2015/06/24

津田敏秀先生の『医学者は公害事件で何をしてきたのか』を読んで 『学者ウオッチ』のススメ

津田 敏秀先生の『医学者は公害事件で何をしてきたのか』が文庫化されたとネットで話題になっていたので早速購入した。


医学者は公害事件で何をしてきたのか (岩波現代文庫)
津田 敏秀
岩波書店
売り上げランキング: 69,508



がんばって読んでみたけれど私は科学者ではないから、難しくてよくわからない。でも、日本では水俣病がなぜ、あれほどの甚大な被害を起こしたかというと、津田先生この一言に尽きると思う。


原因が特定されるまでまっていたら、手遅れになる。しかし、日本ではいつものことだ。役所や利害関係者からお金をもらっている御用学者が「因果関係がない」という論文をかいたりして「調査などしなくてもいい」と邪魔をする。本当はこんなふうに、もっと簡単に考え対策を取るべきなんだろう・・・。


『医学者は公害事件で何をしてきたのか』津田 敏秀 Ⅱ 疫学から考える水俣病 ーなぜ被害は拡大したのか


水俣湾の魚介類が問題であるということは「半年後」には分かっているのだ。これは「原因物質」を究明していた当時の研究者たちが、一貫して魚介類しか分析対象にしていないことからもわかる。さて、水俣病の発症を予防するのに、「原因物質」(の名前)が分かる必要があるだろうか。


「原因物質」が何だろうと、魚の中に体にとても悪いものが入っているのである。その魚を食べている人達が今なおいるのに、なぜ食べないようにするための対策を取らないのだろうか。


また、「工場排水が原因とみて、強力な対策が取れなかったのか」と先に引用した文章では述べられている。しかしたとえ工場排水が有毒化の原因だとわかって工場排水を止めたとしても、魚介類を食べることを継続していれば、患者の新規の発生はそんなに止まらないであろう。


なぜなら魚介類はすでに有毒化してしまっているからである。排水を止めたところで、即座に魚介類が無毒化することがあり得ないことは、専門家でなくても容易に想像がつく。



それにしても津田先生はすごいなぁと感心した。なぜって、水俣病をはじめ審議会で出された学者の意見や論文にほとんど目をとしておられるからだ。


水俣病の解説は少し難しいのでこちらを読むとわかりやすい。イタイタイ病、カネミ油症事件、サリドマイド事件など、これでもか、という感じで同じことの繰り返しがえんえんと解説してあって頭が痛くなる。



『医学者は公害事件で何をしてきたのか』 タバコ事件と大気汚染問題


すでに1950年代から喫煙とがんの因果関係はさまざまな研究により示されてきたが、その後さらに喫煙による健康被害により医療費全体が増大し、またニコチンによる麻薬に匹敵する依存症についても明らかになってきた。


またタバコは正常な使い方をして人体に健康被害を及ぼす唯一の商品であるとも説明されだした。


それにも関わらず我が国では情報の公開が遅れてきた。そこで重要な役割を果たしてきたのが学者たちであり、この役割を担ってきた学者の数は膨大である。受動喫煙の問題が明らかになってきた頃、東京女子医科大学香順教授と帝京大学医学部矢野榮二教授は、米国などのタバコ会社から多額の研究資金を受け取り、受動喫煙による害を否定するための研究を行った。


これら学者たちによる一連のプロジェクトは、タバコ会社の内部文書により明らかになり、2002 年12月BMJ(『イギリス医学雑誌』に発表された。


また香川氏は、大気汚染訴訟においても、国側・企業側の証人として出廷してきた。しかしその証言内容は稚拙で、具体的方法論である疫学を知らないのに、知ったふりをしていることが発言内容から明らかになっている。またこのような疫学知識を持たない香川氏を環境庁は重用し、大気汚染に関する調査を行わない方向の報告書を作成するのに利用した。


