2017/04/28

超低出生体重児のキャッチアップ こども小説『ちびまるこちゃん』から新田次郎著『八甲田山死の彷徨』へ その2

●冬のスキー場で道に迷う もし悪条件が重なっていたら、死んでいたかもしれない

あれほど怖がっていた息子が、『八甲田山死の彷徨』を読みたいと言い出したのは、もしかしたらスキー場での出来事が原因かもしれない。私には思い当たる出来事があった。


一昨年、息子はスキー場で道に迷ったことがあったのだ。


最近スピードを出せるようになった息子は油断したらしい。私を追い越そうとして急いで滑るうちに転倒したそうだ。ちょうど夕暮れで人もまばらな時間帯だった。気づけばコースを外れ林に迷いこんでしまったという。


なんとか自力で下山してきたものの「怖かった」と泣きそうな顔をしていた。


私たちが毎年訪れるのは長野県野沢温泉スキー場だ。このスキー場では、2、3年に一度ぐらいの割合でコースを外れ、帰れなくなるという事故があるようだ。昔と違って今は外国人のスキーヤーが多い。だから外国人遭難者も増えている。つい最近もオーストラリアの方が遭難したというニュースがあったばかり。




私は息子にニュース動画をみせてこう言った。


「もしも真っ暗だったら誰も来てくれないよ。助けてくれる人がいても、外国の人かもしれないんだよ。日本語で「助けて!」と言っても通じないかもしれないよ。それに、コースを外れたら携帯電話を持っていても、つながらないかもしれないよ!八甲田山の雪中行軍を怖い怖いというけれど、皆、好きで死んでいったわけじゃないんだよ!もし吹雪いていてホワイトアウトだったら、同じように死んでいてもおかしくないじゃない!」


さすがに堪えたようだった。


●雪中行軍の教訓 情報収集の大切さ


私は雪中行軍の遭難事故がなぜ起きたのかを教えた。


訓練には青森歩兵第5連隊と、弘前歩兵第31連隊の2つの部隊が参加していた。犠牲者は青森歩兵第5連隊の兵士で、弘前歩兵第31連隊はほぼ全員が無事に帰還している。


2つの隊の生死を分けた理由はいくつか考えられるが、最大の原因は情報収集の不足だったと言われている。死者を多数出した青森歩兵第5連隊には、雪深い地方の出身者が少なく、防寒対策が不十分だったそうだ。


(※ 資料館の展示物と案内板の説明を記録してあります↓)
幸畑墓苑・『八甲田山雪中行軍遭難資料館』 悲劇の記録 その2


私のように、初心者レベルの登山愛好家でも、資料館に展示してある装備には驚いた。死にに行くようなものだと思ったからだ。

◇  ◇  ◇
幸畑墓苑・『八甲田山雪中行軍遭難資料館』 悲劇の記録 その4

【 第五連隊捜索隊の服装 】
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神成大尉の計画書や出発前の「略装ニシテ防寒外套ヲ着用シ、藁靴ヲ穿チ・・・・」という通達から、一般の兵卒は小倉と呼ばれる綿の夏服、下士官(曹長・軍曹・伍長)と将校(少尉以上の士官)は羅紗という毛織物の軍服に厚手のマントを着用

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当時の防寒装備は現代のそれと比べようもなく貧弱で、手袋や耳覆いこそあったものの、足を唐辛子と一緒に油紙で包み込んでわら靴をはく程度

【 藁靴 】
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◇  ◇  ◇

だから展示館で一番印象に残っているのはゴム長靴だった。当時珍しかったゴム長靴を買い求め、東京に行った方もいらしたそうだ。もちろんその方は生還している。

【 救出された石倉大尉が履いていたゴム長靴 】
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●電通の過労死と雪中行軍 私たち大人が怖がらないのは、自分の人生を重ねて考えるから 


次に電通の過労死問題を伝える動画をみせて、大人が雪中行軍を怖がらない理由を教えた。


「電通のように、大きな組織だと、軍隊と似たようなことが起きる。無謀な要求をする上司がいても、部下は簡単に逆らえない。今回の過労自殺だって、構造的には同じ問題だと思う。大人になると皆、いろいろな経験をする。毎日楽しいことばかりじゃない。皆、自分の境遇に重ねて考えるから、子どものように怖いとは思わなくなる」と説明した。





そして最後に、受験生の息子に、受験も雪中行軍から学ぶことがあるんじゃないかと言ってみた。準備不足だったら、合格できないからだ。


息子は熱心に耳を傾けていた。


小学生の頃、息子がちゃんとした本を読まなくて私は悩んでいた。あの時確か、こども小説『ちびまるこちゃん』を買って夫に怒られたはず。まさかそれからたった4、5年で『八甲田山死の彷徨』を読めるようになるとは。


●超低出生体重児のキャッチアップ 失敗の経験が急激な成長につながる


超低出生体重児のキャッチアップは、社会的な経験が後押ししているようだ。特に失敗の経験は、大人がフォローすることで、成長を促せる。子どもにあった働きかけをすれば、逆にチャンスに変えることができるのだ。


発達検診医は、急激な成長を生み出す、こうした複雑なアルゴリズムに気づいていただろうか?


子どもの発達を促すものは「療育」や「訓練」という単純なことではないだろう。



だから私は今までのフォローアップや発達検診のあり方に疑問を持っている。


(※ 完成した作文を公開しました↓)

超低出生体重児の長期予後 微細運動や認知面での遅れは改善しないのか?
2017/04/28

超低出生体重児のキャッチアップ こども小説『ちびまるこちゃん』から新田次郎著『八甲田山死の彷徨』へ その1

●僕、新田次郎著『八甲田山死の彷徨』を読んでみたい

先日息子がお母さんの本を読みたいから貸してと私に言った。





私は耳を疑った。息子がせがんだのは新田次郎著『八甲田山死の彷徨』だからだ。


大人が読むような小説を読んでわかるの?どうしてまた『八甲田山死の彷徨』なの!?はじめは冗談かと思ったら、小説の内容に興味があるという。私は余計わからなくなった。なぜなら息子が私に「この本をどこかにしまって」とお願いしたからだ。


●後藤房之助伍長の銅像 発見された時は仮死状態


あれは2年前の春だった。私たち家族は青森県にある八甲田山へスキーに出かけた。


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八甲田山に出かけたのは2度目。1度目は息子がまだ幼稚園に通っていた頃だった。八甲田山ロープウェイの乗ってハイキングをした帰り、車で山の中を走っている時だ。小さな売店をたまたまみつけ立ち寄った。


