2014/10/06

ヨセミテ国立公園のハンタウイルス騒動 

『集中』にデング熱に関する記事が掲載されていた。この記事を読んで、昨年ヨセミテに訪れた時のことを書いておこうと思った。


感染症の報道はいつも同じだと思う。一段落した頃の方が冷静でいいけれど、その頃には世の中の感心が薄れてしまう。


しかし私は、公衆衛生は派手な取り組みよりも地道な啓発が一番だと思う。今、多くの人達が健康のためにジョギングをするようになったのは、夫のような専門家が長い時間をかけ、じょじょに盛り上げていったからだと思うからだ。


やりたくない人、やる気がない人にムリヤリやらせても、運動は長続きしない。


感染症対策にも同じことがいえるんじゃないのかな、とずっと思っていた。やはり義務教育で教えるのが一番いい方法じゃないだろうか。ただ、それにはHPVワクチンの騒動が落ち着かないといけないんじゃないかと思っている。教育は医療と考え方が違う。救済策がほとどない現状で、すすめることには抵抗がある。


ところで私達のようにアウトドアが好きな人は、常に危険と隣あわせだ。だから、感染症対策にも関心がある。


これはヨセミテのゲートで必ず渡される「ハンタウイルス」に関する注意事項が書いているリーフレット。私達が訪れた前の年の2012年、「極めてまれだが、感染すると治療法はなく3人に1人が死亡する」というハンタウイルスに宿泊客が6人感染。そのうちの3名が死亡し世界中で大きく報道された。ハンタウイルスはネズミなどのげっ歯類の排せつ物の粒子を吸引することで感染するという。その後の報道では、感染リスクのある人が、2万2千人にのぼるとされた。


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ヨセミテにはアメリカ人なら一度は泊まってみたい!といわれる高級ホテル、アワニーから、ホテル形式のコテージ、シグネチャー・テント・キャビン、自分でテントを持ち込むテントサイトなど、様々な宿泊施設・スタイルがある。


以外だったのが、はじめに感染した旅行者二人が宿泊したのが、オンボロテントではなく、2009年につくられたシグネチャー・テント・キャビンだったということ。


こちらに詳しく書いてあるけれど、快適さを求めた結果、感染症が広がった可能性があるようだ。


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3人に1人が死ぬハンタウイルスにヨセミテ宿泊客6人が感染、2人死亡、1万人に感染リスク(追記あり) ギズモード・ジャパン 2012.9.14. より一部引用


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米国立公園局(NPS)によると、グラウンドゼロはヨセミテのテント小屋。


テント小屋と言っても訳者が泊まった仕切りがカーテン1枚のボロっちいハウスキーピング・キャンプの方じゃなく、その奥のカリーヴィレッジに2009年に建ったシグネチャー・テント・キャビン91棟の方です。8月最終週に死亡したベイエリアの男性もペンシルバニアの男性もここに6月に泊まっていました。


断熱材が2重になっており、その間にウイルスを媒介する野ネズミが巣食ってた形跡も見つかってます。なんせクォーター硬貨4分の1ほどの小さな穴からでも潜り込めるそうなので...外敵をシャットアウトするはずがロックインしてしまったという...。



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ハンタウイルス感染症 FORTH 海外で健康に過ごすために

ハンタウイルス感染症(腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群) Hantavirus Infection より一部引用


ハンタウイルスはネズミなどのげっ歯類の一部が持っているウイルスです。分類上はブニヤウイルス科のハンタウイルス属に属します。流行地域でウイルスを持っているげっ歯類にかまれたり、排泄物に触れたり、排泄物を含んだほこりを吸い込んだりすることによって感染します。腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群という2つの疾患を起こします。


腎症候性出血熱 Hemorrhagic Fever with Renal Syndrome:HFRS


発熱、腎臓の障害を特徴とする疾患で、主な流行地域は極東アジア(中国、数万例/年)と北欧・東欧(数千例/年)を主とするユーラシア大陸全域です。わが国では1960~70年代に発生の報告がありますが、その後はみられていません。


どうやってうつる


ウイルスを持ったげっ歯類の糞や尿が粘膜や傷口に直接触れたり、排泄物の含まれたほこりを吸いこんだり、直接げっ歯類に咬まれたりすることで感染します。ヒトからヒトへの感染例は報告されていません。



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報道された当初、結構な騒ぎになったようだ。しかし、その後の対応はいたって冷静。私達が訪れた翌年の2013年には具体的にどんな点を注意すればいいのか皆わかっているから、必要以上に恐れられている雰囲気は一切ない。


リーフレットに書かれているのは、アウトドアの経験がある人なら皆知っているような基本事項だ。「テントの中に動物が近寄る原因となる食べ物、ゴミをおかない。離れたところに密閉して保管する」「糞や尿、死体にはさわらない」などを守ればいいことがわかる。


日本でも主に北キツネや野ネズミなどに寄生する、「エキノコックス」という寄生虫がいる。日本では野生動物に餌をあげる人がいるけれど、むやみに近づかないということは、動物の保護だけでなく、自分を守るための常識でもある。沢水なども直接口にしないほうがいい。


エキノコックス症の知識と予防  北海道


次は虫よけ対策について。


数年前、夏のはじめに山梨県にある大菩薩峠に出かけたら小さな虫がうようよ!山頂付近までまとわりついて大変な思いをしたことがあった。その時以来、蚊よけネットを常に携帯するようになった。ただし一つ難点が。長時間つけていると汗でかぶれてしまうのだ。肌が弱い方にはおすすめできない。やはり、一つではなく、いくつかの選択肢を用意した方がいざという時には安心だ。



