2015/02/05

あるNPO法人の設立と『がん対策基本法』

薬害の定義にはいくつかある。今回の騒動が『薬害』という範疇に入るのではないかと思う理由は、被害が救済されず社会に混乱を招いているからだ。


もしも『戦後最大の薬害裁判』がはじまったら、それは、日本のがん医療の改革のために生み出されたものだと考えている。


あの国会議員を、覚えていますか

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2006年5月22日 故山本孝史(たかし)参議院議員

がん患者はがんの進行や再発の不安、先のことが考えられない辛さなどと向き合いながら、新たな治療法の開発に期待をよせつつ、一日、一日を大切に生きています。



あるNPO法人の動向に注目した。興味深いことに、活動が本格的にはじまったのは、ちょうど新日本パブリックアフェアーズが、グラクソ・スミスクライン社とロビイング委託契約を結んだといわれている2006年頃。


その法人の活動目的は、がん医療において、新たな治療法の確立や、『創薬』を目指すことが明記されている。シンポジウムの演題や登壇者をざっとみていくと、キーワードは『遺伝子』なのだろうか。


さらに、この法人が設立された経緯を遡っていくと、「がん対策基本法」の制定と関係があるようだ。


がん対策基本法 wikipedia より引用

(平成18年6月20日法律第98号)は、がん対策について定めた日本の法律。第164回通常国会において提出された議員立法で、この国会中に成立した。

基本的施策

  • がんの予防及び早期発見の推進

がんの予防の推進
がん検診の質の向上等

  • がん医療の均てん化の促進等

専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成
医療機関の整備等
がん患者の療養生活の質の維持向上

  • 研究の推進等


「がん対策基本法」といえば、私は民主党の故山本孝史(たかし)参議院議員を思い出す。山本議員は、自らががんにおかされている「がん患者」であることを公表し、この法案の早期成立を訴えたからだ。


こちらが山本議員の『憲政の歴史に残る』といわれる名演説だ。





がん患者はがんの進行や再発の不安、先のことが考えられない辛さなどと向き合いながら、新たな治療法の開発に期待をよせつつ、一日、一日を大切に生きています。


私があえてみずからがん患者だと申し上げたのは、がん対策基本法の与党案と民主党案を一本化し、今国会で成立させることが日本の本格的ながん対策の第一歩になると確信するからです。


また、本院厚生労働委員会では自殺対策の推進について全会一致で決議を行いました。そして自殺対策に取り組む多くの団体の要望に基づいて自殺対策推進基本法の、今国会で成立に向けて各党での取り組みがすすんでいます。


私は大学生の時に、交通遺児の支援と交通事故ゼロを目指してのボランティア活動に関わって以来、「いのち」を守るのが政治家の仕事だと思ってきました。


がんも自殺も、共に救える「いのち」が一杯あるのに次々と失われているのは政治や行政、社会の対応が遅れているからです。


年間30万人のがん死亡者、3万人を越える自殺者。自殺者のいのちが一人でも多く救われるように、がん対策基本法と自殺対策推進基本法の今国会での成立に向けて何とぞ、議場の皆様のご理解とご協力をお願いいたします。総理にも国会議員のお一人としてこの二つの法案の今国会での成立にお力添えをいただけないか御答弁をお願いして私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございます。



こちらは元厚生労働大臣、自由民主党の尾辻秀久議員が2007年12月22日に参議院本会議場で行った哀悼演説。尾辻議員の演説もまた『憲政の歴史に残る』名演説だ。





あなたは参議院の誇りであります。社会保障の良心でした


山本議員は幼少期にお兄様が交通事故で亡くなったそうだ。その時の様子を鮮明に覚えておられ、財団法人交通遺児育英会に就職したそうだ。尾辻議員のお話の中で、山本議員が医療や福祉に関心があり、尽力されてきたことをはじめて知った。立派な政治家だと心から思った。


印象に残ったエピソードは、薬害エイズ問題にも取り組まれたということだ。


特に薬害エイズ事件の真相解明では、隠されたファイルの存在や、加熱製剤 承認後も非加熱製剤が使用され続けていた事実を明らかにされました


山本議員は「日本のがん医療、ひいては日本の医療全体が向上し、本当に患者のための医療が提供されること」を願っておられたそうだ。山本議員は天国できっと今頃、「被害者にも温かな眼差しを向けて欲しい」と思っておられるのではないだろうか。


(こちらのサイトでは、尾辻議員の演説をもじおこしてあります↓)


【追悼演説】「あなたは最も手強い敵だった」 がんで早逝した”年金政策の第一人者”に贈られた、国会中の感動劇 ログミー


その後2008年、尾辻議員は超党派でつくる『医療現場の危機打開と再建をめざす国会議員連盟』の会長に就任する。崩壊の危機にひんする医療現場の立て直しを図る目的でこの年の2月に発足。4月には、設立シンポジウムが開催された。


尾辻氏がシンポジウムで訴えたのは、医師不足や訴訟訴追リスクの高まりに伴う医療現場の委縮問題など。民主党の仙石由人衆院議員大野病院事件について、訴えておられる。昭和大病院副院長の有賀徹氏も、同様に救急医療の危機的状況について、警鐘を鳴らしておられる。


どこかで見たようなお名前があって、個人的にはドキッとする。自然と当時の記憶が甦る。今の社会は、あの当時とくらべ、危機的な状況は変わらないのに、国民の関心は驚くほど低い。医療崩壊に対する国民の関心は、薄れてしまったんだなぁと思わずにはいられない。


国民の関心が薄れた大きな要因は、「医療崩壊」とあれほど騒いだわりに、改善したのは医療側に対する支援がほとんど。お金やマンパワーがあってもすべては解決できない。例えば、超低出生体重児(息子のように発達の遅れが軽度の場合)の退院後の支援に不足しているのは、医療的支援じゃなく社会的支援だ。


同様に今、近藤誠氏の本が売れるのは、がん医療に対する患者さんの不満が大きいから、ということもある。私はそもそも心をみないで、エビデンスだけでは対話はできないと思う。


元ジャーナリストの近藤彰さんの末期がんの闘病記『どーもの休日』と、山本議員の演説はどこか重なってみえる。末期のがんというものは、たとえ治療法が確立されても治癒は難しい。だからこそ、私には治療法の確立だけでは、解決できない問題があると思うのだ。近藤さんに出版をすすめたら、涙を流しておられたということが、いつまでも心にひっかかる。


近藤氏の本を批判しておられる方々をみていると、まるで『ニセ科学ハンター』のようだ。そうではなく、なぜ近藤氏の主張に惹きつけられるかを分析し、不満や不安を和らげる社会的支援を考えないとこの問題は解決できないと思う。


やはり、リードしてきた医療者と政治家が、国民のほうをあまり向いていなかったということじゃないのかな。


(こちらが近藤さんのブログです↓)

どーもの休日~しかしなんだね。ガンだって~



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