2015/01/16

『報道』と『インターネット』の力 マイナスの経験をプラスに変える


●報道されたことで孤立した過去 ただ伝えるだけならブログで十分


私が、近藤彰さんの闘病記を4冊購入して『誰に』プレゼントするか考えたのは、自分が報道されたことで孤立したからだ。伝える相手が「誰でもいい」と思わないのは私自身に苦い経験があるからだ。


私は2010年、ロハスメディアから出版された周産期医療を扱う『救児の人々』(熊田梨恵著)という本に、実名でインタビューで答えた。超低出生体重児の支援が不足していたから、社会に訴えないといけないと思ったからだ。しかし出版前にインターネットで無料公開されると、医療者と思われる方々から反発されてしまった


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このアニメは、向精神薬の多剤大量処方の被害を訴えるもの。2012年1月16日に私が見つけ、精神医療で奥様を亡くされ裁判をしておられた中川聡さんに教えた。ちょうどご命日(1月19日)の直前で、中川さんは喜んでブログで広めてくれた。

中川さんのブログは一日に5千以上のアクセスがあるため、あっという間に広まっていった。今アクセス数は25万7千以上。作者のakkoさんの『ジャーナリストの伊藤隼也さんの報道をみてつくりました』というコメントに注目して欲しい。

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●医療ジャーナリストやメディアは誰のために、報道するのか


バッシングされてから、さらに困惑する出来事が続いた。『救児の人々』を出版したロハス・メディカルが、あるNPO法人代表のインタビューを掲載したのだ。


超低出生体重児の中には、発達に問題を抱える子どもが少なくない。しかしすべての子どもに『障害』があるわけではない。遅れが軽度の場合、受け皿が用意されていない。


親が不安になり、病院に併設されている心理センターなどに相談に行くと「●●障害」などとつく場合がある。その診断が正しいかどうか医師の意見もわかれるが、支援がないから、「とりあえず」障害名をつける、ということが行われているようだ。現場の医師が証言していたから、事実だ。


本当に障害があるなら、子どものためになるかもしれない。しかし息子の遅れを障害とするのは無理がある。子どもにとったら、障害名は一生を左右する。子どもに、自己決定権がないことも疑問に思う。


外からみれば『心理センター』があったり、『発達検診』が子どものために行われていたり、『お話し会』などケアが用意されている。「選択肢があっていいじゃないか」と思うだろう。だから看過されていくのだ。


私が心底困ってきたのは医療者やメディアが『支援者の声』ばかりを社会に伝えるからだった。私のような母親が何に困っているのか社会に見えなくなってしまうのだ。



それなのに、取り上げたのはまたしても『支援者の声』。それも、「世の中に発達障害の子どもたちが6.3%いるにもかかわらず療育の機会が足りていない」と主張するNPO法人理事長の意見だった。設立されたばかり、ということも気になった。

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村重直子の眼3 小田知宏・前スターティア執行役員社長室長 2010年4月14日 ロハス・メディカル

小田
「ただそうは言っても、かなりの税金を入れ込んでいるわけで、福祉っていうと、消費して終わりという感じですけれど、土屋先生が経済教室(日経新聞4月5日付)で書いてらっしゃったように、産業化、福祉も産業にするべきだと思っています。実際に障がい者は働けるわけで、国民からの10年後20年後へ向けての投資として捉えられますし、福祉も輸出できると思っているんです。いいサービスは海外にも売れるし、もっと簡単には、今中国からたくさんの人が来ていますので、経験してもらって、国に持って帰ってもらえばいいサービスになると思います。そこでどう日本企業が稼ぐかというのは、ビジネスモデルの問題ですけど、もの凄いチャンスですよね。将来の日本を強くするために、今の日本の福祉をうまく利用するということなんですね。今までは本当に消費で終わっちゃってますので」

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そもそも、『発達障害児が6.3%いる』とされていることが一人歩きしているから困ってしまうのに、そこを全く問うていない。さらに私を失望させたのは、そのNPOが療育に『効率性』を求めていることだった。


