2015/05/18

超低出生体重児(未熟児)の『いじめ』問題

先週のある朝、担任の先生から突然電話がかかってきた。





いいなCM トヨタ パッソ TOYOTOWN 「しずかの選択」篇 「しずかの低燃費」篇

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「息子さんに何かきいていますか?」というので「わかりません」というと、教えてくれた。どうやら息子は、クラスメートの悪ふざけがエスカレートして、『いじめ』に近いことをされていたらしい。


そういえば小学校から仲の良いクラスメートのお母さんが一ヶ月ほど前私に言っていた。「うちの息子が、『●君(息子の名前)が、クラスメートにからかわれていて、見ていられない。ちょっと酷いよ。どうして●君は『やめて欲しい!と言わないんだろう』と心配していたよ」。


その男の子は、幼稚園からずっーーーと一緒で、いつも息子を心配していた。小学生の時も、「いつも一人だけ掃除をしている」と息子を心配していた。『やりたくないなら、やりたくないと言わないとダメだよ!』とお母さんに言っていたらしい。


だから私はこのように説明した。


「超低出生体重児とよばれる1000g未満で生まれた未熟児は、息子のような性格になる子どもも多いのよ。幼稚園の頃を思い出してもらうとわかるように、体が小さいし病気がちだから、何をするにも一番最後。普通に生まれた元気な子ども達の後を、ついていくようなものだったでしょうか?だから、遠慮がちというか、大人しい子どもが多いと報告書にもよく書いてあるんだよ」。


ただ、実際の報告書に記されている現実は、もっと厳しい。


平成 11 年度厚生科学研究費補助金(こども家庭総合研究事業) 分担研究報告書 周産期医療体制に関する研究 「超低出生体重児の就学に関する研究」 分担研究者 三科 潤 東京女子医科大学母子総合医療センタ より一部抜粋


1990 年生,680g,25 週:学習障害

1990 年生,980g,27 週:弱視,それによる学業の遅れ, 友人関係,通学の危険。

1983 年生,700g,24 週:現在高校 1 年生だが,同級生の言葉のいじめにより登校拒否。退学を考えている。(いじめの原因は暗い,のろま)

1984 年生,700g,26 週:中学 3 年生片側の軽度跛行あり。 性格が消極的で友人ができない。約1年間登校拒否。

1990 年生,26 週:不登校,下肢の痙性マヒ(+),サッカーをやりたいがやれない,自信をもってやれることがない。

1988 年生,645g,23 週:小学4年頃よりクラスでいじめられ,反動でもっと小さい子をいじめる。学業不振、小学4年 FIQ49, VIQ 57,PIQ50,小学1年のFIQ73。

1987年生,670g,25週:就学時のFIQ62(VIQ 67, PIQ 63) であったが普通学級へ入学。2年後の評価も同様のレベル。 8 歳以降いじめや仲間外れの問題が継続している。

1988 年,730g,25 週:未熟児網膜症による盲,最重度精神遅滞, てんかん(点頭てんかん)。盲学校に入学。入学前から盲学校 との関わりをもっていた。空腹時,体調不良時,未経験の活動 の時に落ちつきなく,あらゆる事に拒否的となり,時にパニックとなったが教育的効果で落ちつきを見せるようになっている。


私が医療者や研究者に期待しなくなったのは、このような報告書をさくさんみてきたからだ。ちなみに、この東京女子医大の報告は、平成11年(1999年)に行われており、最後に、このように書いてある。


今後、増加してくる超低出生体重児の就学および、就学後の問題に関して、広範かつ継続的な調査研究が必要である


この報告書が出てから何年もたつけれど、教育現場での理解はほとんどすすんでいない。なぜなら、極端にいえば医療者や研究者は報告書を出しても、医療的支援ばかりを重視するからだ。私は、医師のヒエラルキーの元での支援では、超低出生体重児の教育問題は解決しないと思う。


