2015/10/16

『新型出生前診断』の問題点について その14 週刊文春「あぶない高齢出産」①

(※ これは2012年11月15日に発売された「週刊文春」に掲載された特集記事です。著者の伊藤隼也さんに許可をいただき引用させていただきました)


「あぶない高齢出産」 中国系企業が参入 格安「出生前診断」に気をつけろ!週刊文春 医療ジャーナリスト 伊藤隼也+本誌取材班


<妊婦血液でダウン症診断国内5施設 精度99%、来月にも>(読売新聞・8月29日付朝刊>


悪い意味で、この記事のインパクトは大きかった。妊婦の血液にわずかに含まれる胎児のDNAを調べることで、ダウン症が99%以上の精度でわかり、他にも重い障害を伴う別の2種類の染色体の異常がわかる。この米国シーケノム社の技術を昭和大や慈恵医大などが導入する。これにより、妊婦の腹部に針を刺して羊水を採取する羊水検査に比べ、格段に安全にわかるーーー。


この記事を嚆矢(こうし)として、メディアはこぞって出生前診断の話題を取り上げ、各病院には「新型診断を受けたい」という妊婦からの問い合わせが殺到した。


高齢出産が増加し、メディアが芸能人の高齢出産を過剰に礼賛するなかで、やはり今回の新型診断は、技術的な安全性ばかりがクローズアップされた恰好だ。


しかし、この新型診断は、とてつもなく大きな問題をはらんでいるのである。ご存じだろうか。現在の日本で、羊水検査などの出生診断において胎児のダウン症が判明した人の約9割が中絶という選択をしている、という現実を。


現在は羊水検査の実施率は低く、前妊婦の1%程度に留まって。だが、35歳以上の高齢出産の増加と共に、出生前診断の件数は増加しており、中絶件数もそれに伴って増加しているのだ。


だが、大前提として、出生前診断の本格的な目的は、胎児の異常を事前に診断し、早期の治療や教育に役立てようというものである。


出生前診断の一つであり超音波診断の専門家で、胎児医学研究所の医師篠塚憲男氏が話す。「例えば超音波診断で、心臓の疾患が発見された場合、出産後の手術で治療できる可能性などを説明した上で、適切な施設や医師を紹介するなどして、診断後の道筋をつけてあげます」ハイリスク出産が増えている現状で、命を賭けても出産すると決意した妊婦たちを支え、あくまでも正しい〝出口″を見つけるために出生前診断はある。


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(※ 篠塚憲男医師のインタビューを見つけたので紹介します。超音波検査について知らないことばかりで驚きました。患者と専門家との知識や意識の差にかなり隔たりがあるように思います。興味がある方は是非「プレママタウン」へ)


日本では胎児条項の規定がなく法律的に曖昧なまま今日まできています。超音波検査を胎児スクリーニングとして広く行うかは別として、NTや妊娠初期の血清マーカー等に関しては、日本における基準値などを設定しておくことは医学的に必要だと考えています。

しかし、この問題は、医学界だけで解決できる問題ではありません。もちろん、直面した妊婦さんだけが考えればいいという問題でもありません。政治、経済、宗教、哲学……といった問題にまで行き当たってしまうテーマです。日本人のひとりひとりが、どういう社会を望むのかを考えていき、それを共通のコンセンサスとしていく、その努力が必要だと思っています。



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さらに「新型診断」は報じられているような〝万能の診断″ではないという。


医療関係者が説明する。「『99%』というのは誤った数字です。検査の技術面から考えて確定診断にはなり得ない。しかし、インパクトが大きかったために、数字が一人歩きしてしまった」


だが、新型診断の導入に向け、一部の医療関係者は性急な動きを見せている。例えば、国立医療研究センターでは、検査導入を議論する院内の倫理委員会で、3回目にしてようやく反対意見をねじ伏せ、10月9 日に計画を通過させた。今後、実験的に検査を行う臨床試験を予定している。


そもそも日本の医療界は、生命倫理的にも非常にデリケートな、この新型診断の導入について、それこそ恐る恐る、亀の歩みで検討を始めたばかりだった。


シーケノム社が開発した、この新型診断が注目を集めたのは、今春、マイアミで開かれた国際出生前診断学会だった。同社はこれまでに約1 万件の検査を行っている。検査費用は1件につき、日本円で約21万円。学会での発表などを受けて、この新技術について日本医療界でも日本人の母体血を使って臨床試験をはじめるべきでないか、という議論がスタートしたばかりだったのだ。


ではここに来ての慌ただしい展開は何なのか。


『新型出生前診断』の問題点について その14 週刊文春「あぶない高齢出産」②

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