2017/05/30

超低出生体重児の長期予後 微細運動や認知面での遅れは改善しないのか?

●中学3年生の超低出生体重児が書いた作文

少し古いけれど「超低出生体重児の長期予後 : 神経心理学的所見と神経学的微徴候」という報告書を読んだ。その中に気になる記述を見つけた。「超低出生体重児に限っては,幼児期早期の粗大運動の遅れはCatChupしうるが,逆に幼児期後期に微細運動の遅れや認知面での遅れや偏りがめだってくるような印象を受けた」と書いてあったのだ。


そこで今回、息子が『八甲田山死の彷徨』(新田次郎著)を読んで書いた作文を公開しようと思う。上記の「微細運動や認知面での遅れ」を、どのように改善したらいいのか、の1つの解決策になると思うからだ。


超低出生体重児のキャッチアップ こども小説『ちびまるこちゃん』から新田次郎著『八甲田山死の彷徨』へ その1

(私が添削した箇所を青字にしてあります)
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ただ公開するにあたり、私ははじめて悩んだ。


最近ブログへのアクセス数が急増しているからだ。息子のプライバシーを考えると公開することがいいことなのか即決できなかった。でも私たちはフォローアップで嫌な思いをしてきた。それを改善して欲しいと訴えれば、一度もあったことのない新生児科医師や小児科医にまで「障害があるんじゃないか」と言われ議論にすらならない。(そもそも、学会など公な場で議題として取り上げてももらえない!)


●長期予後の調査はそのほとんどが100人以下を対象とした小規模な調査 


私が受け入れることができなかったのは、今までの早期介入と早期支援が「善」だとされてきた「根拠」がよくわからないからだ。


超低出生体重児の長期予後に関する研究報告のほとんどは100人以下を対象とした小規模な調査。こちらの「エビデンスレベル分類・推奨グレード分類」という解説をみればわかるように、レベル1の規模に匹敵する報告はほとんどみたことがない。その上「それぞれの医療機関で行われる治療も同じではない。若干の違いがある」と教えてもらったことがある。


エビデンスレベル分類・推奨グレード分類
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小保方さんの研究への批判をみればわかるように、人々の関心の高い分野では同業者からの批判は当たり前だ。ところがこの分野では、研究のあり方そのものを問う、内向きの批判がほとんどなされてこなかったようだ。超低出生体重児自身が声をあげることがほぼ不可能ということもなんだか腑に落ちないし、納得できない。


いろいろな疑問はつきないが、とにかく私にはこれぐらいの根拠で「障害」だとはとても思えない。逆に「子どもの人生を、これだけの脆弱な根拠で決めていいのか」と疑問を持ち続けてきたよ。


ハイリスクフォローアップ研究研究会 第38回研究会 低出生体重児の発達フォローにおける発達行動観察ポイント
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このまま何も言わなければきっと改善されないだろう。


●思春期になって、つぶれてしまう子どももいるのでは?

息子が自分の力で完成させたこの作文は超低出生体重児の長期予後を考える上で、おそらく一石を投じるんじゃないだろうか?


専門家は早くから訓練をした方がいいというけれど、もしも子どもが思春期になった時に、疲れて息切れしたり、親に反発して親子の仲が上手くいかなくなったらどうするの?


子どもが自分ですすんでやりたいと言いだしたら、あっという間に取り戻せる『遅れ』もあるんだよ。もっと長期的な目で支援を考えて欲しい。



(昨年10月頃のテストの答案の文字)
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(現在の数学のノートの文字)
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●専門家でも「わからない」なら「わからない」と言うべき 中途ハンパなアドバイスなら、ないほうが良い

最後に、これだけはどうしても言いたい!


私は「発達アンバランス状況をいわゆる発達障害」だとする医療者の意見には大反対!!逆に、息子のような可能性を奪うこともあると思うからだ。


だってあの時、「軽度の学習障害」ということをすんなり受け入れたとして、じゃあ、どんな支援をしてくれたのだろう?


専門家のアドバイスって「毎日本を読み聞かせましょう」とか、「日記をつけましょう」とか、当たり障りのないことばかりじゃない。作文とは関係なくても、こうやって、小さい頃からスキーに連れて行き、


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手つかずの大自然に触れ合ったりしているから、雪中行軍遭難事件に興味を持ち、本を読み、みんなに教えてあげたいと思うようになったのだ。

(アメリカのヨセミテでとったクマと鹿の写真)
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専門家でも「わからない」なら「わからない」と言うべきだし、中途ハンパなアドバイスなら、はじめからないほうがいい。
2017/05/26

疑惑の『水口病院』のその後 実名報道とジャーナリズム 

●日本経済新聞に『水口病院』の続報が掲載される


「中絶 違法な手術なくせ 認識不足背景に 無指定医が執刀・入院設備不備」 日本経済新聞2017年5月25日
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昨日、5月25日の日本経済新聞の朝刊を開いたら、『水口病院』の続報が掲載されていた。警視庁は今年3月、母体保護法に基づく指定医の資格がないのに中絶手術をしたとして、水口病院に勤務していた医師2人を業務上堕胎容疑で書類送検した。あれからどうなったのかが知りたかった。


こちらはネットで配信されている記事だ。

◇  ◇  ◇
違法な中絶手術なくせ 医師の認識不足が背景  2017/5/25 0:43日本経済新聞 電子版

法令などに違反した人工妊娠中絶手術が相次いで表面化している。東京都武蔵野市の病院では母体保護法に基づく資格がない医師が22件の手術をしたことが発覚。横浜市の病院は十分な入院設備がないのに手術をしていた。中絶手術に対する医師の認識不足が背景にあり、日本医師会は講習会などで法令順守の徹底を呼びかける。

◇  ◇  ◇

記事によると、2人は調べに「院長に指定医の資格があれば自分もしていいと思った」と説明したため、捜査幹部が「産婦人科医にもかかわらず、母体保護法に対する理解が乏しすぎる」とあきれているのだそう。それもそのはずで、水口病院の2人の医師が行った違法手術は、2016年5月から9月までの4ヶ月間だけで22件にも上るというから私も驚く。


それでは問題になっている母体保護法とはどんな法律で、何のためにつくられたのだろう?


おさらいのために引用させてもらおう。「中絶について、経済的な理由などで妊娠の継続や出産が困難な場合に限って求められるという規定。担当医は地元医師会から指定を得るよう義務付けている。医療事故や安易な理由で中絶の横行を防ぐ狙い」があるそうだ。


ただ、全国にいる約1万人の産婦人科医のうち、中絶手術ができる指定医は全体の66%にとどまるそうだ。指定医をとらない理由は、「中絶手術をしたくないから」が最も多いという。(昨年12月のフライデーに掲載された、「年間20万件も行われている中絶手術を、1000人足らずの指定でこなせるはずがありません。そんな実態を無視して私どもをスケープゴートにした」という実質上の経営トップ吉田文彦氏の弁明とは食い違う)


●水口病院の問題に関心を持ったきっかけは、医療ジャーナリスト熊田梨恵氏の取材

ところで、私がこの『水口病院』の疑惑に関心を持ったのは、ブログで何度か触れたように、医療ジャーナリストの熊田梨恵氏の取材を受けたからだった。


取材後、熊田氏と何度かやり取りをしていくうちに、なんとなく彼女の姿勢に疑問を持ったのだ。ネットで熊田氏の過去の仕事を調べてみると一枚の写真がヒットした。熊田氏と水口病院の問題の理事長代行が2人で映る写真だ。どうやら熊田氏はかつて水口病院の広報として働いていたらしい…。そこで水口病院について調べていくと疑惑がいろいろある。


あるジャーナリストの名刺に記載された肩書きと住所の謎 疑惑の『水口病院』


●問題の本質は?

