2014/09/12

『鳥取城キャラ騒動』からみえてくるもの 『ゆるキャラ』と古典落語の『人情噺』

家にあった週刊文春をパラパラめくっていたら、不思議なイラストを発見。ツギハギの着物姿の貧しそうな女性が、辛そうな顔をしている。それだけでも十分インパクトがあるのに、なぜか左手にカエルを持っている。


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これは一体何なんだろう?記事のタイトルを見ると『鳥取城キャラお蔵入りに石破幹事長が一言』と書いてある。


鳥取市の公式サイトには、「名称・画像の公開の自粛をお願いします」とあるので転載しないけれど、このイラストは鳥取城をPRするために市が募集を呼びかけ、見事、優秀賞(次点)に選ばれたキャラクターだそうだ。1581年(天正10年)に起きた、『鳥取の飢え殺し』(とっとりのかつえごろし)と呼ばれる大規模な兵糧攻めで、逞しく生き延びた庶民を表しているのだそうだ・・・・。


けれど、言い伝えが言い伝えなだけに、「『くまモン』に代表されるような『ゆるキャラ』でPRするのはふさわしくない」という批判が出たのだろう。公表からわずか4日でお蔵入りしてしまったそうだ。


それで文春の記事になったようだ。


中学生の時、国語の先生が言っていた。「子どもが好む童話と、大人が好む童話は違う。例えば、アンデルセンの『赤い靴』は子どもの頃には良さがわからないくても、大人になると違う感想を持つかもしれないよ」。


確かに、小泉八雲が『怪談』で取り上げた「耳なし芳一」などにも当てはまる。子どもの頃には、好きじゃなかったのに、なぜかいつまでも心に残っている。ふとした瞬間に蘇る話がある。


『鳥取の飢え殺し』も、どちらかというとそういう話だ。担当者の方は責任を感じておられるかもしれないけれど、一生懸命な気持ちは理解できる。「鳥取は本当にがんばっているんだな」と私は思ったよ。


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週刊文春 2014年7月24日号 『鳥取城キャラお蔵入りに石破幹事長が一言』 より一部引用


1581年、織田信長の命を受けた羽柴秀吉はこの地を侵攻、兵糧攻めで食料は二ヶ月で尽き、三ヶ月で餓死者が続出。人々はその肉を食い、栄養価の高い脳みそが奪い合いになる飢餓地獄が展開。後に「子は親を食し、弟は兄を食し」とつづられた。


「秀吉の参謀・黒田勘兵衛の発案であらかじめ現地の米を高く買い占め、欲にかられた城の兵や民衆も、米を売ってしまい、城の在庫は尽きていた。勘兵衛の経済的な才覚と、秀吉の戦いの才覚が開花した戦いでした」(歴史作家・楠戸義昭氏)



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「むごたらしさゆえ、今回の大河でも映像化されていない。城主吉川経家はこの地では誰もが知る」と文春には書いてあった。


そこで吉川経家について調べてみる。wikipediaの「吉川経家」の解説によると、4ヶ月の籠城に耐え城兵の助命を条件とし、降伏することとなったそうだ


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wikipedia「吉川経家」より一部引用


秀吉は経家の奮戦を称え、責任を取って自害するのは森下道誉・中村春続だけでよく、吉川経家は帰還させるとの意思を伝えた。しかし経家はそれを拒否し、責任を取って自害するとの意志を変えなかった。困惑した秀吉は信長に確認をとり、信長は経家の自害を許可した。

(中略)

辞世の句は「武士の 取り伝えたる梓弓 かえるやもとの 栖なるらん」。


自害後、その首は秀吉の下に届けられた。秀吉は首を見るなり「哀れなる義士かな」と言って男泣きしたと伝わる。その後、安土の織田信長のもとに送られ、信長によって丁重に葬られた。



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東京にも『八王子城跡』という有名な城跡がある。そこにも悲惨なエピソードが残されており、都民の間では「是非訪れたい歴史的名所」というより、有名な『心霊スポット』として知られている。


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八王子城 wikipediaより一部引用

八王子城合戦


小田原征伐の一環として1590年(天正18年)7月24日(旧暦6月23日)、八王子城は天下統一を進める豊臣秀吉の軍勢に加わった上杉景勝・前田利家・真田昌幸らの部隊1万5千人に攻められた。当時、城主の氏照以下家臣は小田原本城に駆けつけており、八王子城内には、城代の横地監物吉信、家臣の狩野主善一庵、中山勘解由家範、近藤出羽守綱秀らわずかの将兵の他、領内から動員した農民・婦女子を主とする領民を加えた約3000人が立て籠ったに過ぎなかった。


