2015/01/23

長期に渡る追跡調査の大切さ 

名古屋市が子宮頸がんワクチンの接種後の体調の変化の調査するそうだ。非接種者も含め7万人規模の大がかりな調査だ。昨年薬害オンブズパースン会議の記者会見を文字おこししたら、なぜか急激にアクセスが増えた。不安に思って友人の医師に読んでもらったら、この前私に言っていた。


薬害オンブズパースン会議の記者会見を見て考える 日本の小児医療に足りないもの

クローズアップ現代『小児がん 新たなリスク』2011年1月31日 より引用

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「治療を終了してやっと治ったかと思っていた人に10年後20年後にこういうことが起こってくる可能性があるということは、医療従事者の間でもなかなかわからなかった」


「ワクチンの副反応じゃなくても、長期に渡る追跡調査って、いいですよね」。


私は国立公文書館が好きだ。公文書の記録は、どこか疫学調査に似ている。日本の小児の高度医療に足りないのはあのような記録を残すことだと思う。息子のような超低出生体重児が、救命されるようになってまだ歴史が浅い。今後、どのように成長するかはわからないことも多い。


国立公文書館平成26年度特別展 江戸時代の『罪と罰』~犯罪と刑罰の歴史~ (その1)

国立公文書館平成26年度特別展 江戸時代の『罪と罰』~犯罪と刑罰の歴史~ (その2) 江戸時代の児童虐待事件 未成年の犯罪


施設ごとのデータも足りないと思うけれど、あっても、分母が少なく期間も短い。


超低出生体重児は、『後遺症なき生存(intact survival)』を目指す。たいての親御さんは、子どもが成長すると安心するようだ。


でも私は少し考え方が違う。長期に渡る統計をとってはじめて、みえてくることがあると思う。本来であれば「小学校入学前まで」などの短い期間ではなく、息子の子どもや孫世代まで責任を持たないといけないんじゃないのかな。超低出生体重児にだって未知のリスクがあるのかもしれない。


友人は、私が何を伝えたいのか、ブログを読んで考えてくれたようだ。隣にいた夫が「確かに統計をとるのはいいことですね。でも、統計なら医師じゃなくてもいいんじゃないですか」と尋ねた。すると、友人は「もちろんそうです」と言っていた。


お年寄りの健康調査は、夫がお世話になった、東京都健康長寿医療センター研究所の新開省二先生のような研究者が研究し、すでにいろいろわかっている。


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著者について

新開 省二

東京都健康長寿医療センター研究所
社会参加と地域保健研究チーム 研究部長 医学博士。
日本公衆衛生学会、日本老年医学会、厚労省「健康日本21(第2次)」
策定専門委員ほかを歴任。



新開先生は医師だけれど、一緒に研究していた夫の後輩の青柳幸利さんは医師じゃない。こうした長期に渡る健康調査は、全国でいくつか行われている。有名なものは九州大学大学院が行っている『久山町研究』や青柳さんの『中之条町研究』がある。大勢の専門家が長い間積み重ね今に至っているという。


薬害被害者の方が「生理学は誠実な学問」と言っていた。確かに、製薬企業などのお金が入る研究じゃないから、誠実に積み重ねられるのかもしれない。医師だけじゃなく、いろいろな専門家が集まるところも私は好きだ。地域住民が広く参加できるところも。


私は2011年1月31日にNHKのクローズアップ現代『小児がん 新たなリス』で「晩期合併症」をはじめて知り、ショックを受け、その友人を怒ってしまったことがあった。「どうして、自殺するほど追い詰められないといけないの?退院した後をフォローしないと意味がないじゃない」


お年寄りの研究はちゃんとしているのに、と思う気持ちが私にはあったからだ。


ショックだったことがもう一つ。退院後の支援が、超低出生体重児と同様に患者の側を向いていないと思ったのだ。小児がんに限らず、日本は、患者の意見をなかなか取り入れようとしない。


あるところに提出する書類を作成するために、「医療を産業に」という流れが、何を目指しているのかざっと調べた。「医療」とは主に「がん医療」をさすようだ。今度こそ、変わるのだろうか。報告書をみると『患者さんのために』『がん難民をうまない』『新しい治療薬の開発』『医療情報の提供』など、魅力的な言葉が並ぶ。


