2015/08/03

『 今も感染と差別は広がり続けている ——エイズ忘れられた病渦——』私を職場から追った言葉 その1

(※ これは国際情報誌「SAPIO」2013年6月号に連載された特集記事です。著者の伊藤隼也さんに許可をいただいて引用させていただきました)


『今も感染と差別は広がり続けている ——エイズ忘れられた病渦——』を引用させていただくにあたって の続き


[ 短期集中連載 ] 今も感染と差別は広がり続けている ——エイズ忘れられた病渦—— 医療ジャーナリスト伊藤隼也と本誌取材班 SAPIO 2013年6月号 (05月10日発売)


SAPIO 2013年6月号 (05月10日発売)

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第1回 HIV キャリアの悲痛な告白 「私を職場から追った言葉」


6月1日から「HIV検査普及週間」が始まる。昨年も行われたこのキャンペーンの存在を知らない読者も多いだろう。エイズが医療の進歩によって「死なない病気」となってから、世間の関心は薄れる一方だ。報道も激減した。しかし問題は解決したどころか、むしろ深刻化している。「忘れられた病気」の大問題を追求する。


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世界には約3400万人のHIV陽性者およびエイズ患者が存在する。(2011年末時点)。しかし、増加しているのは主に発展途上国や新興国であり、先進国では新規エイズ患者数の減少傾向が見られる。唯一の例外が日本だ。日本では新規患者・感染者が毎年1500人もおり、一向に減少する兆しがみられない。封じ込めに失敗しているのだ。


「HIV検査普及週間」を主唱するエイズ予防財団の永井頼政氏は危機感を抱いている。「エイズを発症する前にHIVに感染したことを知れば、早期治療で発症を遅らせることができます。そのためには、保健所などで検査を受けるしかありません。しかし社会的な関心の薄れから、検査件数は年々減っています」


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公益財団法人 エイズ予防財団 Japan Foundation for AIDS Prevention エイズは予防できる病気です




エイズに関する最新の情報を収集・提供し、患者・感染者の社会的支援やエイズ に関する普及啓発などを行うNGO・NPOに対し、助成金を交付するなど、活動をサポートしています。


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HIV検査・相談マップ 〜HIV・エイズ(AIDS)・性感染症の検査・相談窓口情報サイト


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厚生労働省「HIV検査法・検査体制研究班」によるエイズ検査詳細情報。
‎HIV検査まめ知識 - ‎HIV検査Q&A - ‎HIV・エイズって何?



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保健所におけるHIV抗体検査件数は08 年の17万7156件をピークに減少を続け、12 年には13万1235件まで減った。関心が薄れるとともに、HIV、エイズに対する偏見と差別は拡大している。


●HIV陽性者を理由に職場から追い出された


愛知県内の大手医療機関で働く30代の看護師Aさんは09年9 月、仕事中に過労で気分が悪くなり、勤務先だった施設と同じ敷地内にある系列病院に運ばれた。


この時、病院はAさんの同意なく血液検査を実施した。HIV検査は患者の同意を得ることが義務づけられている。患者が意識不明であるなど確認が取れない場合のみ、医師の判断で検査することが可能だ。もちろん、Aさんには意識があった。


幸いAさんの病状はすぐに回復したが、他院後、病院の副院長に呼び出された。「白血病や骨髄腫など重い病気がわかったのかと不安になりましたが、副院長の口から出たのは『簡易検査でHIVの陽性反応が出ている』という言葉でした。(Aさん)


思いもよらない告知に頭が真っ白になったという。改めて別の医療機関で検査を受け、HIV陽性が確定した。「私は看護師ですが、HIVに関しては教科書的な知識しかなく、告知を受けて『あとどれくらい生きられるだろう』と泣き崩れました。その後も食事が喉を通らず、2週間で体重が10キロ減りました。(Aさん)


HIVに感染しても今は薬物療法でエイズの発症を抑え、長くいきることができる。その事実を知ったAさんは落ち着きを年戻し。生きることへの希望が芽生えたという。


Aさんはストレスでぜんそくを発症していたため、HIVの告知直後からそれを理由に休職したが、快復してきたため、10月中旬、勤務先と職場復帰に向けた話し合いに臨んだ。副院長や副施設長と数回話し合ったという。


医療現場で血液で感染が起こる場合、病気を持つ患者に使っていた針を誤って医療従事者自身に刺してしまう「針刺し事故」が懸念されるが、HIV感染のリスクは極めて低い。米国疾病管理予防センター(CDC)によれば針刺し事故によって患者から医療従事者へHIVが感染するリスクは0.3%とB型肝炎の30%、C型肝炎の3%と比較して非常に低い。


まして看護する側が陽性者ならば針刺し事故が起こるとは考えにくい。Aさん職場復帰に支障はないはずだった。


しかし、副施設長の言葉は驚くべきものだった。


「真っ先に『リスクが高く、ウチで看護職は続けられない。運転や配膳の仕事はあるが、差し迫って人員が必要ではない』と言われ呆然としました」(Aさん)


『 今も感染と差別は広がり続けている ——エイズ忘れられた病渦——』私を職場から追った言葉 その2





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