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売店にはなぜか小さな資料館が併設されていた。私は案内板をみて驚いた。その売店がある場所は、小説や映画で有名な、あの『雪中行軍』の遭難者がはじめて発見された場所だったと記されていたからだ。



『雪中行軍』とは我が国の山岳遭難事故史上、最悪といわれる遭難事故だ。それまでほとんど興味のなかった『雪中行軍』に私が心を奪われたのは、その資料館で、生還した方がおられたことを知ったからだ。

◇  ◇  ◇
八甲田雪中行軍遭難事件 wikipedia
八甲田雪中行軍遭難事件(はっこうだせっちゅうこうぐんそうなんじけん)は、1902年(明治35年)1月に日本陸軍第8師団の歩兵第5連隊が青森市街から八甲田山の田代新湯に向かう雪中行軍の途中で遭難した事件。訓練への参加者210名中199名が死亡(うち6名は救出後死亡)するという日本の冬季軍事訓練における最も多くの死傷者が発生した事故であるとともに、近代の登山史における世界最大級の山岳遭難事故である。



八甲田山死の彷徨 wikipedia
『八甲田山死の彷徨』(はっこうださんしのほうこう)は、世界山岳史上最大とも言われる犠牲者が発生した、青森県八甲田山における山岳遭難事故(八甲田雪中行軍遭難事件)を題材として新田次郎が執筆した山岳小説である。1971年(昭和46年)9月、新潮社より書き下ろしで刊行された。1978年(昭和53年)2月、新潮文庫版が刊行された。1977年(昭和52年)、『八甲田山』のタイトルで映画化された(高倉健、三國連太郎、北大路欣也主演)。

◇  ◇  ◇

特に資料館の奥にある、兵士の銅像にまつわるエピソードには心を奪われた。よくある記念像ではない。


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猛吹雪の中、自ら目印となり、仲間のために立ち続けておられた後藤房之助伍長という実在の兵士の姿を再現したそうだ。発見された時には仮死状態だったという。


●雪中行軍 生と死を分けたものは何なのか?


雪中行軍は大勢の死亡者を出しているが、生と死を分けたものは何だったんだろう?夫もカナダ軍の施設にお世話になったことから興味を持ったようだ。


その資料館の方に、青森市内には『八甲田山雪中行軍遭難資料館』というもっと大きな資料館があると教えてもらった。


夫がもう一度八甲田山に行くと言った時に、私は行ってみたいと欲しいとお願いした。


幸畑墓苑・『八甲田山雪中行軍遭難資料館』 悲劇の記録 その1


●高倉健主演の映画『八甲田山』を息子にみせたら 「夜中にトイレに行くと怖いから本を隠して欲しい」


息子は資料館に行き、遭難事故があったことを知ったようだが、あまりピンときていないようだった。


ところが八甲田山から帰宅した翌日だった。夫が高倉健主演の映画『八甲田山』を皆でみようと言った。旅行の前にDVDを購入したそうだが、映画をみたら怖がるだろうと、帰宅してからみせようと思っていたそうだ。


息子は映画をみてはじめて、事故の全貌がわかったようだ。夫が心配した通り、怖くて一人で眠れないと半泣き状態になった。それどころか、私の『八甲田山死の彷徨』を指差し、「見えないところに隠して」とお願いする。夜中にトイレに行くと、本の表紙がどうしても目に入ってしまうそうだ。


私はがっかりした。


怖がるのは何も息子だけじゃない。『八甲田山』といえば『雪中行軍』といわれるぐらい有名だ。でも映画が公開された頃と今とでは、受け取る側の気持ちが少し違うようだ。今では息子のように怖がる人もいるからだ。私が事件をはじめて知ったのも確か『心霊スポット』特集だったと思う。


私は兵隊さんたちが気の毒になり、こう説得した。


「もし幽霊が本当にいたとしても、兵隊さんたちは好きで死んでいったわけじゃないよ。私たちを怖がらせるようなことをしないと思う。私は亡くなった人よりも、生きている人間のほうがよっぽど怖いと思う。育児心理科というところでびっくりするような経験をしたから、今は幽霊なんて怖くないよ」


しかし息子の怖いという気持ちはなくならないようだ。


仕方がないから押入れにしまうことに。


まあ、いまだに『ドラえもん』や『こども小説ちびまるこちゃん』が好きな息子に、いくら言っても通じないか…。


続く
2017/04/26

『女性保育士を薄給でこき使うな』 駒崎弘樹氏と認定NPO法人フローレンスが訴えられている? 

●寄付と補助金で年間約4億円、年間収益で8億もありながら保育士を薄給で働かせている?

社会的企業といえば、NPO法人フローレンスというくらい有名な病児保育を行っているフローレンス。その代表である駒崎弘樹氏は訴えられているようだ。



◇  ◇  ◇
駒崎弘樹及び認定NPO法人フローレンスとの保育士を薄給でこき使うな裁判は次の東京地裁に私の意見陳述書を出します。 公開日: 2017/04/13 モデル、キャバ嬢、風俗嬢、AV女優、家出少女、シングルマザーを幸せにするNPOだいわピュアラブセーフティーネット
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駒崎弘樹及び認定NPO法人フローレンスとの保育士を薄給でこき使うな裁判は次の東京地裁に私の意見陳述書を出します。

女性を支援するNPOの代表として、弱者である女性保育士を薄給で雇い働かせている駒崎弘樹・フローレンスを許せないという内容です。


第4回裁判。駒崎弘樹、NPOフローレンスは女性の敵だと思います! 公開日: 2016/09/13
こちらは何度も最初から言っていますが、フローレンス全員が手取り14万だとか言っていたわけではありません!手取り14万で働くような保育士がいるということそれ自体が問題だといったわけです!

こちらが言いたかったのは認定NPOとして税優遇を受け寄付と補助金で年間約4億円、年間収益で8億もありながら保育士を薄給で働かせるな!ということを言いたかったわけです!

フローレンス側の出してきた平均手取り18万8000円だ!どや!というのも都内で生活するには安すぎるものだと思います。しかも駒崎弘樹、フローレンスがやっているのは通常の保育園ではなく、病児保育という病気にかかっている状態の子の保育と通常より過酷なものです。

◇  ◇  ◇

重度の自閉症のお子さんのお父様にも批判されているようだ。




私も何を隠そう、同じようなことをずっと思ってきた。


●社会企業家をもてはやす前に、力のある教員をきちんと評価して欲しい!