しかしネットに書かれている以上のことは私にはわからなかった。


大きく動いたのは昨年12月6日。医療ジャーナリストの伊藤隼也氏とフジテレビ、みんなのニュースが、スクープとして取り上げたのだ。


疑惑の『水口病院』 取材のきっかけは10年前の内部告発


当初はご遺族に同情する声が多くきかれたが、水口病院から抗議声明が出されると一変した。ご遺族や報道に対するバッシングが増えていった。


疑惑の『水口病院』 『エバハート事件』報道とフジテレビ 遺族はお金のために告発するのか? その1


バッシングが続く中で、私の心が痛んだのは、ごく親しい人しか知り得ない情報がネットで拡散された時だった。ネットではもうずいぶん前から、病院が情報操作をしているんだという噂があったが、真実はわからない。ただ、ご遺族の訴えには、反発もつきものだし予想はしていたけれど…、正直「ここまでされないといけないの?」といたたまれなかった。


疑惑の『水口病院』 水口病院のウェブサイトのドメイン登録者の謎 その1


この問題の本質は、記事のタイトルにあるように「(医療側の)認識不足」なのに。「産科の医療崩壊が加速するから」といって本質をみようとしない医療者も少なくない。亡くなった女性の個人的な事情を持ち出してまで、遺族側にも問題があるんだという医療者に、私はさすがについていけなかった。命に向き合うには「ならぬことはならぬ」という厳しさだって必要だと思うからだ。


このまま理事長代行の思惑通り「報道が悪い」「ご遺族は画策グループの手先」でウヤムヤに終わっていくのかなぁ。それでは、亡くなった女性だけでなく、先代の名医だったという院長先生も救われないんじゃないかとがっかりした。


◇  ◇  ◇
疑惑の『水口病院』 フライデー 無資格中絶死事件 水口病院は「死者が理事長だった!」を読んで その1

フライデー 無資格中絶死事件 水口病院は「死者が理事長だった!」 – FRIDAY(フライデー) 2017年 1/6・13合併号 2016年12月22日発売
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水口病院の関係者の話

「吉田は創業者の長女の亭主。医者ではなく、司法書士です。それが10年ほど前に2代目が病死したのを機に経営に介入。2代目には医者の息子さんがいましたが、吉田に追い出されたそうです。病院とは無関係の知人を理事長に据えて病院の実権を握った吉田は、待合室をアールデコ調にするなど、院内をゴージャスに造り替えました。歴代院長は誰も理事長と会ったことがないはず」

◇  ◇  ◇

●女性や胎児の命を扱う自覚をしっかり持つよう促したい

だから昨日、日経新聞を最後まで読んだ時、私は嬉しくなった。世の中には命に真摯に向き合う医師達がいるようだ。記事の最後はこのようにまとめられていた。

◇  ◇  ◇
医師会が対策

日本医師会は今年2月、「母体保護法検討委員会」を設置。全ての産婦人科医が指定医の資格を取るよう促す通知を早ければ6月に出す。指定医向けの講習会でも法令遵守の徹底を改めて指導するという。同会の今村定臣・常任理事は「女性や胎児の命を扱う自覚をしっかり持つよう促したい」と話している。

◇  ◇  ◇

●実名報道とジャーナリズム

以前書いたように私は熊田氏の『救児の人々』という本から、自分の章を削除してもらうかギリギリまで悩んだ。削除となると、出版社に負担がかかるからだ。


医療情報誌『集中』出版の不思議 その7 真実が知りたい ワクチンのプロモーションと『牧本事件』


どんな説明でもいいから、私は受け入れるつもりだった。熊田氏にはとにかく利益相反や、実名報道した理由などを説明して欲しかった。それをするのが「ジャーナリスト」だと思うからだ。


でも残念ながら、最後まで説明はなかった。


今でもモヤモヤした気持ちはなくならない。ただいえるのは、この時の経験がなければ、私はブログをはじめなかっただろう。昨日も弁護士さんに会いに行った。こうやってメディアをはじめ、いろいろな所に出かけて、様々な立場の方にお目にかからなかったはずだ。


ブログを書いて良かったと思えることがある。


水口病院の件では、水口病院で以前働いていた方から、先代の院長先生を気づかうコメントが届いた。牧本事件について書いた時には、牧本敦医師と一緒に働いていたという方だけでなく、牧本医師の患者さんのご家族、そしてご友人という方からも、心のこもったコメントが届いた。今もたまに届く。


たぶん、私の中には今でも割り切れぬ思いがあるのだろう。


心のこもったコメントをいただいたり、良い方向に変わっていくんだな、と実感できると、心が癒されるからだ。


実名報道は、社会的インパクトを与えるためだけにあるんじゃないと思う。バッシングされるんだったら、やっぱり世の中が良い方へ変わって欲しい。私は報道やジャーナリズムって、伝えるだけなく、そのためにあるんだと思っているから。


※「水口病院についての報道」というカテゴリーをつくり、一連の報道をまとめました↓

水口病院についての報道
2017/05/25

超低出生体重児の退院後の支援と訴訟リスク 『医療観察法国賠訴訟』を傍聴しに東京地裁へ

●この国の医療では何が起きているのか 傍聴席は8割ほど埋まっていた

昨日の朝思い立って『医療観察法国賠訴訟』の傍聴に出かけることに。


足を運ぼうと思った理由は2つ。


1つは他人事ではないからだ。将来、超低出生体重児が同じように法廷で訴えているかもしれない。被害を訴えている方をこの目で確かめたいと思ったのだ。そしてもう1つの理由は被害者を支援している弁護士さんに一度あってみたいと思ったからだ。


●弁護士は星の数いるけれど この弁護士さんにあってみたい!

今回被害者の支援している弁護士のお一人は、最近いくつかの医療問題で、マスコミに登場した方だ。弁護士は星の数ほどいるけれど行政の姿勢を変えてしまうような人はめったにいない。(個人的に、村中璃子氏の弁護士さんはちょっとありえないと思っている


どんな人なのか興味があった。


東京地裁は、丸の内線の霞ヶ関駅の出口からすぐ。この日は手荷物検査もすぐに終わり、法廷についたのは、裁判がはじまる15分ほど前だった。


中に入るとすでに数名の方が着席していらして、裁判がはじまる頃には、8割がた席が埋まってしまった。当事者とご家族と思われる方々が20名以上も。思ったよりも年配の方々だった。「何時に座り込みをする?」と相談する声がきこえた。皆さんとても一生懸命だった。


日本の精神医療では、何か深刻な事態が起きているのだろう。


裁判は10分程度で終了。エレベーター乗り場で、弁護士さんに声をかけた。挨拶をして名刺をいただいた。


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私は超低出生体重児の母親であることや、今、周産期医療では超低出生体重児の発達の遅れを、発達障害にしようとする流れがあることなどを伝えた。


●2人の医師の異なる評価

先日、友人の医師にメールを送ってなぜ、息子を発達障害だと思わなかったのか尋ねた。友人は幼い頃から息子を知っており、私が相談するたびに発達障害じゃないと言い続けてきたからだ。


するとこんな返事が返ってきた。


「(電車が好きで知識が豊富なことについて)あれだけ電車の知識がまとまって頭の中に入っているということは、他のことでも興味が湧けば能力をはっきすると思います」


●言葉は話せないけれど、大人の会話を理解している

私が発達検診を信用できないと思ったのは、あることがきっかけだった。


NICUで息子を担当して下さった新生児科の主治医は大阪出身だった。NICUを退院して最後に会いに行った時に「もうすぐ大阪に帰るんです」とおっしゃっていた。


当時息子は2歳ぐらいでまだしゃべれなかった。


しかし新生児科の主治医が口にした『大阪』という言葉に反応した。「ウ〜」と言って手足をばたつかせ興奮しはじめた。


その時に、この子は『大阪』が何を意味しているのか、わかっているんじゃないかと思った。


●病院の売店で買った絵本がきっかけ

私には思い当たることがあった。息子が『大阪』という言葉を覚えたのは、国立成育医療研究センターの地下の売店で購入した『しんかんせんのぞみ700だいさくせん』という絵本だろう。


