2015/10/14

『新型出生前診断』の問題点について その12  川鰭市郎医師の「かわばたレター」前編

前回までは、『新型出生前診断』の問題点について、これからどのような議論になっていくのか、何が論点になるのか、「プロット」のつもりで組み立ててみた。さて実際には、どんな報道と議論が行われるのだろうか。




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ところで、前回紹介した独立行政法人国立病院機構長良医療センターの川鰭市郎先生の活動については、取材した伊藤隼也さんに何度かお話を伺っていた。


伊藤さんとは、2009年に行われた周産期医療に関するシンポジウムにご一緒して以来のお付き合いだ。伊藤さんは私に「長良医療センターの周産期は地道に良い活動をしていますよ。是非サイトをみてください」と言っていた。


でも私はなかなか、そんな気持ちになれなかった。


ある本のインタビューに超低出生体重児の育児について、実名でこたえたことがあった。その時に、周産期医療に関わる関係者にバッシングされことがあったからだ。中には「命を助けてやったのに、心中しようが虐待しようが、知ったことではない」という意見もあった。


出版社の対応も悪いけれど、それ以来、医療者を信じようという気持ちを失っていった。医師と患者が同じ方向を向き、医療をよりよい方向に変えるなど、やっぱり理想でしかないのかもしれない。


でも、今回、『新型出生前診断』の問題点についてまとめるために、川鰭先生について調べてみると・・・川鰭先生と、長良医療センターは、伊藤さんがいうように少し違うのかもしれない・・・。


意外なことに、川鰭先生は今ではNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」が取り上げるほど有名だけれど、全国放送ではじめて取り上げたのは、伊藤さんとフジテレビなのだそう。


「本当かな?」と思いながら、川鰭先生が10 年前からかいておられる「かわばたレター」をはじめから読んでみた。確かに、はじめに全国放送で報道したのはフジテレビのようだ。そして、あることに気づく。「川鰭市郎」で検索すると関連キーワードに「産婦人科医 不足」「産婦人科 訴訟」「産婦人科医 減少」などが並ぶ。


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ああ、そうか。私が大野病院事件の時に福島地裁に手紙を送ったのも、伊藤さんの放送や川鰭先生の活動と関係があったんだ・・・。


最期に「かわばたレター」を一部引用させていただきました。お人柄が滲み出る素晴らしい文章なので、公式サイトにアクセスしていただければ、と思います。


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●2006年04月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000182.html

今フジテレビの長期取材を受けています。朝の情報番組「とくダネ!」といえば知らない人はいないですよね。この番組から取材の依頼をいただき、今さらに取材が進行しています。順調にいけば5月頃に放送される予定です。今回は朝のとくダネで放送されるのではなく、金曜日の夜に2時間番組として他の病院の内容と一緒に放送される予定だそうです。正式に決まったらレターでお知らせしますので見てくださいね。


●2006年06月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000184.html

テレビ放送いかがでした? テレビ見たよ!連日こんなお電話やメールが届いてます。全国放送の力はすごいですね。放送日は病院にいましたが、放送中から電話が鳴り始めました。カッコ良すぎ、という指摘が多かったんですが、中には赤ちゃんの異常を告げられた妊婦さんやその後家族からの、深刻な相談も少なくありませんでした。


われわれが取り組んでいる母体胎児の医療というものが、まだまだ普及していないということをあらためて実感させられました。長良医療センターは、岐阜という小さな町の決して大きくはない病院です。でも、ここからいろいろな情報を発信することができるということを、知っていただけてよかったと思ってます。


いろいろな人たちから感想が寄せられました。感動した、胎児治療はすごい、などなどありましたが、一番多かったのはスーパーでの買い物がよかった、というものでした。あのスーパーから「おつとめ品」1年分くらいもらったら、というお勧めもありましたが、あの時間に行けば「おつとめ品」しかないんです。別に倹約してるわけじゃないんですが、バイクのシーンがよかったという話も聞こえてくると、どうも私はセレブなイメージとはほど遠いようですね。


テレビ放送のおかげで、いろいろな効果が現れてきています。胎児治療学会の入会申し込みが一気に増えました。外来にもテレビを見てきたという患者さんが増えてきています。この間は町を歩いていたら、知らない人から「長良医療センターの先生だ」といきなり言われてびっくりしました。


この病院に送られてくるということは、お母さんか赤ちゃんに問題があるということなのですから、あまりいいことではありません何事もなく出産できるのが本当はいいことなんですが、長良医療センターを知ることで少しでも受診する妊婦さんや家族のみなさんに安心していただければうれしいですね。


