2014/06/30

戦後最大の『薬害裁判』と『治験』の素晴らしさと

『集中』に治験に関する良い記事があったので転載させていただいた。


私の友人は『治験』の専門家だ。私は第三次救急で救命されるまで『治験』という言葉を全く知らなかった。


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野口英世記念館 
野口英世博士のロボットの前で


救急搬送される救急車の中で、「そういえば昨年いただいた年賀状に、新しい勤務先として、搬送先の病院の名前があった」と思い出したのだ。


搬送先の病院で友人が『治験』という仕事をしていると受付の方に教えてもらっても「大きな病院には『実験』する部署まであるのか」と勘違いした。


友人にはじめてあったのは、新婚生活をはじめたカナダだった。夫の友人の家に遊びにいったら、お寿司を握っている日本人がいた。脱サラしてすし職人になってカナダにきたのかと思ったら、小児科医だという。友人は私達がすし職人と間違えるほど料理が上手いのだ。


友人ほど勤勉でまじめで誠実という言葉がぴったりな小児科医はいない。


カナダで仕事をしていた時、ほとんど昼間家に帰らないからと日の当たらない家賃の安い部屋を借りていた。真冬はマイナス5度以下が珍しくないカナダで、少しでも生活費を安くするための知恵だ。実家が大病院なのに、私の同級生にはいないタイプの医師でびっくりしてしまった。


「僕のいる病院は子どものためにつくられた、素晴らしい病院だから見学においでよ」と誘われ、二人で掛けたことがある。苦しい闘病生活を送る子ども達への配慮なのだろうか。かわいらしい動物が出迎えてくれる明るい玄関に「こんな病院が日本にあったらなあ」と胸が一杯になってしまった。


私達が帰国した後も10年近く北米で働いていた。


久しぶりに再開したのは、救急搬送された友人の勤務する病院。


息子が産まれた時もかけつけ、毎晩仕事が終わると泣いていた私のところにやってきた。私が泣くと、今まで見た事がないような悲しい顔をしていた。だから泣くのはもうやめようと思った。


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出産祝いにプレゼントしてもらったお花


私が薬害の被害者の方々のために活動するようになったのは、友人が一生懸命働く姿をみたからだ。


NICUでは子どもの命を救命するために未承認薬・適応外薬など、様々な薬剤が投与される。しかしそのほとんどが、子どものために開発された薬剤でなく、大人のために開発されたものだそうだ。だから子どもの『治験』がいかに大切か、痛感したのだ。


でも友人は、私がシンポジウムなどに出るようになったら、家にやってきて私を怒った。政治やいろいろなものに巻き込まれるだろうし、利用しようとする人もいるから心配してくれたのだろう。


私が「日本には治験の素晴らしさを伝える人が誰もいない」と言ったら黙ってしまった‥‥。


今度はこっそりブログをはじめた。見つかったらまた怒られるかもしれない。それでも、やっぱりなくてはならない良い仕事は、多くの人に知って欲しいと思ってしまうのだ。


友人は、利害関係者からお菓子一箱だって簡単に受け取ったりしない。厳しくしないと子どもの命が守れないからだ。予算がない時には自費で海外まで出かけていく。エビデンスを構築していく時に、余分なもの(利害関係者との金銭のやりとり)をそぎ落としていくのは当たり前じゃないか、とある研究者が私に言っていた。


私は薬害の被害者でもあるからこそ、薬のために真摯に働く小児科医の姿をもっと多くの方に知って欲しい。もしも社会から尊敬されず、収入にも結びつかなかったら誰がこんな大変な『治験』をやりたいと思うだろう。


映画「希望のちから」から

最後の場面。スレイモン医師を多くの女性達が笑顔で迎える。
一つの有効な抗がん剤が開発されれば、これだけの女性を救うのだ。



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1998年認可以来、ハーセプチンは何十万人もの命を救った。現在スレイモン医師はUCLAで血液・腫瘍学部門長を務めている。リリーとペレルマンは18年間で一千万ドルの研究費を集めた。ハーセプチンは臨床試験を重ね、FDAより適応拡大が承認された。