豊臣側は前夜のうち霧をぬって主力が東正面の大手口(元八王子町)・北側の絡め手(下恩方町)の2方向より侵攻し、力攻めにより早朝には要害地区まで守備隊を追いやった。その後は激戦となり1000人以上の死傷者を出し、一時攻撃の足が止まった。その後、絡め手側別働隊の奇襲が成功し、その日のうちに城を落とした。氏照正室・比佐を初めとする城内の婦女子は自刃、あるいは御主殿の滝に身を投げ、滝は三日三晩、血に染まったと言い伝えられている。


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夫に「八王子城の裏は山だから行ってみようと」と何度か誘われたけれど、頑なに拒否してきたのは、このエピソードがあまりにも悲しいからだ。非業の最期をとげた方々は、遊びに来て欲しくないんじゃないかと思ってしまうのだ。


ところが、ブログに書いたようにはじめて今年ハイキングに出かけた。思っているような暗いイメージはあまりなく、都会のオアシスという感じだ。地元の方々が、長い年月をかけて、イメージアップに力を注いだからだ。なんと、キャラクターもいるそうだ。「また行きたい」と思った。


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地元では「大河ドラマにして欲しい」という要望があるみたい。


でも。ドラマにしたら、受け手の視聴者がどのように感じるかは微妙な気がする。映像はインパクトが違うから、「見たくない」と思う人も多いだろう。


ブログでたびたび取り上げてきたように、ワクチンの啓発にも通じる。いくら正しくても、伝える方法を間違えると、人の心に届かない。逆効果になってしまうことがある、ということだろう。


「鳥取の飢え殺し」のような、歴史に埋もれさせてはいけないエピソードは、どうやって伝えたらいいんだろう?


ぴったりな方法が思い浮かんだ。私の親戚の叔父は古典落語家で『人情噺』を得意としている。「鳥取の飢え殺し」が演目にあるのかわからないけれど、『人情噺』のように伝えるといいんじゃないのかしら?


どうして、叔父さんの落語を20年近くききにいかなかったというと、はじめてきいた『人情噺』が、とても悲しく哀れだったからだ。それまで私は落語というものは、人を笑わせるための芸なのかと思っていたのだ。ガツンとショックを受けてしまい、なぜか「軽い気持ちでいくものじゃない」と思ってしまったのだ。


それでも私はブログに書くように、ずっと覚えているし、20年ぶりに出かけた。


だから思うのだ。知ってもらうだけじゃなくて、「考え続けてもらう」ということが大切じゃないのかな。ご先祖様達も、「私達をそっとしておいて」じゃなくて、本当は「私達の悲劇を忘れないで」と願っているんじゃないだろうか。


こういう歴史の悲惨な教訓こそ、後世にきちんと伝えて欲しい。叔父さんのような古典落語家にがんばって欲しい。


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映画を越える柳家さん喬の人情噺 All About から一部引用


今、一番脂が乗っている噺家の一人ゆえ、どの落語を聞いても素晴らしいのですが、柳家さん喬の落語を聴くならやっぱり人情噺ですね。


人情噺はほとんどが30分以上の長講ゆえ、独演会や寄席の特別公演などでしか聴けませんが、そのような機会があればぜひ、一度たっぷりと柳家さん喬の人情噺を味わっていただきたい。なぜなら人情噺でこそ、この人の話芸のすごさが痛感できるからです。


以前、柳家さん喬の『福禄寿』を某落語会で観ているとき、噺の中で雪が深々と降るくだりがありました。私はそのくだりを聴いた瞬間に舞台が暗転して天井から雪がチラつく錯覚に陥りました。この人の落語は良質の演劇や映画のワンシーンを思い起こさせるような力があり、こちらの想像力を常に刺激してくれます。一度、さん喬の世界に引きずりこまれたら一席終わるまで、その世界から帰ってこられません。


「近頃なんか心に染みるようなエンターテイメントを体験していないなぁ」とお嘆きのあなた、柳家さん喬の人情噺をお勧めします。厚手のハンカチもお忘れなく。



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最後に。「鬼太郎茶屋」の前を久しぶりに通ったら「大山Gビールのヴァイツェン」の宣伝が。飲んでみたらとてもおいしかったよ。このビールは小麦麦芽を使っており、「ワールド・ビア・アワード2011」という賞を受賞したそうだ。小麦麦芽を使ったビールは「酸味が少ない」が売りだけど、かえって酸味が気になることが多かった。でも、これは違う。今度は、鳥取に行ってみよう!鳥取城にも行ってみたいと思っている。


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めざくら大山ブルワリー  大山Gビール ヴァイツェン


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