だって駒崎氏のような「起業家」にばかり光が当たり、かえって私たちの困難が素通りされてしまうんだもの。


はじめて駒崎氏を知ったのはもう10年以上前。ある研究者に、一冊の本を渡されたのだ。「この人をどう思う?」ときかれた。その本の著者は駒崎氏を何万人に一人の才能の持ち主だというように、手放しで褒めていた。


もちろん私に意見を求めるくらいだから、その研究者はあまり良い印象を持っていなかったのだろう。「彼は保育や教育に関心がある訳じゃないだろう」と言っていた。保育や教育のプロの方々の評価は、そんな感じだったのだろう。



●居酒屋チェーンで有名な「和民」に似ている…


実際、本を読みすすめていくうちに私が思い浮かべたのは居酒屋チェーンで有名な「和民」。まさに今回の裁判の争点のようなことだった。


私は「和民」がメディアに取り上げられはじめた時のことをよく覚えている。「おふくろの味」を強調する社長の主張に違和感を覚えたのだ。「家庭の味を忙しい皆様に安く提供したい。そのために(夕方までしか働けない)主婦に料理を作ってもらっている」というようなことを力説していた。「夕方までしか働けない主婦」と「Win-Win」の関係をつくっているのだそうだ。


ものは言いようだと思ってしまった。「プロの料理人や調理師を何人も雇用すると人件費が高くつく。主婦なら料理をつくれるし、人件費も安く抑えられるから一石二鳥」が本音。穿った見方かもしれないが、女性を安く買い叩いているようにも思えたからだ。


これが当時のことを書いたブログ記事だ。

◇  ◇  ◇
小さく生まれた子供を社会でどう支えるか「その16」 必要なのは教育者の温かな眼差し

これからの日本を取り巻く環境は厳しくなるに違いない。就職した会社の経営者が、ある日突然、中国系やインド系になる、ということだって当然あるだろう。カナダに住んでいた時、中には「母国の戦火から逃れ、難民となってカナダにたどり着いた」というような人もいた。そういう人達は必死に這い上がろうと寝る暇を惜しんで勉強するのだ。親にいわれて勉強するようでは、将来どの道にすすんだとしても、結局生き残っていけないと思ってしまう。


そう考えると、発達が遅れている子どもにとって必要なのは、その子の力を最大限に導き出そうとする教育者の温かな眼差しだと思う。「あれができない。これが足りない」と常に遅れを指摘されたら子どもは「産まれてきて幸せ」と思えるだろうか。何かを一生懸命がんばろうと思うだろうか。


いくら支援が不足しているからといって、その前にやるべきこともあるんじゃないだろうか。力のある教員をきちんと評価することも大切じゃないかと思う。


発達の遅い子供の教育は量より質だ。一時期ブームになった「新しい公共」にだって負の側面がある。私は民間がいいとは必ずしも言えないと思っている。民間のNPO団体も増えたが、中には人件費を安く抑えるために、あるいは効率を優先するために、学生アルバイトに療育を任せる、ということもあるからだ。

◇  ◇  ◇

発達が遅い子ども達は、ただ刺激を与えればいいというわけではない。障害や病気を抱えた子どもがいると親が「働けなくなる」という問題もあるかもしれないが、その先にある「教育の質」は議論されないままだ。


息子のように発達の遅れがわずかな場合、ほとんどの人たちが素通りしていく。走りまわれるし、しゃべれるし、普通に学校にも通えるからだ。だから「預けて働けばいいじゃない」という風潮になったら逆に怖いな、と思っていた。


私だって、私の代わりに勉強をみてくれる人がいたらすぐにでもお願いしたい。でも、そんな人はどこにもいなかったのだ。


お金をもらっても、やりたくない仕事だからじゃない!?


今になって、発達障害のお子さんの親御さん達からも批判が噴出している。「やっと」こういう日がきたようだ。


本当に、本当に長かった。(関連するページです↓)


テレビで人気!音喜多駿都議が「大事な本会議中に居眠りしたワケ!」を読んで 福祉なんだか偽善なんだかよくわからない・・・

官僚のメディア戦略 『もみじの家』の凄いところ その1
2017/04/24

超低出生体重児とフォローアップ 「早期発見・早期支援」に問題はないのか?

●発達検診の問題点

これは最近の息子の数学のノート(多項式)だ。いつのまにか文字が小さくなり、ノートが普通にとれるようになっている。


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発達検診医には、とにかく「手先の訓練を」と言われ続けてきた。


しかし長年教育現場で学生の指導をしてきた夫は、医師の方針に反対した。「子どもの発達とは、複合的な要因が重なって生み出される結果だ。今この子に必要なのは訓練ではなく、楽しく体を動かすことだ。直近の数値に一喜一憂せず、もっと長い目でみないといけない。」と私に言った。


それ以来フォローアップ外来の通院をやめ、自分たちで工夫し様々な刺激を与えてきた。


やっと今、成果が出はじめているようだ。


●きっかけはカンニングペーパー


細かい字を書くようになったきっかけは、予想していないことだった。


息子は家で問題集をやらせると、よく間違える。ところがある時、急にできるようになった。はじめは喜んでいた私だったが、急激に正解できるなんて、おかしい。。


本を読むふりをして息子を観察すると…目の動きだけでなく、手の動きも不自然。視線を落として手元をよ〜くみると問題集で手を隠し、机に鉛筆で答えを書いたり、手のひらに収まる大きさのカンニングペーパーをつくっていた!


もちろん怒ったけれど、心の中ではガッツポーズ!!


私の気持ちは超低出生体重児の親じゃないとわからないだろう。超低出生体重児の予後に関する論文などには、「微細運動が苦手」というようなことが必ず書かれているのだ。医師が訓練をすすめた理由も「黒板の文字を、ノートにうつせないから」だった。


「低出生体重児の長期予後」という研究報告を引用させていただこう。

◇  ◇  ◇
(2)レクチャーシリーズ(2);他科領域の専門家に聞く 低出生体重児の長期予後 - 日本産科婦人科学会 2006年9月 を一文引用

6.学齢期の予後

超低出生体重児は障害合併頻度が高いため,特殊教育を必要とする頻度は高い.本邦の調査では,約10%が特殊教育を受けている8)9).明らかな神経学的障害を持たない児でも 入学後に,学習障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの軽度発達障害の頻度が高いことなどが指摘されてきた.

