2015/10/06

『新型出生前診断』の問題点について その7 『魔法の検査』であるというイメージが一人歩きしていないか

『新型出生前診断』の問題点について その6 希望を見つけ出すのが医療である 後編 の続き


●『陽性的中率』は条件次第で低くなることも 


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診断結果は「正常」、生まれた子供は「ダウン症」で賠償金1000万円「出生前診断」で間違えた医者の責任をどう考えるか | 賢者の知恵| 現代ビジネス[講談社] 2014年07月10日(木)

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成安造形大学芸術文化研究所の島先京一氏の論文は様々な問題点がコンパクトにまとめられており、大変参考になる。


シーケノム社の検査法は、『感度が高い』というイメージが私にはあるが、条件次第で陽性的中率が大きく変わるそうだ。一般的に検査に偽陽性・偽陰性はつきものだといわれている。しかし私は正直、20歳代でこれほど低いと専門家が考えているとは思わなかった。


しかも、この重要な感度について発言しておられる専門家とは、何を隠そう、NIPTコンソーシアム研究代表の左合治彦氏だそう。まるで今の混乱を象徴しているようだ。


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紀要 成安造形大学芸術文化研究所 | 『新型出生前診断と21トリソミーをめぐる誤解 』 島先京一

しかしここで注意しなければならないのは、シーケノム社の検査法が、100%の判断確度をもっていないという点である。シーケノム社の提供した資料によれば、染色体異常の胎児を正しく染色体異常と判断する感度Sensitivityは99.1%、そして染色体異常ではなく胎児を正しく染色体上ではないと判断する特異Specificityは約99.9%であったという。


この数値は、この検査法の信頼性の高さを示しているようにも移るが、しかしシーケノム社のデータは、35歳以上の染色体異常の胎児を妊娠する可能性が高い妊婦を対象としており、感度にしても特異性にしても、そのまま受け取ることはできない。


次節において取りあげる、この診断の臨床研究を計画している左合治彦・国立成育医療研究センター周産期センター長は、35歳以上の妊婦を対象とした場合の陽性的中率は、80%から95%、20歳代の妊婦を対象とした場合の感度、即ち陽性的中率は50%にとどまるのではないかと予想している
[註5]。


左合センター長の予想が正しいのであれば、この検査には生命をめぐる判断のために十分な信頼度があるとはおもえまい。


次節で考察するが、さまざまな人びとによる十分な交通整理がなされていない発言や報道によって、シーケノム社の出生前診断は、感度の高い検査であるというイメージが一人歩きしてしまった可能性もある。

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冒頭で紹介した現代ビジネスのショッキングな内容のニュースは、先週の金曜日(2015年10月2日)ヤフーニュースのトップで紹介されたことから、一気に拡散した。


「出生前診断」の問題を追っていれば、このような裁判が起きることは時間の問題だと思っていた。「新型」の場合は、反対する人達の声を振り切るような形で導入を急ぎ、一方で社会に検査の理解を求めたり、情報を出そうとしなかったのだから、さらに大きな混乱がおきるのではないだろうか?


この検査を請けおう『ジーンテック社』の求人情報をみると、私は何ともいえない気持ちになる。


「99%以上の精密な結果が出る検査です」と、このような数字を目にしたら、誰もが私は「99%以上」に入ると思ってしまうだろう。


「顕在化していないニーズ」とは一体、何なのだろうか?薬のプロモーションと同様に、検査の必要のない人達に検査が必要だと思わせるのだろうか。またしても、科学的根拠を可能な限り拡大解釈し、ビジネスチャンスを広げていくのだろうか。


命に関わることなのに、あまりにも軽いセールストーク。まさに営利企業の負の側面をみた気がする。


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診断結果は「正常」、生まれた子供は「ダウン症」で賠償金1000万円「出生前診断」で間違えた医者の責任をどう考えるか


