2015/05/22

第4回 自死遺族等の権利保護シンポジウム その3 自死への差別のない社会へ

第4回 自死遺族等の権利保護シンポジウム その2  『いじめ』による自死が、個人や家庭の問題にすり替えられる! の続き


最後は、今回のシンポジウムのテーマである、自死遺族が抱えている様々な、差別や偏見について。


全国自死遺族連絡会 田中幸子代表

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●医療者や支援者の持つ、『精神科への差別や偏見』


私は亡くなった方と、遺された遺族のための支援活動、「周産期医療の崩壊をくい止める会」に参加していた。だから野田正彰先生の主張にこころから賛同する。


ちなみに、これは私がある薬害シンポジウムで発言した時に書いた原稿の一部。私も精神科に通院歴があるということで、ずいぶんと差別や偏見に苦しめられてきた。それも、日頃精神科の受診をすすめている、医療者や支援者の持つ差別や偏見にだった。


精神科の被害者がいつまでたっても救われないのは、その深刻さが社会に見えないことにあります。死に至る重大な副作用があっても、亡くなった方は訴えることができません。


また、自死遺族が訴えても、「「うつ」はもともと死に至る病だから自殺しても仕方がない」と議論になりません。


多剤大量処方で中毒死した被害者のご遺族には、「薬を欲しがる中毒患者だから死んでも仕方がない」という、聞くに堪えない言葉が投げかけられます。


例え、被害者本人が訴えたとしても、精神科の通院歴のために差別や偏見、言葉では言い尽くせぬ数々の困難が待ち受けています。


医療者と一部の患者さんからは、あなた達の行動は精神科に対する差別や偏見を助長する、あるいは医療崩壊を加速させると、行く手を阻まれます。


だからこそ、私は今日、発言する決意をしました。


元主治医は私に向かって「私も向精神薬を服用しているけれど、私はあなたと違って、精神障害者じゃない」と思わず口にしていたことがある。他にも「どうせあなたに薬は効かない」と暗に私の人格に問題があるのだというような言葉を投げかける医師もいた。


しかし、私の後ろには、もっともっと、差別や偏見に苦しむ方がおられたようだ。本当に「私には差別や偏見がない」というのなら、自死遺族の声に耳を傾け、遺族の心の負担を一緒に減らしてほしい。


当日配布された資料の中に、野田正彰先生が『中外日報』に投稿した、「社会の非情な考え」があった。私が下手な文章を書き連ねるより、読んだ人の心に響くと思うので一部引用させていただく。


平成25年(2013年)4月11日 中外日報 論壇

自死への差別 故人のみならず遺族にも 社会に非情な考え 宗教界の対応望む 精神病理学者 野田正彰  



どうして死んだのか、民事上の手続きで書き残されたものや証言等から自殺した人への精神鑑定書を作成するよう頼まれたとき、私は故人に向かって語りかける。どんなに無念な思いを残して亡くなっていったことか、私たちの社会はあなたの苦しみを聞きとる力がなかった、私は少しでも貴方の死の意味を知り伝えます、と手を合わせる。


日本社会は毎年3 万人ほどの老若男女を死に追い込んできた。ところが、故人を苦しめただけでなく、亡くなった後、遺族をさらに追い詰める社会であることを知っておられるだろうか。遺族は故人の思い出を整理しながら、遺失の悲哀に耐えていかなければならない。


同時に経済的な困難にも耐えていかなければならない。精神的にも、社会=経済的にも、二つの喪の仕事をやり遂げなければならない遺族に、私たちの社会はさらに非情な仕打ちを加えている。


(中略:家主や不動産会社からの補償要求に、自死遺族が苦しんでいる事例がいくつか紹介される)


借り主が損耗したものを回復するための費用請求は当然のことであるが、それをはるかに超え、お祓い料、過度のリフォーム費、精神的苦痛への慰謝料、近隣への慰謝料、数年にわたる家賃補償金などが請求されている。これらの法令上の裏付けとなっているのは、国土交通省による賃借契約に当たっての重要事項説明書であり、心理的瑕疵は告知しないといけないことになっている。


自殺は心理的瑕疵であり、告知しなければならず、告知すれば大きな損害が生じるというわけだ。国交省の法令は、自殺は心理的瑕疵とするという最高裁の判例によるとされている。


自殺がなぜ心理的瑕疵なのか。病死や孤独死した場合と、どのように違うのか。ここには死を差別し、自殺を穢れた死とする考えが流れている。


遺族がなぜお祓い料を支払わないといけないのか。一体、何をお祓いし、何を清めているのか。家主や不動産業者は借り手が遠のくことを理由に、過剰な補償を求めているが、それを動機づけているのは彼ら自身の差別や偏見ではないのか。


