2015/09/06

厚労省の『拠点病院事業』の問題点 その4 「『がん治療』日本はここまで遅れていた」 「緩和ケア」都道府県でこんなに違う!①

(※ これは週刊文春、2010年12月2日号に掲載された特集記事です。著者の伊藤隼也さんに許可をいただいて引用させていただきました)


告発キャンペーン 最終回 「がん治療」日本はここまで遅れていた「緩和ケア」都道府県でこんなに違う!

週刊文春 2010年12月2日
医療ジャーナリスト 伊藤隼也と本誌取材班


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医療の進歩に伴い、がんを抱えながら、共に生きる人々が増えている。そんな中、外科手術、抗がん剤などによる化学療法、放射線治療とならぶ「第四の治療」として重要性を増しているのが、生活の質(QOL)の向上に努める「緩和ケア」である。


その内容は、がんによって起こる痛みの緩和をはじめ、抗がん剤治療の副作用への対処、精神的な辛さ、不安を取り除くことなどを広範囲にわたる。


07年に施行された「がん対策基本法」では、全国どこでも質の高い、がん医療を提供する「均てん化」が謳われた。その中で「緩和ケア」も重要視されており、全国377のがん診療連携拠点病院(以下・がん拠点病院)は、すべて緩和ケアチームを設置するように定められている。


そのひとつ、埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科の大西秀樹教授は、がん患者の精神的ケアについて、次のように説明する。


「がんの患者さんのうち5,6%はうつ病になります。問題なのはうつ病になると、治療の意欲がわかなくなってしまうこと。そこで抗うつ剤の処方も含めたサポートで、がん治療に戻っていくよう促します」


緩和ケアというと、これまでは治療の施しようがなくなった時期から始まる「終末期医療」と同義に語られがちだった。だが、今では治療の早期から始めるべきだと考えられている。


この考えを後押しするような研究も出て来た。今年、医療関係者が「画期的」と口を揃える研究が、アメリカの有力医学誌『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』に掲載された。


進行肺がんの患者に早期から緩和ケアを導入すると、終末期から緩和ケアを導入した患者よりも、生存期間が長くなったというものだ。


では、日本の「緩和ケア」の現状はどうなっているのかーーー。


「病院の緩和ケアもあるかもしれませんが、在宅で受けられるケアがあるのならば、もっと早く知りたかった。そこまでは、教えてもらえないものなのでしょうか・・・」


この11月に子宮頸がんで亡くなった、中島宏子さん(仮名)の長姉が悔しい思いを吐露する。九州在住の宏子さんは49歳で亡くなる直前まで、がんと闘い、苦しむ生活を送った。


09年2月、不正出血があった宏子さんは地元の総合病院を通じて、近くのがん拠点病院に紹介された。そこは先進的医療の研究に積極的に取り組む事で知られる有名大学病院である。


「お医者さんも『完全に治しましょう』ということで手術を受け、そこから抗がん剤治療が始まりました」(宏子さんの次姉)


しかし、今年初めに再発。その後、膀胱や肝臓、皮膚にまで転移が続いた。7月になると病院側は、もはや抗がん剤の効果が認められる、積極的治療が望めないと判断。その後、9月には左脚に深部整脈血栓症を併発して緊急入院した。


「今年の夏の段階で『あなたは末期です。この病院は治る可能性がある人のための場所なので、あなたは緩和ケア病棟のほうに行ってください』と言われたそうです。妹は気が強い子でしたが、その頃から急にガックリ来てしまいました」(同前)


がんを治そうと行っていた主治医が急に、「緩和」と言いだしたので、宏子さんは「見捨てられた」と嘆いていたという。


緩和ケアにたどり着いたのは亡くなる3日前のことだった。ケアを担当した看護師が振り返る。「私が出会ったときには、痛みが強く、血栓によって脚がパンパンにはれて、腫瘍のためにお腹もすごく膨らんでいる状態でした。その日はどうにか働けたものの、次の日にはほとんど動けない状況でした。


最初の2日間はかなり時間を割いて、ご本人の気持ちを聞く時間を設けました。『病院のケアとは全然違う』と。病院では本人の本当の気持ちを聞き出すまでは時間が取れていなかったのでしょう」


宏子さんを在宅ケアで看取った医師も語る。「外来で患者を診ている医師は、その人が自宅でどんな環境で、どんな家族に囲まれて末期がんの生活を送っているか、知る由もありません。生活を知らずに指導をしていることに違和感も感じません。もし生活面での指導までしていれば、血栓症は併発しなかったと思います」


宏子さんが治療を受けたがん拠点病院では、彼女のQOLを高める医療、すなわち真の「緩和ケア」は実践されていなかったようだ。



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