「検査結果は異常なし」。医師からはそう告げられた。でも、生まれてきた我が子はダウン症を患い、3ヵ月でこの世を去った―出生前診断の告知ミスをめぐる国内初の訴訟で、ついに判決が下された。


 「私たちは息子が受けた苦しみに対して、ミスをした遠藤先生本人から謝ってもらいたいと思って訴えを起こしたんです。

 確かに、もし告知ミスがなければ、あの子は生まれてこなかったかもしれない。でも一度生まれてきた以上は、痛くて泣いている我が子に、何かしてやりたいというのが親として自然な気持ちではないでしょうか。


 ですから、賠償金が全額認められた一方で、『亡くなった子供に対して慰謝料を支払う義務はない』という判決が下ったのは残念です。たとえ私たちへの賠償金が減ったとしても、遠藤先生には一言、息子に対して謝ってほしかった」


 こう語るのは、北海道北斗市に住む太田紀子さん(仮名、44歳)だ。


 さる6月5日、太田さん夫妻を原告とする、出生前診断における「告知ミス」をめぐる訴訟で、函館地裁が判決を下した。国内初の判例となるその内容は、医師に計1000万円の賠償金を支払うように命じる厳しいものだった。


高齢出産が増えるとともに、急速に普及しつつある出生前診断。昨年春に始まった新型出生前検査では、お腹の胎児に先天的な異常があると知った妊婦のうち、9割以上が人工妊娠中絶を選んだというショッキングなデータも発表されている。


 新たな医療技術には、つねに医療ミスが付きまとう。そしてそれが妊娠・出産にかかわる場合、ときにきわめて重く、複雑な問題を引き起こすこともある。太田さん夫妻に降り掛かったのは、まさにそんな難題だった。



(中略)


倫理が追いつかない


 今回函館地裁が下した判決も、こうした感覚に沿った「亡くなった赤ちゃんに対する賠償は一切認めない」というものだった。しかし、太田さん夫妻は、冒頭でも紀子さんが述べているように「真意は別のところにある」と主張する。夫の隆弘さんがこう語る。


 「新聞報道を見て、『自分たちの息子の命を否定するなんて、薄情な親だ』と思う方もいらっしゃるでしょう。むしろ、診断ミスのおかげで子供に一目会えたならそれでいいじゃないか、と考える人もいるかもしれません。


 しかし、苦しみ抜いて亡くなった息子本人に、先生から謝罪してもらうには、息子にも何らかの損害があることにしない限り、訴えることさえできないんです」


 太田夫妻は当初、自分たちの訴えが先述の「ロングフル・ライフ訴訟」にあたるとはまったく知らなかったという。


 自分たち夫婦だけでなく、亡くなった息子に対しても頭を下げて欲しい―それを親心ととるか、それとも身勝手ととるかについては、意見が分かれるところだろう。


遠藤医師は、今回改めて取材を申し込んだ本誌に対し、「この件に関しては一切お話しできない」と沈黙を守っている。太田さん夫妻によれば、遠藤医師は赤ちゃんのダウン症が分かった直後は「私の責任です」「一緒に育てさせてくれ」と親身になって相談に乗っていたが、ある時点からパッタリ連絡がつかなくなり、裁判が始まってからは言葉を交わすことさえなくなったという。


 あるベテラン産婦人科医は、遠藤医師の立場をこう慮った。


 「こうした訴訟の当事者となると、医師会と患者さんの板挟みになり、難しい立場に置かれてしまうのが医者というものです。1000万円という賠償金額も、少し高いと感じます。


 私も、一日に何人もの妊婦を診て疲れているときに、同じような見落としやミスをするかもしれない。出生前診断を受ける人が今以上に増えれば、産婦人科医はこうした訴訟に常に悩まされるようになるでしょう」


 いくら技術が進んでも、ヒューマンエラーはなくならず、倫理は追いつかない。医療の発展は、本当に人を幸せにするのか―たった3ヵ月でこの世を去った赤ちゃんは、大きすぎる問いを遺して逝った。

 「週刊現代」2014年6月24日号より


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