2015/07/31

医療ジャーナリスト 伊藤隼也さんについて その8 少数の意見を取りあげ、人権に向き合うジャーナリスト

医療ジャーナリスト 伊藤隼也さんについて その7 命がかかっているから売れないと困る


伊藤隼也さんのかいた記事を読んでいくと、圧倒的な少数の意見を社会に届けようとしておられるのではないかと思う。


例えば、週刊文春(2012年11月)の「あぶない高齢出産」という特集では「出生前診断」の危うさや、不妊治療が盛んに行われる一方で、出生率は先進国最低という我が国の歪んだ実態を社会に問うている。ジャーナリストを名乗る方は多いけれど、高度生殖医療のタブーをこのようにストレートに問題提起することは、なかなかできないのではないかと思う。



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私は不妊治療を受けたことがないので、高度生殖医療に関して発言は控えようと考えてきた。けれど私は超低出生体重児の母親だ。息子のような超低出生体重児が増えていることと高度生殖医療とは関係があるといわれている。だから、これだけは知って欲しいと思うことが一つだけある。


●命が助かった後の苦しみ


私は「お子さんが無事に育ってよかったね」とよく言われる。


確かに私も「よかった」と思うし、そう言わなくてはいけないのだと思う。しかし今の日本で、24週、800gで生まれた子どもを育てるのはとても大変だ。社会の無知・無理解・無関心という大きな壁もあり、命が救命されるようになったからこそ、はじまる苦しみというものも数多く味わってきた。


ブログを書き始めた理由の一つは、この「大変」ということがなかなか社会に伝わらないから、知って欲しい、ということがあった。「大変」ということも伝えていかない限り、超低出生体重児の虐待事件はなくならないと思ったからだ。


メディアが伝えているのは、主に親や医療者の肯定的な意見であり、超低出生体重児と呼ばれる子ども達が本当に「うまれてきてよかった」と思っているのか、それはわからない。


●小児がんの晩期合併症


こちらの男性は、2011年、NHKのクローズアップ現代「小児がん 新たなリスク」という特集の冒頭で紹介された。「晩期合併症」に苦しみ自ら命を絶った元お笑い芸人の男性だ。







皮肉なことに、亡くなったからこそ、NHKが彼とご家族の苦しみに光を当てたのだ。


お笑いで生きていけると手応えを感じ始めていた19歳の時、政人さんは白血病を発症します。一歳の時に受けた抗がん剤治療の影響で18年後、再び晩期合併症があらわれたのです。


治療をはじめた政人さんは家族の前でこう語ったと言います。「僕は入れ込んだらアカンのや。仕事だって、夢を追ったって、必ず病気がじゃましてくる」
骨髄移植を受け、白血病の治療は上手くいきました。しかし、副作用に苦しみ、相方にも迷惑をかけられないからと、お笑いの夢をあきらめました。


その後、自分の治療費を稼ごうとアルバイトを探しましたが、病気を抱えた政人さんを受け入れるところはありませんでした。
去年8月政人さんは部屋で自ら命を絶ちました。遺書にはこれ以上、家族に負担をかけくないと記されていました。




「生まれてきて良かったと思ったことがなかったんじゃないかな。それを思ったら申し訳ない。生まれてきてよかったと思って欲しかった」


亡くなる前、政人さんはパソコンの中に文章を残していました。


「小さい時は気づかなかった。地球からまっすぐ、皆はロケットで飛んでいる。僕は出発する時に角度が少しずれちゃっていた。すすめばすすむほど、皆との距離は離れる。不公平だよ。ずれたのは僕のせいじゃないのに」。


私は超低出生体重児の親として胸が痛んだ。超低出生体重児は増えているというがその一方で社会的支援が充実していないからだ。将来同じことが起きないと誰が言い切れるだろう。


●「今も感染と差別は広がり続けている ——エイズ忘れられた病渦——」が私に投げかけたもの


伊藤さんのかいた記事の中に、私の心を捉えた特集があった。国際情報誌『SAPIO』 の2013年に掲載された「今も感染と差別は広がり続けている ——エイズ忘れられた病渦——」というものだ。


私はこの連載を読んだ時に、愕然とした。エイズが医療の進歩により「死なない病気」になったことで、生み出される深刻な差別をはじめて知ったからだ。カクテル療法が開発されたから、もう安心なのかと勘違いしていたことに少なからずショックを受けた。


ああ、でもこれはいつかみた光景だ。


●私たちには受け入れる社会の温かさが必要 


超低出生体重児の退院後、重い食物アレルギーのお子さん、精神医療の被害やHPVVの被害、構造的にみな似ている。


続発するアレルギー事故 学校給食で何が? クローズアップ現代 2013年2月21日

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アレルギーによるショック症状だと判断して、エピペンを右の太ももに注射しました。異変に気付いてから15分ほどあとのことです。救急車が到着したのは1時40分。その場で心肺停止が告げられました。


気分が悪いと訴えてからおよそ20分後。お代わりで食べたチヂミに入っていたチーズは、1グラムにも満たなかったと見られています。


女の子の両親からの手紙

“娘の死をきっかけに、食物アレルギー対策の重要性が再認識され、多くの人たちが改めて動き始めるのであれば、娘は「うん、それならいいや」と言うような気がしています。彼女の未来に向けた思いに応えてほしいと思います。”



※  ※  ※



子宮頸がんワクチン、副反応と闘う少女とその母たち 単行本 – 2015/6/26 黒川 祥子 (著) Amazon


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<内容紹介>(※ 被害者とご家族の証言の部分だけを抜粋させていただきました)

第一章
「生きないと。死んじゃったら、
これをワクチンの被害だと認めていない厚労省というところは、
やっぱり心因的だって、とらえるから」
娘・三咲あすかさん(14歳) 母・三咲美穂さん(45歳)

