2014/11/17

ジョナス・ソーク先生と東範行先生 「医療不信」を生み出すもの

北米に住んでいる時に「日本と違う」と思ったことがいくつかあった。その一つが、メディアに登場する医師だ。あちらのメディアはよく勉強しているし取り上げる医師も、誰もが知る名医のようだ。きちんとした業績がない医師はテレビに出られない、と言うべきだろうか。お手軽健康情報バラエティー番組もない。よいことだと感心した。


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息子の未熟児網膜症の手術をしていただいた東範行先生が、手術の同意を得るために私に書いて下さったもの。東先生が世界的な未熟児網膜症の権威だと知っていたから、12年間ずっと大切に保管していた。

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友人は私に「ヨーロッパのテレビで取り上げられるのは嬉しいけれど、日本のテレビには出たくない」というようなことを言っていた。腫瘍内科医の勝俣範之先生が怒っておられることは、日本の医療報道を象徴する出来事だと思う。


https://twitter.com/Katsumata_Nori/status/517878450628341760

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息子の未熟児網膜症の治療をして下さったのは、東範行先生という眼科医だ。眼科医ならば誰もが知る名医。海外の医療機関で長い間働いてきた友人の小児科医は私に「東先生の手技は素晴らしい」といつも言っている。


私も『神の手』という言葉は東先生のためにある言葉だと思う。国民が知らないだけで、ポリオワクチンを開発したジョナス・ソーク先生と同じくらい素晴らしいお仕事をしておられると思う。


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(ポリオワクチンを開発したジョナス・ソーク先生がうまれて、ちょうど100周年目の2014年10月28日にグーグルが公開したイラスト)


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ジョナス・ソーク wikipediaより一分引用


ジョナス・ソーク (Jonas Salk、本名:Jonas Edward Salk、1914年10月28日 - 1995年6月23日)は、アメリカ合衆国の医学者。ポリオ・ワクチンを開発した。

ポリオ・ワクチン開発に際しては安全で効果的なものをできるだけ早く開発することだけに集中し、個人的な利益は一切求めなかった。テレビのインタビューで「誰がこのワクチンの特許を保有しているのか」と聞かれたのに対して「特許は存在しない。太陽に特許は存在しないでしょう。」と述べた



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眼科で年に一回眼底検査をしていただく時に、カルテをみた先生が必ず言う一言がある。「ああっ、東先生が手術したんですね」。そして検査が終わると必ずこのように言う。「東先生はやっぱりすごい!わからないほどきれいです。本当によかったですね」。どの先生も息子の元気な姿を見ると嬉しそうだ。


それなのに・・・。仲の良い超低出生体重児のお母さんは、東先生にお世話になったけれど名医であることを全く知らなかったそうだ。


今まで先生のお名前を出さないようにしてきたのは、予後がいろいろだからだ。患者さんや親御さんの心を乱すことになるかもしれないと、私にはためらいがあった。


日本の医療の素晴らしいところを、海外の友人に説明する時、息子の話を必ずする。一言でいえば、東先生のような『神の手』が、国公立病院におられることだと思うからだ。


ハワイ大学大学院で「公共経営」を教えているリチャード・プラット教授は夫の友人だ。プラット先生はモンゴル政府に招聘され、公共サービス教育についての助言も行ってこられた。そのプラット先生が家に遊びにきたから説明したことがある。


「息子は超低出生体重児だったのでNICUに4ヶ月入院しました。日本にはアメリカと違い国民皆保険制度があります。だから、東先生のような『神の手』に手術していただいても、私達にほとんど負担はありませんでした」。



プラット先生は「えっ!」と驚いておられた。


ロンドンオリンピックの開会式を見た友人の小児科医が言った一言も忘れられない。開会式のミュージカルで「グレート・オーモンド・ストリート小児病院」が取り上げられていたのだ。彼は「イギリスの小児病院は国民に大切にされている。やっぱりイギリス人は違うなぁ」と羨ましそうに言っていた。