学習障害(LD)の頻度は一般の小学生の中では約15%とされ,男児が多いことが知られているが,低出生体重児では,神経学的障害を認めない場合でも,学習障害(LD)や行動 障害のリスクが高く,入学後に学習上および行動上の問題を生じる頻度が高い.極低出生体重児の約半数が学習障害のリスクを持ち,言語能力,読書力,書字,算数,注意集中, 運動のすべての分野で対照群に劣ることが報告されている.また,精神発達が正常な学童期の超低出生体重児のうち,学習行動上にも影響する注意欠陥多動性障害(ADHD)も, 一般の学童より高頻度である.

厚生科学研究によるわが国の超低出生体重児追跡調査の1990年出生児の9歳時の調査結果では,算数と体育が苦手な子どもが多かったが,社会生活能力を示す社会生活指数(SQ)約80%が85以上で,社会適応は良好であった9).

(中略)

9.ハイリスク児のフォロ-アップと早期支援

ハイリスク児のフォロ-アップは,NICU から退院した児の発育・発達を支援することが主要な目的であるが,フォロ-アップの結果を新生児医療にフィードバックすることも新生児医療の進歩のうえで重要である.ハイリスク児は神経学的合併症の頻度が高く,そ の早期発見・早期支援はフォロ-アップの重要な課題である.また,神経学的合併症のない児であっても,出生体重の少ない児では,身体発育,精神運動発達は正期産児とは異な り,両親の不安も大きい.一人一人の発育・発達を見守り,適切な支援をすることが必要である.また,神経学的障害を認めない場合においても,学童期における学習障害や行動障害などの問題が発生する頻度が正期産児に比して高い事が示されている.更には,IUGR児のmetabolic syndrome 発症のリスクが近年,問題になっており,成人期までの長期 間にわたるフォロ-アップの重要性が示されている.
また,退院後のハイリスク児に対して,発達支援を目的に,自治体や病院単位での,Early Intervention(早期支援)が実施されている.

◇  ◇  ◇

読めばわかるように、息子のような未熟児は一般的に「学童期における学習障害や行動障害などの問題が発生する頻度が正期産児に比して高い」といわれているのだ。おまけに男児だから、数値だけをみたら、疑われるはずだ。


●キャッチアップを引き起こす要因について、詳しい分析がなされていない

でも私は最近、こうした報告書には記載されていない、驚異的なキャッチアップに何度も遭遇する。繰り返し教えてもできないことが、諦めかけた頃、スッとできてしまうのだ。もしかしたら成長過程でカバーできる(発達の)差は、私が想像していたより、遥かに大きいかもしれない。


●「早期発見・早期支援」が良いとされる根拠は?


というよりも、私はある疑いを持っている。


報告書にある「発達障害」などのパーセンテージが、どのように導き出されたのかがみえてこない。(本当に「発達障害」だったのかわからない)そもそも、「早期支援」が良いことだとされているけれど、その根拠はあるのだろうか?


超低出生体重児のフォローアップ ある発達小児科医の転送メール 『専門家』の気遣いが、かえって私たちを追い込むこともある

超低出生体重児の育児 再び手紙を書いて送る ナショナルセンターは日本全国の子供たちのためにあって欲しい


むしろ繰り返し出されたこうした報告書の数字が、一人歩きし、マイナスの作用を生んでいるんじゃないのか?「超低出生体重児は、発達障害が多い」などが検証なしに、医療者に刷り込まれてしまっているんじゃないのか?


実際に育ててきた私からすると、突っ込みどころ満載という感じ。


●私が知りたいのは、良い症例が出るまでの経緯


ちなみに、息子はフォローアップに行かなくなったのでカウントされないだろう。


私は、上手くキャッチアップした症例が知りたい。どのようにキャッチアップしたのか、そのメカニズムが知りたいのだ。先日紹介した、友人のお子さんの回復事例は、拠点病院事業に参加している医療機関のもの。お嬢さんの主治医は知らないだろうが、彼女は血のにじむような努力をしてきたし、様々な人たちの協力と働きかけもあったのだ。


『うつを治したければ医者を疑え! 』と小学生の摂食障害 摂食障害を回復させたもの1


今までこの「拠点病院事業」って何のためにあるのかと不満に思ってきたけれど、私は見直した。事業として行うなら、良い症例が出るまでの詳しい経緯などを発表してくれたらいいのに。皆が知りたいのは数字ではなく、そういうことじゃないの!?
2017/04/20

超低出生体重児と算数 私が毎日勉強をみてあげた方がいいと思う理由

●かけ算は小学校の勉強で、最初の難関

かけ算は小学校の勉強で、最初の難関だと言われているそうだ。どうやって、子どもに教えたらいいのかについて詳しく解説してある記事を見つけた。もともと「難関」ならば、早産で産まれた超低出生体重児がつまずくのは当たり前のような気がする。数学教育研究会代表の上村純子氏によれば、「1あたりのもの」について考えるように指導するといいそうだ。私と同じ教え方だ。


●財務省が予算をカットしたがっているので、先生には余裕がない

息子が一年生の時の担任の先生は新人だったけれど、数年間、大手学習塾で講師をしていたと言っていた。だからなのか、それとも文科省の締め付けが厳しいのかわからないが、授業を先に進めることで頭が一杯のようだった。担任は「かけ算を暗記させて覚えさせてください」と私を急かす。「数の概念を身につけさせたい」という私とは対立してしまった。


超低出生体重児(未熟児)の就学問題 「10歳の壁」を乗り越える方法 その2

(宿題と教員削減の関係について書いてあります↓)
超低出生体重児の教育問題 長い休みぐらい、自由に勉強させて欲しい! 宿題が多すぎる! その1


今私は、あの選択は正しかったと実感している。


なぜなら教育の専門家がアドバイスしているように、暗記するだけでなく、数の概念を叩き込まないと理解したとはいえないからだ。この先には10歳の壁(加減乗除)が待っている。例えだましだまし乗り越えたとしても、中学の授業にはついていけなくなるだろう。


上村氏の指導方法をわかりやすくするために、イラストをかいた。私は子どもに障害があるかないかに悩むぐらいなら(考えてもすぐにはわからないから)小学校の低学年の時には毎日、勉強をみてあげた方がいいと思う。夫の同僚の先生たちは皆、子どもの勉強をみている。それはたぶん自分自身が教員だから。学校の勉強だけでは不十分だと知っているからなんだと思う。


◇  ◇  ◇
原因は教科書!? 子どもが九九を覚えられない本当の理由 exciteニュース 2017年4月19日

● 2×0と0×2の違いって? 苦手な子でも楽しんで覚えられる方法

では、子どもにかけ算の意味について、どう教えたら伝わるのでしょうか。上村先生によれば、「1あたりのもの」について考えるように導いてあげるといいそうです。その方法は?