そればかりでなく、香川氏は大気汚問題に関して環境庁調査を行えないような報告書を作成するのに協力し、結果として大気汚染対策を打たない方向へと協力している。



「タバコ会社の内部文書」とあるけれど、本当に「インサイダー」という映画もある。






難しい本だなぁ〜と諦めかけた時、最後のほうの『学者ウオッチ』に目がとまった。津田先生がすすめておられることは何かに似ている!伊藤隼也さんの『うつを治したければ医者を疑え』や斎藤貴男さんの『子宮頸がんワクチン事件』の本が出たことは、まさにここにかいてあるような感じ。


そうか、このブログは津田先生がおすすめする『学者ウオッチ』だったんだ!


『うつを治したければ医者を疑え! 』を読んで 


斎藤貴男さんの『子宮頸がんワクチン事件』が発売されました その2  対立構造を生むもの



『医学者は公害事件で何をしてきたのか』 Ⅲ 必要な制度の見直し ささやかな対策


『学者ウオッチ』


本書はそもそも、学者達の暗躍にほとほと手を焼き、人生の時間やお金(費用)を無駄遣いさせられてしまった医師、NGOメンバー、ジャーナリスト、弁護士、研究者、行政官の強い要望により実現する運びとなった。


(中略)


本書において紹介したような学者達の出現を防ぐ効率的で有効な方法は、現状では見つからない。学者を生み出し活躍させてしまう構造は相変わらずだ。本業とは異なる安易な方法で、目先の名誉も金銭も両方獲得しようとする学者がいる限り致し方ない。


また、自分の仕事の意味を理解する余裕がなく、何とか無難に本庁の課長以上になることしか念頭にない官僚たちがいる限り、あるいはそうさせてしまう閉鎖的な官僚制度がある限り、このような学者たちに対する公的研究費の支給は続けられるだろう。


「このような行為は恥ずかしいことなんですよ」というようなモラルに訴えたところで、比較的「まし」で、比較的真面目な科学者たちが自粛するのが関の山だろう。


残念ながらその結果は虚栄心を満たした上で、しかも金も欲しい学者たちの競争相手を減らし、学者たちを助けるだけにしかならない。そして残念なことに、特別に悪い学者がこのようになるわけでもなく、誰にでもこのようになってしまう可能性はあるのだ。


そこで提案するこのシステムでは、大きな社会問題に関わる学者を、研究者市民などで協力してウオッチして、できるだけの機会を利用してひろく公表していくようにする。問題にするのはいくら警告してもダメなとき、そして社会的影響が大きいときだけだ。


だから普通の研究者は無用な心配をしていただかなくてもいいだろう。


そして学者達の暗躍にほとほと手を焼き、人生の時間やお金(費用)を無駄遣いさせられてしまった医師、NGOメンバー、ジャーナリスト、弁護士、研究者、行政官らは、それぞれがほとほと手を焼いてきた学者のことを、できるだけ公にするようにする。


そのことを雑誌に書き本に書く暇がある人は新聞、テレビで発言する。あるいは裁判所でもきちんと証言する。書いた人、発言した人がそのままウオッチャー組織の一員だ。出版社やメディアの方々も、定期的に学者のウオッチに関心を持っていただき、学者ウオッチャーの発表の場を提供していただきたい。


(中略)


現在の我が国には行政のウオッチに関してはマスコミなども含めて関心が高い。しかし学者に対するウオッチは行われていない。


行政が学者のウオッチ組織を作ろうとするようなことは現状ではとても考えられないので、我々国民の中の作ったほうが良いと思う人たちが、それぞれの日常生活や仕事に支障がない程度に、個々の事情にあわせて作るしかない。この学者ウオッチの組織はそういう個々の事情に合わせられる緩やかな組織だ。


しかし目標だけはしっかりしている。学者の暴走を予防、あるいは阻止できるだけの力を持ち合わせることだ。

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