さらに自殺のあった建物を特別に忌み嫌う人々は、その理由を振り返ってみたことがあるのだろうか。病院に近づくのを恐れず、人の亡くなったベッドや病室で治療を受けることを拒んだり、入院費の減額を請求しないのは何故か。


国交省や裁判所は、自殺をなぜ重要な心理的瑕疵と主張するのか。私たちは切腹や特攻隊の自爆死のような権力の側によって強いられた死を美化しながら、私たちの社会の矛盾が強いた死を差別するのだろうか。


多くの宗教者は葬儀にたずさわっている。とりわけ僧侶は徳川時代からの宗門改め制度により、ほとんどが日本人の葬儀で読経などの重要な役割を果たしてきた。


1998年度より2011年度まで14年間、毎年3万人を超す自殺者を出してきた日本社会。自殺された葬儀で読経し、遺族と会話をもたれたお坊さまは少なくないと思われる。


これらの亡くなられた人が、なぜ死ななければならなかったのか。そして遺族はどんな社会的、経済的負荷をかけられているか、関心を持っていただきたい。亡くなられた人への悲苦を想うよりも、自殺を穢れた死とする習慣がどれだけ遺族を苦しめているか、各宗教教団で調べ、それはいけないと教えてほしい。各宗門、全日本仏教会がそれを教えるだけでも、大きな力になるだろう。


遺された遺族への重圧は、借家の場合に尽きるわけではない。自宅で死亡し医師に往診してもらっていなかった場合、検死となる。県によっては、診断書を十数万の死体検案料を即金で要求するところもある。葬儀の後、遺族が子育て支援、奨学金申請、債務整理の相談、労災申請の手続き、法的な相談などを求めても、自死遺族と告げるだけで精神保険福祉センターへ行くように言われ、結局うつ病扱いされると訴えている。


私たちの社会は亡くなった人に対してだけでなく、遺族に対してもあまりにも理不尽である。せめて遺族への負担を少しでも減らすことで、故人に「安らかに」と手を合わせられる社会に変わっていこうではないか。



●『うつ』だから死を選ぶのか?


その他に、細川弁護士と和泉弁護士から労災認定や生命保険における差別、家主からの不当な補償要求などの話が続く。


左から斎藤司法書士 大熊弁護士 細川弁護士 和泉弁護士


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自死した方の精神科受診率が高いせいだからだろうか。様々な社会問題を抱え精神的に追い詰められている人達に精神科の受診をすすめても、逆に自死のリスクが高くなるかもしれない、ということが、法律の専門家の間でも認知されているようだ。


そのため、会場からも、そして精神科医である野田先生からも、「(今さら精神科を受診しないほうがいいというけれど)『うつ病』という診断があれば、『労災認定』が受けられる、としてきたのは、あなた方法律家じゃないですか!」という批判が集中した。私もずっとその矛盾に怒りを感じてきた一人だから、その通りだと思っていた。


●『自殺防止キャンペーン』 製薬企業に責任はないのか?


静岡県富士市のキャンペーンのポスターを見ればよくわかると思う。仕事のストレスを抱え、眠れないほど悩んでいたり、疲れているお父さんは、仕事を休ませてあげないとダメなのだ。それを、薬を服用すれば仕事が続けられる、というようなキャンペーンをするなんて。ただでさえ、日本のお父さん達は、家族思いでまじめな働き者が多い・・・私はこのポスターを思い出すだけで、泣けてくる。


静岡県富士市『パパ、ちゃんと寝てる?』のポスター (野田正彰著 『うつに非ず』より引用)

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ガンバッてるお父さん
二週間以上の不眠は『うつ病』かも



でも、野田先生の追求がどんどん厳しくなり、ボランティアで発言してくださった先生達が少し気の毒になってしまう。


会場からも「先ほどから、精神科や向精神薬が問題だと話が出ているのだから、法律の専門家の先生達も、個人個人の問題で闘わないで、製薬企業を相手に闘えばいいじゃないですか!」という発言が出た。その通りだと皆賛成し、大きな拍手が。


最後に全国自死遺族連絡会代表の田中幸子さんの挨拶で終わりになった。「自死する人は一年間で3万人にもなりました。山のようなグラフがあるでしょう?3万人ていうけれど、一人一人の命でできているグラフなんですよ」という言葉がつきささる。


野田先生がおっしゃるように、自殺防止対策が間違っていたのなら、関わってきた方々はきちんと反省してほしい。そうじゃないと、亡くなった方々は報われないと思った。


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自殺遺族に突きつけられる高額請求 おはよう日本 NHK 2013年11月29日(金)


阿部

「今日(29日)から、ある電話相談が横浜で行われます。対象となっているのは、家族を自殺で亡くした遺族です。こうした人たちが直面する経済的なトラブルの相談に答えようというものです。」


