注いでいらしたことだった。ナショナルセンターの小児腫瘍科長という要職にありながら、NPO法人などの設立などにも関わっていらした。1つ、1つ、丁寧にみていくとよくわかる。どの活動も全力投球していらしたようだ。


●牧本医師の誠実な対応


特に印象に残るのは、こちらのnpo法人 サクセスこども総合基金 SUCCESSの活動だ。


npo法人 サクセスこども総合基金 SUCCESS
(旧・小児がん治療開発サポート)

http://nposuccess.jp

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SUCCESSは、小児がんの患者さんとご家族のために、主に、3つの活動をしている。1つは、情報発信。2つ目が患者さんを支える活動。相談事業を行うだけでなく、患者さんの意見をとりまとめ、行政などに働きかけてくれる。そして3つ目が、治療の開発の支援だ。


事業内容をみて、羨ましいなぁ、と思わずにいわれなかった。そもそも私がSUCCESSの事業に関心を持ったのは、牧本医師の患者さんのご家族が情報提供して下さったからだった。


その患者さんのお子さんは、はじめは、別の大きな病院にかかっていらしたそうだ。でも、その時は納得できるお話がなかったそうで、SUCCESSの相談を受けることに。


お話を伺って、とても驚いた。SUCCESSが誠実に対応していたことが私にも伝わるからだ。


私も、法務省の人権相談など、いくつかの相談窓口に相談したことがある。でも、SUCCESSのように高度な知識と豊富な経験を持つ専門家が相談に乗り、真摯に対応するなんてことはまずない。その方が私に説明して下ったように牧本医師を信頼しようと思ったのは牧本医師がユーイング肉腫の治療計画と治療変更基準及びプロトコール治療の概要に精通していらしたからだろう。


●未熟児網膜症 失明するかもしれないという恐怖で、椅子から立ち上がれなくなった


思い出すのは、未熟児網膜症の手術だ。


これは国立成育医療研究センターの眼科の主治医が私に書いてくださったもの。超低出生体重児で産まれた息子は、多くの未熟児がそうであるように、未熟児網膜症になってしまった。それも、急激に悪化するタイプで、なかなか改善しなかった。


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手術を受ける前に、説明を受けた時、かなり厳しいことを言われた。失明するかもしれないという恐怖で、フラフラになって椅子から立ち上がれなかった。


なぜなら、その頃は、失明して元気に暮らしている人を、私は知らなかったからだ。病院でもみかけない。一体、どこで、どうやって、暮らしているんだろう?そう考え、目の前が真っ暗になったのだ。


●なぜ、社会に働きかけるのか


牧本医師は、外来で患者さんと接するだけでなく、病棟で入院患者さんのケア、学会に参加したり、その他にNPOなどでの啓発や治験の仕事、電話相談や厚労省の審議会の構成員などもしていらした。


予算を取ったから、という、ただそれだけの理由ではここまでできないだろう。患者さんのご家族がおっしゃるように、小児がんと闘っていらしたんだと思う。


なぜそう思うかというとーーーー


私が牧本医師のブログを読んでびっくりしたのは、こちらの2つの活動を知ったからだ。亡くなったお子さんのためにも活動しているし、休日には、元気に退院していった患者さんと合宿にも出かけていらっしゃるのだ。こうした活動は、『気持ち』がないと、気づかないと思うし、できることじゃないと思う。


◇  ◇  ◇
しゃぼん玉の会 小児がんと闘う牧本敦医師のブログ
http://pedicancer.at.webry.info/201206/article_2.html

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小児がんの遺族の方々を招待してのしゃぼん玉の会が開かれました。
昨年から小児の心のケアを担当して下さっている精神腫瘍科の大島先生達も協力して下さいました。


◇  ◇  ◇

夏合宿 in 伊豆高原 小児がんと闘う牧本敦医師のブログ
http://pedicancer.at.webry.info/201108/article_5.html

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合宿に招待したのは、今年医学部へ入学した1年生2名、医学生物統計学者を志す慶應ボーイ2年生1名、夢を「世界一企業の社長」に変更した坪ちゃん2年生、医師1年目の松井君、および、NPO法人に就活中の小畑君の6名です。

テーマは「夢を語る、夢を実現する」で、医学の講義を中心に、夢を考えてもらうためのワークショップを織り交ぜてみました。しゃべるのに忙しすぎて、写真を撮る暇がなかったのが残念です。

◇  ◇  ◇


●1つだけ足りない活動 


こうして見ていくと、1つだけ足りない活動があることに気づく。


そう!「もう1度、小児がんの治療に戻りたい」という牧本医師の希望を叶える活動だ。


私はブログを書き始めて、何度か質問されたことがある。「牧本先生は、あんなに熱心だったのに。どうしてしまったんでしょうか?」


ずっと考えてきたけれど、どうやら私はその答えを見つけたみたいだ。


たぶん、一生懸命働く医師のための活動がなかったから。そうじゃないのかな。
2016/07/25

『オプジーボ』の副作用報道と『牧本事件』 その2

●『現場からの医療改革推進協議会第4回シンポジウム』 医師主導治験の研究費は全面的に見直すべき


◇ ◇ ◇
患者と医療関係者の協同作業を目指して 上昌広 医療ガバナンス学会 by MRIC 2009年11月29日
http://medg.jp/mt/?p=754

11月7、8日の2日間にわたって、東京大学医科学研究所で現場からの医療改革推進協議会第4回シンポジウムが開催されました(http://expres.umin.jp/genba/index.html#p8)。