第二章
「自分のことでいっぱいいっぱいで、
あんまり怒りとか感じたことはないです。
ただ、できない自分がつらいです」
娘・菅沢奈緒子さん(15歳) 母・菅沢翠さん(40歳)

第三章
「化学物質と電磁波を浴びると、脱力が起きるんです。
力が突然、抜けてしまう。足だったり、手だったり。
不随意運動は、音がきっかけで起きることが多いです」
娘・萩原葵さん(17歳) 母・萩原文枝さん(43歳)

第四章
「おもいだしても
わすれなみがきて
またきおくがさらわれる」
娘・川村真希さん(15歳) 母・川村葉子さん(40歳)

第五章
「日に日に、娘の身体が壊れていくんです。
身体にエイリアンが入って、娘をめちゃくちゃにしていく。
調子が悪いなんていう、そんなレベルではない」
娘・谷口莉奈さん(16歳) 母・谷口美穂さん(45歳)

第六章
「娘はこうして治ってきているんです。
みんな、どうしようって言っているけれど、
希望があることを伝えたい」
娘・松藤真衣さん(16歳) 母・松藤美香さん(43歳)



記事の中に、職場を追われたHIV 陽性者の看護師の女性が私自身と重なる。彼女を職場から追い出した上司の一言は私がはじめて実名で書いた手記の「受け入れる社会の温かさが必要です」という言葉とそっくりだからだ。


「(あなたが仕事を辞めないといけないのは)病院のせいではない。社会が悪いのだ」


私が伊藤さんの記事で驚いたのは、この言葉に代表されるような、医療従事者の中にある、HIV陽性者への根強い差別や偏見だった。


「社会が悪い」というのなら、なぜこの上司は、当事者の声を社会に届けようとしないのだろう。ため息が出てくる。


しかし私も反省した。これまで「当事者の声を取りあげない!」と医療者やメディアをさんざん批判してきた私だったけれど、HIV陽性者の苦悩を知ろうとしなかったのは私も同じだからだ。


さっそく伊藤さんに感想をかいて送って、「一部でいいからブログに引用させていただけないでしょうか」とお願いした。


伊藤さんの「エイズ」の特集が掲載されたのは国際情報誌『SAPIO』だ。『SAPIO』を発行している小学館のサイトをみると購買層は男性。もしかしたら女性の目に触れる機会が少なかったかもしれないと思ったのだ。


AD Pocket 小学館 広報ポケット


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すると伊藤さんからすぐに返事が送られてきて「国会図書まで行かなくても僕のサイトでも読めるようにしてあります。そのような趣旨なら全文引用していですよ」と言ってくださった。


●最後に お金を儲けることは悪いことなのか


私は超低出生体重児の母親になって、この世には個人の力ではどうしようもできない厳しい現実があることを知った。現状をかえるには、多くの方に私達の抱える困難を知ってもらう必要がある。しかしその手段が私達にはあまりない。


伊藤さんへの批判に「医療不信を煽ってお金を儲けている」というものがある。私は伊藤さんが取材したものをこれまでみてきたけれど、お金を儲けるためにジャーナリストになったとは思えない。むしろご自身がご家族を医療で亡くし苦労した経験があるから、埋もれがちな少数の意見を取りあげようと活動してこられたように思う。


そもそも、取材にお金をかけなければ、私達のような、圧倒的な少数の意見を正確に社会に伝えることはできないと思う。そして、より多くの方々に知ってもらうには、できれば本が売れて欲しい。


医療ジャーナリストがお金を儲けるのは悪いことなのだろうか?


もしも「HIV陽性者への理解を広めましょう」という啓発を医療者が中心となって行うと「子宮頸がん」や「乳がん」の啓発と同じようになるんじゃないかと思う。「検査に行きましょう」「予防しましょう」で終わり、陽性者の方のための啓発にならないように思う。


若年性乳がんになっちゃった! ペコの闘病日記 ピンクリボン「商品」ですから~ 2008/10/07


・・・では、どんな所に泊まれるのか、こちらから早速見てみましょう。
http://info.rurubu.travel/theme/pink_ribbon/


【ピンクリボン】ピンク・フェイシャルエステ60分プラン
禁煙ツイン1名~3名<朝食ブッフェ・温泉付>
http://rsv.rurubu.travel/PlanDetail.aspx?st=1529089&sk=A8&pc=B2CEHTL&rc=213&rv=20&aff=rurubu_t


ねえねえ、これってどういうことですか?
乳がん患者、温泉入れない人が多いって知ってます?
全摘はもちろん、温存の人だって左右に差ができて他人の前では裸になれないんだってば(;´∀`)


おまけにピンクのタオルでフェイシャルエステですか?
モー勘弁してくださいよ(薄笑)


これは一例で、この「ピンクリボン宿泊プラン」、
大浴場天然温泉を売りにしているものが満載です(;´∀`)


一言、叫んでもいいですか?


「お前らいい加減にせえよ(#・∀・)」


普通さー、こういう企画をするんだったらね、
「温泉に入れない乳がん患者さんのために
客室露天風呂プランや、家族で楽しめる家族風呂付プランを・・・」
っていうのが筋ってもんじゃないんですかね?


ホント、ピンクリボンフェスティバルって、すでに乳がんになってしまった患者は
まったくお呼びでないイベントなんだなーと、しみじみ思います。



せっかく「引用してもいいですよ」といっていただいたので、次回から文字に起こして少しずつブログに引用させていただこう。私が百万言を費やすよりも、読んで下さった方の心に届くものがあると思うから。


是非、多くの方に読んでいただければと思います。


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