鈴木

「その背景には、自殺した人の遺族が高額な賠償金を請求され、悩みを声に出せずに苦しむケースが相次いでいることがあります。」


自殺遺族を苦しめる 損害賠償請求


2年前に自殺した女性です。アパートで一人暮らしをしていました。うつ病が原因と見られています。母親は、女性と数日間連絡が取れず、心配になって部屋を訪ねましたが、すでに亡くなっていました。


母親

「つらかったです。親として、なぜ自分の命を絶たなきゃいけないんだという気持ちになって、悲しいより、悔しかったほうが多いですね。」


悲しみにくれる間もなく、遺族には思いもかけない事態がふりかかりました。遺体が見つかったその日から、アパートの家主が賠償金を支払うよう求めてきたのです。資産価値の減少は大きく、長期間にわたって借り手が見つからない恐れがあるとして、5年分の家賃と部屋の改修費。


さらに、隣接した部屋の住人にも精神的苦痛を与えたとして、200万円の慰謝料。あわせて420万円を連帯保証人である遺族が払うよう求めていました。こうした場合、遺族がどこまで責任を負うかは、明確な基準がありません。


自殺をめぐる問題に詳しい弁護士によりますと、判例では家賃の損害賠償や改修費用は認められても、隣人への慰謝料の支払いを認めた例はないということです。


母親

「(娘が)亡くなって、親としては、すごくつらくて。なにしろ、パニック状態でいたときに、そういうふうに言われて、ただ『すみません、すみません』と言うことしかできなかった。」


母親は弁護士を通して1年間にわたって交渉した結果、家主が減額を受け入れ、家賃2年分と改修費、あわせて100万円あまりを支払うことで決着しました。しかし、その後も心の傷は癒えていないと言います。


母親

「長かったです。家主との対話がどうなるか、不安になるのが先立って、子どものことを考える暇もなかったですし。すごく(負担が)大きいです。いまだに、もう2年たちますけれど、ダメージが残っています。そう簡単には、消えないかもしれないですね。」


遺族にさまざまな名目で請求がつきつけられるケースは相次いでいます。


仙台市の田中幸子(たなか・さちこ)さんです。長男を自殺で失ったことをきっかけに、5年前、全国の遺族を支える連絡会を作りました。当初は遺族の心のケアが目的でしたが、家主からの損害賠償の請求に苦しむ相談が毎年50件以上も寄せられ、驚いたと言います。


「金額は?」


全国自死遺族連絡会 田中幸子さん

「1,200万円。震えが止まりませんでしたって書いてあるけど、まさしくそうだと思いますね。」


このケースでは、外壁や屋根を改修した上で、建物と土地をすべて買い取るよう要求されました。他にも、マンションを丸ごと建て替える費用として1億円あまりを請求されたケースもあります。田中さんは、声を上げられない遺族は多いと考えています。


全国自死遺族連絡会 田中幸子さん

「恐れおののいているわけですよね、それはものすごく感じますね。怖いんだろうなと思います。何千万、何億(請求が)来るかわからない。私1人で受けて、年間40~50件。ほんの氷山の一角だと私は思っています。まだまだ、たくさん泣き寝入りして、本当に誰にも言わずに支払っている人たちも、たくさんいるんだと思います。」


一方、家主などでつくる団体は、法外な請求を行うケースは一部だとした上で、借り主の自殺による影響は極めて大きいと訴えています。


日本賃貸住宅管理協会 長井和夫さん

「事故物件に当たれば、すぐに次の方が決まるとは考えにくい。あるいは1年、2年、下手したら3年も覚悟しなければならない。請求できなければ、全部オーナーがかぶることになりますから、オーナーにとっては死活問題になりかねないです。」


阿部

「取材にあたった生活情報チームの山本記者です。こうしたトラブル見てますと、胸が痛みますよね。」


山本記者

「家族を失った遺族が高額の損害賠償に対応するのは、とてもつらいものがありますし、家主の側にとっても負担は大きいものがあります。問題は、どこまでを損害と認めるかなどの明確な基準がないことなんです。」


上野晃弁護士

「オーナーにもオーナーの事情があって、金銭的な請求を出来るだけしたいと。連帯保証人になっている遺族からすると、実際にどの程度負担すれば、自分が責任を果たしたと言えるのかが明確ではないのです。双方が不安に駆られ、過剰な争いになるのを防止するには、行政機関がガイドラインを示すといった対応が早急に求められていると思います。」



鈴木

「国は何か対応しようとしてるんでしょうか?」


山本記者

「国も問題を把握はしていますが、具体的な解決法を定める道筋は、まだ見えていません。遺族の中には、家族を自殺で失ったことを打ち明けられない人も多いため、こうした問題をこれまであまり表面化してきませんでした。


遺族を支援している田中さんの団体では、今日から弁護士などと電話相談を行い、多くの事例を集めて、不当な請求が行われないよう国に対策づくりを働きかけることにしています。」


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