これでは何のために実名で訴えのかわからない。発達の遅い子ども達こそ、時間と手間をかけないといけない、一流の教育者の力が必要ということを訴えたかったからだ。



ある時、妹が教えてくれた。ある子ども達の支援をしているNPOは、子どもを野外に連れていく時に、自分達にはノウハウがないからと、著名な登山家、三浦雄一郎さんの『ミウラドルフィンズ』のスタッフに協力をお願いしているそうだ。三浦さんは子ども達をとてもかわいがっていて、成人した後も忘年会に招待しているそうだ。夫は子ども達のスキーの指導もしてきたから、「そこまでするNPOはなかなかないし、三浦さんも立派だ」と感心していた。


●ネットニュースでみつけた中川聡さんの裁判


私が取り上げて欲しいのはそういう支援者や団体だった。悔しさで泣いた。そんな時にみつけたのがネットで配信されたこのニュースだった。やっと『ほころび』が社会にみえはじたのだ。


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医療訴訟:向精神薬処方過失で妻死亡 夫ら提訴 /東京 2010年3月28日10時34分配信 毎日新聞

併用禁忌の向精神薬を処方する過失で妻を中毒死させたとして、中央区の会社社長、中川聡さん(49)らが26日、都内の医師に約7400万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

訴状によると、中川さんの妻一美さん(当時36歳)は04年1月から都内の精神科クリニック(08年閉院)で睡眠障害の治療を受け、中枢神経抑制剤、精神神経用剤などの向精神薬を処方されていた。04年9月には1日分として11種33個、その後も10回にわたり同量の薬を医師から処方され、05年1月に死亡した。

行政解剖で胃や血中から、処方されていた精神神経用剤など複数の向精神薬の成分が検出された。死因は薬物中毒と推定された。

この精神神経用剤の医師向け添付文書には、禁忌として「中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者には投与しないこと」と記載されている。中川さんらは、承認用量の2倍など医師の処方は明らかに大量投与と指摘し、一美さんは「中枢神経抑制剤の強い影響下」だったと主張している。

また添付文書で併用注意とされる多数の向精神薬を、漫然と長期間投与したことも医師の過失と訴えている。医師の代理人弁護士事務所は「何も話すことはない」としている。【和田明美】

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「会社社長」という肩書きと、「亡くなった妻の裁判をしている」ということに注目し、すぐに連絡をとった。この人ならどんなに批判されてもきっとブレないと思ったのだ。『母親のケア』『発達検診』が受け皿となっているため、『社会の問題』として問わないといけない問題まで、いつのまにか『個人の問題』にすり替えられいく。精神医療そのものを批判にさらないとダメだと思ったのだ。


●『医療ガバナンス学会』のメールマガジンからSAPIOの連載へ


とんとん拍子に話がすすみ、ある医療系メルマガに中川さんの手記が配信されることになった。配信された直後、ジャーナリストの伊藤隼也さんの目にとまり、2011年、SAPIOで精神医療を追求する連載がはじまった。


その後、2012年、ある薬害シンポジウムに被害者として実名で登壇した。当日、会場にはメディア関係者だけでなく、政治家も来ると教えてもらったから『実名』で、と私がお願いした。震えて、原稿を読むのが精一杯だった。


●2012年4月28日 TBSの『報道特集』で取り上げられる


2012年4月28日、その時の様子は報道特集で放送された。キャスターの金平茂紀さんのブログに記録が残されている。被害者の中には、「満足できる内容ではない」という意見もあったが、私は金平さんが最後の数分間に付け加えて下さったこの言葉にとても感謝している。あの当時、『ディオバン事件』など明らかになっていないから、テレビでコメントするには勇気が必要だと思うからだ。


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#67 性急に正解を求める現実の中で | 金平茂紀ブログ ハートに火をつけて | TBSブログ 2012/05/03 より一部引用

