2014/11/28

神奈川県黒岩祐治知事に望むこと 『医療化』による弊害にも目を向けて欲しい

2009年の終わりだった。ある医師からメールが送られてきた。私が書いた手記を、医療者の集まる掲示板で紹介したそうだ。手記を読んだ医師から感想が書き込まれたから転送してきたのだという。


そらみみがきこえたひ (こころの病気がわかる絵本―統合失調症)そらみみがきこえたひ (こころの病気がわかる絵本―統合失調症)
(2010/03/20)
宮田 雄吾

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その中の一つ。ある医師からの意見が忘れられない。「社会を変えるなんて無謀」というようなことが書かれていたからだ。


あれから数年ーーーーーー


私はあの時声をあげて良かったと思っている。なぜなら今、日本全国で行動する支援者(ソーシャルワーカー、臨床心理士、看護師、医師)が増えたからだ。特に神奈川県での動きが活発だ。


どうして神奈川県で動きがあるのだろうか。その答えは、あの時の私達のやり取りに残されている。これは私がその医師に問いかけた疑問だ。手記を書いた目的は、このような現状を変えたかったからだった。


  • 超低出生体重児は一般的に追いつくのに10年はかかると言われている。今、無理に遅れを取り戻そうとしても、子どものためにはならない。しかし発達検診では遅ればかり指摘される。検診が逆に追い詰めていないのか?

  • 病院で検診を行っても科学的根拠があるとは思えない指導を毎回受ける。

  • 軽度の遅れしかない息子のような超低出生体重児は、発達が遅れがちだけれど、それは「発達障害」とは違うと思う。夫も専門家の一人のはずなのに、どうして「医療機関」で発達検診医の指導を受けないといけないのか。

  • 「障害名」をつけないと療育が受けられない今の制度はおかいしいのではないか.。(遅れが)軽度の子ども達には受け皿が用意されていないことが問題だ。医療者だけで支援を考えないで欲しい。


私の問いかけに対し、以下のような回答が送られてきた。


  • 私も今所属している病院のフォロー体制は頼りにならないのでは、と思っている。なぜなら発達指数をだしてくれるだけで両親を支えてくれる雰囲気ではないから。

  • (障害名をつけられるとショックを受ける)これはよくわかる。ADHD、アスペルガー、自閉症などとすぐについて、私の外来で涙ながらにその時の話しをしてくれるご家族がいるからだ。

  • 私は早産児の発達は独特だと思っている。しかし、この発達を小児精神や発達の医師がみるとADHD、アスペルガー、自閉症と診断する場合があるようだ。早産児でない子ども達とその後の経過は違う。だから「あんまり間に受けなくていい」と親御さんに話すことが多い。

  • 我々のような集中治療医は激務で退院後のフォローまで考える精神的・肉体的余裕がない。じょじょに変えていけばいいのではないか。


神奈川県では子宮頸がんワクチンのキャンペーンにも力を入れていたけれど、「発達検診」にも力を入れていたそうだ。手記を書く数年前、私はある人から教えてもらった。メールにはこのように書いてあった。


  • 神奈川県の療育相談で有名で、かつ文部科学省の研究班の仕事もしている著名な医師は、母親が相談に行くとろくに診察しないですぐにADHDや自閉症と診断する。すぐにリタリンを処方している。


福祉の現場で働く支援者に教えてもらった。今、神奈川県ではこのように訴える子どもが多いそうだ。「私には本当に障害があるんですか?」「なぜ、こんなに副作用の強い薬を飲み続けないといけないんですか?減薬や断薬はできないんですか?」


今年7月22日に放送された NHKクローズアップ現代「幼い命がなぜ… ~東京女子医大病院 医療事故の深層~」を見た時、なんともいえない気持ちになった。神奈川県の小児医療の現状について紹介していたからだ。


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NHKクローズアップ現代「幼い命がなぜ… ~東京女子医大病院 医療事故の深層~」

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こうした子どもの集中治療室があるのは、全国で29か所だけ。


限られた専門の施設を、どう有効活用するのか。


新たな取り組みも始まっています。この病院のPICUは、神奈川県内の病院から重症の子どもを受け入れ、高度な治療を行っています。しかし、このPICUにあるベッドは8床。軽い症状の患者まで受け入れる余裕はありません。