「たとえばウサギには長い耳が2つありますね。ウサギが2匹いれば長い耳は2×2=4本、3匹いれば2×3=6本、4匹なら2×4=8本、というように教えていくのです。次に、今度は虫を例にあげます。虫には羽が4枚あって、2匹いたら4×2=8枚になります。このとき、2つ耳のあるウサギが4匹いた場合の2×4=8と、4枚の羽の虫が2匹いた場合の4×2=8とは、答えは同じ『8』であっても、その意味が違うことがわかることになります。まずは、その違いから学んでいかないと、九九を意味もなくただただ暗記するだけのことになるというわけです」

◇  ◇  ◇

ウサギには長い耳が2つ
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ウサギの耳は2匹になると、2×2=4本
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ウサギの耳は3匹になれば2×3=6本
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ウサギの耳は4匹になれば2×4=8本
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2×4=84×2=8の意味の違い

トンボの羽は4枚
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トンボが2匹いたら羽は4×2=8枚
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答えが同じ『8』でも
2つ耳のあるウサギが4匹いた場合の2×4=8とは違う

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◇  ◇  ◇
もう一つ、2×0と0×2の違い、子どもにどう教えたらいいのでしょうか? 正解は…


「2×0も、0×2も、どちらも0をかけるのだから0になる、と教えるのはおすすめできません。そうではなくて、まず、2×0=0の場合。2本の耳をもつウサギがいなければ、つまりウサギが0匹ならば、その耳も0だと教えてあげるのです。反対に0×2=0の場合は、ペンギンを例に挙げてみるといいですね。ペンギンにはおへそがありません。だからおへそは0。だからペンギンが2匹いてもおへそは0です。九九を暗記させる前に、この違いをしっかり理解させてあげることが大切です。それがかけ算の意味を覚えるということなのです」


算数が苦手なママや、教えるのが苦手なママでも、これなら子どもに教えやすいですよね。九九をなかなか覚えられない子には、教科書の学習とは別に、家庭での学習のサポートが大切だと上村先生はいいます。かけ算の基本さえ理解できれば、九九のマスターまであと一歩! これを機会にママも苦手意識を克服して、子どもと一緒に勉強してみるのもいいかもしれません。

◇  ◇  ◇

2×0=0の計算の意味
2本の耳をもつウサギがいなければ耳は0


0×2=0の計算の意味
ペンギンにはおへそが0

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ペンギンが2匹いてもおへそは0
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2017/04/17

超低出生体重児の育児とは、10年たたないと花が咲かない球根を育てるようなもの

●22~24週の超早産児、生存率が向上 神経発達障害の増加は見られず、米調査


先日、22~24週の超早産児の発達について、アメリカの調査結果が出たそうだ。神経発達障害の増加は見られないという。

◇  ◇  ◇
22~24週の超早産児、生存率が向上 神経発達障害の増加は見られず、米調査 2017年03月17日 06:00 公開 あなたの健康百科
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母親の胎内で37~42週を過ごし、正期といわれる週数で生まれてきた赤ちゃんでさえもその存在は小さく、頼りない。何らかの理由で妊娠22~24週の極めて早期に生まれた赤ちゃんは、なおさらだ。

22~24週で超早期に生まれてきた児はその後の生存が難しく、生存してもさまざまな神経発達障害が残る場合が多いというが、このたび、米国の研究グループらが2000~11年に米国の11施設で22~24週で出生した児4,000人超のデータを分析。

その結果、実際に産まれた日ではなく、出産予定日を基準にした月齢である修正月齢18~22カ月時における生存率が向上していただけでなく、神経発達障害を伴わずに生存している割合も増加していることが明らかになったと医学誌「New England Journal Medicine」(2017年2月16日オンライン版)に発表した。

◇  ◇  ◇

報道にあるように、22~24週の超早産児がどのように育つかは、まだわからない。しかし神経発達障害を伴わずに生存している割合も増加していることはわかってきているようだ。ということは「超低出生体重児は発達障害のリスクが高くなる」ということだって、まだわからないだろう。


●子供の人権に関わる問題は、みえるように議論して欲しい


私は国立成育医療研究センターに手紙を書いた時に、資料を添付した。


私と同じ超低出生体重児のお母さんの意見と、ある医師から送られてきたメールだ。私が喜ぶからという理由で「あなたのお子さんには、軽度の障害があるんじゃないですか?」と転送メールを送ってきた医師とのやりとりだ。


超低出生体重児のフォローアップ ある発達小児科医の転送メール 『専門家』の気遣いが、かえって私たちを追い込むこともある

超低出生体重児のフォローアップ 「あんまり間にうけなくていい」程度のことが、子どもの将来を決めてしまうかもしれない その2


メールに書かれている内容は、超低出生体重児の長期予後に関することだ。私は子供の人権に関わる議論は、皆にみえる形でするべきだと思う。


●毎日の努力の成果が、やっと現れはじめる


今年、息子のスキーはぐ〜んと上達した。夫が「あと数年すれば、1級もなんとかいけそうだ」と言ったので私はビックリした。上達するスピードが速くなっているからだ。スピードが上がっているのはスキーだけじゃない。数学や英語のテストの結果も、少しずつ良くなってきている。わからない問題は先生に自分から質問しに行き、諦めず最後までがんばろうとする。


夫は息子が小学生の頃から、学校に行く前のわずかな時間を使い、算数を教えてきた。「(15分から30分という短い時間だけれど)実はこれが効果があるんだよ。10年近くたってやっと効果が出てきたんだ」と言っていた。


NICUを退院後、不安で一杯の時、私が知りたかったのは、こういう情報だった。



そこで、これまで育ててきた「超低出生体重児の発達」のイメージを図で表現してみた。小さな段差の階段を、ゆっくりゆっくり登っていくようなものだと思う。


超低出生体重児の発達のイメージ
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先ほどの図に普通に産まれたお子さんの発達のイメージを重ねてみる。超低出生体重児の育児とは、10年たたないと花が咲かない球根を育てるようなもの。どんなに親ががんばって刺激を与えても、すぐには追いつかない。