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海外に行く場合、虫除けスプレーや、さされてしまった後に使う薬などは現地で購入したほうが効き目がある場合も。北米の場合は、一応日本からも持って行くけれど、念のため、現地でも買うようにしている。(結局使いませんでした)


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あとはスズメバチにさされたことがあったので、携帯している「ポイズンリムーバー」。さされた時に、「ブチッ」という音がして本当に恐かった!万が一のために携帯するけれど、まずはハチにさされないようにすることが大切。スズメバチは天敵であるクマの色、黒に興奮するという。私も黒い服めがけて攻撃されてしまった。



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この他に「狂犬病」のワクチンを家族三人で接種していった。先生には「家族三人でうつと、もう一人旅行に行けるぐらいの費用がかかりますよ。必要ないと思うけどな〜」と言われた。でも、この通り、クマに二度も遭遇!リスや鹿はいたるところにいるし、ボブキャットにもあってしまった。


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先生はしぶっておられたけれど、私は「野生動物を引き寄せる力がある」とよく言われる。クマをみた瞬間「ああよかった」と思ってしまった。もちろんクマよけスプレーと鈴も、忘れずに持っていく。


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最後に、ヨセミテのお土産として定番だったクリフバーが日本のアウトドア店でも最近人気商品になった。「アメリカだから、甘いだけでパサパサして不味いんじゃないの?」なんて思って食べてみたら、おいしくてびっくり。何があるかわからないから、非常食も必需品。



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デング熱「加熱報道」の影で依然として見過ごされている課題 集中 一部引用


なぜ、今回のような流行が起こったのか。大きな原因一つは旅行者の増加である。人の行き来が増えることで病気が広まった。


 海外で感染した患者が日本でデング熱と診断された数を振り返ってみる。2000年ごろには10例前後だったものが、現在は200例程度にまで上昇している。この傾向にはデング熱という病気自体が医療者に認識され始めたことも関係している。00年代初頭にはデング熱自体が知られておらず、見逃されていた事例もかなりあるとみられる。


 そして8月27日、デング熱の国内感染症例が出た。人の行き来が増え、輸入例が急増しており、ヒトスジシマカの生息域も広がっている。こんな中、いつ流行が起きても不思議ではない状況ではあった。


 なぜ、代々木公園だったのだろうか。証明することは難しい。だが、毎週のようにイベントが行われていたこととの因果関係を指摘する専門家は多い。海外からの参加者も多かった。そうした場を海外で感染した人が訪れ、蚊に刺されることでデング熱を媒介するサイクルがつくりだされた。


 これまでデング熱の流行がなかっのに、新たに流行が起こった例は他国にもある。00~01年にかけてハワイで流行したのもその一つだ。このときの症例数は100人規模。他にも台湾でも流行しているし、デング熱に似たチクングニア熱がイタリアで08年に一時的に国内発生したこともある。


 ワクチンの研究は進んでいるものの、現状では蚊に刺されないようにすることが主たる予防策だ。まずは肌の露出が少ない服を着る。防虫剤を適切に使用する。防虫剤に関してはディート成分の効果が医学的にも証明されている。世界的にはディートが20%以上含まれているものを使うことが推奨されている。だが、国内では薬事法の関係で12%含有の製剤しか販売されていない。12%では2時間ごとに塗り直す必要がある。


 デング熱の大半は重症化せずに治癒する。「50~90%は無症状」と指摘する専門家もいる。過剰に恐れる必要はない。ただ、一部の患者は重症化する。日本国内は諸外国に比べて医療へのアクセスが格段に良い。受診の垣根は低いとみられる。外来で細かく経過をみていく必要がある。診断は流行地域で蚊に刺されたか、症状や血液検査で行う。


 感染症の流行に関しては常ではあるが、メディアや世論は流行しない限り注目はしない。前述の通り、国内での流行は専門家の間では十分に予想されており、08年段階で「米国医師会雑誌」には注意を喚起する記事も掲載されていた。


 世界保健機関(WHO)は4月7日を世界保健デーと定めている。今年のテーマは「節足動物が媒介する感染症」。


〈蚊マダニなどの節足動物によって媒介される感染症には、マラリアや黄熱、クリミア・コンゴ出血熱など様々なものがあり、世界では、毎年100万人以上の方がこれらの感染症によって亡くなっているとされています。本年は、「節足動物が媒介する感染症から身を守ろう」をスローガンとし、以下の目的達成に向けてキャンペーンが展開されます。


 ▽流行地域に住む人々が適切な予防手段についての知識を持つ。

 ▽流行地域への旅行者が適切な予防手段についての知識を持つ。

 ▽これら感染症が公衆衛生上の問題となっている国々において、保健当局がより適切な予防手段を講じる。

 ▽これら感染症が新たな脅威になりつつある国々においては、保健当局が自国又は周辺国の環境当局やその他の関連当局と連携し、感染症を媒介する節足動物の調査を行い、その拡散を防ぐ為の措置をとる〉(厚生労働省ウェブサイトより)


  このキャンペーンについてインターネットなどを通じて拡散を試みた医療者はいた。だが、当の医療界からも反応が薄かったという。メディアの関心についてはいわずもがなだろう。


公衆衛生は地道な取り組みが基本。派手な対策よりも、日ごろの関心の向け方が肝要だ。
我が国は依然として「ワクチン後進国」である。予防接種に関する施策を厚労省に押し付けて恥じないような風土からはせめてそろそろ脱却したい。


本誌がかねて指摘してきたような米国予防接種諮問委員会(ACIP)に匹敵する組織の必要性はどれほど強調してもしすぎることはない。デング熱騒動を機に見直すべき点は少なくなさそうだ。


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