そこで神奈川県では限られたベッドを生かすため、37の病院がネットワークを構築しています。高度な医療が必要な重篤な症状の子どもは、県内2か所のPICUがある病院に集約して治療します。


容体が落ち着いた患者や軽症の患者は地域の病院に移して、役割分担を明確にしているのです。



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病院同士のネットワークが構築されたことは良いことだと思う。


しかし、退院後の支援を考える時、一番の問題は私を学会で取り上げてくれた社会学者がおっしゃっておられたことにつきるだろう。「医師の許可がなければ、何もできない構造」ここを変えていかない限り、福祉や教育と上手く連携はできないと思う。


例えば、超低出生体重児は「計算が苦手」だと言われている。「計算が苦手」という問題一つとっても、すぐに「障害」かもしれないと疑われる今の支援のあり方はおかしい。どうして計算ができないと「心理検査」をすぐにすすめられるのだろう。必要なのは「障害名」ではなく、「どうすれば計算に強くなるか」であり、教え方を工夫することでしょう?


息子は発達障害ではない。けれど母親が私ではなく発達検診医のいうことを疑わない親ならば、「発達障害」だったかもしれない。「あんまり間に受けなくていい」程度の診断が子どもの将来を変えてしまう現実にも、そろそろ目を向けて欲しい。子どもの人権は誰が守るのだろうか?


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自己決定権とは

自らの生命や生活に関して,権力や社会の圧力を受けることなく,本人自身が決定できる権利(コトバンク 大辞林第三版の解説)



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毎日、毎日、夫は算数を息子に教えてきた。大学院生の頃から、発達の遅い子どもの教育に興味があったそうだ。本当に子ども達が必要としているのは「障害名」ではなく、決して見放さない支援、教育だと思う。


超低出生体重児の就学問題 算数の教え方と教員削減 「待つ時間」も大切です

超低出生体重児(未熟児)はどうして運動が苦手なの?

小さく生まれた子供を社会でどう支えるか「その11」 子どもの生きる力を引き出すのは医療なの?教育なの?


これは長崎県のすべての公立小・中学校に配布された絵本だ。「さかなが恐くなったクジラは自然界では生きていけません」と教えるのが教育ではないのだろうか。そもそも、いじめ問題や不登校は、すべてが「子どものこころの問題」なのだろうか。カウンセラーや精神科に丸投げする前に、教員や親もかわらないといけないんじゃないだろうか?



さかながこわいクジラ (こころの病気がわかる絵本―社交不安障害)さかながこわいクジラ (こころの病気がわかる絵本―社交不安障害)
(2010/01/30)
宮田 雄吾

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このブログは『超低出生体重児・虐待』だけでなく『超低出生体重児・障害なし』『小学校』『算数』『就学』などの検索ワードで訪問して下さる方も多い。メールもいただいたこともある。私と同様に「療育をしなくていいのか」「(発達検診医)の指導だけでは不安」「(病院以外に)支援が全くない」ということに不安を感じておられるそうだ。


黒岩知事にはお願いがあります。


これから神奈川の支援者の方々が県に働きかけていくそうです。世の中を変えるには、どれだけの人が実際に行動するかにかかっています。やる気と、情熱がある現場の方に、是非、予算をつけていただけたら、と思います。


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大切な10代を、薬で失った ソーシャルワーカー現場へ行く この国の福祉を、医療を、社会を、とことん疑う。激アツPSWの発信ブログ より転載


大切な10代を、薬で失った
〇月×日


ある日相談に来た、10代の若者。
大きなサングラスをかけ、耳には大きなヘッドホン。
あきらかに緊張感が高く、周囲を過敏に気にしている。


17歳。か弱い声で話し、「小学校5年のときから、統合失調症と言われ、薬を飲んでいる。」と。


自宅に引きこもっていて、友達も一人もいない。家族とだけやりとりしている。手の震えや落ち着きのなさがあり、私は見ていて切なくなった。とにかく緊張感を和らげようと、世間話なども含めていろんな話をする。


