2015/12/25

下町ロケット『コアハート』と『エバハート事件』 その1


(※明日から冬休みになるため、しばらくお休みさせていただきます)


●東京女子医大で起きた『エバハート事件』がモデル?


私が下町ロケットに出てくる医療ジャーナリストが、伊藤隼也さんに似ていると思った理由はもう一つある。『コアハート』の治験患者が死亡するというストーリーが、実際に起きた『エバハート事件』に似ていると思ったからだ。


『エバハート事件』に関してはこちらの谷直樹弁護士のブログに詳しく書かれている。2008(平成20)年に大阪の国立循環器病研究センターと、東京の東京女子医大病院で治験中に患者さんが死亡した事故だ。


同時期に起きた二つの事故は、週刊誌などで大きく取り上げられたが、正反対の経過をたどることになる。国立循環器病研究センターはマスコミ報道の後、抗議文を出したが、谷弁護士のブログに書かれているように、調査委員会を立ち上げ報告書も公表した。そのためご遺族は、短期間で報告書をまとめた調査委員会の努力に敬意を表されたそうだ。


ところが東京女子医大は、下町ロケットの出てきた、貴船恒広教授とアジア医科大の対応にそっくり。その後裁判となり、遺族側が勝訴している。


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弁護士谷直樹/医療専門の法律事務所のブログ
medicallaw.exblog.jp


国産の埋め込み型補助人工心臓,その光と影(3)~国循のエバハート治験事故


◆ 国循での臨床試験中の事故

国立循環器病センターで平成19年春,補助人工心臓「エバハート」(EVAHEART)を臨床試験で装着した男性(当時18歳)が心肺停止し脳に重大なダメージを受け,意識不明のまま平成20年春に死亡しました.




国産の埋め込み型補助人工心臓,その光と影(4)~東京女子医大のエバハート治験事故


◆ 東京女子医大病院でのエバハート治験中の事故

平成19年3月,心筋梗塞により東京女子医大病院に入院した女性が,補助人工心臓エバハート(EVAHEART)の埋め込み手術を治験で受けました.

平成20年7月,補助人工心臓エバハートが接触する部分で,圧迫による胃穿孔を起こしていることがわかり,被験者は縫合手術を受けました.
同年8月,被験者は,脳内出血を発症し,同年10月に死亡しました.

(中略)

◆ 感想

同じように治験中におきた事故で,国循では調査委員会が設けられ報告書が公表されました.東京女子医大は,調査を拒み,訴訟となっています.
院内調査の必要性は,日医の基本的提言も指摘するところです.
国循は誠実に対応しましたが,東京女子医大の対応はいかがなものでしょうか?

治験は,薬事法に従い,厚生労働大臣の承認を受けるために実施する臨床試験です.医療機器の臨床試験に関しての基準は,医療機器の臨床試験の実施の基準に関する省令が定めています.

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●週刊ポストのスクープ記事のモデルは、12月17日発刊の週刊文春(12月25日号)『国立病院のおぞましい人体実験』か


当時の混乱の様子は、こちらの「産科医療のこれから」というブログに残されている。このブログには、週刊文春のスクープ記事も全文掲載されているばかりでなく、エバハートを開発したサンメディカル社の抗議文、そして記事を書いた文春の記者さんのコメントまである。医療関係者からの報道への反発がどれだけ激しかったかがわかる。


産科医療のこれから 補助人工心臓に関する記事について 週刊文春への抗議/国循 2009年1月


●スクープ記事を書いたのは、伊藤隼也さん?


2008年から2009年頃といえば、福島県立大野病院事件が注目を集めた頃だ。今とは比べものにならないほど医療報道への批判が多かった。医療を崩壊させた元凶だと世間にバッシングされていた。だから記者さんもたまらず書き込みをしたのだろうか?