でも、決定的に何かが足りないと思った。どうして社会的な取り組みまで、主に医療機関が中心となってやろうとするのだろう。生きていくのは社会なのに。またこれまでのように、医療者による出前授業などのような取り組みなのだろうか。そうすると、一部の患者さんの意見しか社会に届かない。本当に切実な、死を選ぶような人の声はかき消されていくだろう。


見えないビジネス『パブリックアフェアーズ戦略』を調べていくと、ワクチン の普及は通過点に過ぎないことがわかる。その先には、やはり『創薬』があるようだ。


だからなのか、あるつながりが見え隠れする。私には新しい何かをつくったり、『改革』というよりも、新たな利権を生むだけのように思えてしまう。『支援者のための支援』という言葉も頭をかすめた。


私は小児がんの晩期合併症を苦にして、自ら命をたった男性の言葉が今でも忘れられない。「僕のせいじゃないのに」「不公平だ」という彼の言葉が今も心につきささっている。


患者さんでも、男性より女性、できるだけ若く、有名であるほうがいい・・・。彼の言葉は、本当にその通りだと思うからだ。


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クローズアップ現代『小児がん 新たなリスク』2011年1月31日より引用


上野政人さん(享年23歳)


小児がんの晩期合併症に苦しみ、去年の夏、自ら命を絶ちました。23歳でした。

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父の定人さん

幼い頃克服したはずの小児がんが、なぜ長い間息子を苦しめたのか。いまだに気持ちの整理がついていません。「なんでこの子だけこんなに一杯、次から次へと難病になるんだろう、こんなのがあるなんて本当に知らなかった」


政人さんに小児がんがあるとわかったのは一歳の時でした。


なかなか風邪が治らないと連れていった大学病院で神経のがんの一種、「神経芽腫」と診断されました。神経芽腫は当時、二人に一人が亡くなるといわれていました。命を救うために強い抗がん剤が複数投与されました。


「強い薬を使っているけれども、一時的に毛が抜けたり、いろんなことがありますけれど、日にちが経つに連れ、だんだんおさまってきますから」ということで、実際毛も生えてきたし、ああ、これで終わりだな、と自分では思いました」


治療から五年後、再発がなかった政人さんは、完治したと診断されもう治療の必要はないと、医師から告げられました。


小学生の時の政人さんです。運動好きで活発な男の子でした。しかし高学年の時に体に異変が起き始めます。


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身長が伸びなくなってきたのです。晩期合併症でした。しかし本人も家族も治療の影響だとは考えてもいませんでした。これまで明らかにされてこなった晩期合併症。国は去年はじめて、小児がんの経験者を追跡調査しました。


その結果小児がんを経験した女性の50%、男性の64%に、晩期合併症があらわれていたのです。


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ホルモン分泌の異常による低身長や不妊、放射線や抗がん剤などで起きる新たながん、二次がんなど、治療から十年以上たって複数の合併症に苦しんでいる例も数多くありました。


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「治療を終了してやっと治ったかと思っていた人に10年後20年後にこういうことが起こってくる可能性があるということは、医療従事者の間でもなかなかわからなかった」


(中略)


ある患者が残した言葉


(晩期合併症で再び)治療をはじめた政人さんは家族の前でこう語ったと言います。「僕は入れ込んだらアカンのや。仕事だって、夢を追ったって、必ず病気がじゃましてくる」


骨髄移植を受け、白血病の治療は上手くいきました。しかし、副作用に苦しみ、相方にも迷惑をかけられないからと、お笑いの夢をあきらめました。


その後、自分の治療費を稼ごうとアルバイトを探しましたが、病気を抱えた政人さんを受け入れるところはありませんでした。


去年8月政人さんは部屋で自ら命を絶ちました。遺書にはこれ以上、家族に負担をかけくないと記されていました。



「生まれてきて良かったと思ったことがなかったんじゃないかな。それを思ったら申し訳ない。生まれてきてよかったと思って欲しかった」


亡くなる前、政人さんはパソコンの中に文章を残していました。


「小さい時は気づかなかった。地球からまっすぐ、皆はロケットで飛んでいる。僕は出発する時に角度が少しずれちゃっていた。すすめばすすむほど、皆との距離は離れる。不公平だよ。ずれたのは僕のせいじゃないのに」



以下略


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