結局少しの時間で本人が場にいられなくなってしまったので、また話を聞くので来てくださいと伝えた。その後はなかなか来られず、電話で話すことが続いた。


一度親と一緒に相談に来るようにと伝えていたが、関係が思わしくないのか、本人は積極的ではない。訪問もできるからねと伝えるが、まずは話したり相談できればよいと。


薬のことも気になるし、親のことも気になるし。


なによりも。


「小学校5年で統合失調症」と診断されるって、投薬開始するって、どーーしても、納得がいかない。


当時本人は、こども医療専門の総合病院の精神科に受診。周りが感じない臭いに敏感になり苦しいと言うと、医師は、「大人で言えば統合失調症。でもまだわからない」と話したという。まだわからないのに、子どもに最初からリスパダールなどを処方している。数年前から別のクリニックに変更しているが、処方はあまり変化がない。


これまで、医療以外に本人や親が、学校、児童相談所、行政、NPO、何でもいい、相談したことはなかったのか。本人はないという。学校は、小学校から不登校となり、中学も高校もほとんど行けなかった。中学は卒業扱いにはしてもらったが、高校は中退。その後は自分でアルバイトを探して、やってみては仕事が遅くて失敗して、クビになってしまうことの繰り返しで、自信を無くしている。


まず、医師の診断と投薬への疑問。


そして、親がどこにもつなげずこの子を抱え込んでしまったことへの疑問。


学校が、もっと腰を据えてこの子に関わったり、無理ならば医療以外の、別の機関へつなげなかったことへの疑問。


親が、地域で相談できる人がいなかったのかという疑問。


そして何よりも主治医が、ただ診察と投薬だけでどこにもつなげず、発信せず、多剤大量処方をしてきたこと。


20歳間近になって、本人自身が、私たちの相談機関をようやく探してやってきた。


こんな不幸なことがあるだろうか。


教育現場よ。子どもたちを手におえないからと、安易に医療につなぎ、それで終了していませんか。結局は児童相談所や学校も、18歳になれば、学校なら卒業してしまえば、中退してしまえば、それで終わり。


そんな子たちが18歳たらずで、子どもの支援機関から放り出され、私たちのところに、症状や副作用が改善しないまま、先のことがまったくわからず、援助者もいないまま、苦しんで、続々とやってきていますよ。ほとんど社会経験や、人とのやりとりを経験しないまま。何も出来ずに、大人になってしまいましたよ。


彼らは、大事な10代を、医療のいいかげんさと、教育現場の放り出しで、家族の抱え込みで、失った。



そしていきなり、私たち、「福祉」のところに来てしまう。


こんな切ない人生で、いいわけがない。


本来、このような相談は、作業所など福祉の資源につなげることが、私たちの仕事かもしれない。


でも。


本人のやりたいこと、やりたかったことを、一緒にみつけて、福祉の資源にこだわらない、援助がしたい。


医療漬け、薬漬けになってしまった子たちを、当然のように作業所につなげて、安易に彼らを障害者に、したくない。だって、もはや本当に病気なのかも、わからないから。


もっと教育が、医療が、地域が。そして私たち福祉も、変わらなければならないと思う。


その後、青少年支援機関や行政が集まる会議の勉強会で、たまたま精神科の医師が講師で来たので、疑問をぶつけてみた。


「小学生で統合失調症なんて診断がつくのだろうか、そしてその頃から大量に薬を飲み続け、今も決してよくなっていない。こんな治療があってよいのか」と。


周囲は不登校の子どもを抱える親の会や、行政、青少年相談など、あらゆる立場の人が参加していたが、みんな、気まずそうに黙っていた。知識がなく、医療には何も言えないという雰囲気を感じた。


その医師は、「自分が主治医じゃないからわからない。また、今飲んでいる薬がわからないと答えられない」と言った。


そのとき私は処方内容は持参しておらず、うまく伝えられず、悔しい思いをした。


その医師は、それを理由に、とてもあいまいな答えをし、いいとも悪いとも言わなかった。


話にならんな。


実際に本人に会って話している、私の直観が一番正しいと思った。


自分という人格の基礎を作っていく10代。とても大事な時期に、大量の薬を飲んで、しかもよくなっていない。


この子のような状況まで、私たち福祉では抱えられません。むしろ、安易に抱えてはならないと思う。


安易に子どもを、精神科につなげないでください。


つなげてしまったのなら、責任をもって援助を継続してください。


おかしいと思ったら、別の機関につなげてください。


彼らの将来を、医療に逃げずに、ちゃんと考えてください。


それが、大人の責任だ。


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