2015/10/14

『新型出生前診断』の問題点について その12 川鰭市郎医師の「かわばたレター」後編

『新型出生前診断』の問題点について その12 川鰭市郎医師の「かわばたレター」前編 の続き




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●2008年09月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000163.html

8月20日、福島県立大野町病院で産婦人科医が逮捕された事件の判決が下されました。無罪」、仲間が有罪にならなかったことにほっとしましたが、正直すっきりしたとは思えませんでした。やはり患者さんが亡くなっているという事実は重いです。前にも書きましたが、私たち医療者が患者さんと対峙してはいけないんです。


医療者は患者さんと同じ方向を向いて、よりよい医療を目指して行政と対峙していかなければならないはずです。この事件は大きな反響を巻き起こしましたが、これをきっかけに私たちも考えていかないといけないですね。さらにいい医療を実践するために。



●2012年12月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000118.html

私にとって今年はいろんな意味で感慨深い年でした。大きな病気もしましたし、普段は医療者として働いている病院に患者として入院したのが一番心に残りました。大勢の皆さんに心配をかけてしまったんですが、おかげさまで今では元気に日本中を飛び回ってます。体調だっていいんですよ。治療のおかげで一旦は髪の毛がなくなってしまって、産まれてはじめてのスキンヘッドを経験しました。


髪がなくなったときにみんなに言われてびっくりしたんですが、頭の形がほんとうにきれいなんです。今はすっかり髪の毛も戻ってきてますからね、これからどんなヘアスタイルにするか、ゆっくりと考えてみようと思ってます。何かいいアイデアがあったら教えてくださいね。


岩元綾さんという方を知ってますか。鹿児島にお住まいの方なんですが、来年岐阜で講演をお願いしたところ快諾してくださいました。岩元さんは染色体異常をお持ちです。21番目の染色体が3本ある、いわゆるダウン症と診断されてるんです。国立鹿児島大学を卒業されて、今は翻訳のお仕事をされてます。ダウン症は知能の発達が遅れると私たちは認識してました。皆さんもそうですよね。でもこんなに素晴らしい方がいらっしゃったんです。


以前から岩元さんの存在は知っていましたが、少し特殊な染色体異常だと聞いてたんです。でも今回ご縁ができて聞いてみると、まったく普通のダウン症なんだそうです。ダウン症に限らず、生まれながらの問題を私たちはどこまで理解できてるんでしょう。確かに、私たちとは少し違う部分があるんだと思います。そういう人たちを私たちは隔離してしまって、本当の姿を知る機会がなかったんじゃないでしょうか。


最近はダウン症の子どもたちも普通学級で学ぶことが増えてきてます。岩元さんのご両親は染色体の問題を抱える娘にあわせた教育を実践されました。その結果が国立大学に合格し、立派に卒業できるまでになったんです。染色体に問題がなくても進学できない人もいますよね。すべてのダウン症の人が大学に進学できるわけではないかもしれませんが、少なくとも私たちの考えている様子とは違ったものになるのかもしれません。


個々の状況に合わせた教育が、その制度が整えば今までの常識が大きく覆るのかもしれませんね。まだ日程は決まってませんが、決まり次第かわばたレターでもお知らせしますよ。ただまったく個人的に企画してますので、スポンサーは今のところありませんから有料になると思います。お近くの方はぜひ参加してください。


●2013年03月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000105.html

3月30日に長良川国際会議場で講演会を開きます。私の講演じゃないですよ。岩元綾さんとお父さん、岩元明雄さんの講演会です。綾さんはダウン症なんです。でも鹿児島女子大学を卒業して、たくさんの本を出版したり講演活動をしたりされてる方なんです。岐阜での講演をお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。ダウン症は知能の発達が遅れている、ってみなさんそう思ってますよね。小児科の教科書にもそう書いてあります。


じゃあ、どうして綾さんはこんなに才能を発揮できたんでしょう。もちろん綾さんが努力されたことは間違いないですよね。綾さんの能力を引き出し、のばすことができる環境があったんじゃないでしょうか。今回の講演では綾さんのお話だけじゃなくて、お父さんから綾さんの教育についてもお話をしていただくことになってます。入場は無料です。お近くの方はぜひ参加してください。綾さん自身のホームページもあります。岩元綾で検索してみてください。すぐ見つかりますよ。