●2006年12月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000190.html

今年の5月にフジテレビ金曜エンターテインメントという番組で、長良医療センター産科のドキュメンタリーが放送されたのはご存知ですよね。おかげさまで大変好評だったのですが、12月15日夜9時から続編が放送されることが決まりました。私たちもどんな内容になっているのかわかりませんが、2回連続出演というのは異例のことだそうです。


でも私たちはカメラの有無とは関係なく、自分たちの目指す医療を実践するために毎日頑張っています。それを評価していただけたのならば、本当にありがたいことです。皆さんご存知の通り、産科周産期医療は危機的な状態にあります。そんな中で、自分たちの理念を正しくというか、実態以上かもしれないくらい評価してもらえるのは気恥ずかしくも誇らしい気持ちです。ま、難しい話はともかく、お時間のある方はぜひご覧になってください。

長良医療センター産科の外来や病棟には悲しみも喜びも感動も、いろんなものがいっぱい詰まってます。そのなかで私たちは毎日笑ったり、落ち込んだり、そして喜んだりしているんです。テレビをご覧になった方は、感想をお寄せください。お待ちしています。


●2007年07月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000173.html

去年の「最強ドクター」シリーズの放送の後、多くの方からお手紙をいただきました。ほとんどが赤ちゃんを亡くされたお母さんや、大変なお産を経験した方からでしたが、その中に高校生の息子さんがいる方からのお手紙がありました。


息子さんは血管の病気から脳に出血をおこしてしまい、リハビリ中と書いてありました。お返事をお送りしたのですが、とても気になっていました。6月の終わりにたまたまその方の住んでいらっしゃるところで学会があったので、思い切ってお電話をかけてお目にかかってきました。


息子さんは私よりも背の高い笑顔がすてきな高校生でした。まだ左手に麻痺があるということでしたが、驚異的な回復力です。若さでしょうね。思い切り遊びたい盛りに突然の病気、自暴自棄になってもおかしくないのに「あんまり大変だと思ってないんですよね」と笑顔。私も負けてはいられませんね。彼の心の強さに脱帽です。そんな息子さんを育てたお母さんの大きさにも圧倒されました。励ますつもりだったのですが、反対に力をもらった気分です。


長良医療センターは困った妊婦さんのための病院です。悲しみと喜びの涙が錯綜しています。嬉しい涙はいいのですが、悲しい涙には心が痛みます。赤ちゃんの異常、受け入れることは難しいことでしょう。でも残念ながら人が人を産み出すときには、一定の確率で生存できない赤ちゃんが産まれてしまうのです。胎児は常に守られているというのは幻想に過ぎません。


私達はそんな胎児が少しでも多く助かることを願って、毎日の診療にあたっています。限られた力です。でもこんなことくらいならば、神様も許してくれるんじゃないかな、そう思って胎児の治療を続けています。産科医師不足が毎日のように活字になっていますが、私達の仲間が増えることを祈っています。



フジテレビの「とくダネ!」にしばしば登場する医療ジャーナリスト伊藤隼也さんをご存知ですよね。今月14日の夕方、伊藤さんを岐阜にお招きして講演をしていただきます。患者さんの目線で医療をとらえたお話をしてくださることになっています。私達医療従事者は考えているつもりでも、患者さんの目線が分からなくなってしまうことがあります。反対に私達の意図が理解できなくて嫌な思いをされている患者さんもいらっしゃると思います。


こういった狭間を埋める機会にしたいと思って、講演をお願いしました。詳細はこのホームページの研究会の案内に掲載してあります。お近くの方はお越し下さい。



●2007年08月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000174.html

テレビでおなじみの伊藤隼也さんの講演はとても素晴らしいものでした。ちょうど台風の通過と重なってしまい、思ったほど集まってもらえなかったことがとても残念でした。嵐を呼ぶ男が本当に嵐を連れてきてしまったとおっしゃってましたが、帰りは新幹線が止まってしまい、車内に長く閉じ込められたそうです。


患者さんの目線でいい医療を考えるということは、常日頃から心がけているつもりなんですが、はっとするお話が随所にありました。参加してくださった開業の先生方からは、医師会でもう一度講演してもらいたいという声も出ていました。お忙しい方ですからなかなかスケジュールがとれないのですが、もしもどこかでお話を聞く機会がある方は、是非足を運んでください。



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『新型出生前診断』の問題点について その12 川鰭市郎医師の「かわばたレター」後編 に続く


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