私は息子が病院嫌いにならないように(注射や採血で痛い思いをするから)検診のたびに、地下の売店で絵本を買ってあげた。その頃、文字なんて読めなかったが、この『しんかんせんのぞみ700だいさくせん』の表紙が気に入り本棚から離れない。文字が多いから私は違う絵本をすすめたが「うん」と言ってくれない。仕方なく購入した。



しんかんせんのぞみ700だいさくせん (のりものえほん)しんかんせんのぞみ700だいさくせん (のりものえほん)
(2001/05)
横溝 英一

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それから毎日、毎日、1日に何度も読んで欲しいとせがまれた。


この絵本は、2人の小学生の男の子が、おじいちゃんにもらった切符で、憧れの東海道新幹線に乗るというストーリーだ。幼児向けの絵本とは違い結構長い。(アマゾンのレビューにも「○○系などという表現を使っているので、かなりマニアックで子供には覚えにくいく、読み聞かせる親も少し戸惑ってしまいます」と書いてある)


でも不思議だった。発達検診ではいつも遅れていると言われていたのに、読んであげると集中してきいている。絵本の内容もちゃんと理解しているようだった。


今までたびたびブログに書いてきたけれど、最後の発達検診の時に、積もり積もった不満が爆発して、私はこう言ったのだ。(※ 発達検診医は、新生児科の主治医とは別の医師です)


「いつも遅れがあるというけれど、先生はわかっていますか?この子は言葉が出ないだけで、いろいろなことを理解しているんです。例えば、東海道新幹線のぞみは特別な電車だということ。それだけじゃなく、どこからどこまで走っているのかまでちゃんと知っているんですよ」


すると発達検診医はハッとしたような顔をして沈黙した。私は「やっぱりわかっていなかったんだと」と思い、こう言った。


「この診察室でみせる顔は、この子の日常生活のほんの一コマで、それもよそゆきの姿です。この短い時間の『検診』で何がわかるというのでしょう?それにいつも『遅れている』とおっしゃいますが、遅れているのは3ヶ月程度で『療育』に行くほどではないと言います。じゃあ、どうすればいいかと尋ねると『おはじきをフィルムケースに入れて、つまんで出させる』だけです。そんなことを教えてもらうために、わざわざ半日かけてここに来る理由がわかりません。子どもは自分が疑われていることを敏感に察知しているから、検診に行くのを嫌がるようになりました」


発達検診医は私に何も言い返すことができず、「もう来なくてもいいです」と言ったのだった。


●超低出生体重児の退院後の支援 最悪のケースにも目を向けて欲しい

同じ息子の姿をみていても、友人の医師とは評価がまるで違う。


発達検診だけじゃなく、精神科での診察も同じようなもの思う。だって患者の人生の、ほんの「一コマ」しかわからないもの。
だから、お子さんが摂食障害で悩む友人に、「家庭の問題などは、あまり詳しく話さないほうがいい」とアドバイスしたのだ。


『うつを治したければ医者を疑え! 』と小学生の摂食障害 摂食障害を回復させたもの1


それで人生が大きく決まっていく場合もあるんだから恐ろしい。最近「病院しか知らない医療者が、決めてしまうのは怖いですね」という感想をもらった。その人が言いたいのも、こういうことだと思う。


超低出生体重児の退院後の支援を考えるのなら、専門家だという方々こそ『医療観察法国賠訴訟』のような裁判を一度傍聴したらいいと思う。私は退院後の支援にもリスクヘッジが必要で、最悪のケースをあらかじめ想定し、できるだけ回避しないといけないと思う。


小さく生まれた子供を社会でどう支えるか 「後記 その3」 私のこころにスイッチを入れた悲しい事件
2017/05/23

超低出生体重児の退院後の支援と訴訟リスク 『医療観察法国賠訴訟 傍聴のお願い』を読んで

●「医療的な治療の可能性がないのに」精神科病院に収容された?


明日、24日、東京地裁で「医療観察法国賠訴訟」が行われるそうだ。

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医療観察法国賠訴訟 傍聴のお願い 医療扶助・人権ネットワーク 
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超低出生体重児を育てている親としては大変興味深い裁判だ。


なぜなら原告は精神遅滞と広汎性発達障害という診断を受けている方で、「医療的な治療の可能性がないのに」精神科病院に収容されたと国家賠償請求しているからだ。


●超低出生体重児の退院後の支援と訴訟リスク

周産期医療に関わる医療者はよく考えたほうがいいと思う。


超出生体重児の発達のムラを「発達障害」だとする捉え方が主流になるとしたら、私は将来、裁判も増えていくんじゃないかと思っている。子どもに自己決定権があるように思えないし。


ためしに、私の考えをどう思うか知り合いに尋ねたら、「そうだよね」と皆頷いていた。中には「日曜日にNHKが放送した『発達障害~解明される未知の世界~』で言っていたことの方が正しいよ」と教えてくれる人まで。


NHKスペシャルの「発達障害」特集に反響「すごく共感できた」 2017年5月22日 17時30分 livedoorニュース


専門家の報告書には、24週以下の子供たちは、予後が悪いというようなことが書かれているけれど、発達検診からドロップアウトした子ども達の中には上手く成長したお子さんもいるでしょう?それこそ不妊治療の有無から調査し、大規模で正確な数字を出さないとなんともいえないよ。


●まるで『宗教』のよう

息子に限っていえば、発達検診医の「早期発見・早期介入」というはじめに「介入」ありきの考え方は間違いだと思う。なぜなら、まだどうなるかわからないのに、いつも遅れを指摘したら、不安をかきたてるだけし、早期に訓練すればいいというものでもなかったからだ。夫が主張してきたように、「子どもにはそれぞれタイミングがあり、適切な時期まで待たないといけない」が正しいだろう。


超出生体重児の発達のムラを「発達障害」だとすると、息子のような子どもも「発達障害」になるんだろう。でもそれは本当に良いことなの?チェックリストをみても息子に当てはまる項目はほとんどないのに、「診断のつかない発達障害もあるんです」って、なんだそれ!?という感じ。「(子どもと親が)生活がしづらい、育てづらいと感じるなら『発達障害』」ということになると、これはもう『宗教』というしかない!


私が国立成育医療研究センターに手紙を送った理由 

「早産・低出生体重児のより良い発達を支援するために」を読んで 「後遺症なき生存」への違和感


●精神医療の被害者のために登壇する児童精神科医や臨床心理士

私はそういう考えにはついていけないけれど、それでもすすめていくというのなら、将来、訴えられるリスクは覚悟したほうがいいと思う。


なぜならこの裁判に限らず、精神医療の被害を訴える方は増えているからだ。各地で行われる支援団体が主催する勉強会はどこも盛況だ。それも数年前までは、被害者と支援者だけだったが、最近は精神科医も普通に参加するようになった。つまり支援者自身も、今までの支援に疑問を持って声を上げ始めているのだ。

◇  ◇  ◇
公認心理師は「発達障害」をどこに導くか 公開 · 主催者: 臨床心理学déconstruction

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◆パネリスト(50音順)
門眞一郎さん (児童精神科医)
酒木 保さん (臨床心理士・宇部フロンティア大学)
高木俊介さん (精神科医・ACT-K)
中川 聡さん (全国オルタナティブ協議会)

◆発題要旨
門 眞一郎  (児童精神科医・京都市児童福祉センター)
「 発達障害における薬物療法の位置」
 発達障害に対する薬物療法の位置は、「障害」を医学モデルで考えるか社会モデルで考えるかで大いに違ってくる。
 発達障害は、「生まれつき脳の一部の機能に障害がある」という表現がよくされる(e.g.厚労省ホームページ)が、それは医学モデルによる考え方である。
 社会モデルで考えれば、いわゆる発達障害とは、生まれつき多数派とは異なる脳機能のタイプ(脳の情報処理の仕方)が、環境(社会)との関係の中で生じる事態であり、社会的障壁のために、日常生活又は社会生活に制限を受けている状態と考えられる。つまり、社会の側の対応次第で「障害」になったり、「個性(特性)」にどどまったりする。そのことを説明するために、自閉(症)スペクトラムのダイナミック氷山モデルを提案する。
◇  ◇  ◇


●超低出生体重児は、社会にもまれて成長する それは本当に子どもの障害なのか?

