2014/08/07

神様はみている きちんと総括して欲しい

理化学研究所の笹井芳樹副センター長が自殺したというニュースにショックを受けている。精神医療の問題を追求してきた私には、「心療内科に通院していて、副作用でハッキリと会話することが難しい」なんて知ると悲しくなる。二重の意味でショックだ。こんな結末にならないように、『周産期医療の崩壊をくい止める会』の活動がはじまったはずだから‥‥。


『神様からのプレゼント』 お金で買えない幸せ


このブログのテーマはメディアのあり方でもある。『アルジェリア人質事件』が起きた時、よく言われた。


「(うちの病院にも)遠藤さんのような広報のプロがいたらなあ。リスク管理をやって欲しいなあ」。確かに『かっぽう着』などの演出がなければここまでの騒動にならなかったかもしれないね。


残る1人の死亡確認 指輪にイニシャルの刻印 KYODO NEWS 【共同通信社】

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今回の一件は極端だけれど、似たようなことはよくある。だから、第一線で活躍する研究者ほどメディアを信じていない。


笹井氏を追い込んだ原因の一つは、直前に放送されたNHKスペシャル、といわれている。佐村河内守氏を取り上げたNHKスペシャル「~音を失った作曲家~」を検証したばかりなのに。NHKはなぜ過去の失敗から学ぼうとしないのだろう。


ちょうど今、『薬害エイズ事件』に関する本を読んでいる。『薬害エイズ事件』も似たような構図があるようだ。裁判の証拠に採用された、NHKスペシャル『埋もれたエイズ報告』の内容は、事実とは違うと安部英医師の弁護士に指摘されている。



埋もれたエイズ報告埋もれたエイズ報告
(1997/07)
桜井 均

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私にも思い当たることがあった。


2012年11月18日、「がんワクチン 夢の治療への格闘」というNHKスペシャルが放送された。ところが「内容が偏りすぎている」と、医療者だけでなく患者会からも批判の声があがったのだ。


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NHKがんワクチン報道がダメな訳 (2012年11月18日)togetter から勝俣範之医師の言葉を引用


抗がん剤にも色々あるように、がんワクチンと行っても、使う抗原によって、色々な種類があるわけですから、どのような種類の抗原を使ったどのような名称のワクチンかを公表すべきですよね。がんワクチンがすべて同じようなもので効果があるかのごとく言うのはどうなんでしょうか?


抗がん剤も100種類以上あり、がんの種類によって、抗がん剤の種類によって、あるがん腫には効くが、違うがんには効かない。全てのがんに効く抗がん剤なんていうのはありません。がんワクチンも全て一緒にするのはおかしい。


そもそも、転移・再発がんで、有効性が全く示されていないのに、術後補助療法に取り組むというのも無謀。本当に補助療法に関して有効性を証明したいと思っているのでしょうか?それとも、術後にがんワクチンを打って、再発なかったので、効いたなどということを言いたいのでしょうか?


治験はまだ有効性は確立されていないので研究として行なっているのもです。あたかも新薬がすごい効果がありそうなことを言い、患者さんを治験に入るよう誘導するようなことは、禁止されています。厳しく倫理委員会でも追求されることなのです。この番組は倫理的にどうなのでしょうか?



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実はこの番組には、知り合いの研究者がほんの一瞬うつった。


夫が確かめたら、やはりご本人だった。でも、あまり触れて欲しくないそうだ。


ほんの数十秒しかうつっていないのに、親戚、知人から問い合わせがあったそうだ。最先端の科学を扱う番組には、良くも悪くも多くの人が注目しているのだろう。「研究者の世界では日々水面下で激しい競争があるのに、業績を出す前にテレビに出て目立つと大変。わざわざ足を引っ張られようなことをしたくない」とその人は言っていたそうだ。


番組で紹介していた「がんワクチン」はインチキな免疫療法とは違う。けれど勝俣医師がおっしゃっているように、まだまだ「夢の治療」といえるほどの科学的根拠があるわけではない。


そこをちゃんと交通整理しながら伝えるのが、公共放送であるNHKの役割のはず。こういう番組をつくられてしまうと研究者は仕事がしづらくなってしまう。かえって「夢」から遠のいてしまうのだ。


日本では一流とよばれる専門家ほどテレビを嫌う。友人が業績をあげても「日本のテレビには出たくない」といっていた。放送に携わる方々は、なぜ嫌われてしまうのか、真剣に考える時期じゃないのかな。


笹井氏が亡くなってから番組をみた。最後のほうは見ているのが苦しくなってしまった。NHKは、NHKが伝える重さがわかっていないようだ。批判していることがいくら正しくても、それを公共放送でそのままストレートに伝えていいのだろうか?なぜこういうワイドショー的な単純なつくりにしてしまったのだろうか?


