2013/12/23

いのちの授業 誰かを責めるのではなく、どうすればいいのかを考えよう

「学校でA子ちゃんのことを教えてもらったよ。去年食物アレルギーで亡くなった女の子だよ」と息子が教えてくれた。どれだけわかっているんだろう?チヂミにアナフィラキシーを引き起こす粉チーズが入っていたのに、それを知らないで食べて亡くなった、ということは理解しているようだけど・・・

EPIPEN 加古川 医師会 (←エピペンの使い方の動画)

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〜死亡事故検証結果報告書〜 より引用

7 事故発生の要因

検証委員会では今回の事故の直接的な原因と思われるものとして、除去食の提供(おかわりを含む。)方法と緊急時の対応に大きな問題があったと判断している。

除去食の提供では
1 チーフ調理員がA子さんに、どの料理が除去食であるかを明確に伝えていなかったこと。
2 おかわりの際に担任が除去食一覧表(担任用)で確認しなかったこと。
3 保護者がA子さんに渡した献立表に、除去食であることを示すマーカーが引かれていなかったこと。

緊急時の対応では
1 担任がエピペンを打たずに初期対応を誤ったこと。
2 養護教諭が食物アレルギーによるアナフィラキシーであることを考えずに、エピペンを打たずに初期対応を誤ったこと。

以上の内一つでも実施されていたら女の子の命を守れたのではないかと考えられる。


「クローズアップ現代でみたね。A子ちゃんのお皿は友達と同じだから間違えたの?」


「そうじゃないよ。ちょっとだけ皆と違う色のものを使っていたはずだよ。でも、もっとはっきりと違う形や色のものに変えるんじゃないかな」


クローズアップ現代 続発するアレルギー事故 学校給食で何が?

その日の献立は牛乳、わかめごはん、肉団子汁ナムル、ジャガイモのチヂミ。その中のチヂミにアレルギーを起こす粉チーズが入っていた。アレルギーのない子どもには緑色のトレー。アレルギーがあるA子ちゃんには黄色のトレー。番組を見た時「ここに出てくるトレーが本物なら、ちょっと色が似ているかなぁ」と気になったのでよく覚えている。息子もなぜ口にしたんだろうと不思議に思うんだろう。


「どうしてチヂミにチーズが入っていたの?」


「栄養士さんは子ども達が栄養をとれるようにいろいろなものを食べさせたいと思っているんだよ。体を丈夫にするには、味も大切だけど栄養も大切なんだよ。でも、トレーにのせるお皿の数が決まっているから、一つの料理にいろいろ入れるしかないんだよ。それに給食室はあまり広くないよね?だから切らなくていい粉チーズは便利なんだよ。手も汚さないし振りかけるだけで使えるからね。良いことだと思って一生懸命やっていたのに、それが裏目にでちゃったんだね。栄養士さんは悪くないんだよ」


「卵アレルギーは卵を食べないとショックを起こさないの?」


「そんなことはないよ。重いアレルギーのお友達は、ほんの少し体についただけでもショックを起こすことがあるんだよ。例えばレストランで、卵を入れて使った泡立て器やボールをよく洗って使ってもショックを起こしてしまうこともあるんだよ。だからそういうお友達がいたら、まわりが気をつけないといけないよね」


給食と食物アレルギーを考える(中) 学校現場の模索 確認や注射 態勢は? 西日本新聞 2013年10月16日 より引用

「牛乳が体にかかっただけでもショックを起こします。学校にはまだ相談していなくて不安です…」
アレルギーの子がいる親の自助グループ「福岡アレルギーを考える会」(野田朱美会長)が9月、福岡市で開いた小学校入学前の子どもがいる家族を対象にした相談会。牛乳のアレルギー反応で意識が低下し命の危険もあるアナフィラキシーショックを起こす長男が来春小学校に入学するという同市の主婦(42)は涙ぐんだ。



「A子ちゃんはどうして粉チーズが入っているのにおかわりをしたの?先生が間違えたの?」


「A子ちゃんは悪くないよ。A子ちゃんのクラスは給食を残さないようにしようとしていたから、A子ちゃんは皆のために役に立ちたくて手をあげたんだよ。その日はたまたまA子ちゃんのお家の人が印をつけ忘れてしまったんだよ。でもお家の人も悪くないよ。毎日毎日はがんばれないよ。担任の先生もうっかりしちゃったんだよ」


「報告書の完成にあたって」と題したご両親からのメッセージから一部引用

お盆に戻ってきた娘に会いに、クラスメートたちが自宅に訪れてくれました。クラスでは、給食の残菜をゼロにする「給食完食」を日々の目標にしていました。みんなと同じ物が食べられない日も多い中、何かできることがあれば周囲の役に立ちたい――家族が常日頃目にしていた、娘の物事すべてに対する前向きな姿勢、いつも誰かの役に立つ人でいたいという思いが、このような結果を引き起こす事になろうとは。残念でなりませんが、今は娘の強い遺志がこの報告書に反映されていると信じたく思います。