しかし、東先生の手術を受けたお子さんのお母さんも東先生が名医であることを全く知らない。それが日本だ・・・。東先生のような名医が世に知られず、その一方で「レーシック手術●円」というクリニックや医師ばかりが目立ったら、国民が信じなくなるのは当たり前だと思ってしまう。


ノーベル賞を受賞した医師が「(医師や研究者にとって)何が一番大切ですか」と問われて「圧倒的な業績を出すことです」おっしゃっておられた。先頭に立つのは「ああ、あの先生がおっしゃるなら」というような誰もが納得するような医師だと思う。


私はメディアにお願いしたい。特にNHKには、その道のプロから尊敬されるような方を取り上げて欲しい。本当の誠実さとは地味で目立たないものだと思う。目立たないものを、取り上げることが公共放送の使命であり、そのために受信料を払うだと思ってきた。


お手軽な健康情報番組じゃなく良質な番組をつくって欲しい。私の友人が「テレビに出たい!」というような番組を。


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未熟児網膜症の失明回避 成育医療研究センター 2013/9/4 日本経済新聞


国立成育医療研究センター(東京都)は4日までに、生後間もない未熟児に多い目の病気で、 失明の恐れもある「未熟児網膜症」の赤ちゃん向けに独自に開発した手術を行い、2004年からの7年間で57人中35人が十分な視力を得ることができたと発表した。


得られた視力は0.1弱から0.5で平均は0.2。十分な視力を得られなかった子供も、ほとんどが失明を免れた。


未熟児網膜症は異常に増殖した網膜血管が原因で、網膜剥離を起こす病気。従来は増殖した血管にレーザーを照射する治療が主流だったが、治療成績はよくなかった。センターの東範行細胞医療研究室長らは、血管が増殖する際に“足場”となる硝子体と呼ばれる組織を、早期に切除する方法を04年に開発した。


東室長によると、未熟児で生まれた後、約2カ月以内の早期に手術を行えば、成功率は上がるという。


医療技術の進歩で、出生児の体重が500グラム程度の赤ちゃんも助かるようになった半面、未熟児網膜症も増加。20年前に小児の失明原因の6%を占めたが、現在は最も多く35%に上るという。〔共同〕



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成育医療研究センター 57人中35人 十分な視力 2013年9月4日 つなごう医療 中日メディカルサイト 

国立成育医療研究センター(東京都)は3日、生後間もない未熟児に多い目の病気で、失明の恐れもある「未熟児網膜症」の赤ちゃん向けに独自に開発した手術を行い、2004年からの7年間で57人中35人が十分な視力を得ることができたと発表した。


 得られた視力は0.1弱から0.5で平均は0.2。十分な視力を得られなかった子どもも、ほとんどが失明を免れた。センターの東範行細胞医療研究室長は「特別支援学校ではなく、普通学校に入学する可能性が開かれた」としている。


 未熟児網膜症は異常に増殖した網膜血管が原因で、網膜はく離を起こす病気。従来は増殖した血管にレーザーを照射する治療が主流だったが、治療成績はよくなかった。東室長らは、血管が増殖する際に“足場”となる硝子体と呼ばれる組織を、早期に切除する方法を04年に開発した。


 東室長によると、未熟児で生まれた後、約2カ月以内の早期に手術を行えば、成功率は上がるという。


 医療技術の進歩で、出生児の体重が500グラム程度の赤ちゃんも助かるようになった半面、未熟児網膜症も増加。20年前に小児の失明原因の6%を占めたが、現在は最も多く35%に上るという。



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腹腔鏡手術後8人死亡…群大病院、同じ医師執刀 2014年11月14日 読売新聞


群馬大学病院(前橋市)で2011~14年、腹腔鏡ふくくうきょうを使う高難度の肝臓手術を受けた患者約100人のうち、少なくとも8人が死亡し、病院が院内調査委員会を設置して調べていることがわかった。


