2015/10/15

『新型出生前診断』の問題点について その13  私が『周産期医療の崩壊をくい止める会』から離れた理由

私が『周産期医療の崩壊をくい止める会』から離れたのは、不妊治療に対する考え方の違いも大きかった。


『周産期医療の崩壊をくい止める会』は、大野病院事件で逮捕起訴された産科医の裁判を支援してきた会で、ある研究室に事務局が置かれていた。研究室を主催しておられる研究者は周産期医療に関わる医師ではなく、高度医療を普及させるために、メディアをはじめ、社会にどう働きかけたらいいのかを研究しておられた。つまり、『周産期』と名前がついているけれど、もともとは周産期医療の関係者がつくった団体ではなかった。


そうしたバックグラウンドを知らずに私は会の活動に参加した。だから、ある時から次第に心の距離を感じるようになっていった。例えば、不妊治療に対する考え方は私とはちょっと違う。こんな感じだった。


不妊治療は基本的に自由診療だから、患者さんの希望に沿って治療が行われる。そのため、優秀な医師をはじめ、スタッフも集まり、収益が研究に投資できる。医療崩壊が著しい我が国で、ドル箱の医療であるーーーー



確かに我が国の不妊治療のレベルは高い。


しかしそれは一面でしかない。日本はレベルは高いけれど、治療を行うクリニックは乱立しており、泣いている女性も多い。少なくとも私のまわりで長い治療の末出産できた人、治療を行う医師も含め、「素晴らしい医療」と手放しに評価する人はほとんどいない。


そのような現状があるのに、医療が崩壊しているからといって、「収益」が上がれば、それでいいのだろうか。産まれてくる子供の知る権利が後回しにされているなど、足りないものもたくさんある。


私は次第に会の活動のあり方に疑問を感じるようになった。


川鰭市郎先生活動に心を動かされたのは、救われた命だけなく、救われなかった命に対する思いやりを感じるからだ。そして、新型出生前診断が導入されてから、「ダウン症についてもっと深く知ろうよ」と、医療者に働きかけてきたことは素晴らしいと思う。



独立行政法人 国立病院機構 長良医療センター

●2013年04月のレター
https://www.hosp.go.jp/~ngr/cnt0_000106.html


3月30日に講演会を開くことはお知らせしましたね。満開の桜に迎えられた岩元綾さんとお父様の昭雄さんの講演会。会場の定員は80名だったんですが、とうてい足りそうもないんです。長良医療センターのみんなが協力して補助いすを大量に運んでくれました。会場で配る資料も、当初は150部用意したんですが、後から50部追加しました。実際会場は立ち見まで出る盛況で、正確な数は分からなくなってしまったんですが、定員の2倍以上の方が参加してくださいました。


お父様、昭雄さんのお話から始まりましたが、参加された皆さんは一言たりとも聞き漏らすまいと、じっと聞き入ります。ひらがなよりも漢字をしっかり教えること、話す、読む、書くことの継続が大切と熱のこもったお話をいただきました。そして綾さんが登壇します。ちょっと風邪気味とおっしゃってましたが、綾さんが国際会議で行った英語のスピーチを交えながら、英語での絵本の朗読も含めて約1時間にわたってお話ししてくださったんです。会場にはさわやかな感動が広がっていきます。


東京から駆けつけてくださった医療ジャーナリスト伊藤隼也さんも加わって、質疑応答を行いました。最後に綾さんにメッセージを皆さんに、とお願いしたところ「岐阜は私の第二のふるさとになりました。桜がとてもきれいでした。皆様の幸せの形が桜色になることをお祈りします」万来の拍手で講演会が終わりました。


私たちはダウン症にどんな能力が備わっているのか本当に知っているんでしょうか。岩元綾さんは本当に稀な成功例なんでしょうか。さまざまな医療や教育のあり方が変わることで、ダウン症の皆さんの環境は大きく変わるのかもしれない、綾さんのような方がもっと増えてくるのかもしれない、心の底からそんな気持ちになりました。



川鰭先生の「かわばたレター」を拝見すると、講演会には伊藤隼也さんが参加したことがわかる。


もしかしたら先生は、伊藤隼也さんが2012年11月に、週刊文春で発表した『新型出生前診断』の特集を読んで、心を痛めたお一人なのだろうか。実は私も伊藤さんの記事を読んで、驚いた一人だったからよく覚えている。川鰭先生が講演会をお願いしたという、岩元綾さんのことを、この特集ではじめて知ったからだ。ダウン症のお子さんを育てている友だちに『新型出生前診断』をどう思うかたずねたほどだ。


この特集には、後編もあり、不妊治療のダークな部分にもきちんと触れている。今、改めて読むと興味深い。『新型出生前診断』がどのような経緯で導入されたか、時間がたった今だからこそ、みえてくることもあるからだ。


伊藤さんにお願いして、この記事を全文引用させていただくことにした。


次回から掲載していきます。今回もまた、快諾してくださった医療ジャーナリストの伊藤隼也さんと、記事を掲載してくださった週刊文春の皆様にお礼を申し上げます。


『新型出生前診断』の問題点について その14 週刊文春「あぶない高齢出産」①


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