被害を訴える当事者の中には「親に精神科に連れていかれた」という人たちが少なくなかった。そういう人たちが必ず口にするのは「親は僕(私)を病気や障害だと決めつけていたけれど、悪いのは親のほうだ」だ。


このブログを読んでくださっている方の中には、私と同じような未熟児の親御さんもいることだろう。我が子は「発達障害なのか」と悩んでいて見つけてくれたのかもしれない。


私は息子のような未熟児(医療的なケアを日常的に必要としない)は、医療的な支援から、徐々に社会的な支援へと移していくべきだと考え、実行してきた。


未熟児に限らず、子どもは社会的な経験を重ねて成長していく。でも、ある日突然未熟児の親になると、頭でわかっていても不安で一杯の毎日で、視野がどうしても狭くなってしまう。


私は未熟児の成長とは、例えるならこのブログのような感じだと思う。


私のブログは「超低出生体重児」の関連ワードで検索すると、上位に表示される。でもそれはたまたまそうなっただけで、はじめから狙って書いていたわけじゃない。


私がブログをはじめたのは出産後、10年以上経ってからだった。「超低出生体重児」が産まれて数年間は、育児に悩んでいたため私の関心は周産期医療にあった。もし出産直後からブログをはじめていたら、育児ブログだっただろう。


しかし息子の成長とともに、私の視野も広がっていった。そのためブログの話題は医療以外のことが多い。(例えば「八甲田山 雪中行軍遭難資料館」「一畑電車 京王線」「アルジェリア人質事件」「唐茄子屋政談」など)


つまり、「超低出生体重児」について書いた過去の記事は、長い時間をかけ上位に表示されるようになったのだ。それこそ、「八甲田山の雪中行軍遭難資料館」「アルジェリア人質事件」に興味を持った方々がアクセスして下さったおかげで、上位に表示されているのかもしれない。


未熟児の発達だって同じだと思う。「これをしたから」というものではなく、たくさんの社会経験を通してじょじょに成長していくんじゃないのかな?私はそう考えているから、医療や医療者にいつまでも頼らず、あるところから自立していくべきなんだと思っている。


というわけで、私は友人の医師が私に言ったように「障害にするのは、最後の手段にすべき」という考え方を支持したい。
2017/05/19

超低出生体重児の心の発達 村上春樹の『アンダーグラウンド』を読む 

●村上春樹の『アンダーグラウンド』と、こころのケア

息子と英語の教科書を読んでいたら、『Haruki Murakami』という名前が出てきた。

◇  ◇  ◇
アンダーグラウンド (講談社文庫) 文庫 – 1999/2/3
アンダ-グラウンドアンダ-グラウンド
(1997/03/13)
村上 春樹

商品詳細を見る

内容紹介

1995年3月20日の朝、東京の地下でほんとうに何が起こったのか。同年1月の阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄サリン事件。この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、62人の関係者にインタビューを重ね、村上春樹が真相に迫るノンフィクション書き下ろし。

内容(「BOOK」データベースより)

1995年3月20日の朝、東京の地下でほんとうに何が起こったのか。同年1月の阪神大震災につづいて日本中を震撼させたオウム真理教団による地下鉄サリン事件。この事件を境に日本人はどこへ行こうとしているのか、62人の関係者にインタビューを重ね、村上春樹が真相に迫るノンフィクション書き下ろし。

◇  ◇  ◇

息子は村上春樹さんをもちろん知らない。


そこで村上さんは日本の有名な作家で、ノーベル文学賞候補の常連であることなどを教え、『アンダーグラウンド』を読んでみないかすすめた。


『アンダーグラウンド』は地下鉄サリン事件の被害者とご家族のインタビューを収めたノンフィクションだ。


このブログは、『こころのケア』への疑問からうまれた。地下鉄サリン事件から20年の節目に書いた「『アンダーグラウンド』と『こころのケア』」という記事へのアクセスはいまだに多い。


『アンダーグラウンド』と『こころのケア』 地下鉄サリン事件から20年 


●PTSD治療の権威が診察室の中で起こした暴力事件

日本で心のケアが重視されたきっかけは、「阪神淡路大震災」と「地下鉄サリン事件」だったと思う。村上さんは、『アンダーグラウンド』の最後で、精神科医の河合隼雄氏と対談していた。村上さんが届けてくれた被害者とご家族の証言は、PTSDや心のケアについて考えさせるのだろう。出版されて長い年月が経った今でも、『アンダーグラウンド』はAmazonの事件・犯罪関連書籍のベストセラー1位を獲得している。当事者の声は静かに世の中を変えていくんだと思っている。


でも、村上さんはその後、PTSD治療が上手くいったのかはご存知ないんだろう。PTSD治療の権威が、PTSD患者を殴って裁判になったりしているんだよ。重要性を伝えるなら、その後どうなったかも検証しないといけないと思う。


●仕事熱心で優秀な医師が、地下鉄サリンの実行犯に変貌した理由

PTSD治療についてはさておき、息子ははじめ、『八甲田山死の彷徨』と同じように「怖い」と『アンダーグラウンド』を手に取ろうとしなかった。


新しいことや物になかなか飛びつこうとしない、思った通りの反応だった。そこで数ある村上作品の中で、なぜ私が『アンダーグラウンド』をすすめるかを伝えることにした。



息子は幼い頃からニュースが好きだった。そんな息子の心に届くようにこのように言ってみた。


「日本でオリンピックもあるし、無差別テロ事件がいつ起きてもおかしくないんだよ。お祖父ちゃんが働いていた会社がテロに巻き込まれてニュースになったでしょう?だからサリンがどんなもので、どんな人たちが、どこでどんな被害を受けたのか知ることはとても大切なんだよ。自分の身を守るためにも、目を背けないで知ることが大切でしょう?地下鉄の駅員さんの中には、サリンとは知らずにいつものように一生懸命掃除をして、亡くなってしまった方もいるんだからね」


少しは心が動いたようだ。


そこで次に、サリン散布の実行犯、 林郁夫受刑者について話した。彼が医師だということを知れば、興味を持つだろうと思ったのだ。息子が幼い頃から慕っている子どもクリニックの先生は林受刑者の後輩だったからだ。


私は林受刑者の経歴を教え、このように説明した。


「サリンで人を殺そうとした殺人犯をよくみていくと、一人一人は、決して極悪非道な人じゃないんだよ。事件当時、私たちを一番驚かせたのは実行犯の中に、●先生と同じ大学の医学部を出たお医者さんがいたからなんだよ」


息子はハッとして「どうして?」と尋ねた。


「林受刑者はまじめなお医者さんだったけれど、まじめだったからこそ、いつしか『医療では人を本当に救えない』と悩んでいったみたい。ただ、悩むのは林受刑者だけじゃないよ。救命救急や高度医療に携わるお医者さんは、同じような悩みを抱える人が少なくないときいたことがある。でも、ほとんどの人は悩んでも一線を越えたりしない。だから、私は言い訳だと思っている」