息子の話に戻る。


2,3日前のことだった。息子が「僕は、中学校が楽しくてたまらない」と言っていた。「担任の先生がとても好き」とも言っていた。その日は担任の先生が、息子のために、学校生活で困っていることがないか、話をきいてくれたそうだ。


「どうして何だろう?」と少しばかり不思議に思っていた。


実は息子の異変に気づいていた。何かがおかしいと思っていたーーーー


最近、PASMOで好きな漫画を何冊も買ったり、家のお金を持ち出してミニカーを何台も買っていた。さすがに、黙っていられない金額になっていたから、数日前に怒ってPASMOとミニカーを取りあげたばかりだった。


あれはきっと、学校で嫌なことがあったからだと思った。


そこで担任の先生に、友達が先生にやめさせて欲しいとお願いしたのか尋ねた。先生は否定しなかった。


数日前の放課後、先生が息子を呼び出し、「本当は(友だちにからかわれるのが)嫌じゃないのか」と尋ねたそうだ。すると息子は「本当は嫌だと思っている。謝まって欲しい」と言ったそうだ。先生は息子がそう言うので、二人に謝らせたそうだ。


「『息子さんには、お母さんに何があった自分で言いなさい』と言ってあります」。先生はそれだけ言うと電話を切った。朝の授業がはじまる前なので、私はそれ以上詳しく聞くことが出来なかった。


先生は「もう大丈夫です」というような言っていたけれど、なんだか不安になってしまう。そこで、息子を心配してくれていた友達のお母さんに電話をかけてみることにした。


そのお母さんが詳しく話してくれた。


やっぱりその男の子が心配して先生に伝えてくれたそうだ。その他にも、息子と同じ小学校に通っていた女の子が友達二人を引き連れて、いたずらをする二人のところに意見しに言ったそうだ。


「あの大人しい●ちゃんがそんなことをするなんて、よほど酷いことをされたんだ」と、言う。


その時、「僕はとても中学が好き」「担任の先生が好き」と言う言葉が、きっと嘘ではないのだと思った。たぶん息子は、友達がそれほど心配していたことをよく知らないか、考えていないのだろう。


息子は今でもドラえもん大好きだ。「『ドラえもん』がいたらいいな」といつも私に言っていた。


息子にとったら、担任の先生が助けてくれたのは、きっと、『ドラえもん』がポケットから機械を出して、助けてくれたようなものだったに違いない。本当は、ふがいない息子のために、何人もの友達が心配して、いろいろみえないところで、行動してくれた結果だったのに。そういう友だちの気持ちを知らなくていいんだろうか。自分から「やめて欲しい」と言えない息子にため息が出てくる。


とにかく私はそのお母さんにお礼を言った。


その日、帰宅した息子が私に言ったのは「先生から電話があったでしょう?」という一言だけ。「詳しいことは何もきいていないよ」と言っても、核心に触れるようなことは何も言わなかった。


「夫は言いたくないのだろう」と私に言った・・・。「一番練習がきつい運動部に入ったのは『強くなりたい、このままじゃないけない』と思っているのかもしれないぞ。親に何があったか言えなくても、嫌なことをされて嫌だといえなくても、努力しているんだからいいじゃないか」。


私はとりあえず、心の負担が軽くなるように、隠しておいたミニカーとPASMOを出してあげた。もしも息子に異変が起きたら、PASMOの残額から様子がわかるかもしれない。


最近、息子が私と夫に、「自分の子供が産まれたら」とか「大きな家を建てたい」と言っている。だからそのたびに私達は「その前に、女の子が自分を好きになってくれないとダメだよ」と言ってきかせる。


特に、大人になった「しずかちゃん」や「のび太」が出てくるトヨタのコマーシャルを見る度このように言う。


「勉強をがんばらない。運動もがんばらない。そんな人を、女の子が好きになると思う?しずかちゃんのようなかわいくて、勉強ができる女の子が、のび太のような男性を選ぶなんて、現実社会ではまずないんだよ!私がしずかちゃんのお母さんなら、反対する。