この会は、2006年の福島県立大野病院事件をきっかけに、医療崩壊に問題意識をもった有志が始めたものです。発起人には、医師・看護師・患者家族・メディア関係者・政治家が名を連ねています。舛添要一氏(前厚労大臣)、足立信也氏(厚労大臣政務官)、仙谷由人氏(行政刷新担当大臣)、鈴木寛氏(文科副大臣)なども参加しており、2007年以降の活躍はご存じの通りです。ちなみに、私は、この会の事務局長を務めています。
(中略)

【薬事法に固執する限り、問題は解決しない】

この問題についても、小野(俊介)氏の発言は圧巻でした。「当面、ドラッグ・ラグはなくならない。現行の薬事法に固執する限り、未承認薬問題は解決しない。この問題の本質は、いかに安全に個人輸入薬を使うかだ」と言ったのです。これは、中島さんをはじめ、参加者には衝撃でした。


これまで、私たちは「ドラッグ・ラグは悪で、未承認薬は無くさなければならない」という前提で議論してきました。しかしながら、我が国は新薬の薬価が安いため、外資系製薬企業は日本で新薬を開発しようとはしません。民主党の議論を見ていても、我が国の製薬業界冬の時代は続きそうです。厚労省が、外資系製薬企業に「日本で治験をしてください」と頼んでも、経済的インセンティブがない限り、当面は今の状態が続くでしょう。


苦肉の策の医師主導治験も、絵に描いた餅です。あまりにも多くの問題が指摘されています。例えば、アナキンラの場合、たとえ研究費がついたとしても、多くの国民がその恩恵に預かることはできませんでした。アナキンラは定期的に点滴しなければなりません。一方、治験を行うのは、もっぱら大病院で、都会に住む患者しか参加できません。全ての患者に平等に治療機会を提供できません。


私たちは、ドラッグ・ラグとの付きあい方を見直す時期にきているようです。そろそろ、現状を直視して、「ドラッグ・ラグはなくならないから、上手く付き合おう」と発想転換することが必要そうです。そうなれば、如何に安全に未承認薬の個人輸入体制を構築するかが、争点となります。所謂、「コンパッショネート・ユース制度」の確立が必要になります。


そうすれば、未承認薬の情報を、医療関係者や国民に十分に公開し、全国の医療機関で投与可能にすると同時に、副作用情報の収集に尽力することが必要になります。医療界とメディア、さらに行政の協同作業です。さらに、医師主導治験の研究費は全面的に見直すべきです。むしろ、未承認薬の個人輸入費用に振り替え、患者負担の軽減をはかるべきでしょう。厚労省の研究は、所謂、補助金。役所と御用学者の利権と化しています。


しかしながら、このような改革は、現行の薬事法では対応困難。議会での法改正が必要です。小野氏は、「薬事法は法律に過ぎない。時代に合わなければ変えればいい」と主張しました。至極妥当な考え方です。今回のシンポを傍聴した議員、そしてメディアにはどう映ったのでしょうか?

◇ ◇ ◇


上医師がおっしゃるように医師主導治験が無駄なのかどうか、私にはわからない。特に子どもの場合は、すぐに薬が認可されればいい、というわけにはいかない。子どもは小さな大人ではないからだ。晩期合併症のリスクを軽減するためには、慎重さも求められるはずだ。


それに前回書いたように、難治性ネフローゼ症候群に対する新たな治療法の開発に成功したのは、医師主導治験の賜かもしれない。


●行政刷新会議 規制仕分けの「仕分け人」に、シンポジウムの登壇者


今回私は上医師がMRICに投稿したシンポジウムの感想を読んで、あることを思い出した。この時シンポジウムに参加した方が、この会場には、外資系製薬企業の担当者がきていて、名刺交換をしたんだと私に教えてくれたのだ。


そういえば、翌年の平成22年(2010年)、政権交代後の民主党政権下で行われた行政刷新会議。上医師のシンポジウムの登壇者が仕分け人に撰ばれているのは、なぜなんだろう?『牧本事件』が注目される理由は、行政刷新会議とも関係があるのだろうか?


◇ ◇ ◇
内閣府 規制・制度改革に関する分科会(第4回)議事次第 平成22年10月21日(木)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/subcommittee/1021/agenda.html


規制・制度改革に関する分科会・WG構成員名簿(平成22年10月20日第12回行政刷新会議資料)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2010/subcommittee/1021/item10_04_01.pdf

規制・制度改革に関する分科会 構成員
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ライフイノベーションWG 構成員
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規制・制度改革に関する分科会 議事次第 内閣府
http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2011/subcommittee/120118/agenda.html


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規制・制度改革に関する分科会 議事次第
平成24年1月18日(水)
15時30分~17時00分
永田町合同庁舎第1共用会議室
1 開会
2 規制全般の見直しに向けた考え方について
3 フォローアップ調査の状況について
4 有識者ヒアリング
5 小野 俊介 東京大学大学院薬学系研究科准教授
閉会

◇ ◇ ◇


2016/07/25

『オプジーボ』の副作用報道と『牧本事件』 その1

●がん新薬オプジーボの副作用報道で『牧本事件』に再び注目が集まっている?