●2013年04月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000106.html

3月30日に講演会を開くことはお知らせしましたね。満開の桜に迎えられた岩元綾さんとお父様の昭雄さんの講演会。会場の定員は80名だったんですが、とうてい足りそうもないんです。長良医療センターのみんなが協力して補助いすを大量に運んでくれました。会場で配る資料も、当初は150部用意したんですが、後から50部追加しました。実際会場は立ち見まで出る盛況で、正確な数は分からなくなってしまったんですが、定員の2倍以上の方が参加してくださいました。


お父様、昭雄さんのお話から始まりましたが、参加された皆さんは一言たりとも聞き漏らすまいと、じっと聞き入ります。ひらがなよりも漢字をしっかり教えること、話す、読む、書くことの継続が大切と熱のこもったお話をいただきました。そして綾さんが登壇します。ちょっと風邪気味とおっしゃってましたが、綾さんが国際会議で行った英語のスピーチを交えながら、英語での絵本の朗読も含めて約1時間にわたってお話ししてくださったんです。会場にはさわやかな感動が広がっていきます。


東京から駆けつけてくださった医療ジャーナリスト伊藤隼也さんも加わって、質疑応答を行いました。最後に綾さんにメッセージを皆さんに、とお願いしたところ「岐阜は私の第二のふるさとになりました。桜がとてもきれいでした。皆様の幸せの形が桜色になることをお祈りします」万来の拍手で講演会が終わりました。


私たちはダウン症にどんな能力が備わっているのか本当に知っているんでしょうか。岩元綾さんは本当に稀な成功例なんでしょうか。さまざまな医療や教育のあり方が変わることで、ダウン症の皆さんの環境は大きく変わるのかもしれない、綾さんのような方がもっと増えてくるのかもしれない、心の底からそんな気持ちになりました。


●2013年05月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000232.html

風疹と同じくらい話題になっているのが新型出生前診断ですね。母体から採血するだけで、赤ちゃんの染色体異常がわかるということなんですけど。この検査、ちょっと誤解されてるんじゃないかと心配してます。今の段階では、3つの染色体異常だけが診断の対象なんです。長良医療センターで産まれて、すぐに治療が必要な赤ちゃんはたくさんいますが、その中で染色体に異常がある赤ちゃんはほんの一握りだけなんです。つまり、この検査を受ければ赤ちゃんにはなんの問題もないよ、大丈夫だよという検査じゃないんです。


誤解しないでくださいね。医学が進歩するのは素晴らしいことです。でもダウン症は産まれてこない方が本当にいいんでしょうか。3月に講演してもらった岩元綾さんのお話を一度聞いてみてほしいです。みんなでいっしょに考えてみたいですね。



●2015年7月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt1_000038.html

6月の終わり頃、突然お手紙がとどきました。発育が遅れていて、しかも早産してしまった赤ちゃんのお母さんからでした。赤ちゃんはダウン症だったんです。なかなか事実を受け入れることができないお母さんからのお手紙だったんです。この赤ちゃん、週数よりもかなり小さくて、よく生きていてくれたと感心しました。これって、お母さんの力ですよね。胎盤が頼りなくて苦しかった赤ちゃんは、お母さんの力で無事産まれてきたんです。


すぐに返信を送りました。こんな大変な状況の赤ちゃんを守ったことに胸を張ってください。自信を持ってください。そんな手紙をお返ししました。
 


ダウン症といえば、私達とは仲良しの岩元綾さんを思い出しますね。ダウン症ながら大学を卒業して英語の翻訳までされてます。岐阜にお招きして講演もしてもらいました。綾さんがこんなに才能豊かに育ったのは、ご両親や周囲のしっかりしたサポートがあったからでしょう。言い換えればまわりがしっかりと見守れば、ダウン症の子どもたちは綾さんのように育つことができるんです。あきらめないで上を向いて、上を目指して育ててあげて欲しい、そんな思いを込めて返信しました。


このお母さんはNHKのプロフェッショナルを視たんだそうです。意味のない命はない、という私の言葉を思い出してお手紙を下さいました。そうなんです、意味のない命はないんです。命の意味をなくしてしまうのは、命を取り巻く大人達なんです。子どもはみんなで守らないと!


続く

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