2013/12/19

日本トラウマティックストレス学会に伝えたいこと 報道と人権と  

アルジェリア人質事件の時に報道のあり方が議論になった。「報道関係者の皆様へ」という緊急コメントが日本トラウマティックストレス学会から出されている。この学会では大規模な自然災害や事件・事故がおきるたびに提言をしている。


献花



【人為災害】アルジェリア人質事件に関する緊急のコメント


私は声明を読んで複雑な気持ちになった。私は心の専門家と称する方々に、私達の悲しみを語られることが何よりも苦痛だからだ。「母親のこころ」のケアも同様だ。医療者の中には「がんばらなくてもいいですよ」とおっしゃる方がよくおられる。こちらのことを考えての言葉なのだろう。お気持ちは有り難いしよくわかっているつもりだ。でも、超低出生体重児の母親はがんばらないと子どもが死んでしまうかもしれない。育てづらい子どもを抱える母親や事件や事故の関係者は、常に庇護されるべき弱者なのだろうか?私は自分の口で語りたいし自分で乗り越えていきたい。


そもそも「日本トラウマティックストレス学会」は薬物療法が好きな学会なのだが、以下の報道を知り驚いてしまった。製薬企業が主催で学会が後援などあまりきいたことがないからだ。こうした特定の営利企業との関係、コンプライアンス感覚を批判している議員さんもおられるようだ。日本免疫学会の姿勢と比較するとどうだろうか。


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PTSD関連学会 プライマリケア医の診療向上に期待 治療薬の登場で ミクスonline から一分引用

日本トラウマティック・ストレス学会会長の奥山眞紀子氏ら学会関係者は12月5日、「外傷後ストレス障害(PTSD)薬物療法への期待」と題したメディアセミナーで講演した。同学会はこの9月からプライマリケア医向けのガイドラインや初期対応のマニュアルを学会サイトで公表するなど、PTSDの適正治療に向けた取り組みを行っている。

この11月にはパロキセチン(製品名パキシル)が国内初のPTSD治療薬として承認されたため、奥山氏らは、プライマリケア医によるPTSDの対処や薬物治療が向上していくことへの期待感を示した。セミナーはパキシルを手掛けるグラクソ・スミスクラインが主催し、同学会の後援で開催された。

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日本免疫学会 日本免疫学会編集「からだをまもる免疫のふしぎ」の刊行について から一分引用

学会が一般向けの本をまとめるのは珍しいとのことですが、特定非営利活動法人となった日本免疫学会が社会に対して理解増進や情報開示の活動を進めていく意義はますます大きくなっています。本書の出版は、学会組織がこれからの社会で適切な位置づけを得ていくための試みともいえます。アウトリーチ活動は研究者にとっても、社会のなかでの自らの位置づけを見つめ直す良い機会です。本書の刊行が社会にも会員にも快い効果をもたらし、ひいては日本免疫学会と免疫学の更なる発展の一助となれば幸甚です。

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私も週刊誌などの報道には嫌な思い出のほうが多い。何度ため息をついたことだろう。ある事件の時には書かれたことを信じ、一年間実家に帰らなかったこともある。だからこそ書いておきたいと思った。


私達家族の心を癒やしたのは一万人もの方々が献花や記帳に訪れて下さったことだ。政府が専用機を用意して下さったことだ。友人もメールをくれたりかけつけてくれた。これらは、報道なくしてありえなかったのではないだろうか。


父の友人は報道で伝えられている通りの人柄だったそうだ。奥様と仲がよく「好きなものを選ぶといいよ」と仲良くメガネを選んでいたという、メガネ店のご主人の言葉がいつまでも心に残る。写真が公表されたから、ご主人はかけつけたそうだ。立場上悲しみをあらわにできない奥様は今頃どうしておられるだろうか。みなとみらいがテレビに映し出されるたびに思い出す。


亡くなった方の中には、まだ幼いお子さんがおられる方もいたと父に聞いた。被災地の避難所で暮らす高齢のお母様にも心が痛んだ。被災してそのうえ息子さんがテロに巻き込まれるなんて。そんなことがあるのだろうか。もし私が近くに住んでいたらお線香をあげさせていただくのに、と思わずにはいられなかった。


