2015/05/03

斎藤貴男さんの『子宮頸がんワクチン事件』が発売されました その3  ワクチンと新自由主義

斎藤貴男さんの『子宮頸がんワクチン事件』が発売されました その2  対立構造を生むもの の続き


そもそも、このブログをはじめたのは、『周産期医療の崩壊をくい止める会』に参加した一市民として、募金活動の精神とは違う方向にいっているんじゃないかと声をあげるためでもあった。


子宮頸がんワクチン事件子宮頸がんワクチン事件
(2015/04/24)
斎藤 貴男

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しかし、何かがおかしいと思っていても、どう表現したらいいのかずっと考えてきた。


斎藤貴男さんの経歴を拝見した時に「この方なら」と思ったのは「新自由主義」に批判的な立場だったこともある。


いくら社会保障費が国民経済を圧迫していたとしても、医療とは、でけるだけ平等で公平であるべきだと思う。


ワクチンを推進する目的はいくつかある。一つは、経済的な理由。感染症から国民を守れば、医療費を削減することにつながるからだ。しかし、決してお金の問題だけではない。多くの人がワクチン接種をすることで、ワクチン接種ができないような体の弱い方々を感染症から守る、ということもあるし、虐待や貧困などが問題となる中で、気軽に医療機関に通えない方々を守る使命も持っている。


『ワクチン』というと、『利権』と誤解しておられる方も多い。けれど、もともとは社会的に弱い立場の方を守るためでもある。だから共産党もワクチンを推進してきた、と教えていただいた。


でも、子宮頸がんワクチンの副反応問題が社会問題化しているのは、それでは説明できない。今までの常識では捉えきれない何かがあるような気がしてならなった。


なぜなら、平等で、公平なはずの医療なのに、被害者には、恐ろしく牙をむく残酷さを持ち合わせているからだ。子宮頸がんは、今までの感染症とは違う。被害者の苦しみを置き去りにしたまま粛々と推し進めることに、私は抵抗があった。


そのあたりのことを、斎藤さんは上手く表現しておられた。


2014年8月、子宮頸がんワクチン被害者連絡会神奈川県支部代表の山田真美子さんが「神奈川県予防接種研究会」ではじめて被害者の母として、意見を述べた時のことだ。斎藤さんも傍聴しておられたそうだ。


(山田さんのブログ↓)

神奈川県予防接種研究会出席 2014-08-06


第六章 ワクチン・ビジネスの世界


山田さんによれば、被害連絡会の活動に理解を示してくれた県会議員達の努力でようやく実現した。


それにしても、とは思う。委員たちがHPVワクチンをどう評価するにしろ、煩悶し哀訴嘆願する母親たちを目の当たりにして、それでもなお黙殺をつらぬく姿勢はいかがなものか。予防接種の救済制度の全体を論じる上でも、この現実を直視しないわけにはいかないはずである。


さらに切り込む部分は、斎藤さんらしい。私も以前にブログにかいた、『ビック・ファーマ』(原書の刊行は2004年)に触れている。


共産党もすすめてきた『ワクチン』と、強者と弱者への二極分解が進むことも否定できないといわれる『新自由主義』とをこのようにリンクさせるのか、と思ったからだ。


第六章 ワクチン・ビジネスの世界


『ニュー・イングランド医学雑誌』の元編集長のマーシャ・エンジェル氏にとっても、レーガン以降のグローバリゼーションーーーグローバル巨大資本の利益を絶対不可侵の価値とみなす新自由主義の猛威と、これに伴うパラダイム・シフト(支配的規範の革命的変容)は嘆かわしく映っていたらしい。


WHOの「予防接種拡大計画」も、ずいぶんと変質してきたのではないか。「一パーセントの人びとが九九パーセントの人間を支配している」といわれるグローバル・ビジネスの時代と、経済合理性を掲げつつ、道徳律までも自家薬籠中のものにしてしまう功利主義とはあまりにも相性がいい。


そう言えば、功利主義のイロハをわかりやすく解説した案内書には、マイケル・サンデル教授が例に挙げていた路面電車などの事例とともに、こんな問答も紹介されていた。「あなたの父親と、『ハリー・ポッター』の作家J・K・ローリングスさんが火事場にいる。どちらかしか助け出せないとしたら、あなたはどちらをえらびますか?」


この場合は当然、「ローリングスさん」と答えなければならない。彼女のほうが社会全体の利益に寄与すると判断できるためだ(児玉聡『功利主義入門』より)。


功利主義における「最大多数の最大幸福」に利益の分配という発想はなく、もっぱら総和された利益の最大化のみを重んじているからである。


だからこそ、GSKも、MSDも、この国のワクチン市場に参入してきた。本章の冒頭でとりあげた神奈川県予防接種研究会も、その受け皿としての機能を帯びていくのかもしれない。


HPVワクチンを推進する方々は、「被害者のケアと、ワクチンの評価とは切り離して考えるべき」とおっしゃる。神奈川県予防接種研究会の構成員の方々もそのように考えておられるようだ。


しかしそれは、現実的には難しいんじゃないかと思う。なぜなら、神奈川県予防接種研究会の構成員は、公費助成運動に関わっておられた方が複数おられるからだ。『ワクチン』接種をすすめるということは、公費を使うことでもある。にも関わらず、会が設置された経緯は不透明で、なおかつ利益相反状態の開示はない。ちなみにある薬害団体代表は「アメリカならアウト」と言っていた。


斎藤さんも「鳴り物入りのわりに・・・」と感想をかいておられたが、西岡久寿樹先生のチームでいえば、【コンプライアンス・アドバイザー】という観点がすっぽり抜け落ちている。その一方で、被害の認定を受けた方やご家族が一人も参加しておられない。


つまり、公費助成運動をはじめとするロビー活動への反省は、何もないまますすめていくということなのだろう。被害者とご家族にとって、それではあまりにもアンフェアだと思う。


先日、大川小学校の悲劇について書いたらアクセスが集中して驚いた。ご遺族を苦しめているという「こころのケア」についてだった。


『こころのケア』は誰のためにあるのか  大川小学校の悲劇


これ以外にも、私が「こころのケア」について書くと爆発的にアクセスが増える。なぜなんだろう?