今後、「子宮頸がん予防ワクチン」が戦後最大の薬害裁判になったら、日頃目立たない免疫学の基礎研究や治験の重要性に、社会の関心が向かって欲しい。はじめから人を傷つけようと思っているわけでも、お金儲けをしようと研究しているわけではないのだ。


薬害を生み出すもの、科学への不信はどこから生まれるのだろうかーーーーーこのブログの真の目的は、それらを見届けるためだ。


被害者は若い女の子がほとんどだから「薬害エイズ事件」よりも注目が集まるかもしれない。しかも、被害者のご家族は医療従事者も多いそうだ。『神に選ばれた』『運命』ではないか、とささやかれている。今度こそ、被害者とご家族を社会で守る世の中に変えていこう。


最後に書いておく。


櫻井よしこ氏の『エイズ犯罪・血友病患者の悲劇』(中央公論社、1994)を読んだ時、私は違和感をおぼえた。安部英医師は、櫻井氏が訴えているような極悪非道な医師と思えないからだ。


もし安部医師が極悪非道なら、アメリカに調査を依頼したことと、何も知らない部下を筆頭著者にし論文を書いたことは矛盾するのではないか。


櫻井氏はそれこそが、安部氏のアクドイところとばかり追いつめようとする。しかし夫も医学の世界の片隅で仕事をさせていただいている。真実は安部氏の主張にもあるように思う。私には悪事の証でなく、むしろ大きな圧力に抵抗した痕跡のように感じた。


安部氏が追いつめようとする櫻井氏に向かって言った「私は医師でございますから、患者を殺してはいけないのです。エイズで死んでいいというわけはありませんが」という言葉がいつまでも今も心の残る。


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「治験」のメリットを知り病院経営に生かす ーーー集中


薬や治療の安全性と有効性を確認する臨床試験のうち、製薬メーカーが新薬開発を目的として、薬事法にのっとって行われるのが「治験」である。


治験は、関わる医師や医療スタッフの膨大な手間が必要だとして、敬遠されがちでもあるが、医療機関の経営上は大きなメリットがある。その最大のものは金銭で、製薬メーカーからは世界一とされる受託研究費がもたらされ、さらに事務経費も含めた治療全般に必要な経費も全て弁済されることで、大きな収入源となる。


保険外収入を確保することで経営の安定を目指し、年次の経営目標の中に治験業務の拡大を掲げたり、積極的に治験収入の増加に努めたりすることをうたう医療機関も増えてきている。これを治験数に応じて各診療科へ研究費として配分したり、医師個人に還元したりすることで、インセンティブとすることもできる。


医師などが患者に対して行う診断・治療であれば、法人税法上は「医療保険業」とされて非課税扱いである。一方、治験収入は、医療機関が製薬会社からの委託を受け新薬候補である薬品の臨床試験を実施し、その結果を報告することによって対価として支払われるものである。これは「請負業」に相当するので、本来は収益事業であり、課税対象となる収入となることには留意しなくてはならない。


私立大学などでは受託研究として非課税にすることもできるが、受託研究の実施期間が3カ月以上であること、受託研究の結果生じた知的所有権などの研究成果の帰属に関する事項、および受託研究の研究成果の公表に関する事項が契約書などに明確に定められているといった要件を満たす必要がある点には十分留意したい。


治験を通じて新たな患者を開拓できる


さらに、治験を通じて、新たな患者が来院するので、それを集患につなげられるという期待もできる。収入以外にも、さまざまな有形・無形のメリットが医療機関にもたらされる。まず、社会的貢献をしているという達成感が生まれる。