そういった話が家族でできるのも、報道が伝えたからだと思うのだ。残されたご遺族の思いも様々である。危険地域でビジネスをしている以上、ある程度の批判は覚悟していたのではないだろうか。すべてのご遺族やご家族が会社の対応に満足しておられるわけではないだろう。政府専用機を出していただいたのだ。「情報公開を」という批判がでたとしても仕方がないと思うのだ。私も配慮は必要だと思う。しかし、取材を受けるということは自分自身をさらすことでありストレスになる。それでも実名でインタビューに応じるのは、伝えたい思いがあるからではないだろうか。


一方で薬を使わなかったとしても「心のケア」は・・・。東日本大震災の時には、「心のケア」を一方的に押しつけているという批判があったはずだ。私にもそういう経験がある。傷ついた心にズカズカ入り込んでくるのは何もマスメディアだけではない。ケアを受けた人が「よかった」と言っているのならともかく、支援のあり方、専門家のあり方だってそろそろ問うべきじゃないだろうか?


「心のケア」の押し売りに、被災者はうんざり。
本当に必要な支援とは、マインドセットを変える具体策 

【ダイアモンド・オンライン】

ある避難所では、次々と訪れる「心のケア」チームに辟易して、「心のケアお断り」を宣告。ここを訪れたボランティアに対しても「心のケアを名乗らないでほしい」と告げた。

 実際に筆者も、この頃に訪れた被災地各地で、「いろいろなNPOがやって来るけど、どいつもこいつも心のケア、心のケアってうるせえよ!! 心のケアって聞いただけでこっちは鬱になる」という言葉を何度か聞いた。東松島から釜石にかけて、さまざまな地域で支援ニーズをヒアリングしたが、心のケアに対するニーズは聞いたことがない。

 もちろん、本当に心のケアを必要としている人もいるだろうが、大多数の人は当時もいまも、復興に向けて頑張ろうとしているわけで、そのような人たちに必要なものは心のケアではない。もっと具体的な復興支援のプランであり、気持ちを前向きにする具体策である。

 同記事を書いた獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授・井原裕氏は指摘する。被災地には、心のケアよりも身体のケアの方が重要だと。


ちなみに父ははじめてシンポジウムに登壇した時「マスメディアの方々には、こちらの思いを伝える努力をしなさい。伝えないからわからないんだよ」と言っていた。


アレルギー死亡事故の報告書には、救急搬送されてすぐにテレビ局から問い合わせがきた事実が記されていた。救急搬送されたのが14時頃、その後15時10分にAテレビ局から、15時12分にはBテレビ局からだ。どちらも「地域の方からアナフィラキシーによる救急搬送があったと聞いていますが本当ですか」という内容だった。不思議に思い夫に尋ねたところ、大学でも何か騒ぎがあるとすぐにマスコミから問い合わせがあるそうだ。隠すことが難しい時代なんだろう。


報道関係者も様々。悪いこともあったし良いこともあった。被害者や遺族も様々だ。これまで活動してきて思うのは、省庁や政治家の方々に動いていただくには、マスメディアの協力が必要ということだ。だとしたら信頼関係を構築していくことを考えないといけないのではないだろうか。

【追記】

英グラクソ、医師への講演料支払い禁止 便宜供与の恐れで  日本経済新聞 2013/12/18 19:54

 英製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)は、2016年までに医師への講演料の支払いや、同社が交通費を負担して医師を学会に派遣することを日本を含めグローバルで廃止する検討に入った。医師と製薬会社との金銭を巡る不透明な関係が問題となるなか、便宜供与のおそれがあると判断した。

 製薬会社は地方や学会で医師を講師に招いた講演会を開催している。GSK日本法人は12年に3510件の講演会を実施し、講師への謝礼金として約8億円を支払った。これが便宜供与と見られる恐れがあることから、廃止する方向で学会や医師会などと議論を始める。学会参加の医師の交通費負担も廃止する方針。

 代替案として「教育助成金」を創設する。若手研究者が学会の参加費の一部などに充てるなどの使い方を想定する。

 日本製薬工業協会は12年度分より会員各社に対し、講師への謝礼金などの公表を義務付けている。製薬会社と医師の間に便宜供与がないか、透明性を確保する狙い。ノバルティスファーマの社員が、大学での臨床研究に関与した問題もあり、信頼確保に向けた取り組みが広がる可能性がある。




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