幼い頃から、病院に通っていた息子は、病院や医師に悪い感情を持っていない。家に遊びに来る友人もお医者さんがいる。私の説明にやはり心を奪われたようだ。


●なんで私たちを苦しめるのか、その心が知りたい


私が息子に熱心にすすめたのは、もう一つ理由があった。息子は医師と病院は好きだけれど、どうしても嫌いで泣いたのが発達検診だった。だから読ませようと思った。


私はベビーサイエンス ターゲット論文 「早産・低出生体重児のより良い発達を支援するために」を読んだ時に、なぜか頭に、林郁男受刑者のことが浮かんだ。


「(特に24週以下の超低出生体重児の)予後が悪いんだ」ということが繰り返し書いてあるからだ。


「それならなんで私たちを救命するのだろう。命が助かったために、直面しなくてはいけない苦しみだってあるのに」という疑問が沸き起こったが、一方でこういうものを出すくらいだから、実は医療者が一番悩んでいるのかもしれないと思った。その時にふと思い出したのが、林郁男受刑者のこの言葉だった。


◇  ◇  ◇
「私はもう、先生じゃないから」地下鉄サリン“自首”元エリート医師「林郁夫」が法廷で露にした“怒りの表情” 2015.2.22 17:00 産経ニュース

地下鉄サリン事件解明の突破口

慶大医学部を卒業後、米国の名門病院などで勤務し、国立病院の医長を務めた経歴を持つ元心臓外科医。誠実さと手術の技量の高さが評判だったという。昭和の大スター、石原裕次郎さんの治療に当たったこともあった。

「常に患者の死と向き合わなければならず『どうしてこの人が死ななきゃいけないのか』などと考えるようになった」と、かつて林受刑者自身の公判で仏教に興味を持つようになった経緯を語っていた。麻原死刑囚の著書を読んで平成元年に教団に入信し、翌年に家族4人で出家した。

優秀な医師としての手腕を買われて「治療省」大臣を務めた。脱会や戒律違反を摘発するため、麻酔薬で半覚醒状態にした信者に尋問する「ナルコ」という方法を考案。頭部に電流を流し、教団に都合の悪い記憶を消す「ニューナルコ」も考え出した。当時の林受刑者について、元教団の女性看護師が自身の公判で「林さんは独善的で、言い返すと殴られた」と献身的な医師としての姿からの変貌ぶりを証言したこともあった。

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これまでいろいろあったけれど、息子が『アンダーグラウンド』を熱心に読む姿は感慨深い。こんなに早く、この本を読めるようになるなんて、思いもしなかった。
2017/05/18

超低出生体重児のフォローアップと『八甲田山死の彷徨』 私が抱えてきた不満 

●育児ブログにしなかった理由 専門家に考えて欲しいから

このブログは、「超低出生体重児」のいくつかの関連検索ワードで検索すると、(例えば「超低出生体重児 虐待」「超低出生体重児 フォローアップ」「超低出生体重児 就学」)上位に表示される。


私のブログが上位に表示されるのは、超低出生体重児の退院後の支援のあり方に疑問を持つ人たちが少なからずいるからだと思っている。


もともと私が育児ブログではなく、こういう形(社会問題を取り上げる)にしたのは、専門家だという人たちに考えて欲しいからだった。


先週、息子の『八甲田山死の彷徨』(新田次郎著)の感想文が完成した。


昨年の夏休みの人権作文はほとんど私が書いた。あの頃は作文を書く力がなかったからだ。ところが1年も経たないうちに息子は『八甲田山死の彷徨』を自分から読みたいと言い出し、その感想を原稿用紙二枚にまとめた。母親の私も想像できない成長だ。


●『八甲田山死の彷徨』のストーリーは、超低出生体重児の退院後の支援に似ている…

連休中、家族で久しぶりに映画をみた。私は『八甲田山死の彷徨』のストーリーが、なんだか超低出生体重児の退院後の支援に似ていると思ってしまった。





●高倉健さん(徳島大尉) 上官に「生きて帰って来れないだろうから 自ら志願した若い兵士を集めたのです」と言い返す

『八甲田山死の彷徨』は、1902年( 明治35年)に実際におきた、世界山岳史上最大といわれる事故を元にした小説だ。映画では、高倉健さん演じる徳島大尉の31連隊と、北大路欣也さんが演じる神田大尉の第5連隊の2部隊が、競い合いながら冬の八甲田山を目指す。


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小説や映画が多くの人たちの心を捉えたのは、この2部隊が、対照的な運命をたどるからだ。


高倉健さん演じる徳島大尉は時間をかけて綿密な調査を行い、死者が出ることも覚悟し準備をすすめた。地元出身者を中心とした少数精鋭で隊を編成し、現地の方に案内人を頼み、無理な移動ははじめから予定していなかった。映画の中で、「どうしてこんなに少ない人数なんだ?これでは中隊どころか小隊ともいえないじゃないか!」と上官に厳しく問われると、「生きて帰って来れないだろうから 自ら志願した若い兵士を集めたのです」と堂々と言い返す。


一方北大路欣也さんが演じる神田大尉は総勢210名という大部隊を率いた。大量の食料などの荷物をソリに乗せ、運搬するという計画だった。スキーに行ったことが一度でもあれば、この計画の無謀さがわかるだろう。ただ北大路欣也さん(神田大尉)もそれほど愚かな指揮官ではなかったようだ。高倉健さん(徳島大尉)と同じように下調べもしたし、現地の案内人も頼む予定だったが、彼は上官に立ち向かえなかった。「日本軍たるもの、民間人の力など必要ない!」と却下されてしまうのだ。


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幸畑墓苑・『八甲田山雪中行軍遭難資料館』 悲劇の記録 その3

二隊のルート


青森第5連隊行軍経路(神文吉大尉 遭難) 

弘前第31連隊行軍経路(福島泰蔵大尉 無事帰還)


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第五連隊は八甲田山の北側を南下して田代新湯に向かう一泊行軍、第三十一連隊は弘前から十和田湖の南湖畔をかすめながら三本木(現・十和田市)に出て、さらに西進北上して八甲田山(田代方面)を声、青森に出た後に弘前へ戻るという、十一泊の長距離行軍でした。


二隊の編成の違い



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(無事帰還した弘前第31連隊)
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これは高倉健さん(徳島大尉)が上官に、冬の八甲田の厳しさを訴えるセリフだ。


調査をすればするほど恐ろしい。日本海と太平洋の風が直接ぶつかり、冬の山岳としてはこれ以上はいない、最悪な地帯です。おそらく今後、30年、50年、いや、100年経っても、冬の八甲田はがんとして人を阻み、通ることを許さないかと思います。


私が、この映画が超低出生体重児の退院後の支援に似ていると思ったのは、このセリフだった。「(24週以下の)超低出生体重児の長期予後について、調べれば調べるほど恐ろしい」と言い換えることもできると思うからだ。先日紹介した「早産・低出生体重児のより良い発達を支援するために」を読んだら、そんな感じがした。


●違うと思うことには、違うと言いたい!