先週、がん新薬オプジーボの副作用の報道があった。水面下で激しい情報駆け引きが行われているのだろうか?『牧本事件』に注目が集まっているようだ。アクセスが増えている。


◇ ◇ ◇
がん新薬オプジーボ投与後、自由診療併用で1人死亡 2016年7月19日23時53分 朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/ASJ7M7S9WJ7MUBQU008.html


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小野薬品工業(大阪市)は19日、がん治療の新薬オプジーボ(一般名・ニボルマブ)について、自由診療の「がん免疫療法」との併用で重い副作用が6例あり、うち1人が死亡したとして、医療機関などに対し、国に承認された使用法を守るなど適正使用を要請する文書を出した。

がん新薬巡り注意呼びかけ「副作用の種類や対応知って」

オプジーボはがん細胞の影響で抑えられた免疫を再活性化させる仕組みで、肺がんと皮膚がんの一部の治療用に承認、保険適用されている。同社によると、60代の男性肺がん患者がオプジーボ投与後、別の病院で自由診療の免疫療法を受けて心不全で死亡するなど、有効性や安全性が確認されていない使用実態があったという。

同社は、緊急対応ができる施設で適切と判断される症例にだけオプジーボを使うように呼びかけている。

オプジーボをめぐっては日本臨床腫瘍(しゅよう)学会が13日、海外から輸入し、効果・安全性が確認されていないがんへの使用などが一部の施設で見られるとして、患者向けに注意喚起の文書を発表している。

◇ ◇ ◇


今、再び『牧本事件』に集まっているとしたら、その理由は何だろう?


牧本敦医師を批判してきた上昌広医師の過去の発言を振り返ると、上医師は、牧本医師がすすめてきた『医師主導治験』には反対のようだ。そこで上医師と医師主導治験との関係を検索してみる。


すると、興味深い記事を見つけた。私がはじめて登壇したシンポジウムの記録だ。そういえば、27日に裁判がはじめるHPVワクチンの導入は、この頃決められたと上医師が発言していらしたことを思い出す。


続く




2016/07/22

『医師主導治験は税金の無駄使い』は本当か? 難治性ネフローゼ症候群に対する新たな治療法の開発に成功! その2

●『NPO法人 サクセスこども総合基金 SUCCESS』の財務諸表


そこで『NPO法人 サクセスこども総合基金 SUCCESS』のWebサイトで公開されている財務諸表を調べる。確かに委託事業収入に大きな金額が計上されている。

◇  ◇  ◇
npo法人 サクセスこども総合基金 SUCCESS
(旧・小児がん治療開発サポート)

http://nposuccess.jp

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財務諸表 平成22年度=平成24年度の3年間
http://nposuccess.jp/wp-content/themes/originaltheme/atc/financial.pdf

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◇  ◇  ◇

ではこのNPO法人がとりまとめをした治験は、どのような内容だったのだろうか?Webサイトには5つの臨床試験のリストが公開されている。

◇  ◇  ◇
特定非営利活動法人サクセスこども総合基金(SUCCESS)
取り扱い臨床試験一覧

http://nposuccess.jp/center-list

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◇  ◇  ◇

1つ1つの内容をみていくと、とても大切だということがわかる。すでに終了している試験について調べると「現在、各参加施設における経過観察と追跡調査を行っています」と記載されていて、まだ結果がわからないようだ。こういった試験は、たとえ思うような結果にならなかったとしても、行うことに意義がある。例えば、以下のようになもの。再発したお子さん達にとったら、希望であることは間違いないだろう。

◇  ◇  ◇
http://www.jcancer.jp/ronbun_db/pdf/55.pdf
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3. 研究成果の意義及び今後の発展性
米国の多施設共同第 II 相試験における、再発小児悪性固形腫瘍の奏効割合は 5 割程度、うち完全寛解の割合は 1~3 割程度であることから、がん種を問わず長期生存できる例は 1 割強と推測される。このような予後不良な疾患群に対し、有望な新規薬剤を用いた臨床試験を実施することで、有望な薬剤の投与機会の提供を通じて短期的 な患者ニーズを満たすことができる。

◇  ◇  ◇

実は私が、牧本医師を二流の研究者だと思えない理由はもう1つある。治験の参加施設一覧にある、国立成育研究センターーーーーー成育の名前を見た時に思い出した!

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http://nposuccess.jp/center-list-05
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◇  ◇  ◇

●ランセットに掲載された日本の医師主導治験の実力 リツキシマブが極めて有効であり、安全性も許容範囲内であることを、世界で初めて明らかにした


こちらは神戸大学医学部大学院医学研究科のWebサイトに掲載されているお知らせ。先ほどの国立成育研究センター臨床試験推進室との研究の成果が、ランセットに掲載されたことを知らせているのだ。

◇  ◇  ◇
http://www.med.kobe-u.ac.jp/info/2014/iijima_140624.html
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大学院医学研究科・小児科学分野の飯島一誠教授と国立成育医療研究センター臨床試験推進室の佐古まゆみ室長代理を中心とする研究グループは、小児期に発症した難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群の患者さんを対象に全国9施設で医師主導治験を実施し、Bリンパ球表面抗原CD20に対するモノクローナル抗体であるリツキシマブが極めて有効であり、安全性も許容範囲内であることを、世界で初めて明らかにしました。