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私が医師とのやり取りを添付した理由は、もう一つある。超低出生体重児の成長は、第二次性徴期に入ると変化をみせるからだ。図で表現するとこんな感じ。


第二次性徴期の発達のイメージ
「くやしい」「負けたくない」という気持ちが、「がんばろう」という意欲を引き出すようだ

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中学生になると人間関係がぐんと広がる。自我も芽生える。これまで皆の後からついていくのが当たり前だった息子が変わりはじめた。「勉強ができるようになりたい」と言うようになった。


●医師とのやり取りを添付した理由


この頃までに、親子の信頼関係できていると、少しくらい厳しい指導をしても結果が出せるようになる。例えば、教科書にない英単語を覚えたり、数学の発展問題も頑張ればできるようになる。


医師が転送メールを送ってきたのは、息子が小学生に入った頃だった。小学校の低学年はまだ先が長い。私たちは子供の「心」だって育てていかないといけない。だから私たちの心を折るようなことを言わないで欲しい。


超低出生体重児の成長は、刺激をとにかく与えればいいというものじゃないと思う。「療育先があればいい」という単純なものでもないだろう。夫はわずかな時間でも、毎日、息子がわかるまで根気強く教えてきた。どうしても理解させたい時には、遅刻させた。そこまでするのは夫自身が教員だからだ。学校を信用していないのではなく、今の教育の限界というか、学校の先生が、自分ほど丁寧な指導をしない(できない)ことを良く知っているのだ。


本当は、療育や教育の『質』だって大切なんだと思う。

2017/04/13

『うつを治したければ医者を疑え! 』と小学生の摂食障害 摂食障害を回復させたもの 3

●以前と変わらない元気な姿に!


季節が変わり春がやってきた。


先日、バスから降りて歩道を歩いていると、私を呼び止める声がする。


振り向くと、友人が手を振っていた。「あっちを見て」と彼女が指差す方向をみると、お嬢さんがニコニコして立っていた。私は目を疑った。今までと変わらない姿だったからだ。


咄嗟のことで私は驚いて気の利いた言葉が出てこなかった。人間は心底嬉しかったり、悲しかったりすると言葉が出ないものだ。こうしてブログを書いている今になり、嬉しさがこみ上げてくる。


あとできいたらお嬢さんが通院したのは、やはりあの病院。私が本を渡したのは、この病院をよく知っていたからだ。一昨年、精神医療の人権問題を扱う団体が抗議声明を出したことをよく覚えていたのだ。


彼女が「通院しようか考えている」と言った時、私は正直に伝えた。「抗議声明が出た後、政治家の答弁に、『子供には、薬を使わないよう努力する』と答えたそうだけど、実際はどうだかわからないよ」


彼女は、その病院に行った時に、薬には抵抗があることや、入院はしなくないということをハッキリ伝えたそうだ。


●「入院させないで、本当にいいのか」と大きな議論に


彼女の方針に医師はかなり動揺したようだ。カンファレンスでも「入院させないで、このまま帰宅させて本当にいいのか」と大きな議論になったそうだ。


彼女は通院する以外にも、様々な努力をしていた。学校に通えないお嬢さんのために、フリースクールのような施設を探し送迎したり、食事に気をつけたり…いざとなったら「学校をやめさせる」とも言っていた。


●子供の摂食障害は社会の問題


お嬢さんが摂食障害になった理由、そして回復した理由を、私はいろいろ考えている。まだ小学生のお嬢さんが挫折感を感じた理由は、例えば過熱する中学受験などとも関係するのだろう。

◇  ◇  ◇
「稼げる大人」になる!? 過熱する受験競争 2017年2月15日 NHKクローズアップ現代

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スタイルアクト 沖有人代表取締役
「これは1都2県、小学校別の年収のランキングになります。」

2か月前に公表された、首都圏の公立小学校ごとのランキングです。国勢調査や住宅・土地統計調査の数字などを組み合わせて算出した推計値ですが、公表直後から、ネットなどで話題になっています。

スタイルアクト 沖有人代表取締役
「年収が高い人ほど親の学歴が高い。学歴が高い人ほど、教育熱心ということも分っていまして、直接的に小学校のレベル感を表している。」

◇  ◇  ◇

これは超低出生体重児の親が就学問題と悩む理由でもある。子供は大人や私たちの社会を写す鏡だもの。私は小学生や思春期の摂食障害もまた、社会の問題じゃないかと思う。


●一つの症例が出るまでには、様々な人たちの努力と連携があった


しかし、私たちの社会がそのような歪んだ一面を持っていても、彼女を回復させたのもまた私たちの社会であることを忘れてはいけない。


2010年3月の終わり、私は小さな新聞記事に掲載された、精神医療の裁判のニュースをみつけご遺族の男性に声をかけた。そして7月、その男性の手記を医療系メルマガに掲載していただくことに。それが、医療ジャーナリストの伊藤隼也氏の目にとまり、翌年の10月、小学館のサピオで連載が始まった。フジテレビの『とくダネ!』もこの問題を放送してくれた。


はじめはネットで医療者や精神科ユーザーが一斉に反発したが、その頃から学会などで本格的に議論がはじまり、被害者団体ができ、様々な改善への働きかけがなされていった。



こちらは先月国が出した、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性についての注意喚起。元主治医には、症状が悪化するのは「あなたの人格の問題」「病気が悪化したせい」などと言われたが常用量でも依存することを国がついに認めてくれた!!

https://www.pmda.go.jp/files/000217046.pdf
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彼女がお嬢さんを連れていった病院にも、人権団体や被害者団体、政治家の働きかけがあった。


私は友人のお嬢さんが元気になって本当に嬉しくて、伝えた。お嬢さんにいつか知って欲しいからだ。人は一人で生きているわけじゃない。症例発表される時には「回復した一例」かもしれないけれど、様々な立場の人たちが真剣に考え、連携し、改善した結果なのだ。何よりも、児童精神科医がとてもがんばってくれたみたいだし!


