2015/10/22

『新型出生前診断』の問題点について その15 「あぶない高齢出産」後編 ②

(※ これは2012年11月22日に発売された「週刊文春」に掲載された特集記事です。著者の伊藤隼也さんに許可をいただき引用させていただきました)


『新型出生前診断』の問題点について その15 週刊文春「あぶない高齢出産」後編 ① の続き


出生補助医療施設として国内トップの水準にある広島HARTクリニックの向田哲規院長はこう断言する。「地球上に人間が産まれてから、ここまで遅く出産が行われた時代はありません。女性の平均寿命が86歳になったからといって、整理が60歳まであって、50歳でどんどん出産できるようになったというわけではないのです。生殖適齢期は延びない。今も昔も50代になれば閉経するし、排卵は終わるのです」


※    ※    ※


2015-10-22-1.gif



※    ※    ※



そもそも、妊娠の適齢期は25~29歳といわれて、WHO(世界保健機関)でも「卵子の老化」は27 歳頃を境に始まるとされているが、こうした基礎知識が全くと言っていいほど行き届いていない。不妊に悩む人たちの、 “駆け込み寺”となっている「Fine」の松本亜樹子理事長は話す。


※    ※    ※


2015-10-22-3.gif


〜不妊はあなた一人の悩みではありません。みんながつながれば、何かが変わる〜


※    ※    ※



「私は講演会などで話す時、よくクイズを出します。『女性の生殖年齢のピークは何歳でしょう?』と。すると、みなさん大体『35歳』だと答えるんですね。人によっては『45歳』という人もいるほどです。


特に、いま40歳以上の方々は学生の時に、『セックスしたら妊娠する』とは教えられていても、年を取ったら妊娠しづらくなることは教えられていない。それを後から知って『もっと若い時に産んでおけば良かった』と後悔する人が本当に多いのが現状なのです」


松本氏自身がそうだったという。彼女も望んだ結果を迎えてはいない。


「私自身、20代の頃はバリバリ働いていたから、結婚も30歳と少し遅かった。もし早く子どもを産んだほうがいいということを知っていれば、人生設計も変わっていたと思います。本当に子供が欲しかった。『2歳違いで3 人産んで、女、男、女の順番で、バレエを習わせて』なんてことを計画していましたけど、うまくいかなかった」


不妊だけではない。高齢になるにつれて、妊娠・出産に伴うリスクはがぜん高くなる。44頁の表を見れば一目瞭然である。


2015-10-22-2.gif



まず、40 歳以上では自然分娩が半分になり、帝王切開のが倍以上になる。さらに母体死亡の確率は29 歳以下を1とした場合、16倍にもなるのである。


日本医科大学多摩永山病院の中井章人医師が説明する。「人口動態統計の数字では、10万人あたりの母体死亡の人数は平均で4.4人(04年)。ところが、40~45歳26.6人。45歳以上となれば、200.4人と激増するのです」


じつは多くの妊婦が亡くなっているのである。母体だけはない。新生児リスクでは、子宮内胎児発育遅延(SGA)の割合はほぼ倍。また、新生児の死亡数も1.3倍に、心臓に奇形が出る心奇形は4倍、染色体異常は10倍となる。



高齢出産のリスクは漠然と理解されているが、こういったデータを正確に把握している人は少ない。多くの女性から不妊の相談を受けている前出の松本氏でさえ、これらのデータを見て絶句する。「数字で見るとぞっとします。女性たちがもういう怖いデータからはつい目を背けてしまう。赤ちゃんの可愛い写真や他人の成功体験など、理想ばかりをイメージしてしまいがちです。


ただ、高齢出産を命がけでやりたいという妊婦は応援したいし守りたい。でも現実には、高齢出産のリスクには、高齢出産のリスクに詳しく対応可能な施設は多くはないと聞きます。我々のところに来る妊婦も、たとえば有名人の高齢出産のニュースに接すると『よかったね』という話になる。その裏に隠れているリスクの詳細については、報じられていないので話題にも上がりません」


そして、前述したように日本は〝世界一の不妊治療大国″である一方、その結果である出生率は、〝先進国最低のレベル″なのである。



どうしてこのような現象が起きるのか。


続く

コメント

非公開コメント