この成果は6月23日にランセット誌オンライン版に掲載されました。

◇  ◇  ◇

●民間企業なら広報やIRが対応するはずなのに、牧本医師には味方がいない


私は『牧本事件』を追ううちに、税金の使われ方を考えるようになった。小児がんのお子さん達のために、私達の税金が有効に使われたことを知り、嬉しくなった。しかしその一方で、浮かび上がるのは牧本医師の苦悩だった。大きな予算を獲得した責任者には責任が集中する。見えないところではお金の問題で苦労していらしただろうし、人知れず悩んでいたんじゃないと心が痛んだ。


上昌広医師に「税金の無駄」とバッサリ切り捨てられたが、詳しくみていくとそんなことはない。


https://twitter.com/KamiMasahiro/status/307505646239113216
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民間企業なら広報やIRなどが対応するはずだ。株式会社なら株主総会もある。牧本医師に批判が集中した時に、もしも適切な情報公開と説明が丁寧になされていたら、と思うと残念でならない。

2016/07/22

『医師主導治験は税金の無駄使い』は本当か? 難治性ネフローゼ症候群に対する新たな治療法の開発に成功! その1

●なぜ『私的に流用』するようになったのか 


『牧本事件』とは、牧本敦医師が、国の研究費約2,570万円を不正にプールし、一部を家電製品の購入などに私的流用したとして懲戒解雇された事件のことだ。しかしこれまで調べたように、「不正にプール」をしなくてはいけなかった理由はわからなくもない。


それではなぜ、牧本医師は「私的に流用」するようになってしまったのだろう?


牧本医師が挨拶をするユーチューブにアップされた『シュウさん応援団』という動画をみた時に直感した。もし不正だと認識していたら、にこやかに挨拶をするだろうか?何かがおかしい。私には、牧本医師が確信犯だとは、どうしても思えない。


『牧本事件』と『ロハス・メディカル』 その6
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私は動画の中に牧本医師を見つけた時から、鍵を握るのは、牧本医師が関わっていたNPOの活動にあるのではないかと考えてきた。


●医療技術実用化総合研究経費 (臨床研究推進研究経費)とNPO


そこでもう1度、牧本医師の研究費について振り返ることにする。


牧本敦医師が研究費をはじめて主任研究者に撰ばれたのは、以前書いたように平成14年(2002年)度のようだ。調べてみると、この医療技術の確立推進臨床研究事業という補助金は、この頃新設されたことがわかる。


◇  ◇  ◇
平成14年(2002年)度 厚生労働科学研究費補助金の概要
http://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/gaiyo02/index.html

2. 各研究事業の概要
http://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/gaiyo02/2.html

6 効果的医療技術の確立推進臨床研究経費
がん、心筋梗塞、脳卒中、痴呆、小児疾患等について、より効果的な保健医療技術の確立を目指した臨床研究を推進し、根拠に基づく医療の推進を図ることを目的とする研究

効果的医療技術の確立推進臨床研究事業(小児疾患分野)採択課題一覧
http://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/gaiyo02/kenkyu/14.html


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厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/05/s0509-6c11.html

研究事業の目的
根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine)の推進を図るため、がん、心筋梗塞・脳卒中等の生活習慣病、痴呆・骨折、小児疾患に関して、より効果的な保健医療技術の確立を目指し、研究体制の整備を図りつつ、日本人の特性や小児における安全性に留意した質の高い大規模な臨床研究を実施することを目的とする。

<平成14年度新規採択方針>
がん、心筋梗塞、脳卒中、その他の生活習慣病、小児疾患について、より効果的かつ効率的な予防、診断、治療等を確立するための質の高い臨床研究

◇  ◇  ◇

牧本医師は、もう1つ、医療技術実用化総合研究経費 (臨床研究推進研究経費)という研究費を獲得している。この研究費と、牧本医師が活動していたNPO法人には密接なつながりがあるようだ。

◇  ◇  ◇
平成22年度 厚生労働科学研究費補助金の概要
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkyuujigyou/hojokin-koubo16/gaiyo.html
医療技術実用化総合研究経費 (臨床研究推進研究経費)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkyuujigyou/hojokin-koubo16/

基礎研究の成果を、臨床現場に迅速かつ効率的に提供するために必要な技術開発及び探索的な臨床研究の推進、倫理性及び科学性が十分に担保されうる質の高い臨床試験を実施し、根拠に基づく医療の推進を図るための臨床研究の推進、複数の医療機関による大規模な治験ネットワークの構築、医療上必要な医薬品等の開発の推進、我が国で実施する臨床研究の質の向上を目的とする医療機関、教育機関等における臨床研究支援者の育成及び臨床疫学の基礎となる分野別の大規模コホートのデータベースの構築等を目的とする研究

◇  ◇  ◇

そこで、文字に起こした牧本医師の講演を調べてみる。思った通りだ。「私的流用」につながると思われる興味深い発言が残されている。

◇  ◇  ◇
『牧本事件』を追う その2 牧本敦医師の講演「すべては小児がんの子ども達のために」⑧

●子どものお薬 承認をとれるようにするには、国からのお金では足りない NPO法人・寄付などの助けが必要


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私は国立がん研究センターに勤めていると同時に、NPO法人特定非営利活動法人サクセスこども総合基金(SUCCESS)の理事もやっています。NPO法人SUCCESSはいくつか役割を持っています。レモネードスタンド等々、支援をしていますけれども、その崎にある、治療開発を助ける、まさに治療開発サポートですね。と、その役割ですね。


で、何をやっているかというと、研究者のグループと協力をして厚労省から得た研究費をちょっと委託費としてまわしてもらって、こちらの人がお手伝いをしているんですね。お手伝いというのに、先ほど何億といっていたんですが、本当は製薬会社は何億もかかるというような仕事をやらないといけないということなんです。


