2015/06/18

私の主治医だったB先生へ 『Just The Way You Are(素顔のままで)』をききながら




I want you just the way you are.

僕はそのままの君がいい



ビリージョエルの『Just The Way You Are(素顔のままで)』ときくたびに思う。女性ならこんな風に「流行を追わなくてもいい。髪の色もかえないでいい。そのままの君でいいんだよ」と言われてみたいだろうな。


でも、人生は歌のようには上手くいかない。自分が好きになった男性が自分を好きになるとは限らないし、恋がすぐに冷めてしまうかもしれない。


自死遺族のシンポジウムに出席し、精神科医の野田正彰先生に「要望書を読んでください」と直談判した後、夫の勤め先の大学の健康保険組合にレセプトの開示請求をした。


第4回 自死遺族等の権利保護シンポジウム その1  野田正彰先生に直談判!


私が 診療報酬明細書(レセプト)を開示請求した理由 



自死遺族のお話をきいて、何かできないか考えたからだ。壇上でお話をしてくださった自死遺族は私より少し年上のお母様だった。お嬢さんは、私の自宅からそれほど遠くない街で一人暮らしをしていたそうだ。社会人になったばかりで、これから、という時だった。


その日、ささいな行き違いからお嬢さんと口論となった。夜遅く、メールで言い合いになったという。


私にも経験がある。すれ違っていく時って確かにある。メールだとたった一つの言葉のために、二度と取り返しがつかなくなることもあるね。


お母様は、これ以上メールを送ったら傷つけあうだけだからかと、メールを送るのをやめたそうだ。その判断は親として、賢明なものだったと私も思う。そういう時に一番必要なのは心を落ち着かせる時間だと思うからだ。


でもその晩胸騒ぎがして、朝一番でお嬢さんに電話をかけたらまったくつながらない。急いで一人暮らしをしているマンションにかけつけたものの内側からチェーンがかけられていて、部屋に入れない。なんとか管理会社に連絡をし、部屋に入ったら、誰もいない。


なんだ、出かけたのかとホッとしたのも束の間、背中に視線を感じる。おかしい、と振り向くと、クローゼットの中で縊死したお嬢さんの姿を見つけたそうだ。


私はお話をうかがいながら、泣いていた。自分のこどもが縊死した姿をみるなんて想像するだけで・・・。


お母様はポツリとおっしゃった。「亡くなった娘の部屋から、クリニックの診察券が17枚も出てきたんです。自死するのは薬の影響もあるんだと思います。薬を飲んでから変わったと思います。なんとか、薬を処方するのを、少なくするとか、やめるとかできないでしょうか」。


私は元主治医のB先生を思い出していた。B先生は精神科医ではないけれど、私にベンゾジアゼピンを処方していた。「一生服用しても大丈夫。いつでも病院においでよ」と私に言っていた。親切なやさしい医師だとたまに思い出すこともある。


でもーーーーーー。


断薬の方法や副作用を知らないで処方することが、本当のやさしさや誠実さなんだろうか?


自死遺族が人前で話をする機会はなかなかないそうだ。涙ぐみながらお話するお母様の姿に、そうだろうな、と思った。あれから私はこのままでいいのか思うようになった。気軽に処方する医師を、少なくしていくことも必要じゃないかと思ったからだ。17枚の診察券を16 枚にすることはできるだろうと思った。


亡くなったお嬢さんが探していたのは、もしかしたら薬じゃなく、ビリージョエルの歌のように「あなたはそのままでいいんだ」と受けとめてくれる人だったかもしれないから・・・


レセプトの開示請求は夫に内緒で行った。


向精神薬の被害についての研究に協力すると決めた時から、研究の独立性を考えていたこともある。もう一つ理由があった。夫に相談したら、「B 先生にはお世話になったじゃないか。B 先生が嫌な思いをするからやめなさい」と反対するだろうと思った。


不安は的中した。


先週、夫がムッとした顔で私に言った。「どうしてレセプトの開示を請求したんだ」と怒って私に言う。どうやら、B先生から連絡があったようだ。


でも私が研究の協力要請書と、自死遺族のシンポジウムの話をしたら、夫は私を理解してくれた。B先生にも伝えてくれたようだ。詳しくきかなかったけれど。


ただ一つだけ私から最後にB先生に伝えて欲しいとお願いしたことがある。「自分で処方した薬には最後まで責任を持って欲しい」。


レセプトを請求すれば、開示請求を要請された医師を傷つけることになるかもしれない。それに、夫の勤め先の大学は私の母校でもある。私学の中でも大きな大学だから、ちょっとした政令都市並み何十万もの校友が全国におられる。だから開示請求するには、それなりに覚悟が必要だった。


けれども誰かが、批判を覚悟でこういう実力行使のようなことをしていかないと、何も改善されない。健康保険組合の方はとても協力的だった。夫が、「精神医療の問題は、社会に認知されていて、このままじゃないけないと皆よく知っているんだろう。だから、サクラがやってきたことも、これからやろうとしていることも良いことだと思ってくれたのだろう」と言っていた。


今日、やっとレセプトが手元に届く。これまでいろいろあったなぁ。


B先生がどういう気持ちで、応じてくれたのかわからない。けれど、ここに書いておけば読んでくれるかもしれない。もう、二度とあわないかもしれないから。


今までどうもありがとう。






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Re: タイトルなし

コメントをありがとうございます。

自死遺族のシンポジウムに出席した時に、裁判をしているご遺族のお話を思い出しました。自死した方のデータを分析すると、ある傾向がみえてくるそうです。薬を服用していると、覚悟が違うと言っていたのです。

確かに自死遺族のシンポジウムに登壇したお母様のお嬢さんは、縊死でした。本当かもしれないと思いました。

あと、ソーシャルワーカーの方も、自分の受け持ちの利用者さんの中には、生活保護を受けている方もいらして、自宅を訪ねていったら亡くなっていたこともある。押入れには、どっさり薬が溜めてあった、と涙ながらにおっしゃっていました。

そうなると、薬に支配されているという感じですね。