また、一つの新しい薬ができるまでには10年以上の年月がかかることが普通で、研究開発に掛かる費用も数百億円に上るとされる。さらに、世界に通用するブロックバスター(年間売り上げ1000億円以上の超大型薬)になるような薬であれば、開発費は1000億円にも膨らむといわれている。


天然物や化合物のスクリーニングを繰り返し、選び抜かれた候補物質でも、治験で期待される効果が得られなかったり、思わぬ副作用が現れないとは限らない。せっかくヒトに投与しても、治験第Ⅰ~Ⅲ相のいずれのステップでも、安全性に難があった場合や期待した通りの効果が出ない場合は、その時点で開発が中止される。治験はそれほどに重要なプロセスで、より良い新薬が正しく評価され、1日でも早く承認されれば、多くの患者治療に役立てることができる。


大学病院であれば、国から治験実施成果に応じてインセンティブが還元される。また、医学部の研究評価の柱のうち社会的貢献度については、治験を含めた臨床試験が一つとして含められている。さらに、製薬会社からも治験実施能力という観点から大学評価がなされる。


もちろん、治験薬の段階では未承認だが、最新の先進的な治療を希望する患者のニーズに応えることもでき、それを内外に向けてアピールすることもできる。欧米では既に承認されている薬もあれば、日本、米国、欧州連合(EU)の関係者から成る日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)により国際協調が進んだことで、同時に治験が実施される薬もある。


治験を実施するには、豊富な経験を持つ有能な医師および医療スタッフがそろっていなくてはならず、設備などの機能面も整っており、先進医療を実施できる医療機関であることを内外にアピールすることが可能になる。治験を機に治験業務の推進を各部門の増員につなげている施設もある。


現在の治験は、1997年に国際ルールに準拠して制定された「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」省令にのっとり、製薬企業が専門医師らと共に策定して、治験審査委員会(IRB)で承認された実施計画書を遵守して実施される。被験者(患者)はヘルシンキ宣言に盛り込まれた基本的人権を重視され、十分な説明を受けた上で、自由意思に基づいて参加を決める。


このため、インフォームド・コンセント(正しい情報を伝えられた上での合意)を徹底しなくてはならず、患者参加型医療が定着するようになることも期待される。


院内連携の強化や教育効果にも期待


治験は責任医師を筆頭に多くの医療スタッフが連携するチーム医療である。治験を機に、院内の連携が強化され、協調していく体制が広まることで、より強固なチームワークを根付かせることができる。治験を通じて医療スタッフは最新の医療知識を学ぶことになり、効果安全性の的確な評価法などが身に付けられる教育効果もある。

もちろん、治験の実施者にはモラルが求められるのはいうまでもない。治験ではないが、ノバルティスファーマのディオバン事件が臨床研究の信頼性を著しく損なうとともに、日本社会の不利益につながる事態となったことは記憶に新しい。2013年6月には、小林製薬がメタボリックシンドロームなど肥満症に効く市販薬の開発に際して、医療法人大鵬会千本病院(大阪市)が実施した治験のデータの一部が改ざんされたとの疑いも浮上した。


被験者72人のうち4人の身長が実際より低く記録され、肥満の条件を満たすように被験者がそろえられたと、データへの疑義が指摘されており、同社では11年に申請した製造販売の承認を、13年3月に取り下げている。


厚生労働省の新GCP省令施行後、治験の手続きが煩雑になったことから、治験は治験施設支援機関(SMO)が仲介して実施されることが増えている。この治験も大手SMOによりあっせんされている。


病院が独自に行うと、うまくいきそうな人を選んでしまうこともある。バイアスがかからない公平な目で症例を選び、科学面に十分配慮してIRBに耐え得るだけの治験を実施するためには、第三者のシステムのサポートは欠かせない。一方で、製薬会社の意図に沿ったデータを出して、多くの治験を実施しようとするSMOなども存在することが指摘されている。


治験に関わったスタッフの努力や薬に懸けた人の思いに報いるためにも、SMOなどとの賢い付き合い方も心しておく必要がある。



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