でも超低出生体重児がどのように成長するかは、まだわからない。いくら大勢の人たちが集まって支援を考えても、それが正しいとは限らないのだ。リーダーである専門家が道を迷ったら、多くの母子が遭難するだろう。


私は高倉健さんのように相手が専門家でも違うと思ったら違うと言いたい。これからも少数(精鋭)でがんばろうと思う。
2017/05/14

「早産・低出生体重児のより良い発達を支援するために」を読んで 「後遺症なき生存」への違和感

●超・極低出生体重児は、正期産児に比べ、顕著に発達予後が悪い

早産・低体重児の発達のムラは『発達障害』という考え方がどこからくるのか調べているうちに、ある報告書をみつけた。早産・低出生体重児の病態と障害の関係と、早期から適切な発達支援を行っていくための指標や課題についての研究報告だ。

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ベビーサイエンス ターゲット論文 「早産・低出生体重児のより良い発達を支援するために」

低出生体重 児の発達予後として、精神遅滞と脳性麻痺以外の発達障害も発生率が高いことがわかってきた。代表的 な発達障害には、広汎性発達障害(自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群)、注意欠陥/多動性障 害、学習障害などがある(発達障害の区分として、法令・行政上では発達障害支援法において知的障害 や脳性麻痺が除かれている)。超・極低出生体重児と正常体重で出生した新生児の注意欠陥/多動性障害、 学習障害の発生率をまとめたものを表2 [8-19]に示す。超・極低出生体重児は,正期産児に比べ,顕著 に発達予後が悪いことがわかる。また、NICUに入院した児に広汎性発達障害の発生率が高いこともわかってきている[20-22]。ただし、超・極低出生体重児と正期産児では、同じ発達障害でも行動上の特質や程度に違いがある可能性が高い[23]。

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●私の最終目標は子どもを自立させること

私はこの報告書を読んでいくつかの違和感を覚えた。真っ先に考えたのは「キャッチアップ」の捉え方だ。夫は教科書や論文などに記載されている年齢よりも、本当はもっと遅いだろうし、個人差も大きいだろうと言っていた。


私もそう思う。


そもそも今までだって、息子をもっと速く走らせようとすればできただろうし、勉強だって、できただろう。でもそうしなかったのは、子どもは親の所有物じゃないからだ。子どもはいつか親から自立しないといけない。だから「やらせてできる」じゃダメなんだと思ってきた


超低出生体重児には自然や人との触れ合い(社会経験)も大切なんだよ。私たちは息子が小さい頃あちこち出かけた。新田次郎さんの「八甲田山死の彷徨」を読んだのは、幼い頃からスキーをしていて、冬の寒さを知っているからだろう。


●私の孫は何度も自殺未遂を繰り返し、今は大学病院のベッドで眠ったまま…

私はこの報告書に限らず、超低出生体重児の長期予後に関する論文などを読むたびに、精神医療の被害者の勉強会に参加した時のことを思い出す。参加者の中に、お子さんのことで悩んでいる方が多いからだ。例えば、「中学受験をして有名校に進学したのに、引きこもりになってしまった。精神科にかかっても、薬が増えていくだけで、先が全くみえません」という親御さん。お子さんはご両親を恨んでいるそうで、会話が全くないという。また、お孫さんが何度も自殺未遂を繰り返し、ある大学病院の児童精神科で、昏睡状態という年配の男性の話には、会場が静まり返った。


超低出生体重児はメディアでは、「小さく産まれても大きく育つ」みたいに伝えられているけれど、実際はずいぶん違うみたい。こういう報告書を読んだ親が不安になり、子どもが追い詰められたらどうするんだろう!?もともと超低出生体重児は、虐待されやすいと指摘されているのに矛盾を感じる。


ただ(報告書を読んだ)私の率直な感想は「育てたことがない人たちの意見」だった。「じゃあ、どうすればいいのか」という解決策や子どもの自己決定権などにほとんど触れていないから。


●周産期医療では、子どもの人権についてきちんと議論されてきたのか

超低出生体重児の長期予後に関する大規模な調査をするなら、本当は不妊治療の有無だって取り込まないないといけないんだと思っている。ただ、周産期医療では高度生殖医療の議論などをみても、親の考えが優先されがち。子どもの人権については、これまできちんと議論されているとは思えなかった。中には産まれたお子さんに治療について教えない親御さんもいるようだけれど、これから遺伝子の時代になるといわれている。「子どもの知る権利」が認められるようになると、混乱するんじゃないかと思っている。


◆  ◆  ◆
2011年2月9日 第2回小児がん専門委員会議事録 【参考人意見聴取】2 医療における子どもの権利等について 増子参考人のご発言を一部引用

(※ 増子孝徳氏は日弁連の人権擁護委員会の医療部会に所属し、人権擁護活動をしていらした弁護士で、尚かつ、お子さんが小児がんの経験者だそうです)

増子参考人

医療における子供の権利もしくは人権ということで、あえて申し上げなければならないのには一つ理由がございまして。皆さん患者の権利とかあるいは子供の権利というふうに切り分けますと、それぞれきちっとした専門家といいますか、日ごろ活動している方がたくさんいらしていろいろな主張がなされているわけでございます。


しかしながら、これが子供さんであるということになりますとちょっと状況が変わってくると。それはなぜかといいますと、まず患者の権利といいますのはいろいろありますけれども、メインはやはり自己決定権を中心としたものでございます。ところが、子供であるからというようなことが理由となって、説明もいいかげんであったり、ましてやご本人さんの決定を得るというふうなことがなかなかなされないという傾向がございます。


それから、子供ということですと、ご案内のように子どもの権利条約ものがありまして、成長発達権を中心としたもろもろの子供の権利というものが定めされておりますけれども。再三指摘されているように、入院中であるから、あるいは患者なんだから、病気なんだからということでいろいろな制約があるわけでございます。


そういった中で、遊びへの参加ですとか、教育への参加というものが顕著に制限されていると言っていいかと思います。こういったことはしばしば問題として指摘されながらも、これが人権であるという認識にまでなかなか至らないものですから、ついつい後退していくという傾向があろうかと思います。


そこで、この二つをきちんと見据えて、医療を受ける子供、つまり患者でありかつ子供であるという、こういう二重に弱い立場に着目をして、医療における子供の人権もしくは権利という考え方をきちっと認識する必要があるだろうというふうに思っております。

◆  ◆  ◆

●「かもしれない」で、人生が大きく変わってしまう可能性がある 

また『発達障害』に関しても疑問が残る。超低出生体重児を救命するのは、自然の摂理に逆らうことでもある。脳になんらかの影響が出るだろうということまでは理解できる。でもその先がよくわからない。子ども達の発達がゆっくりなことを、「いわゆる診断名のつかない超・極低出生体重児」「同じ発達障害でも 早産・低出生体重児は正期産児と行動上の特質や程度に違いを持っている可能性が高いため」と結論付けようとする理由だ。発達がゆっくりで勉強ができないと、なんだかこれからは「発達障害」になってしまうみたい。


専門家が想定している支援とは、特別支援学級や特別支援学校での教育かもしれないけれど、超低出生体重児が必ずしも適切な教育が受けられるとは限らない。まだ実態が解明されていないのに、「かもしれない」で決めてしまうと、子どもの人生を変えてしまう大きく可能性があるよね。先ほどの増子弁護士がおっしゃっていた子どもの権利条約の「成長発達権」が阻害されてしまうんじゃない?私は24週以下の子ども達の中に、時間をかけて教育すれば、伸びていく子どもが、専門家が考える以上にいるんじゃないかと思っているけれど。。



●早期介入・早期支援にも弊害がある

最近、ある研究者が私に言っていた。「私のところに発達障害だという学生がきた。小さい頃から親御さんが熱心で、訓練や療育を受けてきたそうだ。でも、なんだかマニュアルに書いてあることをそのまま受け答えるするような感じで、コミュニケーションがぎこちない。結局、就職はできなかった。あの学生をみていると、今の支援がいいのかよくわからない」





専門家といわれる人たちの報告書を読むといつも思う。物事には、光があれば影もある。早期介入と支援の弊害に目を向けようとしないのはなぜなんだろう。


●「後遺症なき生存」は、形を変えた優生学のよう

この報告書を読んだ感想を一言でまとめると、「日本の周産期医療は一度立ち止まって、考えたほうがいいんじゃないか」だった。周産期医療が目指してきた「後遺症なき生存」が、なんだか形を変えた優生学のように思えてしまったからだ。
2017/05/10