できるだけ無駄のない形でやって、データを『規制当局』というんですけれども、に、まわして、承認をとれるようにするということです。もちろん、厚労省からのお金だけじゃなかなか難しいので、一般企業さん、キャンサーネットジャパンさんのような他のNPOや市民の皆様から寄付や支援をいただきながら、やっていくということです。

◇  ◇  ◇


足りないお金を集めないといけないから、公と私を混同しやすいというか、難しい舵取りが迫られる研究活動だったようだ。


続く

2016/07/19

子どものための『臨床試験』 治療法を選ぶことができない子ども達に、選択肢を広げてあげたい その3

●優秀な人材を確保するにはコストがかかる


前回書いたように、私が上医師の批判を目にした時、不思議に感じたのは研究費の多寡を問題にしていらしたからだ。なぜ疑問を持ったかというと、私は、上医師の研究室で働いていた研究者に、社会保険について教えてもらったことがあるからだ。上医師は、今年の春まで東京大学医科学研究所で寄付講座の特任教授をしていらした。


その研究者は私に「大きな金額の研究費が下りても、大半が人件費で出ていってしまう。例えば、お手伝いをして下さる研究者や事務員や秘書を雇用する場合、保険をかけなくてはいけない」とおっしゃっていた・・・。


この前、ある患者会の会合に出席した時も同様の話題が出た。皆さんが頭をかかえていたのが、やはり「事務処理をどうするか」だった。ボランティアだと特定の人に負担がかかり続かない。そこで人材派遣会社に年間費用の見積もりを出してもらったそうだ。しかし「1年間で300万かかる」と言われ、どうしたらいいのか皆で話し合っていた。


●なりもの入りで始まった医師主導治験は、「単なる税金の無駄遣い」?


さて、探してみたら原医師が指摘していらした「医師の負担が予想外に重い」ということを伝えるニュースがあった。申請書類の束を目にすると「小児医療」ならではの特殊な事情が伝わってくる。


◇  ◇  ◇
医師主導治験で初の承認 麻酔用鎮痛薬フェンタニル 小児への適応拡大で 47News 2007年

医薬品の臨床試験(治験)を医師が中心になって実施する医師主導治験で、麻酔用鎮痛薬「フェンタニル注射液」(一般名フェンタニルクエン酸塩)の小児への適応拡大が、8月に承認された。4年前に導入されたこの制度による初の承認。必要な薬が世に出る機会が増えると期待されるが、医師の負担が予想外に重いなどの課題も明らかになった。


治験の取りまとめ役(調整医師)を務めた国立成育医療センターの中村秀文治験管理室長によると、フェンタニルは全身麻酔の際に麻酔薬の補助として、海外では小児にも広く使われる標準薬。国内では小児への安全性が確認されていなかったため、2歳以下は禁忌とされていたが、必要性が高く「小児に適応外使用されている実態があった」という。


治験は健康な人や患者で薬の安全性、有効性を確かめるもので、通常は製薬会社が医療施設に依頼して行う。しかし、億単位の費用がかかるため、患者が少ない希少疾病や小児への適応拡大は「採算が取れない」などの理由で会社側が消極的。医師の責任で大人用の薬を小児に使うことも可能だが「副作用が出た場合、国の被害救済制度が適用されない可能性がある」(中村室長)などの問題があった。「緊急性の高い薬を安全に使いたい」と医師や患者から要望が相次ぎ、厚生労働省が薬事法改正で2003年に導入したのが医師主導治験だ。


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▽6施設103人

フェンタニルの治験は、成育医療センター、東京大、北里大、大阪府立母子保健総合医療センター、神戸大、国立病院機構岡山医療センターの6施設で05年2 ―12月、新生児を含む6歳以下の103人に実施。得られたデータを基に06年9月、三共(当時)が適応拡大を申請した。


中村室長は医薬品の承認審査に当たった経験もあるが、医師主導治験は「進めるうちに次々に問題点が出てきた」と振り返る。大変だったのは事務処理。膨大なデータの管理は民間業者に委託したが、計画を修正する度に書類を各実施施設や関係先に送るなど、通常の治験なら製薬会社が担当する業務の負担は重かった。


麻酔科医だけでなく外科医や術後管理担当の看護師とも十分な連携が必要で、手術中には患者の全身状態を監視しながら分単位でデータを取るなど、麻酔薬ならではの苦労もあったという。


▽環境整備にも


膨大な費用とノウハウが必要な医師主導治験を支援するため、厚労省は03年、科学研究費補助金で日本医師会治験促進センターを設置した。


センターの小林史明研究事業部長によると、治験の申請があると外部委員会で、医療現場のニーズがあるか、実施可能か、製薬会社の意向はどうか、などを中心に評価する。採択が決まると、書類の書き方や省令解釈のアドバイス、製薬会社との橋渡しなどに当たる。


これまでにフェンタニルを含む13種類が採択され、新型インフルエンザ用ワクチンは年内にも承認の見通し。採択されても効果が得られなかったなどの理由で中止になった薬も2種類あるが、小林部長は「医師主導治験が可能なことが、今回実証された。難しいと尻込みしないでほしい」。


また「通常の治験を実施する環境の整備にも役立っている。従来は、医師がやるべき書類作成も製薬会社任せにすることが多かったが、医師主導治験が進むにつれ、自分たちの仕事という意識を持つ医師が増えた」と話している。(共同通信 影井広美)(2007/10/02)