その日私は天皇誕生日で月曜日が休みであることをすっかり忘れ、担任の先生への連絡事項を連絡帳に記入せず夫に怒られたばかりだった。連休明けの火曜日、子どもを早退させそのまま出かけなければならなかったことを忘れていた。水曜日の終業式はお休みさせないといけなかったのだ。「じゃあ、宿題はどうするんだ。先生だって困るじゃないか!」と怒られた。言い訳も何もできないかった。私だってミスしたばっかりだもの。誰が先生やご家族を責められるだろう。A子ちゃんが亡くなったのは、こうした小さなミスがたまたま重なって引き起こされたんだと思い、恐くなった。もし自分だったら・・・。先生は今頃どうしておられるのだろうか。


「お友達の具合が悪くなったらエピペンを打てばいいんだよね。A子ちゃんはエピペンを打ったのにどうして死んじゃったの。誰がエピペンを打ったの」


「校長先生だよ」


「どうして担任の先生じゃないの」


「もっとはやく注射しないといけなかったんだよ。でも、担任の先生が具合が悪くなったA子ちゃんを心配して『 打とうか』といったんだけど、A子ちゃんが『打たないで』と言ったの。A子ちゃんはいつもの喘息だと思っちゃたんだよ。責任感がある女の子だから、もし間違えたらとか先生に迷惑をかけたくないと思って我慢したかもしれないね。だから先生も様子をみることにしたんだよ。学校の先生はお医者さんや看護師さんじゃないからわからなかったんだよ。皆一生懸命助けようとしたんだよ。担任の先生は学校中を駆けずり回って助けようとしていたんだよ。だから校長先生が打ったの。アナフィラキシーはあっという間に悪くなるから、間に合わなかったんだよ」


給食と食物アレルギーを考える(下)有識者会議座長・西間三馨氏に聞く 原因や治療法 まだ混沌 2013年10月23日 西日本新聞 より引用

正直言って、私を含めて専門家のほとんどが食物アレルギーで亡くなるとは思っていなかった。だから、医師でもない学校の先生が食物アレルギーのすべてを知っておかなければならないというのは酷です。調布市の死亡事故を受けて教育現場は萎縮してしまっています。ただ、ショック症状は血圧を上げる注射薬「エピペン」で改善できます。だから、学校の先生に言いたいのは、ショック症状が起きたらとにかくエピペンを打ってほしい。そこだけは覚えてほしい。

児童にどんな症状があればエピペンを注射するのか、先生が判断するのは困難です。そこで「日本小児アレルギー学会」では7月、アナフィラキシーを疑うケースで、エピペンを使用すべき13の症状を発表しました。「意識がもうろうとしている」「声がかすれる」などが一つでもあれば、迷わず打ってください。もしエピペンを打って、アナフィラキシーではなかった場合でも、まず子どもには害はありません。


「もし友達がアナフィラキシーを起こしたら先生を手伝うよ」


「東京都のマニュアルには5分が目安と書いてあったよ。先生は具合の悪くなった友達から目を離したらいけないね。一人じゃ大変だから隣のクラスや同じ階の先生達に来てもらって。保健室にも養護の先生を呼びに行かないといけないね。クラスのお友達と協力するんだよ。エピペンは普通の注射と違って、洋服の上から針がさせるね。洋服を脱がして消毒をしていたら間に合わないかもしれないから、そういうふうに出来ているんだよ。だからお医者さんじゃない先生は針をさすのがきっと恐いと思うの。なるべく大きな声を出して、まわりにいる大人にはやく来てもらうんだよ」



 〜死亡事故検証結果報告書〜 より引用

今回の事故は、女の子が担任に気分が悪いと訴えてからの14分間における対応が、生死の分かれ目になっている。わずかな時間の中で多くの者が夢中になって駆けずり回りながら、無我夢中で出来る限りを尽くしている。ある者は2階から3階へ、ある者は2階から1階へ、さらに1階から3階へ人を呼びに行ったりAEDを取りに行くなどの対応に追われた。しかし一人の女の子の命を守れなかった。これは事実である。


誰かを責めるのではなく、その場に居合わせた一人一人が自分の行動を振り返り、もっとできることはなかったのか、どうすれば女の子の命を守れたのかを考えて欲しい



死亡事故検証結果報告書を引用するために文字を打ち込んだ。当日の様子が頭の中で映像のように思い浮かぶ。一生懸命助けようとしてがんばっておられた先生方の気持ちを思うと、涙がこぼれてしまった。


息子にはどこまで話していいのか正直迷ったが、子どもなりに真実を知りたいのだろう。あやふやに教えたら心ない噂を信じてしまうかもしれない。包み隠さず伝え、良い方向へ導くのが大人の役割ではないだろうか。






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