金平:VTRの中で、元病院関係者の方が「大前提はお金儲けです」と言っていましたね。とってもショッキングな証言ですけれども、すべての病院がそういうわけでは勿論ないですが、製薬業界と医療機関が大量に薬が処方されると共に儲かるという構造というのは、この問題の背景を考えるうえで実にいろんなことを含んでいるなと実感しました。月並みですけれども「世は仁術」という言葉の意味をかみ締めたいという思いがしました。
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「反精神医学」「薬の嫌いなカルト集団」などバッシングをされたものの、SAPIOと報道特集の力は大きかった。


●小さなネットニュースから誕生した市民活動家


今、中川さんは市民活動家として活躍している。全国各地で勉強会を開催しておられ、そこには当事者だけでなく、臨床心理士、薬剤師、看護師、医師なども集まる。私がびっくりするのは大学教員などの教育者や研究者に「先生」と呼ばれ慕われていることだ。さらに最近では以前は中川さんを批判しておられた『患者会』の方からも連絡があるという。


この前電話をかけて「日本の福祉や支援は、それだけ底が浅かったということじゃないですか?」と尋ねたら、「そういうことかもね」と笑っておられた。


中川さんにコンタクトを取りたいと考えておられる著名な精神科医は多いときく。


中川さん御自身もよくわかっていて「批判していても改革は期待できないから」と、今年から本格的に社会的支援を実行していくそうだ。行政と協力し、自分達で病院や施設を運営する、ということも計画しているそうだ。


私は彼が批判ばかりしている当事者意識の欠落した人だと思わない。


今思うのは、あの時ーーーー


インタビューに実名で答えてバッシングされなければ、私は外の世界に目がいかなった。そしてネットでニュースが配信されなければ中川さんが裁判をしていることを知らなかった。もしも中川さんがブログを書いていなければ私は連絡を取らなかった。


今月19 日が奥様のご命日だ。


奥様は亡くなってしまったけれど、死は無駄になっていない。『報道』と『ネット』の力により、今、大きなつながりを生んでいる。医療者がいくら「精神医療をわかっていない」「科学的根拠がない」と批判しても専門家ではない中川さんに「社会の要請がある」ということの方が重要ではないだろうか。


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〖告知〗津山市でオルタナティブ協議会の精神保健についての集会&勉強会開催します。八咫烏 から一部引用


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何故、現在の薬物治療が危険なのか?
何が間違っているのか?
この現状を変えるために我々はどうするべきか

患者も不幸だが、医療や福祉に従事する人々も不幸。
この不幸の連鎖を断ち切るためにはどうすれば良いのか?

与えられる医療・福祉ではなく、
主権者たる市民が求める医療・福祉を実現する必要があります。
そのためには医療・福祉の改善を求めると同時に、我々市民自身が変わる必要があります。

精神医療被害連絡会では、各地で当事者の自助グループ、支援グループの組織作りを行っています。
さらには、市民の求める精神医療とはなにか、メンタルヘルスとはなにかを議論し、実現する活動を推進しています。これまでのネット上の活動から、具体的な地域での活動に広げていきます。

まずは、医療を頂点としたヒエラルキーを排した
当事者、家族、支援者、医療者が、共に参加するグループを構築したい。
実際に、我々の集会では、誰もが自由に発言することができます。
そうした活動の中で、減断薬への取り組みのみならず、そもそもの問題解決をはかりたい。
すでに幾つかの地域では具体的に活動が始まっています。

一つ、確信を持っているのは、
問題解決は、対話と実践の中でしか生まれないということ。
精神的な問題の多くは、間違っても生物学的な脳の機能障害ではなく、医療に丸投げするものではないことです。
病気だから自死する
病気だからひきこもる
病気だから虐待する
のではなく、その症状の多くは置かれた環境や人間関係に対する正常な反応ではないのでしょうか。
ならば、くすりや閉鎖的な病院で回復することはありません。
自ら決定を下し、日々の活動の中に自らの役割を見出し、ともに生活することが回復のプロセスに他ならないのではないでしょうか?

ご興味のある方は、各地での集会、勉強会に参加ください。

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