笹井氏を追いつめたのはNHKだけじゃない。同じ過ちを繰り返さないために、きちんと総括して欲しい。誰かを傷つけてしまったのなら、きちんと謝って欲しい。これでは子ども達に『いのち』の大切さを教えても伝わるはずがない。


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そのNHKスペシャルにもご出演されていた中村祐輔教授のブログ『中村祐輔のシカゴ便り』に、中村教授ご自身の言葉で、今回の騒動への批判が掲載されている。一部引用させていただく。


(続)STAP細胞の悲劇;愚かなメディアと研究者集団 『中村祐輔のシカゴ便り』


「日本の科学の信頼性を揺るがす大問題だ」と大騒ぎをした研究者集団があったが、ここまでくると、結果的に魔女狩りのような行動だと非難されても反論の余地はない。これまで日本の科学の発展に貢献してきた研究者を死に追いつめたことは、科学の問題を超え、日本人のそのものの品性を問われることにならないのか?


過ぎたるは及ばずで、「魔女狩り」的行為が有能な研究者を自殺に追い詰めることに加担したことが、日本という国の誇りをもっと大きく傷つけたという事実は消せない。


何か事があるたびに、集中砲火を浴びせるように個人攻撃が続き、その人間が命を絶つときれいごとを並べて、何事もなかったかのように終わらせるメディア。自分たちの不健全な姿を振り返ることは永遠にないのか!国営放送よ、この事態を検証するスペシャル番組を作成すべきではないのか!?



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番組の後半では、ピッツバーグ大学の不正防止に取り組む授業を紹介していた。アメリカの教育の良いところは、再発防止を学生に考えさせ、行動させることだろう。このブログはまさに、この講義を実践しているようなもの。人が一人亡くなったのだから、私の問いかけにこたえて欲しい。


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NHKスペシャル 「調査報告 STAP細胞 不正の深層」

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アメリカの研究機関には不正防止の取り組みを義務づけている。ピッツバーグ大学では不正を行った研究者の実名をあげ、不正に至るまでの心理や背景などを学ぶ講座を設けている。


「ハーバード大学のマークハウザー教授です。彼の不正を告発したのは研究室の大学院生でした。教授に歯向かうのはとても勇気がいるますよね。でも、学生達は面と向かって、不正だ!データを都合よくいじっていると訴えたのです」


自分ならどう行動するのか、どんな仕組みがあれば防ぐことができるのか議論を重ねている。


カレン シュミット教授

「科学者も普通の人間です。お金、時間、競争というプレッシャーに誰もが曝されているのです。なぜ、不正に走ったのか、どうすれば不正が防げるかをしっかり考えておかなければ、不正を防ぐことはできないのです」


他の大学の取り組みがいくつか紹介される。「教育だけでは防げない」という専門家の意見も。


ミシガン大学ニコラス ステネック教授

いくら教育をしても、組織に不条理な命令をされたり、大きなプレッシャーがあったりすれば、不正は減らないでしょう。ですから、そうした組織の風土を変えることが大事なのです



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ただし。


「日本の科学番組のレベルは低い」といわれているけれど、それはメディアだけの問題じゃない。すぐに「夢の治療」「夢の薬」に飛びついてしまう市民のリテラシーの問題でもあるのだ。そういうことを、私達市民ももっと真剣に考えていくべきだよ。


『夢の治療』や『薬』の前に、『基本』を学ぶことからはじめよう。



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笹井芳樹博士のご冥福をお祈り致します。


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理研・笹井副センター長「自殺」 NHK検証番組が決定打か 日刊ゲンダイ 2014年8月5日


小保方氏宛てに遺書


 5日午前9時ごろ、理化学研究所の笹井芳樹・発生再生科学総合研究センター副センター長(52)が神戸市内の同センター施設内で首を吊っているのが見つかった。センターに隣接する病院の医師が死亡を確認した。


 兵庫県警によると、センター研究棟の4階と5階の踊り場で、手すりに、ひも状のものをかけて首を吊っていた。巡回中の警備員が見つけた。踊り場には革靴とカバンが置かれていた。カバンには遺書が残されており、県警は自殺を図ったとみて詳しい状況を調べている。


 遺書は3通入っていた。うち2通はセンターの幹部と自分の研究室のメンバーに宛てたもので、もう1通は論文を共同執筆した小保方晴子ユニットリーダー(30)に宛てたものだった。


 理研の同僚によると、笹井氏はSTAP論文の疑惑発覚後から心療内科を受診しており、最近は薬の副作用でハッキリと会話することが難しかったという。


 笹井氏は新型万能細胞とされた「STAP細胞」論文の責任著者のひとり。論文は笹井氏が執筆を指導する形でまとめられた。小保方氏とともに今年1月末、論文の発表記者会見に出席。論文に疑惑が指摘された後も、細胞が存在する可能性を強調していたが、論文の撤回には同意していた。


 理研の調査委員会は、笹井氏に「不正行為はなかった」としたものの、データの正当性と正確性などについて自ら確認することなく論文を投稿しており、「その責任は重大」と指摘していた。


