2015/10/17

『新型出生前診断』の問題点について その14 週刊文春「あぶない高齢出産」②

(※ これは2012年11月15日に発売された「週刊文春」に掲載された特集記事です。著者の伊藤隼也さんに許可をいただき引用させていただきました)


『新型出生前診断』の問題点について その14 週刊文春「あぶない高齢出産」①の続き


●4万円検査で日本進出を画策


全く知られていないことだが、そこには価格破壊とも言える費用で、同様の検査を提供しようという中国系検査会社の日本進出があるのだ。そして今回の取材で、その背景には、「ダウン症の治療費をとにかく削減したい」という中国の乱暴ともいえる国家的戦略があることが判明した。


問題の企業は、中国・深圳を拠点とする「BGI」社(正式名称・深圳華大基因研究院)。ゲノム解析を行う中国最大手検査会社である「科学院」のゲノム関連プロジェクトをほぼ一手に引き受けており、内実は、ほぼ国営企業だと考えていい。


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※ 文春の記事にある、中国の検査会社「BGI」が日本法人を神戸に開設したのは2010年で、2011年11月に営業を開始したそうです。BioGARAGEの記事には、ちょうどこの頃、日本国内のバイオビジネス、ベンチャーにどのような動きがあったのかが記載されています。また、ジーンテック社の衛生研究所「GeneTechかずさラボラトリー」が「かずさDNA研究所」に設立されましたが、この研究所が、どのようなサービスを提供しているかについても記載されています。



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じつは8月初旬、同社の日本支社であるBGIジャパンが、日本産科婦人科学会(日産婦学会)に、秘密裏に接触している。


内情を知る別の医療関係者が真実を明かす。


「BGIの話は、新型診断の一種であるダウン症の有無だけを調べる遺伝子検査を、わずか4 万円で提供するというものでした。さらに『無料でお試し検査』を実施してもいい、という提案もあった。要するに日本の進出プランを持ちかけてきたのです。ただ、日本で検査を行うには準備不足であり、拙速だと日産婦学会側は注意をしたのです」


BGIの薦める遺伝子検査は、シーケノム社の新型診断とは決定的に違う。BGIの検査は、21番目の染色体のみを対象とする。つまり、その胎児がダウン症かどうかだけを判定するのだ。これが圧倒的な安価の理由である。BGIはこの格安検査を、すでに世界中で約23万件も行っており、昨年9月には、神戸市に日本支社を設立した。同社が日本進出を目論んでいることは明白だ。


●DNA情報が中国に流出


日産婦学会は、このBGIからの接触の事実を明らかにしていないが、実際には向こうに突き動かされる形で事態は急展開した。


「BGIに対応したのは、日産婦学会の出生前診断に関するワーキンググループのトップである横浜市立大学の平原史樹教授です。彼は1度は申し出を拒否したにもかかわらず、一方では『中国が入ってくるから、早く検査を導入するべきだ』と、シーケノム社と検査の導入に向けて進んでいた研究者と共に、臨床試験開始への動きへ加速したと言われている。いわば、中国進出の情報に踊らされたのです」(同前)


それをスッパ抜いたのが冒頭の記事だったのだ。


じつは13億人もの人口を抱える中国国内では、ダウン症の治療費が毎年20億元(約250億円)を越えている。それが国家財政を圧迫させていると、中国は国家戦略として新型診断を積極的に導入し、ダウン症の子供が増えないよう、「命のスクリーニング」を実施しているのだ。およそ日本人の生命倫理とは相容れない、恐ろしい合理思想である。


命を軽視するこの隣国の遺伝子ビジネスが、まさに今、野放図に日本に輸入されようとしているのである。


前出の篠塚氏は強く警鐘を鳴らす。


「実のところ、BGIが日本の医療機関と直接契約を結ぶとなれば、それを規制する術はありません。新型診断は薬事法の管轄外であり、取り締まることは出来ません。保険診療にはなりませんが、医師の裁量でいくらでもできる。いわば、やり放題です。


加えて、DNAは究極の個人情報でもあります。検体である母体血のデータは、当然、中国本土に持ち帰られる。日本人のDNA情報がどんどん流出することになるのです。正直、あの国で、それが何に使われるかは分からない。本当ならば、この検査は日本の検査会社が、国の認可のもとで行うべきなのです」


『新型出生前診断』の問題点について その14 週刊文春「あぶない高齢出産」③




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