そのことを知って欲しい。
2017/04/13

『うつを治したければ医者を疑え! 』と小学生の摂食障害 摂食障害を回復させたもの 2

●カウンセラーや善意の第三者は、精神医療の問題点を知っているのか


私が用意した本は、何かと物議を醸している医療ジャーナリスト、伊藤隼也氏の『うつを治したければ医者を疑え! 』だ。この本が世に出たきっかけは、私が医療系メルマガに投稿した手記だった。


『報道』と『インターネット』の力 マイナスの経験をプラスに変える


スクールカウンセラーなど「専門家」と呼ばれる人たちは、これほど切迫している相談者に、「反精神医学」なんて批判されている本を手渡さないだろう。


でもこの本には精神科に行って、後悔している母親の声がたくさん掲載されているし、精神医療に疑問を持つ現場の声がぎっしり詰まっている。


●自分でがんばるしかない


私が彼女に伝えたかったのは、「自分で覚悟を決めて、がんばるしかないんだよ」ということだった。もし精神科に行くにしても、薬をはじめとする精神医療のネガティブな面もきちんと伝えるべきだと思う。薬や医療だけでは治らないかもしれないしれないからだ。


自死遺族等の権利保護シンポジウムに参加した時にも、自死遺族だけでなく、精神科の受診をすすめた方々が、あの時受診をすすめなければよかったと後悔しておられた。


第4回 自死遺族等の権利保護シンポジウムで講演する、20代のお嬢さんを亡くしたお母様
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私は友人に本を渡し、akkoさんのつくった多剤大量処方のアニメをみてもらい、精神医療の問題点を解説した。





さて、それでは『うつを治したければ医者を疑え! 』にはどんなことが書かれているのだろう。超低出生体重児にも関係する、第9章の一部を引用しよう。

◇  ◇  ◇
『うつを治したければ医者を疑え! 』伊藤 隼也と特別取材班 小学館
第9章 親も教師もありがたがる「発達障害=病気」の烙印 102ページ

●他の保護者から圧力がかかる


発達障害を〝勉強 〟したママ友から、「あなたのお子さんは発達障害という病気なの。だから医師に診てもらったほうがいい」と言われて受診するケースもある。


他の保護者からのプレッシャーも相当強い。


「多様な個性に正面から向き合い、時間をかけて子ども達一人一人の特性を成長させようと努力する教師がいても『あの子がいるから授業が妨害されてクラスの学力が上がらない』など他の保護者から圧力がかかることがある。そうした批判をかわすために、管理職がその子を支援学級に追いやったり、精神科を受診するよう勧めたりすることがあるのです(林試の森クリニック石憲彦院長)


そうした中、親の中に発達障害と言われて安心する人もいるのもまた事実だ。石川院長は言う。「発達障害は『何らかの脳の機能不全』が原因とされているため、そう診断されれば、親は〝病気ならば仕方がない〟と育児への自責の念や周囲からの批判から解放される面があるのは否定できません」


受験最優先の他の保護者、責任を回避したい教師、重圧から解放されたい親、それぞれの思惑が一致したとき、子どもは精神科につなげられる。 


前述の養護教員はこう嘆く。「昔は子供への薬物投与はありえなかったが、ここ7〜8年で激増した印象です。しかし子供は昔から変わっておらず、むしろ変わったのは大人のほうです。昔の教師は子供に寄り添って解決しようとしたが、今は薬を服用したほうがいいと安易に受診を勧めます。


しかも今の教育現場では、教師は成績を上げて不登校などを減らすよう、〝結果〟が常に求められ、『ひとりで抱え込まず、子育て支援センターや医療機関に働きかけろ』と上から厳命される。


本来は教師が粘り強く対応すべき子供まで、医療機関につなげられ、薬物が処方されています」


垣間見えるのは、教育が果たすべき役割を放棄し、「専門家なら間違いない」と医師任せにする安易な姿勢だ。


だが、精神科医が発達障害の「専門家」なのかはなはだ疑問だ。前章でも紹介したように発達障害には血液検査やレントゲンなどのように客観的な診断方法がなく、医師の裁量が極めて大きい。その診断基準も疑わしい。実際、発達障害の診断に使われている「DSM-Ⅳ」(米国精神医学会による精神障害の診断統計マニュアル。第4版)の編集責任者だったアレン・フランセス博士自身が、製薬企業の宣伝等によって、DSMが乱用され、子供が過剰診断されていることに警鐘を鳴らしている。博士は自著『<正常を救え>』(講談社)において、「DSM-Ⅳ」が出てから自閉症が20倍、ADHDが3倍に急増した事実を指摘し、<未発達なだけで正常な子供の多くを精神病の患者に変え、まだその時期でもないのに薬を飲ませている>と懸念を示す。


今、日本ではそうした子供たちを就学前にスクリーニングし、積極的にケアしようという行政の試みが、逆に薬漬けを加速させない事態となっている。

◇  ◇  ◇


続く
2017/04/13

『うつを治したければ医者を疑え! 』と小学生の摂食障害 摂食障害を回復させたもの1

●スクールカウンセラーは何のためにいるのか


うつを治したければ医者を疑え!うつを治したければ医者を疑え!
(2015/04/06)
伊藤隼也と特別取材班

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昨年の6月頃だった。友人が私に相談したいことがあるという。友人にはお子さんが2人いて、小学生の娘さんが摂食障害だということはきいていた。ただ私はあまり深刻に考えていなかった。元気で利発な女の子という印象しかなかったからだ。


ところがお昼ご飯を食べながら彼女の話をきくと、かなり切迫していることがわかる。今すぐにでも、体重の減少が食い止められなければ、入院になってしまうそうだ。


スクールカウンセラーに相談したけれど、「決めるのはあなたとお子さん自身です」と言うだけ。「カウンセラーは何のためにいるんだろうね」とため息をついていた。小学生のお嬢さんも、同じ理由でカウンセラーを信頼できないと言うそうだ。


●彼女が私に相談した理由


それほど切迫していた彼女が私に相談したのは、私が精神医療の被害者で、様々な活動をしてきたからだ。摂食障害の治療を専門に行うのは、思春期外来などで、多くの場合児童精神科医が治療に当たる。彼女は、向精神薬をはじめとする薬物に対して、抵抗を感じていたのだ。精神科にはできだけ行きたくないという。


●摂食障害のためのカウンセリング プロの栄養指導が危険なダイエットを加速させてしまった


スクールカウンセラーはいくつかの医療機関を紹介してくれて、都内の有名な医療機関でカウンセリングを受けたそうだ。彼女が当初望んでいたような、薬物治療をしない相談機関だった。