 理研は4月から11月末までと期間を区切ってSTAP細胞の存在を検証する実験を進めている。先月から第三者監視の下で小保方氏も加わったが、実験は難航しているもようだ。約1万5000人の基礎生物学者を抱える日本分子生物学会は「STAP細胞は今やネッシーみたいなもの」と厳しい批判を展開していた。


 理研はきのう、一時停止している小保方氏の懲戒処分の審査について、新たな疑義に対する調査結果が出た後に、検証実験とは関係なく再開する、との見解を発表したばかり。日本学術会議は処分の審査の速やかな実施を求めていた。


■NHK番組が学者生命揺らぐ疑惑を指摘


 笹井氏が自殺した背景には、先月27日、放映されたNHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」も影響しているとみられる。


 この番組では小保方論文が科学誌に掲載を3度も断られた後、ネイチャーに掲載された背景として、「論文執筆の天才」といわれた笹井氏の協力が大きかったことを指摘、その裏に米国特許本申請の締め切りが迫っていた事情などを取り上げた。


 さらに論文には、STAP細胞で作ったとされるキメラマウスに対してTCR再構成の確認の記述がなかったことから、笹井氏が実験の不備を知っていた可能性も示唆された。


番組内では、小保方氏と笹井氏のメールのやりとりも公表。男女のナレーターが感情たっぷりに読み上げる演出もあったことから、小保方氏サイドは不快感を示していた。


 また、番組内では笹井氏について、「企業のニーズを聞いて予算を取るマルチタレント」(神戸市医療産業都市推進本部・三木孝前本部長=現保健福祉局長)という論評も出てきて、学者生命を否定される格好となっていた。


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笹井氏悲劇の裏に「裏切りリーク」「小保方氏とのメール暴露」 東スポweb 2014年08月07日 07時00分 から一部引用


「ノーベル賞候補と称されたこともあるエリート研究者の自殺の裏側には何があったのか。理研の関係者は「笹井さんは裏切られたと話していました」としてこう語った。


笹井さんは味方も多いが、敵も多かった。その反笹井派がやったNHKを筆頭にしたマスコミへのリークが度を越えていた」


 度を越えたリークとは、個人的なメールの暴露で、それもかなりひどい状況だったようだ。理研から与えられたアドレスで小保方氏と行ったやりとりが、調査で公表していない部分まで全て漏れていたというのだ。


 笹井氏は6月に「自分が出したメールがバラまかれている。その内容をコピーしたものを添えて、私をバカにするような内容のメールが届いた」と、あるジャーナリストに明かしていた。



 確かに先月27日に放送されたSTAP細胞問題に関する「NHKスペシャル」では、理研の調査委員会に提出された笹井氏と小保方氏のメールのやりとりが放送された。


「小保方さん本日なのですが、東京は雪で、寒々しております。小保方さんとこうして論文準備ができるのを、とてもうれしく思います」と男性のナレーションで笹井氏のメールを紹介。続けて女性の声に変わり「また近いうちにご相談にうかがわせていただけないでしょうか」との小保方氏のメールが、画像をバックに読み上げられた。


「騒動が過熱してからは笹井さんも小保方さんも理研のアドレスを一切、使用しなくなった。メールの盗み見とリークについては、小保方さんも笹井さんも『そんなことまでするのか』と疲弊していました」(前出の関係者)。ましてや2人には交際疑惑までささやかれていたから、なおさらだ。


 理研内部の何者かの裏切りリークに心を痛めつけられたことが、自らの命を絶つ引き金になった可能性は否定できない。


 自殺場所として選んだのは、自宅でもなく、研究拠点である発生・再生科学総合研究センターでもない。自分の研究室がある先端医療センター研究棟2階でもなく、iPS細胞の研究もしている先端医療センター研究棟5階の階段部分だった。


 メールをリークした裏切り者へ「なぜそこまでする?」という抗議の意図があったのだろうか。


 精神科医の東京・銀座泰明クリニックの茅野分(ちの・ぶん)院長は、こう指摘している。


「STAP細胞やiPS細胞の研究をしていた場所で自殺をしたのは、内心STAP細胞が本当にあるのかと疑問に思いつつも、わが命を懸けてでも最後の責任を取り、誠意を表したいと思ったのでは。殉死したという印象。武士の切腹に近いものを感じる」


 また、一方で「すべてを他人の責任にしてリセットできる人は自殺しない。自殺とは責任感の極まるところ」と茅野氏は、笹井氏の自責の念が自殺という選択肢を引き出してしまったのでは、ともみている。


 笹井氏が心理的なストレスで3月に入院していたことも、5日に明らかにされた。本紙もその当時、笹井氏の精神不安を報じている。


 小保方氏も大きなショックを受けており、騒動の発端となったSTAP細胞論文に影響も出そうだ。自殺で失ったものは計り知れない。


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