超低出生体重児の教育支援 『巨人の星』と『スロージョギング』

●子どもは半年もすればガラッと変わるのに 小さく産まれると大変だね


先日ブログに国立成育医療研究センターに手紙を送った理由を書いた。


何度か触れてきたように、私は神奈川県ではじまるゼロ歳からはじめる未病対策~早産・低体重児における電子育児応援ナビゲーションシステム (神奈川県未病検診研究事業)に疑問を持っているからだ。


息子を知っている人は息子が『発達障害』じゃないと思うからだろう。反響が大きく驚いている。代表的な意見はこんな感じだ。


「子どもは半年もすればガラッと変わるのに。小さく産まれると大変だね」
「外の世界をあまり知らないお医者さんたちが支援を考えていくと、こういうことになってしまうんですかね?」



●スポ根アニメ 『しごき』は『虐待』と何が違うのか


そこで、夫が言っていた「子どもの成長は長い目でみないといけない」をもう少しわかりやすく説明しよう。こちらは1966年から1971年まで『週刊少年マガジン』に連載された、『巨人の星』というスポ根アニメ。主人公の星飛雄馬は、巨人軍に入団するために、父の星一徹に英才教育を施される。


新・巨人の星 第42話 父一徹の贈り物 Full HD 2015
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『巨人の星』といえば、大リーグボール養成ギブスをはじめ、毎回、ビックリするような方法で、父の星一徹が息子をしごく。私はこの『巨人の星』のせいで、スポーツが嫌いになってしまった。スポ根アニメに代表されるような、『しごき』と『虐待』の違いがわからないからだ。


運動生理学が専門の夫は、新聞のインタビューで答えていたことがある。偶然にも、夫が研究者の道にすすんだのも「因襲的なしごきに疑問を感じたから」だそうだ。


最近、面白いことを私に教えてくれた。


●『巨人の星』は受け付けないのに、『スロージョギング』にはまる…


こちらは夫の大先輩、田中宏暁福岡大学教授が提唱する「ニコニコペース」や「スロージョギング」を紹介する動画だ。「ニコニコペース」や「スロージョギング」はテレビや雑誌で何度も取り上げられ、とても人気がある。




実は私も田中先生を紹介する記事を読んで、ジョギングをはじめた一人だ。「私でも、フルマラソンにいつか出られるのかも!」と思ったのだ。私がスポ根が大嫌いなことをよく知っていた夫は、ジョギングをはじめた私にこう言った。


●辛い運動 イヤイヤやるのか、やりたいからがんばるのか


「僕は学生時代からスポーツをしてきたから因襲的しごきに疑問を持ってきた。だから大学院にすすんだ。研究をすれば、もっと楽にトレーニングをする方法を見つけられると思ったからだ。


でも研究してわかったのは、厳しいスポーツは、結局、ある程度のトレーニング量をこなさないと上手くならない、ということだった。


(あなたのように)田中先生の本を読んだり出演するテレビをみると、やりたくなるでしょう?でも考えてごらんよ、マラソンは誰もが気軽にできるお手軽なスポーツじゃない。


スロージョギングも実は同じなんだよ。ある程度の運動量をこなさないと、マラソンを完走することはできないんだよ。


田中先生はご自身が優秀なアスリートだったんだよ。教員としても優秀な方だから(あなたのような人にも)『私もできるかも!』『私もやってみよう!』と思わせてしまうんだよ。」



う〜んなるほど。。


これは息子にも当てはまるだろう。昨年、私の知らないところで字を上手く書けるように、練習をしていたようだから。


●学校生活は超低出生体重児の心と体の成長にあっているのか


私は超低出生体重児は、私たちとは違う時間軸で成長するんだと思っている。


だから、一時的に勉強が遅れ、同級生との差が開いたとしても仕方がないと考えてきた。


でも学校生活は集団生活だから、待ってくれない。一人の子どもには合わせられない。



どうしたらいいんだろう?


もちろん、訓練は必要で大切だ。でも、本当はこうしたことだって議論すべきじゃないの!?

2017/05/08

超低出生体重児の成長を促したもの 人は支え合って生きている

●人の優しさに気づかないようじゃ、人としてダメ!


やる気のない息子が変わったキッカケは、昨年2学期の社会の期末テストだった。


私はテスト前に、息子と教科書を一緒に読んでいる。まず、息子に音読させ、次に太字で書かれている重要な用語について説明している。


はじめは嫌々つきあっている私だったが、子どもの頃から社会が好きで、社会問題には関心がある。面白いな〜と、いつも引き込まれてしまう。


今の教科書には、私たちの頃にはなかった、身近かなテーマが取り上げられているからだ。例えば、このように高知県の馬路村がかなり大きく取り上げられている。なかなか面白いでしょう?

(中学社会 地理 地域にまなぶ 教育出版)
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友人の医師は高知県に住んでいる。息子が産まれた日、夫がメールを送ったら、すぐに「命名ソフト」を送ってくれた。メールには「僕の友達には、産科医や新生児科医もいるから、いろいろ教えてもらいました」という言葉が添えられていた。


赤ちゃんの頃から息子をずっとかわいがってくれたので、息子はとてもなついている。


テストの数日前も学会が東京であり、我が家に遊びにきたばかりだった。それも教科書に出ている、馬路村のポン酢を持って!「僕ねぇ、はじめてこのポン酢を知った時、あまりに美味しくて驚いたんですよ」と言っていた。すごい偶然だ。

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馬路村 公式通販 - 馬路村農協 1000人の村ぽん酢しょうゆ

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馬路村のポン酢は、東京でも有名な商品だ。母が高級スーパーでみつけて買ってきたのは随分前だった。「過疎の村の人たちが創意工夫と努力を重ねると、こういう美味しいものが出来るんだ!すごいな」と感心したものだ。まるで逆転満塁ホームランのようだから。


●高知県の馬路村 なぜ、社会の教科書が高知県の過疎の村を取り上げたのか 


ところが息子は教科書がなぜ、高知県の小さな村を取り上げているのか考えようとしない。それどころか、『馬路村』が高知県にあることも覚えていない。


私はがっかりして、怒ってしまった。


「あのねぇ、つい先日、高知県から馬路村の特産物を持ってきてくれたばかりだよ!何も覚えていないの?信じられない!高知県にも行ったことがあるでしょう!?馬路村は若い人たちが都会に出てしまって、お年寄りばかりになってしまったんだよ。だから一生懸命考えて商品をつくってがんばっているんだよ!都会に住んでいる私達は、地方から入ってくる農作物などがないと生きていけないじゃない。だから、地方の過疎の村で暮らすお年寄りのことをもっと考えないとバチが当たるよ!」


数日後、テストが終わり答案が返された。


息子の点数は相変わらず低いけれど、私はビックリした。記述問題にはじめてチャレンジしたからだ。担任の先生が社会科を教えているからがんばったそうだ。6点のうち、半分の3点をつけてもらえた!


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問題
中国四国地方の過疎地域について次の設問に答えなさい。
過疎地域に対してできることとして授業の中で3つの対策について取り上げた。あなた自身が最も過疎地域のためになると考える対策はどれか、ひとつ選んで答えなさい。ただし、その対策をすることによる、「メリット」と「デメリット」を踏まえた上で記述すること。
   
 ⭐︎過疎地域に対してできること
  1.  高齢者が生活しやすいよう、国や市から援助を行う
  2. 人口が減少している市町村同士を合併させる
  3. 地域おこしに取り組み、地域を活性化させる


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(※ 今はこの頃よりも、字が小さくきれいになりました)

選んだ対策 3
理由 地域おこしをして、その村の人達を元気づけたいから選びました。地域おこしをすることによって、ほかの町からたくさんの人がきてくれてうれしいと思ったからです。

◇  ◇  ◇

●母親や子どもを調査するだけでなく、専門家のアドバイスも検証すべき


超低出生体重児の成長を促すのは、人の優しさだと思う。


人という文字は支え合ってできているでしょう?


