2014/11/14

亡くなった方を忘れずに 

私にはがんで亡くなった、外科医をしていた友人がいる。


毎年、命日にはお花をおくる。結婚記念日を忘れても、なぜか命日は覚えている。


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今から12年前だった。


前置胎盤による出血がなかなか止まらず入院していた時、妹がニューズウイーク日本語版を差し入れてくれた。妊娠と出産、そして子育ての特集だった。


妹に悪気はなかっただろう。


ただそこには、目をそらしたくなるような厳しい現実が書かれていた。1000g以下でうまれる超低出生体重児(未熟児)は、発達が遅れ、普通学級には通えない、目が見えない、心疾患のリスクが高くなるなど、障害を抱えるリスクが高くなるとハッキリ書いてあったのだ。


病棟の夜ははやい。明かりが消えると急に恐怖が襲う。


その日は一睡もできなくなってしまった。


真夜中過ぎ、見回りに来た看護師さんが私をみかねて「ここは学校じゃないんだから、テレビをつけてもいいんですよ」と言ってくれた。その言葉が嬉しくてテレビをつけた。


ちょうどある局でドラマの再放送をしていた。桐野夏生さん原作、女優の天海祐希さん主演の「柔らかな頬」というサスペンスドラマだった。


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天海祐希、三浦友和 他

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何者かに4歳の娘を誘拐された孤独な母のストーリーなのだが・・・私は泣きたくなった。天海さん演じる母を助ける刑事さんが、「末期がん」という設定だったのだ。俳優さんの名前は覚えていないけれど、演技が上手くて末期がんの患者さんの気持ちになってしまう。テレビをみている私自身、明日どうなるかわからないから、俳優さんのセリフ一つ一つが重くのしかかるのだ。


「夜になると恐いんだよ。昼間はなんとかごまかせるんだけどさ」というセリフが胸に突き刺さった。


私の脳裏には、若くしてがんでこの世を去った友人の葬儀の光景が蘇った。


「君は、苦しい闘病生活の中で、いつも私達に気をつかっていた。いつも笑っていた」という医局の准教授が泣きながら読んだ悼辞の言葉に、参列した誰もが泣いていた。


私はたまたまみたドラマのセリフで初めて気づいた。


違う。


夜はこんな風に、死への恐怖と闘っていたんだろう。


翌日息子がうまれた。


何度も命の危機があった。超低出生体重児(未熟児)に未熟児網膜症はつきもので、息子も急激に悪化し失明するかもしれないと医師に説明された。毎週水曜日にレーザー治療を受けたが、なかなか安定しない。


不思議な夢を見たのはその頃だった。


亡くなったはずの友人が白衣を着て、聴診器をぶら下げて保育器の横に立っていた。私に「心配しなくて大丈夫」と笑っていた。


それから間もなくして息子は安定した。


私は、もしも息子が無事に退院したら、東北にあるご実家にお線香をあげに行こうと決めていた。


それから数年後。お母様にお目にかった時、夢の話をした。お母様は「あの子は天国できっと、大勢の患者さんに囲まれているでしょう」と泣いていた。


私は天国にも病院があると思っている。


先生は天国の病院で私たち見守っているだろう。

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