しかし調べてみたけれど、伊藤さんが書いたという証拠はどこにもない。伊藤さんの公式サイトの活動記録にも残されていない。


●フジテレビの報道番組「サキヨミ」の特集


私が伊藤さんかもしれないと思う理由は、この事故を詳しく報道したのが、フジテレビの「サキヨミ」(2009年9月20日(日)放送終了)という報道番組だったからだ。私は医療報道に関心があるので今でも録画して保存してある。しかし「サキヨミ」の特集にも伊藤さんが取材した、という記録は残っていない。


「サキヨミ」の特集の内容はこちらのブログが詳しい。


エバハート治験中の死亡に関する記事 2008/12/23 クラリネット記別荘


私は番組の中で公開されたご遺族のお母様が代筆されたという、同意書に添えられた「手術前の説明とは違います。生命維持をするためには、治験に参加するほかないでしょうか?」という文書に心を奪われた。病院の対応に、お母様は長い間、不信を抱いていたのだろう。メディアに情報提供するほど追い詰められていったのだと思ったからだ。国立循環器病研究センターは、ただの大病院ではない。国を代表するような医療機関が、治験の同意書に、こんな言葉を書かせたらいけないと思った。


●メディアは実施計画書(プロトコル)をどうやって手にいれたのか?


ところで、全く証拠がないのに、私がスクープをしたのが伊藤さんだと思うのは、裁判の争点だ。判決内容について詳しく書いてある記事がある。サキヨミや文春はあれだけバッシングされたけれど『体表面積の数値を「1・41」と書き換えた』事実はあったのだ。


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東京女子医大「エバハート事件」が指し示す治験の現状 集中 2014年4月 9日


臨床試験をめぐる不正が世情を騒がせている。去る2月20日、一つの判決が下された。


治験で被験者女性が死亡


 東京女子医科大学「エバハート」事件。同大付属病院で2007年3月に行われた埋め込み型補助人工心臓・エバハートの治験で当時41歳の女性が埋め込み手術を受けた。その後、患者は脳出血を発症。08年10月に死亡している。
 遺族は大学側に約3100万円の損害賠償を求め、訴訟を起こす。


 エバハートは小柄な患者に埋め込むと周辺の臓器を圧迫して合併症を起こす恐れがある。治験の実施計画書(プロトコル)では体表面積が1・4平方㍍未満の患者は「参加できない」と「除外基準」を規定していた。だが、女性の手術前日の体表面積は1・38平方㍍。東京女子医大心臓血管外科の齋藤聡講師がカルテに記載する手術前の体表面積の数値を「1・41」と書き換えた事実が判明した。


 東京地方裁判所は約860万円の支払いを大学側に命じた。減額されたのは重症の心臓病でいかなる治療を行っても予後は不良と思われたためだ。菅野雅之裁判長は「本来は治験に参加できない患者なのに手術の結果、死亡した」と認めている。


 判決は「治験は人体への安全性が確認されておらず、計画はより厳格に解釈するべきだ」とし、手術は計画違反だと指摘。死因の脳内出血は埋め込み手術によるものと結論付けた。大学側は「実施計画では、入院時のデータの使用も認められている」とし、女性の入院時(06年5月)の体表面積は基準を上回っていたと主張していた。

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●私の心を変えた、同意書の言葉


私の友人は治験の専門家だ。彼が関わってきた治験が成功した時に、写真を見せてくれたことがある。写真には、机の上に並べられた膨大な数のファイルが映っていた。スタッフ全員で記念にとったそうだ。


並べられた書類一枚一枚が、患者さんの命を守っているのだと思った。治験というものは決められた手順に従い、一つ一つ地道に結果を出してゴールを目指すものなんだろう。


裁判の争点は、実施計画書(プロトコル)に書かれた内容だ。


おかしいと思った。実施計画書(プロトコル)がそんなに簡単に手に入るはずがない。仮に手に入れたとしても知識がないと読み解くのは難しい。家電のマニュアルだってあんなに分厚いのだ。実施計画書(プロトコル)は、きっと膨大な書類の束なのだろう。


下町ロケットに出てきたように、恐らく病院内部に情報提供した人がいるに違いない。情報を渡した人だって、報道関係者なら、誰でもいいはずがない。万が一、特定されたら大変だ。


取材源を明らかにするわけにいかないから、誰のスクープかを伏せているんじゃないの?


医療ジャーナリストが、医療事故で肉親を亡くしたという設定もよく似ている。モデルはきっと伊藤さんだと思う。


さて私の推理はどこまで当たっているんだろう?


これだけ下町ロケットがヒットしたんだから、フジテレビが取材してくれれば面白いのにな。私が大野病院事件後にはじまった『周産期医療の崩壊をくい止める会』の、残されたご遺族への支援活動に疑問を持ったきっかけは、テレビ画面に映し出されたあの同意書だ。添えられたお母様の言葉だったから。


続く

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