2014/08/21

健康に関する長期的な調査からわかってきたこと

『薬害オンブズパースン会議の記者会見を見て考える 日本の小児医療に足りないもの』では「疫学調査という発想が厚労省にはないのか」と書いた。その記事でも触れたけれど、夫の知り合いには長期的な健康調査をしておられる研究者が何人もいらっしゃる。「厚労省にそういう発想がない」というよりも、日本ではじまるのはこれから、なのかもしれない。


「疫学調査は数字を読み解く技術がいる。専門の教育を受けないとできないし、けっこう難しいものなんだよ」と夫が教えてくれた。


子どもの場合は、大人における個人差に加えさらに発達の差が激しい。超低出生体重児で統計をとるとなると、人数が少ないこともあり、出てきた数字をどう捉えるか、判断が難しいだろうと夫は言っていた。


でも何も指標がないよりは、あったほうがいいと私は思っている。


例えば、株を売り買いする時に、様々なデータを比べて検討するのは当たり前だ。会社四季報でも新聞や雑誌の記事でも、その会社の広報でもなんでもいい。何かしら参考にできる数字はある。


ところで、お年寄りの健康調査では、どこでどんな調査が行われ、どんなことがわかっているのだろうーーーー今日はそういうことを書いてみようと思う。


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青柳幸利博士の『中之条研究』


夫の後輩に東京都健康長寿医療センター研究所に所属する青柳幸利博士という方がおられる。青柳さんは、ご自身の故郷の群馬県中之条町で長年お年寄りの健康長調査を行ってきた。有名な『中之条研究』だ。


青柳さんは、夫が留学した時にお世話になった研究室に同時期に留学していた。はじめて青柳さんのコンドミニアムに遊びにいった時に、お寿司を握っていた小児科医が「ランセット」の友人だった


青柳さんが留学先から帰国した時、思うような就職先が日本にはなかった。とても苦労されていたようだった。ある時、私が新聞広告でみた宇宙飛行士の募集を教えたら喜んでくれた。UFO番組が大好きで、よくUFOの話をしていたから、私が夫に知らせたのだ。その時宇宙飛行士に選ばれたのが若田光一さんだった。


だから、中之条町の研究について、テレビで話している青柳さんの姿をみたり、雑誌などで研究成果が紹介されていると私は嬉しくなる。長い間、地道に研究してきた姿をみてきたからだ。


夫が言っていた「研究者は業績を出し、社会に貢献するもの」ということは、きっとこういうことなんだろう。


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「運動機能障害」に強い身体になる! 「1日8000歩、20分の速歩き」が健康のカギ ヘルシスト から一部引用

(ヤクルトの情報誌「ヘルシスト」のサイトでダウンロードできるようになっています)


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じつは、中強度の運動が歩行能力のみならず、老化や疾病予防にさまざまな効果をもたらすということが、私たちが行ってきた中之条研究において明らかになってきました。


この研究は、群馬県中之条町の 65 歳以上の高齢者 5000 人(重度の認知症や寝たきりの人を除く)を対象に、13 年間という長期にわたり行われたものです。毎年 1 回、詳細なアンケート調査を行い、運動や身体活動の状況、食生活、睡眠時間、労働時間、病気の有無や体調などを調査し、年に 1 回の健康診断のデータも提供してもらいました。さらにその中の500 人を研究の主たる対象とし、小型の「身体活動計」を携帯してもらい、1 日の歩数や運動強度が中強度(3M E T s 以 上 )の 活 動 時 間 を 記 録 し ま し た 。



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書いてあるように鍵になるのは「中程度の運動」。でも、中高年になってからいきなり運動をはじめたのでは、難しいかもしれない。つまり、長い時間をかけてコツコツ地道に健康を考えていかないといけない、ということだ。


ちなみに私は大学生の頃までは運動習慣がまったくなかった。体を動かすことが健康にいいとわかっていても、続けられない。トレッドミルで15分歩くのがやっと。そこからはじめたのだ。


だから中高年になって健康的な生活を遅れるかどうかは、健康によいとされる生活習慣を続けられるかにかかっているだろう。それには、ある程度生活に困っていないとか、まわりの人間関係だとかが関係するだろう。


だって、生きていて幸せだと思えないのに、「運動しよう!」「健康に気をつけよう!」と思わないでしょう?


