2015/10/02

『新型出生前診断』の問題点について その5  謎に満ちた『ジーンテック(GeneTech)株式会社』 後編

『新型出生前診断』の問題点について その5  謎に満ちた『ジーンテック(GeneTech)株式会社』 中編 の続き


●『ジーンテック(GeneTech)株式会社』が急成長した理由を考える


実施できる医療機関が増えることは、一見すると妊婦さんにとって良いことのように思える。けれど前回紹介したように、ジーンテック社の求人広告をみれば、違和感をおぼえる方もおられるのではないだろうか。番組の中で伊藤隼也さんが指摘した理由を調べていくうちに、私も日本産科婦人科学会の『指針』に疑問を感じるようになった。


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VI 母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に対する医師、検査が医者の基本的姿勢


  1. 母胎血を用いた新しい出生前遺伝学的検査の実施施設であるかないかに関わらずすべての医師は母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に対して次のような姿勢で臨んで差し支えない。



  2. 母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査について医師が妊婦に積極的に知らせる必要はない。ただし、妊婦が本検査に関する説明を求めた場合には、医師は本検査の原理をできる限り説明し、登録施設で受けることが可能であることを、情報として提供することを要する。



  3. 医師は母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査を安易にすすめるべきでない。また検査会社がこの検査を勧める文書などを作成し、不特定多数の妊婦に配布することは望ましくない。


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●正しい情報の少なさと不安が混乱に拍車をかける


はじめに書いたように、『NPTコンソーシアム』と子宮頸がんワクチンの普及をしてきた『子宮頸がん征圧をめざす専門家会議』は似ていると思う。


しかし決定的に違うのは、啓発に対する姿勢だ。「新型出生前診断の結果は、遺伝子に関する重大な情報だ。だから積極的にすすめない、慎重に」という姿勢は評価できる。


しかし私は対象となる妊婦さん以外にも、正しい情報の提供は必要だと思っている。


なぜなら私自身の経験から、「お腹の子どもに障害や病気があるかもしれない」という不安の大きさは(もしかしたら私もいつか「がん」になるかもしれないという不安に比べ)比べものにならいほど重いと思うからだ。加えてジーンテック社の求人情報にかかれていたように、この検査は高齢出産をターゲットにしている。その中にはきっと長い間、不妊治療をしてきた妊婦さんも多いことだろう。


もともと不安を抱えやすい条件が揃っていて、一方で正しい情報が少ないということが、不安に拍車をかけているように思えてならない。正しい情報が少なかったから、新聞や雑誌などで検査が紹介されただけで、あっという間に広まってしまったのではないのだろうか?


●ジーンテック社の求人情報に簡単にアクセスできてしまうという矛盾


指針では「積極的にすすめない」とされているものの、ネットが普及した現在、私達は検査を行うジーンテック社の求人情報に容易にアクセスできてしまう。情報を統制することは今の社会で困難だと考え指針をつくらないと、よけいに混乱するのではないだろうか?


ジーンテック社は日本にラボ(GeneTechかずさラボラトリー)を設立した。もしも今後検査費用が安くなれば、さらにこの流れは加速するだろう。


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平成27年1月より日本ではじめて国内NIPT検査を開始しました。

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NIPTコンソーシアム研究代表の左合治彦氏(国立成育医療研究センター) の2012年8月31日のご発言が興味深い。この検査の導入を決めた時のものだ。


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紀要 成安造形大学芸術文化研究所 | 『新型出生前診断と21トリソミーをめぐる誤解 』 島先京一 


左合センター長は、参加研究機関に対して、複数の専門家が勤務していること、遺伝カウンセラーを専門外来に配置していること、臨床検査を埋めた母子に対する継続的なフォローを行うために、小児科の専門医との連携を確保すること、等の条件を提示し、この研究があくまで基礎データ作りとした学術性の強いものであって、シーケノム社の検査法の普及促進を目的としていることではないことを強調している。


また左合センター長は、「検査や病気の理解のないまま妊婦が検査を受けたり、医療機関が受けさせたりする事態を避けたい」とも述べ、シーケノム社の検査法が安易に国内に広まってしまうことを防ぐことも、研究の目的の一つであることを明らかにしている。


そして北海道新聞の社説も指摘するように、「今後営利目的の業者が参入する可能性も否定できない」ことからも、組織化された臨床研究が必要だったのであろう。



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●2年半で一番変わったこと


検査が導入され2年半がたった。この間に何が変わり、何が変わらなかっただろう?


カウンセリング体制が追いついていない現状を考えれば、私にはこの『臨床研究』が、妊婦さんのためというよりも、検査を請け負うジーンテック社の事業拡大のために力を注いできたように思えてならない。シーケノム社の唯一の国内代理店という立場をフルに活用し、シーケノム社の検査法を広く普及させるために活動してきたようだーーーーーーーー


私だけがそう思うわけではない。産婦人科医師にも同様の疑問を持つ方がおおぜいおられるからフジテレビが特集を組んだのだろう。


続く

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