◇  ◇  ◇

上医師がこうした事情をよくご存じで批判していらしたのか、疑問に思う。「10年ほど前、なりもの入りで始まった医師主導治験は、単なる税金の無駄遣いでした」という上医師の批判はいくらなんでも言い過ぎだと思う。

◇  ◇  ◇
https://twitter.com/KamiMasahiro/status/307505646239113216
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10年ほど前、なりもの入りで始まった医師主導治験は、単なる税金の無駄遣いでした。 http://ow.ly/i/1BDqd
運用が悪すぎるのです。先日、国立がん研究センターの幹部医師が、研究費で家電製品を買っていましたが、あれが、この制度を主導した医師のなれの果てです。

◇  ◇  ◇


2016/07/19

子どものための『臨床試験』 治療法を選ぶことができない子ども達に、選択肢を広げてあげたい その2

平成23年(2011年)に行われた小児がん専門委員会の議事録から、原純一医師(大阪市立総合医療センター副院長)のご発言を引用させていただく。原医師について調べたら、ユーチューブに講演会の動画がアップされていた。原医師は講演の中で、今まさに私が直面している教育の問題にも触れている。いつか文字に起こしてみよう。



2014年8月26日(火)開催
MBS×CNJ Jump Over Cancer 第3回セミナー
「小児がん 子どもの気持ち・親の気持ち~」



私が原医師のご発言に注目したのは、「何にどれくらいかかるのか」について、説明していらしたからだ。議事録を拝見し、私の疑問はますます確信に変わった。


『牧本事件』の根底には、研究費(厚生労働科学研究費補助金)のあり方が、時代の変化に追いついていない、ということがあるんじゃないか。もともと制度が基礎研究を想定してつくられているために、牧本医師が行っていた人と人とをつなぐような研究に、適さなかったのではないだろうかーーーーそんなこと考える。


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2011年1月11日 第1回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室 平成23年1月11日

●臨床試験をやっていて一番問題になってくるのは事務局データセンター 膨大な経費がかかる


臨床試験のインフラ整備ということですが、臨床試験をやっていて一番問題になってくるのは事務局データセンター、そういったものに膨大な経費がかかりますが、これについては公的競争的資金ですね、そういうので行っております。しかしながら、非常に不安定なものでありますので、こういったものに関しては公的資金、競争資金ではなくて事業としてお願いできればありがたいというふうに思います。(略)


がん対策の基本となる疫学データですね。登録データがない、あるいは公表されていない、こういうことに関しましても、地域がん登録などと連携をしつつ小児がん登録というのをしっかりやっていかないといけない。それに基づく疫学データ、転帰データを含む疫学データを公表していく必要があるかというふうに思います。(略)


●基礎分野での研究体制が極めて貧弱 


小児がんの特に基礎分野での研究体制が極めて貧弱であります。これは日本の大学には小児がんを専門とする講座が存在しない。これは東南アジア等の発展途上国ですらそういった講座は設けられております。我が国にはそういうものがないということが大きな理由であろうというふうに思います。


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第6回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室 2011年7月26日


●研究助成 日本は選択肢が限られている


研究助成と研究組織についてですが、日本の場合は競争的資金による大概は3年の研究費というものに頼っているということです。ヨーロッパの方は、2006年以降Basic Scienceに資金提供が行われていると。2007年以降はPediatric RegulationによりEUの主要国すべてが参加するITCCで企業からPIPを受託と。


このPIPはPediatric Investigation Planの略ですが、ヨーロッパでは小児適応をとることにより、パテントの期間が半年間延長される。それをやらない場合、罰則規定もあるという厳しいものがあります。アメリカの場合は、NCIがCOG、PBTC、NANT等に多大な助成を提供していると。ほかにNCI主導で早期開発も行っているということです。


●医師主導治験 小児の場合は戦いをするのに鉄砲の弾からつくっているような状況


それから、医師主導治験の制度があります。要するに、薬が欲しければ自分で承認を受けなさいということなんですが、いわゆる戦いをするのに鉄砲の弾からつくっているような状況なんですけれども、成人と異なって企業治験がほとんど行われない小児領域では、これだけやればいいよという話ではなくて、膨大な種類の薬剤の治験を行わなければならないと。数名の臨床医の個人的な努力(しかも、本来の業務外)のみで到底行えるものではないと。医師主導治験の支援体制、例えば、関係当局との交渉、書類作成、経費補助などの構築が必要であると。


先ほど牧本委員が言ってくれました臨床試験との絡みですけれども、成人の場合ほとんど企業が治験をしてくれますので、足らないところを臨床試験なり、あるいは医師主導治験で補っていけばいいんですが、小児の場合すべて企業治験が全く行われない状況でやらないといけないということで、医師主導治験の治験ではなくて、臨床試験の取扱いが更に重要であるということなんです。


●日本では、適応外薬剤はすべて研究費購入分になるため、分子標的薬のように高価な薬は使えない


ここには書いていないんですが、臨床試験を行うに当たっても日本では適応外薬剤はすべて研究費購入になってしまいますので、最近はやりの分子標的薬なんて余りにも値段が高過ぎて、研究費だけでは患者さん10人分ぐらいで干上がってしまうという事実上不可能な領域です。