 8人を執刀したのはいずれも同じ医師。同病院ではこれらの手術は事前に院内の倫理審査を受ける必要があるとしているが、担当の外科は申請していなかった。


 病院関係者によると、手術が行われたのは第二外科(消化器外科)。死亡した8人は60代~80代の男女で、肝臓がんなどの治療として腹腔鏡を使う肝臓切除手術を受けた。手術と死亡の因果関係は現時点では不明だが、8人は術後に容体が悪化し、約3か月以内に肝不全などで亡くなった。


 事態を重く見た病院側は現在、同科肝胆膵すい(肝臓、胆道、膵臓)グループの全手術を停止している。



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コメント

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偶然かわかりませんが、

私の息子の眼は12歳の時に、東医師によって無茶苦茶にされました。 網膜剥離と黄斑変性症でしたが、網膜剥離にはこれから眼球が成長するというのにバックリングという信じられない古典的手術を行い、後者は深い説明がないまま「自然治癒」するでしょう、と適当なことを言われました。 信じられない実態です。 

どこがゴッドハンドなのかさっぱりわかりませんが、もしかしたら若い時は素晴らしい志を有していた方だったのかもしれませんね。正直申し上げてこれ以上の犠牲者を出したくないので、生育病院の小児眼科を権威だとかいうことを控えてもらいたいです。

Re: 偶然かわかりませんが、

texasさま、コメントをありがとうございます。

私の息子は、成育で生まれた未熟児です。
24週という早産のため未熟児網膜症は宿命であり、
失明を防ぐにはレーザー手術しか方法がありませんでした。
東先生は私たち家族にとっては神様です。

成育以外の医療機関にもお世話になりましたが、どこの病院に行っても、
東先生が執刀医だというと、「やっぱり東先生はすごい」と言われました。

ただ、このブログは、個人的な経験を書き留めた記録です。
おっしゃるとおり、すべてのご家族がそうではないでしょう。

周産期医療の本を読んだところ、
未熟児を救命する医療とは「人体実験」の繰り返しのような感じがしました。
息子は見た目には元気ですが、
長期的に、安心・安全とはまだいえないと思っています。
もしかしたら、小児がんの晩期合併のような問題が出てきてもおかしくないかもしれません。

また、最近のエントリーをご覧いただければ、
私も成育のすべての医療に満足しているわけではないんです。
実は裁判を考えたこともあるんですよ。

http://sakura4747.blog.fc2.com/blog-entry-858.html

成育にはカルテと診療記録の開示をしたし、
「私のデータを研究に使わないで欲しい」という書類にもサインをしました。
私の元主治医は、今も東京都などで「名医」として講演などをしています。
私以外の患者さんの中には、その方を「名医」だと思っている方もいることでしょう。

私は自分のマイナスの経験もブログで公開しているため、
「弁護士さんを紹介してください」という方にコメントをいただいた時には、紹介したこともあります。
(その方のお子さんは成育の患者さんではありませんでした)

病院にも落ち度があると思いましたし、
私がその方だったら「どうしてこうなったんですか!」と詳しく説明して欲しいと思ったからです。

医療機関との間でトラブルが起きた時には、ADRという制度もありますが、
私自身、ご遺族の支援活動をお手伝いして痛感しました。
今はADRもケースバイケースだと思うようになりました。

なんだかんだいっても患者さんは多勢に無勢です。
病院と病院側の弁護士に上手く丸め込まれる場合もあるでしょう。

また、病院によっては患者会があったりしますが、
患者会も良い面と悪い面があると思います。

患者さんの中には、病院で辛い思いをした方もいるからです。
辛い経験をした方には、あまり救いにはならないのかな、と思います。
救急医療の場合は特に、光もあれば影もあります。
患者会の活動の副作用というか、疎外感を持つ患者さんとご家族もいらっしゃるでしょうね。

実は私も、救命されてよかったと手放しで喜んでブログを書いているわけではないんです。
皆一人一人違うと思っています。