2014/12/18

『薬害エイズ事件』を考える その1 『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』

もう少ししたら私がつくった『たたき台』をもとにある会合が開かれるそうだ。ブログを書き始めて一年。いろいろな出来事があった。


私にはロビイストはいない。政治家や弁護士、NPO団体などがついていたわけではない。よくここまでたどり着いたな、としみじみ思う。昔話の『わらしべ長者』のようなものだ。来年になったら、もう私の手を離れていくかもしれないーーーーー


エイズ犯罪 血友病患者の悲劇 (中公文庫)エイズ犯罪 血友病患者の悲劇 (中公文庫)
(1998/08)
櫻井 よしこ

商品詳細を見る


ちょうどよい機会なので、『薬害エイズ事件』について考えてきたことを書いておこう。


今から12年前の2002年、私は妊娠24週だった。前置胎盤による出血が止まらず、救急搬送先の病院で子宮口を縛る手術(シロッカー手術)を受けることになった。


手術の直前、執刀医から夫に厳しい話があったそうだ。「もしも出血が止まらない場合、緊急帝王切開に切り替え、子どもを取り出すかもしれない。その場合、子どもが正常に発達する可能性は5割ほど」。


祈るような気持ちで手術室に向かった。しかし手術がはじまってすぐだった。「緊急帝王切開に切り替える」と告げられた。手術室の中は慌ただしくなり輸血の準備がはじまった。


その時、頭をかすめたのが『薬害エイズ事件』だった。


薬害エイズ事件 wikipediaより引用


薬害エイズ事件(やくがいエイズじけん)とは、1980年代に、主に血友病患者に対し、加熱などでウイルスを不活性化しなかった血液凝固因子製剤(非加熱製剤)を治療に使用したことにより、多数のHIV感染者およびエイズ患者を生み出した事件である。非加熱製剤によるHIV感染の薬害被害は世界的に起こったが、日本では全血友病患者の約4割にあたる1800人がHIVに感染し、うち約600人以上がすでに死亡しているといわれる。


テレビの向こうの遠い話だと思っていたけれど、あのような不幸な出来事があったからこそ、輸血がより安全に、より確実なものへと変わっていったともいえる。


けれど、いくら安全になったとはいえ、輸血にはリスクが伴う。出産の数年前『狂牛病』(BSE問題)が社会問題化し、厚労省から通達が出された。1980年から1996年の間にイギリスに1日以上滞在した人からの献血が見合わせされたのだ。


1980年から1996年の間に英国に1日以上滞在された方からの献血見合わせ措置に関するQ&A 厚労省


妹と父はイギリスに滞在したことがあり、献血できなくなってしまった。私も突然、輸血しなくてはならなくなった。だから手術がはじまる直前「献血ぐらいしておけばよかった」と後悔した。


『薬害エイズ事件』といえば、私は真っ先にジャーナリストの櫻井よし子氏を思い出す。1995年、櫻井氏がかいた『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』は第26回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しベストセラーとなった。


ところが出産から数年後の2008年3月。新聞報道である事実を知って、驚いた。厚生省官僚だった松村明仁氏が業務上過失致死容疑で逮捕・起訴されていたが「最高裁は上告を棄却した」とかかれていたからだ。ちなみに、2001年3月には帝京大学医学部附属病院の医師だった安部英氏には一審で無罪判決が出ている。


どうして無罪になってしまったんだろう?その時の疑問が、私を大野病院事件へと駆り立てていったーーーーー


櫻井氏は『薬害エイズ事件』が社会問題化していった当時、日本テレビの夜の報道番組「NNNきょうの出来事」の看板キャスターだった。「きょうの出来事」では、櫻井氏自身が取材した安部武医師とのやり取りを、連日のように放送していた。


今でも鮮明に記憶に残っている場面がある。安部医師が駅のホームで激昇した様子だ。


当時の安部医師は、櫻井氏が「先生、一言お願いします」といくら頼んでも、ほとんど言葉を発しようとしなかった。だから櫻井氏は、安部医師が自宅を出るところから、最寄りの駅まで毎日ひたすらマイクを向け続けていたのだ。


その日もいつものように櫻井氏が安部氏にぴったり張り付き、最寄り駅まで追いかけ、ホームでマイクを向けていた。


ところが、いつも無言だった安部医師が、突然カメラマンを蹴飛ばしたのだ。蹴飛ばす様子だけ繰り返し放送されたように記憶している。


あの頃櫻井氏は正義の味方だった。テレビの前で憤っていたのは私だけではないだろう。「ああやっぱり。安部医師はカメラなんて、蹴っ飛ばしてもいいんだと思っていたんだ。血も涙もない非道な人なんだ」。


でも最近になり父や夫の友人の大学教員が私に教えてくれた。


「報道関係者はコメントをお願いしますと電話をかけてきて、一時間ぐらい平気で粘るんだよ。ひたすら雑談し油断させるんだ。そうやって、放送で使いたいことをこちらがしゃべるのをじっと待っているんだ。使えそうな言葉をしゃべった途端、『今のその言葉、使わせていただきます!』と電話を切ってしまう。ああ、しまったと思った時にはもう遅いんだよ」。


今から思えば、テレビ局はカメラマンを蹴飛ばすようなシーンが欲しかったのかもしれない。


『薬害エイズ事件』を考える その2 『安部武医師「薬害エイズ事件の真相」 誤った責任追及の構図』なぜ安部医師は無罪なのか




コメント

非公開コメント