『ドラえもん』がいつも助けてくれたら、何もできないまま大人になっちゃうよ!自分で変わろうとしなければ、何も変わらないんだよ!」。


夫が言うように、今は見守ることが大切なのかもしれない。


ある社会活動をしている団体代表の方にも相談してみた。自死遺族の会と親しくしているから、いじめにあった子どもの達のこともよくご存じなのだ。


「本当にいじめが酷くなったら、親が乗り込んでいかないといけないよ」言われた。ただ、いじめを苦にして自殺する子ども達の場合、本当に一人なのだそうだ。助けてくれる友だちがいないから、死を選んでしまうそうだ。先生も、いじめに気づかなから相談にのってくれない場合がほとんだと言われた。


それを聞いた時に、私の頭に、『超低出生体重児(未熟児)の予後』に関する報告書が浮かんだ。


「学校生活に上手くなじめない」「友だちができない」などの子どもの相談は増えている一方で、教師も忙しく、『先生のうつも社会問題化』している。今は、先生ではなく、スクールカウンセラーなどが相談に乗る場合も多い。


しかし、私は今回のようなケースを、カウンセラーに任せることには反対だ。


超低出生体重児(未熟児)が集団生活に上手くなじめない理由は、いくつかある。その時によって、解決策は異なる。ある時には、科学的な知識が必要だし、ある時には、親の働きかけが必要。そうではなく、本人の自覚や努力が必要な時もある。ただ、成長するまで待ってあげればいいことだってある。これらを超低出生体重児を育てた経験のない、カウンセラーに相談して解決できるのだろうか。私には甚だ疑問だ。


同様に一口に「いじめによる自殺」といっても、様々な要因が複合的に重なりあって子どもは死にを選ぶ。間に入ったカウンセラーが、問題解決のために、具体的に働きかけたり、負担を取り除いてくれるなら、それでいいけれど。


ちなみに「自死遺族の会」代表の田中幸子さんの息子さんは、警察官だった。上司のパワハラにも悩んでいたそうだ。嫌なことを「嫌だ」というのは簡単に思えても、警察官でも難しい。


田中幸子のひとりごと ~自死で子供を~ またまた警察官の自死・・・パワハラか? より一部引用

人格否定の言葉
      
      繰り返し言われる罵り

  残業手当目当てか・…能力ネイやつだ

    係長のくせに・…こんなことにいつまでかかってるんだ

       こんなことも知らないのか・・・

     お前の仕事が遅いから迷惑がかかるんだみんなに・・・

     こんな言葉を毎日毎日・……・静かに耳元で…ささやく上司

       係長の仕事は手伝うな!!!!と いう上司

        「うつ」だろ「うつ」だろ「お前はうつだ」
          「うつなんだよ」「うつだ」

   毎日耳元でささやかれた・・・息子

           確信犯・…大きな声では言わないいじめ

    息子の上司は息子も含め部下が二人自死した


だから、大切なのは、普段からの人間関係の構築。ちょっとした子ども達の勇気や働きかけ、そんなことの方が、子どもの未来を大きく変えるんじゃないの?と私は思っている。


「いのちの授業」という命の大切さを教える授業が増えているけれどーーーーーー


いじめというものは、個人の問題などではなく、『人権侵害』だ。そういうことを、子どもや保護者に認識してもらうためにも、いじめから死を選んだお子さんのご遺族の講演を、全国の学校で行って欲しい。


我が国では、なぜかいじめた側の人権を尊重するような教育的指導が長きにわたり、続けられてきた。しかし、私たちには憲法において基本的人権が保障され、侵すことのできない永久の権利として認められている。


すなわち、いじめは看過してはならない『人権侵害』であり、個人のこころの問題などではないのだ。


超低出生体重児(未熟児)の成長に関する報告書をまとめている医療者や、研究者はいじめは『人権侵害』だと考えていたのだろうか。私は、いじめというのは、看過するすべての人達に責任があると思う。



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