ところがこのカウンセリングが、お嬢さんに逆効果をもたらしてしまったという。


食事や栄養の話をきているうちに、「カロリー」という言葉を覚え、かえって「カロリーが高いから」といって、食べ物を拒絶したり、あるいは「カロリーを消費するため」と、必要以上に運動するようになってしまったそうだ。


●病気で痩せたのに、皆が「きれいになった」と褒めてくれた


お嬢さんが摂食障害になったきっかけはクラスの人間関係だそうだ。クラスの中に、「どうしても合わない」子がいるそうだ。そして小さな挫折感も関係しているそうだ。それは私たち大人からすると、笑い飛ばすほど些細なことだけれど小学生のお嬢さんにとったら「将来を悲観」するほどの挫折らしい。


そういうモヤモヤがあった時に、病気でしばらく学校を休んだ。久しぶりに登校した彼女に同級生がかけた言葉が「やせてきれいになったね!」だったのだ。クラス中の女子に褒められると、認めてもらったようで嬉しくなって、食事を制限するようになっていったそうだ。


●家族にも問題があるけれど


その他にも、彼女の家族はいくつかの問題を抱えていた。どこの家族にも多かれ少なかれ問題はある。もし精神科で正直に話せば、単に「診断名」にすり替わるだけかもしれない。かえってお嬢さんの健康からは遠のいてしまいそう。


「あまり詳しく話さないほうがいいよ。家族のせいだと言われてしまうから」と私は伝えた。その代わり私はいくつか対案を出してみた。「転校するのはどうか」「中学受験はどうか」ーーーー


ところがお嬢さんはすでに学校には通っていないという。行政に紹介してもらい、フリースクールのような場所で勉強しているそうだ。ずいぶん前から「無理して学校に行かなくてもいい」と伝えているそうだ。受験は金銭的なことは問題ないけれど、本人が公立を希望していると言われた。


●ネットの掲示板「思春期外来(精神科)に行かないとダメ」とすすめるが、完治した当事者の声はほとんど見当たらず…


そこで私はある本を手渡した。私自身学生時代ダイエットに失敗し摂食障害のような経験があり、怖さを知っている。いくら友達でも下手に共感したり、その反対に突き放したら症状を長引かせてしまうかもしれない。10年以上治らず、拒食症から過食症になるなんてこともよくある。だから私は今日のために、治療を行う医療機関について調べたり、知り合いにも問い合わせていた。


ところが、ネットで「小学生の摂食障害」で検索をすると、多くのレスがついた掲示板にたどり着くのに、肝心な治療の中身がわからない。どの回答者も「素人が口を挟める問題じゃない」「思春期外来へ行ったほうがいい」とすすめるのに、完治したという当事者の声はほとんど見当たらない…。


彼女が望むような、精神科が関与しない施設も近くにはないようだ。


このままではたぶん都内の医療機関(つまり精神科)にお世話になるだろうと予め用意しておいた。


続く
2017/04/10

超低出生体重児の育児 再び手紙を書いて送る ナショナルセンターは日本全国の子供たちのためにあって欲しい

●私が一番伝えたかったこと 日本全国の子供たちのことを考えて欲しい


『もりか』さんという西日本在住の超低出生体重児のお母様に非公開のコメントをいただき、忘れかけていたことを思い出した。


先日、森本学園の疑惑報道で終戦時の陸軍大臣阿南惟幾について書いた。阿南惟幾は同級生のお祖父様だったからだ。ブログにどの動画を使おうか考えている時に、池上彰さんが終戦までの経緯について詳しく解説している番組をみた。



池上さんが解説しているように、阿南惟幾は1945年(昭和20年)のちょうど今頃、戦争を終わらせるために誕生した鈴木貫太郎内閣の陸軍大臣に就任する。そして終戦記念日の8月15日に自害するのだ。陸軍の暴走を食い止めるために「世紀の自決」の道を選んだといわれている。


1945年(昭和20年)4月というと、日本はかなり追い詰められていた時期だ。3月11 日の東京大空襲で約10 万人の方々が亡くなり、4月にはアメリカ軍が沖縄に上陸した。民間人約9万人を含む約20万人の方々が命を失ったという。


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今も基地問題で揺れる沖縄の思うと、戦争は終わっていないんじゃないかと思ってしまう。


●見えない戦場に、目を向けて欲しい


一年ほど前、私にメールを送ってくださった超低出生体重児のお母様は沖縄の離島に住んでいらした。お子さんに障害が残ることがほぼ確定したため、将来をとても悲観していらした。離島には療育する施設などなく、検査などで病院に行くのも経済的な負担になる。いろいろなことを諦めなくてはいけないそうだ。


私のブログは「超低出生体重児 虐待」という検索ワードで上位に表示される。「超低出生体重児はすべての家庭に育てられるわけではない」ということを書いてきたからだろう。彼女も私のその言葉に、共感してくれたそうだ。


私は沖縄戦のすさまじい攻撃をみながら彼女を思い出していた。彼女の置かれた状況は、見えない戦場だと思うからだ。『もりか』さんの非公開のコメントも私の背中を押した。やっぱり成育に手紙を書こうと思った。


昨年の夏、成育の外来の看護師さんからお電話をいただき、「サマーフェスティバル2016」というワークショップに誘っていただいた。会議室を出る時に、看護師さんにご挨拶をすると私にこのようにおっしゃっていた。


「今日は外来にいらっしゃるほとんどの患者さんのお家にお電話をしたのですが、参加してくださる方が少なくて。どうして参加してくださらないんでしょう?」


あの時本当は、配られたアンケートに記入しようと思ったけれど、スペースが限られているので諦めてしまった。


たぶんその答えは、『もりか』さんや彼女のメールにあるだろう。


簡単にいうと、医療者が良いと思うことと、私たちが求めていることとの間にギャップがある、ということだ。


もともと参加しない患者さんはあまり切実に支援を求めてはいないのかもしれない。何か思うことがあっても、行動を起こすことは必要ないと思っているか、誰かがやってくれればいいと考えているのかもしれない。


問題なのは、コメントを書いてくださったような方々。切実な方は私のように、ワークショップに参加したり、意見など届けている時間や余裕がないだろう。国立成育医療研究センターは、我が国のナショナルセンターだ。本当は、私のような母親じゃなく、こういった方たちの声が届けばいいと思った。


理想かもしれないけれど、子どもの命や健康は、できるだけ平等に、そして格差がなければいいと思う。