あと、適応外の薬をあえて使って、一生懸命保険者に言い訳を書いて通してくださいと出すんですが、それはどういう薬剤の場合にやるかというと値段次第なんです。だから、1か月でせいぜい10万円ぐらいまでのお薬であれば、あれは本当に先方さんの好意だけで決まる話なので、たとえ落とされても損害は小さいと。


ところが、最近のお薬のように1か月当たり50万円とか100万円というような薬を半年間使って、挙げ句の果てに全部切られたら我々は首が飛びかねないという状況にあります。ですから、地方というよりも値段で決まっているというのが実情です。

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続く



2016/07/19

子どものための『臨床試験』 治療法を選ぶことができない子ども達に、選択肢を広げてあげたい その1

●『ガウディ計画』 日本の子ども達に合う人工弁を開発し、身体への負担を軽減してあげたい

昨年末TBSで放送された『下町ロケット』の予告動画。ドラマの後半は『ガウディ計画』という「日本の心臓病の子ども達に、国産の人工弁を開発しよう」というストーリーだった。臨床試験をテーマにしたドラマは珍しいから、私は引き込まれていった。





この時技術者や医師が、なぜ「国産」にこだわったかというと、現在流通している人工弁は外国製がほとんどで、日本の子ども達に合わないからだった。成長期の子どもは身体が成長するたびに、何度も人工弁を取り替えなければならず、身体への負担が大きい。「日本の子ども達に合う人工弁を開発し、身体への負担を軽減してあげたい」ということだった。


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薬と医療機器の違いがあるにせよ、この予告動画は臨床試験を知るにはわかりやすいと思う。「元々の治療法が限られているので、選ぶことができない子ども達に、選択肢を広げてあげたい」と願って活動していらっしゃる小児がんの研究者と想いは同じだろう。


ドラマでは、様々な問題が起こるものの、ピンチのたびに切り抜け、ハッピーな結末がまっている。そこはやはりドラマだ。こんなに上手くいくはずはない・・・。


●小児がん 我が国は基礎分野での研究体制が極めて貧弱 日本の大学には小児がんを専門とする講座が存在しない


それでは、牧本医師が実際に直面したのは、どんな難問だったのだろう。次回、厚生労働省の小児がん専門委員会議事録の、大阪市立総合医療センター副院長、原純一医師のご発言を引用させていただく。原医師の以下のご発言は我が国の小児がん治療の厳しい現状を象徴している。


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2011年1月11日 第1回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省健康局総務課がん対策推進室 平成23年1月11日
○原専門委員

小児がんの特に基礎分野での研究体制が極めて貧弱であります。これは日本の大学には小児がんを専門とする講座が存在しない。これは東南アジア等の発展途上国ですらそういった講座は設けられております。我が国にはそういうものがないということが大きな理由であろうというふうに思います。

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私が原医師のご発言に注目したのは、上昌広医師が牧本医師への批判の中で「金額が大きすぎる」と批判していらっしゃるからだ。

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2013.3 研究費流用問題.docx (23.7 KB) KamiMasahiro
一億円の研究費を託す人材ではない。研究費の審査に関与した厚労省、審査委員には説明責任がある。

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原医師は会議の中で、どんなことに、どれだけお金が必要なのか説明していらっしゃる。小児の臨床試験だからこそ直面しなくてはならない難問がある、と気づかされる。


続く
2016/07/15

再チャレンジできる社会へ その2

●小児がんの臨床試験は簡単に成果がでない


「業績が出ていない」と批判されているけれど、小児がんの臨床試験はそんな簡単に成果が出せない。牧本医師が講演でおっしゃっていたように、子どものがんはもともと症例が少ないからだ。成果が出るまで、長い月日がかかることは、私にも容易に想像できる。


どちらかというと「そろそろ論文に」という時期に『牧本事件』バッシングがはじまって、出せなくなったんじゃないだろうかーーー


●私に問い合わせることができないか?


そこで私は国立がん研究センターに問い合わせることが出来ないか考えた。論文になっていなくても、報告ぐらいあるかもしれない。患者さんのご家族に協力していただけば、問い合わせができるかもしれない。そう考えて患者さんのご家族に相談したら良いお返事をいただいた。上手くいくかもしれないーーーー


でもすぐに、難しいと気づく。不正があったことは事実だからだ。もしも論文になる前の報告があったとしても、国立がん研究センターは対応できないだろう。「お役所仕事だから」ではなく、これが「ルール」だからだ。


●私が考える『不正』


私にはブログで訴える以外、できることはないみたい。仕方がないから、私が考える『不正』の真相を書いてみよう。


はじめにプールした理由。


恐らく、着服するためではないだろう。「研究費を獲得しても、すぐに入金されない」ことや「年度末に予算を使い切らないといけなかった」というような現場の研究者なら、誰もが不便だと感じていた仕組みのせいじゃないかと思う。


例えば、文系の研究者は一昔前、年度末に残った予算を消化するために、神保町辺りの専門書店に行くと聞いたことがある。「(本棚を指さし)ここからここまで全部下さい」と大人買いをするためだ。今は、インターネットもあるし、こんな目立つ買い方をする人はあまりいないだろう。


そんなことを想像していたら、つい最近、報道関係者が私に教えてくれた。皮肉なことに『牧本事件』でこうした研究費を巡る負の側面が、少しばかり改善されたそうだ。


やっぱり想像した通りだ。『牧本事件』は、社会的インパクトに必要だったのだろう・・・。だったらなおのこと、研究者や医師の中から、牧本医師に手をさしのべてくれる方が現れてもいいのに。