超低出生体重児の成長には、普通に産まれたお子さん達よりも、ほんの少し多くの優しさや思いやりが必要なんだと思う。


今、これだけは言える。あの時、送られてきたメールのアドバイスを信じていたら、今の息子はいなかったはずだ。


これまであまり問題にされてこなったけれど私は、こうした医療者の不用意な発言のほうがよほど問題だと思う。母親が心を閉ざし、引き篭ってしまったら子どもの発達にも影響が出るんじゃないかと思うからだ。




2017/05/07

超低出生体重児の長期予後 『サポート』と『人権侵害』は紙一重

●根拠は「〜と言われている」

周産期医療の関心は、このブログのテーマでもある、超低出生体重児の長期予後にうつってきているようだ。平成11に出された「早産児の長期予後」という報告書をみつけたので一部引用させていただく。


◇  ◇  ◇
平成11年10月18日放送 早産児の長期予後 神戸大学小児科助教授 上谷 良行

【学童期以降の長期予後】

 さて、小学校入学以後の問題として、一般的な知能のレベルは正常であるものの計算だけができなかったり、字を書くことだけができないいわゆる学習障害の頻度が高くなると言われていますが、詳細については未だ不明であります。

 

 今回の超低出生体重児の就学前の全国調査においても養護学校や障害児学級に就学予定の児の比率は8.6%あり、就学猶予の児を加えると約10%の児が普通学級への入学ができず、特殊な教育を必要とすると考えられます。諸外国の報告を見ても米国のHack らは出生体重750g未満の児の45%、750から1500gの児の25%が特殊教育を受けていると言っています。またオランダのHilleらの報告でも32週未満の児の19%が9歳で特殊教育を受けています。ただ、普通学級に通っている児のなかでも書字困難や計算困難な児が含まれていることがあり、このような学習障害のリスクの高い児を早期に見い出して、適切な指導や教育を実施するシステムを確立する必要があると考えられます。

 また、これまで超低出生体重児の長期予後の重要性が指摘されてきましたが、その評価については常に客観的なものばかりでした。しかし、ようやく超低出生体重児が自分自身を主観的にどのように評価しているかを調査した結果がSaigalらによって報告されました。それによると客観的に評価した健康状態では超低出生体重児は対照にくらべて劣っているものの、主観的な評価では自分自身をほぼ健康と考えている頻度が超低出生体重児群で71%、対照のティーンエージャーで73%と差がなく、健康という側面から見たquality of lifeには自分自身でほぼ満足していることが明かになりました。また、別の報告では我々医療専門家の方がQOLに関して本人自身やその両親が考えているよりも低く評価していることが述べられています。この結果は周産期医療に携わってきた我々にとって非常に勇気づけられることでありますが、これに満足することなく、超低出生体重児を含めて早産児が大きくなって、より充実した生活が送れるように周産期から一貫した医療と、それをサポートする福祉が展開されるようにあらゆる職種が努力しなければならないと思います。

◇  ◇  ◇


私が注目したのは、超低出生体重児が就学以降、学習障害の頻度が高くなると言われている「根拠」だ。やはり非常に曖昧だ。


なんらかの原因で、いくら練習しても「字が上手くかけない」「計算も早くできない」ということはあると思う。しかしそれが「発達障害」なのかどうか。夫は息子に関しては違うだろうと言っていた。


文字に関していうと、息子は中学3年の今になり急激に上達している。

(※ 数学のノート)
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1年前との差に私も驚いている。


ちょうど1年前の今頃、字が上手くかけないために、ちょっとしたトラブルがあったからだ。担任の先生がクラスの班で、交換ノートを書くように指導したから、私は「やめて欲しい」とお願いしたことがあった。交換ノートは細かい字で書かないといけない。文章も上手くかけない息子には、負担が大きかった。友達との差があからさまにわかってしまい、からかわれる原因にもなっていた。


超低出生体重児の中学生活 その後 明るく前向きに生きよという偽善 その1


ところが1年経ち、息子が昨日「雪中行軍の感想を作文にかく」というので校正を手伝った。完成した作文を読んで私はビックリした!新田次郎の「八甲田山死の彷徨」をちゃんと読んだことがわかるからだ。お世辞にも上手いとはいえないけれど、一応作文になっている…。


超低出生体重児のキャッチアップ こども小説『ちびまるこちゃん』から新田次郎著『八甲田山死の彷徨』へ その1



●教育問題に、医療者がどこまで関わるべきなのか


こういう経験をしてきたから、私は報告に書かれていることより、教育者である夫が言うことのほうがしっくりくる。子どもの成長や発達は直近の数字に一喜一憂しないで、長い目でみないといけない。第二次性徴期に焦点をあわせ、子どものやる気を引き出していったほうが良いということだ。


知り合いのお子さんも超低出生体重児だ。小学校までは普通学級だった。病院の発達検診医に訓練をすすめられ、療育をがんばっていた。一度そのお子さんの描いた絵をみたことがある。「療育や訓練の効果があるんだろうな」と思わせるような良い絵だった。しかし中学生になり、ある時、支援学級へ移っていった。


一方息子は、字の訓練などをさほど熱心にせずにきた。中学生になり自分と友達との差がわかるようになると、自分から意識して練習をするようになった。


他にも知り合いには超低出生体重児がいる。様々なお子さんをみてきて私も発達には、訓練とか療育では埋められない何かが関係しているように思う。


●『サポート』と『人権侵害』は紙一重


なのでここに書いてあるような「周産期から一貫した医療と、それをサポートする福祉が展開されるようにあらゆる職種が努力しなければならないと思います」ということには賛成できない。


今までの支援の反省がなければ、それこそ、転送メール事件のように、「あなたのお子さんには、障害があると思う」というような介入がはじまると思うからだ。一歩間違えると人権侵害になるだろう。


私が国立成育医療研究センターに手紙を送った理由


そもそも、私がブログで取り上げたウサギさんやトンンボの掛け算の教え方だって、教育者だったら、皆知っているというか常識だと思う。

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超低出生体重児と算数 私が毎日勉強をみてあげた方がいいと思う理由

ウサギの耳は4匹になれば2×4=8本
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今の先生は忙しい。「ウサギさんの耳」のような指導をしようと思ってもできないのだ。現場の教員が一人一人とじっくり向き合う余裕がないことだって問題じゃない?


今後は掛け算の教え方のようなことまで、福祉が関わるのだろうか?教育がやるべきことまで医療や福祉が介入するのって、私には抵抗があるなぁ。


それよりも文科省や教育機関にお願いして、学ぶスピードをゆっくりしてもらったほうがいいんじゃないかと思う。小学生の算数は、これからの勉強の土台になる。もともと普通に産まれたお子さんだってつまずくことが多いんだし、早くできればいいというものでもないんだから。


●これまでの調査は、本当に『客観的』なのか 救命されて、有難いと思えない人の意見は、切り捨ててしまっていいのか?


あと、最後にもう一つ。「超低出生体重児の長期予後の重要性が指摘されてきましたが、その評価については常に客観的なものばかりでした」とあるけれど本当に客観的といえるのかな?これまでの調査の多くはアンケートを元に作成されている。


もともとアンケートに答える人は限られる。答えない人は、心配ごとがない人かもしれないし、その反対に書いても無駄だと思って書かないのかもしれない。いずれにしても、アンケートを元にした報告書だとしたら、「客観的」がどこまで「客観的」なんだろうと思う。


私に届くような、「超低出生体重児はすべての家庭に育てられると思えません」「今の医療に疑問を持っています」「生活が厳しくて生きていけません。裁判を考えています」というような意見は、反映されていないんじゃないかと思うからだ。