『アンダーグラウンド』と『こころのケア』 地下鉄サリン事件から20年 


「もしかして」と思って一日に一万アクセスがある有名なブログを管理している方に私のブログを紹介したか尋ねた。ところが、違うようだ。


と、いうことは、「こころのケア」に対する社会の関心が高まっている、ということなのだろうか。私は10年以上の長きにわたり、「こころのケア」の改善を訴えてきたけれど、やっと、ケアの『中身』に社会の関心が向く時代になったようだ。


私は被害者とご家族にとって、このワクチンがどのような経緯で導入されたのか詳しく知ることも、ケアになると考えてきた。


だから、切り離した「ケア」を、となると、大川小学校の「こころのケア」のように、チグハグで、一方的なケアになっていくんじゃないのかな。


斎藤さんがおっしゃった「どこまでも支配者の高みから、謝罪とか反省といったニュアンスを徹底して排除した表現には背筋が凍り付いた」というような感じにね。


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子宮頸がんワクチン 苦しむ19歳 希望へ命のバイオリン 東京新聞 2015年5月3日 朝刊


子宮頸(けい)がんワクチンの副作用が疑われる手足の痛みに苦しみながらバイオリニストを目指す女性がいる。桐朋学園大学音楽学部(東京都調布市)二年の伊藤維(ゆい)さん(19)。世界的な指揮者、小林研一郎さん(75)に誘われ、障害者を含むプロとアマのボランティアオーケストラに参加し、五月末にステージに立つ。「人のためになるバイオリニストという夢に一歩近づいた。つらくてもあきらめない」 (竹島勇)


 三月二日、維さんは東京・赤坂のサントリーホールで小林さん指揮のコンサートを鑑賞後、小林さんに面会した。知人が維さんのことを小林さんサイドに伝えていた。小林さんと妻の桜(よう)子さんから「五月に調布で『コバケンとその仲間たちオーケストラ』のコンサートがある。維ちゃんも出てみない」と誘われた。驚いたが「ぜひ出たいです」と答えると「いやあ、良かった」と小林さんは笑顔になった。


 小林さんは「仲間オケには健常者も障害者もいて心の叫びのような演奏が生まれる。共に生きる仲間とあきらめないことの大切さを維さんにも感じてもらいたい」と話す。


 維さんは二〇一一年四月、桐朋女子高等学校音楽科に入学。両親と兄と住む横浜市中区の自宅から通学に片道約二時間かかるが、存分にバイオリンに取り組めるのがうれしかった。


 同月に子宮頸がんワクチンの三回目の接種をすると、原因不明の腕や膝の痛みが続いた。二年生の夏からは激痛となり学校も休みがちに。三年生に進級した一三年春、副作用に関する報道を見て被害者連絡会に相談。紹介を受けて受診した医師に「副作用の典型的な症状だ」と告げられた。


 母親の綾季(あき)子さんが運転する車で病院と学校へ通う日々。薬は効かず、授業やコンテストで満足ゆく演奏ができない。そんな時は帰りの車で大声で叫び、涙を流した。「友だちや先生の前では見せなかった姿です」と綾季子さんは思いやる。維さんは「どうして私がこんな目に遭うのか、思うように弾けないのが悔しい」。


 大学に進学できたが症状は好転しない。昨年九月から調布市内に住む。週三日は綾季子さんが泊まりに来るが痛みが強い時にも駆け付ける。「感謝しています」と維さん。


 四歳でバイオリンを始めたが練習嫌いだった。それが小五の夏に「バイオリニストになりたい」と宣言した。フィリピンの貧困に苦しむ子どもたちの支援活動の報告会で現地の様子を写真で見て決意した。「チャリティー公演をして貧しい人の役に立ちたい」。その時から本格的な練習に打ち込んだ。


 ボランティアでチャリティー公演を続けるコバケンとその仲間たちオーケストラは、その夢に近づくことだと思う。それだけではない。子宮頸がんワクチン接種の問題点を広く理解してもらい被害者救済の役に立ちたい。「あの時、抱いた夢をなくすどころか、さらに増えた感じです」と維さんは前向きだ。


<コバケンとその仲間たちオーケストラ> 2005年3月に長野県で開催のスペシャルオリンピックスでのコンサートを機に設立。10年3月からは健常者と障害者の共生社会の実現を願って知的障害者や視覚障害者を含む編成に。31回のコンサートをボランティアで続け、東日本大震災以後は被災地応援コンサートや学校に楽器を贈るなどチャリティーも。コバケンは小林研一郎さんの愛称。


 31日午後3時から「コバケンとその仲間たちオーケストラin調布」を調布市グリーンホールで開催。歌劇「アイーダ」から「凱旋(がいせん)行進曲」、「チゴイネルワイゼン」など演奏。入場料金2000円。知的障害者の招待もある。問い合わせは、事務局=電03(6804)7981。


<子宮頸がんワクチンの副作用> ワクチンは2010年から各自治体で接種への補助が始まり、13年4月に小学6年から高校1年相当の女子を対象に定期接種となった。しかし副作用の報告が相次ぎ、厚生労働省は同年6月、ワクチンの積極的な勧奨を差し控えるよう全国の自治体に勧告した。同省によると14年3月までの副作用報告は2475件で、重篤は617件。


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