こういう数字があったとしても、数字は数字。「何歳になっても遅くはない」「何もしないよりは何かをしたほうが絶対にいい」と夫はいっていた。「できることから少しずつ変えてみよう!」そういう風に考えればいいと思う。


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新開省二博士のお年寄りと栄養の研究


新開先生は青柳さんと同じ東京都健康長寿医療センターに所属しておられる。新開先生は忘れてしまったと思うけれど、私に実験に使う細胞の値段を教えてくれたのは新開先生だった。


細胞の保存には、日本の食品メーカーの冷凍技術が応用されているそうだ。日本は、海外でとれたまぐろなどを冷凍して日本に輸入している。そのため、日本の食品メーカーには高度な冷蔵技術があるそうだ。


「そういえば、一昔前のお正月のおさしみは、確かに水っぽくて美味しくなかったな。でも最近はそんなことを感じない」と思って聞いていた。


息子が保育器の中にいる頃、新開先生の話を思い出した。日本の科学技術の素晴らしさに感謝する一方で、細胞一つ一つの値段がそんなにするんだったら‥‥と思ってNICUに毎日通っていたことを思い出す。


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高齢者こそ肉を?! ~見過ごされる高齢者の“栄養失調”~ 高齢者の栄養失調 その実態と背景 NHKクローズアップ現代 から一部引用


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東京都健康長寿医療センターの新開省二さんです。
新開さんのチームは、東京と秋田で、目立った病気のない高齢者1,000人以上の栄養状態と、その影響を20年以上にわたって追跡調査しました。
栄養状態を表すアルブミンなどの血液成分と生存年数、病気との関連について、詳しく解析を行いました。


その結果、アルブミンの値が低い人たちは、そうでない人たちより生存率が低い、つまり、長生きできない傾向があると分かってきました。


ほかにも、認知症の前段である認知機能の低下を引き起こすリスクが2倍。
脳卒中、心臓病のリスクは2.5倍に上がる、という結果も出ました。












アルブミンは、肉や魚などのたんぱく質をもとに体内で作られるもので、筋肉や血管、免疫細胞などの機能に不可欠な成分です。
そのため、アルブミンが減ると、筋肉が落ち、血管がもろくなり、免疫機能も低下します。






年をとると、多くの場合、アルブミンを作る力が徐々に弱まる傾向にあります。
これが、いわゆる老化です。
だからこそ、高齢者は若い時以上に意識して、肉などのたんぱく質を多くとらないと、アルブミンの減少が加速。
老化が早まり、さまざまな病気が進行する要因となるのです。



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東北大学大学院の門間陽樹助教・永富良一教授の研究


永富良一先生は数カ国後がぺらぺらで頭はいいし、スポーツの実技もこなしてしまうスポーツ万能の研究者だ。海外を飛び回る一方、宮城県でお年寄りの健康調査を地道にしてこられた。震災後も被災地の仮説住宅に通い支援をしている。


これまでの患者の人権を無視した、「殴るのが、治療の一環」など、科学とは呼べないPTSD研究に風穴を開けて欲しい。


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東北大学 プレスリリース



東北大 震災前の生活習慣などが災害後の精神的ストレスと関連すると発表 QLifePro医療ニュース


震災前のデータを分析


東北大学は5月2日、仙台市内の勤労者を対象に東日本大震災発生以前から行っていた健康調査のデータを解析し、震災発生前の身体状態や生活習慣が震災発生後の精神的ストレスと関連するとの研究結果を明らかにした。


同研究は東北大学大学院 医工学研究科 健康維持増進医工学分野の門間陽樹助教、永富良一教授のグループによって行われ、4月23日PLOS ONE(電子版)に掲載された。


同研究では、災害の発生に影響を受けず、かつ、修正可能な身体機能や生活習慣に着目することで、震災発生前の身体機能、生活習慣および既往歴などが、震災発生5ヶ月後の精神的ストレスレベルと関連が認められるかについて検討した。


2010年に研究に同意した健診受診者1,185名を対象に生活習慣に関するアンケートと人口統計学的特性、既往歴、脚伸展パワーを評価。さらに、災害発生後の2011年、震災による精神的ストレスの指標として改訂版出来事インパクト尺度(IES-R)の評価を行い、震災による家屋被害、人的被害および仕事量の増減についてアンケートを実施した。


追跡不可能者や欠損値を除いた522名を対象に分析したところ、男性においては脚伸展パワーが高い人はIES-R得点は低く、毎日お酒を飲んでいた人および抑うつ傾向であった人はIES-R得点が高いという関連が認められたという。また、女性においては、抑うつ傾向があったものはIES-R得点が高い関連が認められ、高血圧であった場合もIES-R得点が高いという関連が認められたという。


日常生活の改善・維持により、災害に伴う精神的ストレス耐性獲得の可能性


これまで大規模自然災害時の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の危険因子として被害状況や性別・精神疾患既往歴といった因子が特定されてきたが、これらの項目は災害が発生しないと評価できず、修正が困難もしくは不可能だった。


同研究は世界でも初めて、災害発生前の状態が災害発生後の精神的ストレスに影響を与え、日常の身体機能の維持・向上が災害時のメンタルヘルス悪化の一次予防策になる可能性を示すものだという。


災害の発生前に評価できる項目や修正可能な項目が災害後のPTSDに影響を与えると明らかにすることで、PTSDハイリスク者を災害発生前に把握し、日常生活の改善・維持により災害に伴う精神的ストレスに対する耐性を得ることができる可能性が示された。

(浅見園子)

▼外部リンク

東北大学 プレスリリース
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/


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