2015/07/23

医療ジャーナリスト 伊藤隼也さんについて その4 国立国会図書館で当時の記録を調べる

ブログに伊藤隼也さんについてかくにあたり、これまでどんな記事を書いておられたのか調べてみた。一番簡単なのが国立国会図書館サーチで検索する方法だ。


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国立国会図書館



『伊藤隼也』で検索するとたくさんの本や雑誌の記事がヒットする。その半分は写真家時代のもの。そして残りの半分が医療ジャーナリストとして発表された雑誌の記事や本。検索の条件をかえ医療に関する記事だけしてみると辛辣なタイトルが目につく。タイトルだけみると確かに『煽る』と言われても仕方がないような気がする。でもそれはタイトルで売る週刊誌の宿命だとも思う。


国立国会図書館サーチ


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今まですべてに目を通してきたと思っていたけれど、見逃したものがあるし、どんな内容だったか忘れてしまった記事もある。思い切って国立国会図書館に出かけた。


入手できたものは複写サービスを利用し、家に持ち帰った。


詳しく記事の内容をみていくと、どうして悪口が書かれるのかよくわからなくなった。


●2009年7月9日 週刊文春 「補助金をもらって妊婦を断る『周産期センター』」


例えば2009年7月9日の週刊文春のタイトルは「補助金をもらって妊婦を断る『周産期センター』」だ。


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この記事では以下のようなことが指摘されていた。


「生殖医療は多くの場合自由診療だ。ビルが建つといわれるぐらい儲けている開業医もいる。問題なのは分娩施設をもたず、生殖医療を行い『妊娠しました』と周産期センターに丸投げしてしまうような施設。生殖医療でハイリスク妊婦になったとしても、命を救うために奮闘し、訴訟リスクに晒されるのは周産期センターの医師。周産期センターでのお産はリスクが高い場合が多い。スタッフが大勢必要だ。お産には約50万円の費用がかかるが、経費を除いた利益はごく僅かといわれている。この矛盾に憤りを感じて辞めていく医師もいる」


私も日本の高度生殖医療にはこの世の矛盾が凝縮されていると感じていた。とりわけ問題だと思うのは、生まれてくる子供の知る権利や人権が置き去りにされていることだった。


例えば、高度生殖医療と超低出生体重児の増加とは関係があるといわれているけれど、小さくうまれた子ども達への育児支援・教育支援は充実しているとは言い難い。支援の不足は下手をすると、個人の心の問題にすり替えられ、精神医療に丸投げされる。支援のためにとりあえず「障害名」をつけるなどが行われているのだ。


だから本当の意味でこの国は、子どもを大切に考えていない気がしてならなかった。とてもよい問題提起だと思った。最後のまとめの言葉は私もその通りだと思う。


周産期医療を再建するためには、医師や病院を適材適所に「計画配置」すべきだとの議論はもはや避けられまい。そのために、まず考えなければならないのは周産期医療の現場で奮闘している医師たちの「高い公的役割」に対し、いかにそれに見合った労働環境や大待遇を提供するのか。そして、これまでの身勝手に振る舞ってきた病院や医師たちに対し、いかに「公的な責任」と「役割」を課すのかである。


いくら医療崩壊だからといって、公的な責任や役割を果たそうとしない医師までを、私達市民が守る必要はないと思うからだ。


●2009年6月18 日 週刊文春 「新生児医療『文科省』に殺される」


次に2009年6月18 日の週刊文春に掲載された記事を読んでみた。「新生児医療『文科省』に殺される」というタイトルがつけられている。タイトルは刺激的だけれど、中身はやはり重要なことが書かれている。


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当時、急変した妊婦が受け入れを拒否されるという、所謂「妊婦たらい回し事件」が社会問題化していた。政府は国民の「改善すべき」という強い要望を受け、周産期医療システムを再構築すると宣言した。


周産期医療が崩壊する原因の一つはマンパワーの不足だ。例えば急変した妊婦を受けいれるためには産科医だけを増やしても受け入れ拒否はなくならない。なぜならNICU(新生児集中治療室)で働く新生児科医も不足しているからだ。私のようにすぐに出産しなくてはならなくなった妊婦の場合、生まれた子どもを治療する新生児科医がいなければ子どもが死んでしまうのだ。


崩壊寸前の医療現場はどこもギリギリの状態だったが、それでも救える命を救うため、少ない人員で役割分担をハッキリさせ、地域一丸となって救急搬送マニュアルを作りあげるなどの工夫をしていた。


ところが、文部科学省が所轄する国立大学病院に補助金を投じて、周産期病床を強化すると言い出した。なぜ文科省は医療現場の実情を真摯に見つめず、愚かな政策を強行するのか。無理に箱物に予算をつけても現場の医師を引きはがすだけだ。これでは崩壊はさらに加速するーーー


記事にはそのようなことが書かれていた。


しかも取材にこたえている医師には見覚えのあるお名前がちらほら。中には伊藤さんと親しい先生がおられる。きっと伊藤さんが現場の声を伝えようと奮闘したから、気持ちが通じて仲良くなったのだろうと思った。


「(医療ジャーナリストの伊藤隼也氏は)マトモな医師から相手にされていない」という悪口をよく目にするけれど事実は違う。伊藤さんが実名を出さないのは先方のことを考えておられるからだろう。


改めてよんでみてとても不思議だ。一体これらの記事のどこが「医療崩壊を煽る」内容なのだろう。辛辣なタイトルは不信を煽るのではなく、議論を巻き起こしためではないだろうか?考えて欲しい。第一に守るべきは声をあげたくてもあげらない母子だと思う。伊藤さんへの事実無根の悪口が拡散されると一番困るのはこうした声をあげられない方々ではないだろうか。


(次回に続く)


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