●再チャレンジできるアメリカ社会の懐の大きさ


モニカ・ルインスキーさんの講演をみてつくづく思うのは、アメリカ社会の懐の大きさだ。真剣に反省し、立ち上がろうとした人には、再生への道を用意してくれるところだ。


https://www.ted.com/talks/monica_lewinsky_the_price_of_shame?language=ja
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最後は、スタンディングオベーションとなり、スタッフにステージの中央に戻るように促される。こんな風に再チャレンジできる社会だから、若い人達が大きな目標にチャレンジしようと思うのだ。


次回から、牧本医師が活動していたNPO法人の活動について触れていく。『牧本事件』が社会に問うていることは、いくつかある。私はその1つは「社会に貢献するためにはお金が必要」じゃないかと思う。人の命に関わる事業だからこそ、良い仕事をするためにはコストがかかる。お金を儲けることや集めることは、決して悪いことではない、ということだ。
2016/07/15

再チャレンジできる社会へ その1

●現場に復帰するのは、どうしたらいいのか?

これまで私は『牧本事件』にして、3つのことをブログに書いてきた。

  • 『牧本事件』が起きた背景 

  • 牧本敦医師は刑事告発しないといけない『悪人』なのか

  • 私が『牧本事件』に関心を持ち、問題提起しようと考えた理由


はじめの一歩、「問題提起」することには、少しばかり成功したんじゃないかと思う。


そろそろ次のステップへ。「牧本医師が小児がんの治療の現場に戻るには、どうしたらいいのか?」だ。具体的な道筋はあるのだろうか?


●牧本医師には本当に業績がないのだろうか?


ブログに書き始めて、数ヶ月たった頃から『科学研究費助成事業』の使用ルールに関する手引き書などに目を通していた。


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私は、上昌広氏が週刊誌などで繰り広げた牧本医師への批判は、事実とは少々異なると考えている。

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医学会には薬の宣伝をする「御用学者」がいる---上昌広『医療詐欺』第1章より  2014年08月17日 現代ビジネス

「拠点病院」などと呼ばれる国立病院の研究者は、なにもしなくても研究費が下りてきます。

チャレンジをしないのですから、実力がつくわけがありません。実力がなければ、たいした臨床研究はできません。研究をしてもたいした研究ではないので、そんなに研究費を使うこともありません。要するに、余ってしまうのです。

それをそのままご丁寧に厚労省へ報告などしたら、翌年から研究費が削られてしまいます。では、どうするのか。「研究のため」と自分に言い聞かせながら、それらを不正にプールしたり、着服したりするというわけです。


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2013.3 研究費流用問題.docx (23.7 KB) KamiMasahiro

このままでは、日本の臨床研究はダメになる。一旦、厚労省や国がんの仲間になれば、実績を出さなくても、半永久的に利権のお裾分けに預かれるからだ。真面目に研究するよりも、役人や国がん幹部との人間関係を良好に維持することに腐心するようになる。その結果、科研費をプールして、私物を購入しても、何とも思わないようになる。

この状況は、世界の研究者が置かれている状況とは対照的だ。彼らは、研究費獲得のため、熾烈な競争を繰り返している。一流誌に論文を書いて、実績を出し続けなければ、ポジションが維持できない。日本臨床研究が二流なのは、研究費が少ないからではない。ムラ社会が利権を握り、公正な競争がないからだ。

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牧本医師の講演を文字におこした時に、真っ先に思い浮かんだ疑問は「牧本医師は本当に業績がない二流の研究者なのか?」だった。


上医師がおっしゃるように「なにもしていない」はまずあり得ないだろう。牧本医師の発言は一環してぶれない。患者さんのご家族の証言もある。チャレンジ精神があったからこそ、日本を飛び出しMDアンダーソンに留学したし、国立がん研究センターで臨床研究に従事したと思っている。


●牧本医師を批判する一方で、『カリスマ美人女医』を応援する不思議・・・


ちなみに、上医師が関わっている『周産期医療の崩壊をくい止める会』ロハス・メディカルが世に出るきっかけをつくった『カリスマ美人女医』・・・週刊文春は「経歴詐称疑惑」じゃないかと指摘した。「何もしていない」「二流」と批判された研究者の方々は、文春の指摘をどう思うのだろうか?


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週刊文春 カリスマ女医宋美玄にも「有名病院留学」詐称疑惑を読んで その1

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『週刊文春』4月14日号 カリスマ女医宋美玄にも「有名病院留学」詐称疑惑 一部引用

——正確には留学の受け入れ先はFMFなのに、箔付けのためにUCLH留学と偽ったのではないか?

「留学ってみんな箔付けじゃないんですか?UCLHに行っていたのは確かで、ちゃんとIDカードも発行されていたんです!」

つまり、FMFに半年留学し、その間にUCLHに二ヶ月いた、というのが彼女の言い分だ。UCLH事務局に問い合わせたところ「ソン・ミヒョンという名前は確認できない」という回答だった。

「UCLHで技師をしたといいますが、医療を行うことがなければ見学と同じ、医療の世界では留学とはとてもいえない。胎児診断の専門家には臨床遺伝専門医、超音波専門医などの資格、相応の臨床経験が必須。宋氏はこれらを持っていないため、何か見栄えのいい経歴が欲しかったのかもしれません」(胎児医療専門家)

◇  ◇  ◇ 


続く