2015/12/25

下町ロケット『コアハート』と『エバハート事件』 その3



下町ロケット『コアハート』と『エバハート事件』 その2 の続き


椎名

「こんな記事は事実無根だ!勘弁してくださいよ」


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「亡くなった治験患者さんに、心からそう言い切れますか?」


椎名

「言えますよ」




「あんたそれでも技術屋か!自分の開発したもので、人々の生活を豊かにする、幸せにする、俺たちの仕事はそういうためにあるんじゃないのか?」


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椎名

「どうしても私のせいにしたいなら、動かぬ証拠を持って来いと言った。だいたいあんた達は姑息なんだよ。ウチから実験データを盗み出して、それをさも正義ずらして検証したように書かれていますがね、そもそもこんなやり方で手にいれたデータを検証したところで、証拠能力はないんだよ。都合のいいねつ造をしているのはそちらじゃないのか?」




「我々は天地神明に誓って公正は検証をしました。正しい技術によって出された数字は決してウソはつかない。もしそこのウソがあるなら、それは人間がついたものだ。あの完璧に見せかけたデータの裏には、動作保証90日すら達成できていない耐久性上の重大な問題が隠されているんじゃないんですか?」


●今の日本はつまらない道徳や倫理観にとらわれて、100%に限りなく近づいたものしか使えない だからアメリカに遠く及ばない


椎名

「なるほど。数字はウソをつかない。ではお伺いしますが、佃さんは60%という数字を高いと思いますか?それともまだまだ100%には遠く及ばないと低い数値だと思いますか?例えば、安全の作動する確立が60%の医療機器があったとします。つまり10人中6人は助かるが4人は助からない。あなたはそんな医療機器は使うべきではないと言い切れますか?


それを使えば、助かるはずだった残りの6人が助かるはずだとしても、その選択は正しいとあなたは言い切れますか?


たとえ、盗作だろうとデータ偽装だろうと、明日どうなるかわからない人工心臓を待つ患者にとっては、コアハートは希望の光なんです。今の日本はつまらない道徳や倫理観にとらわれて、100%に限りなく近づいたものしか使えない。アメリカではNASAでも医療分野でも、そこは合理的に判断する。だからこの国はダメなんだ!アメリカには遠く及ばない!」


●1%だから死んでもしかたがないと思う人間は、どこにもいない


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「6人を救うために、4人を犠牲にする、正しいのか間違っているのか、そんな答えは私には到底出すことはできません!確かにあなたの言っていることに一理あるのかもしれない。ですがね、亡くなった人にとったら、たとえ1%だろうと99%だろうと、関係ない!


1%だから死んでもしかたがないと思う人間は、どこにもいませんよ。


だから我々技術者は、常に100%の成功を目指して研究開発を続けるしかないんだ。にも関わらず、自分の私利私欲のために、開発する努力を放棄して、データ偽装をするなんて、言語道断だ!どんな理由があろうと、絶対にやってはならない。越えてはならない一線だ!そのせいで、一人の治験患者さんが亡くなってしまったんだぞ!あんたはそれを、6人の命を救うためだという理論にすり替えた。詭弁を振りかざしているだけじゃないか!


●大勢を救うために、少数を切り捨てる、正しいのか間違っているのか、そんなことは、医者も技術者も、悩みに悩んで悩み続けてきたこと 答えなんか出せるわけない


だがこれだけは覚えておけよ!大勢を救うために、少数を切り捨てる、正しいのか間違っているのか、そんなことは、医者も技術者も、悩みに悩んで悩み続けてきたことなんだ!答えなんか、出せるわけないんだ!


それでも先人達は自分の無力さと闘いながら、次こそは10人全員を救いたいと努力して、どうしても救えなかった人達を、尊い犠牲の上に、唇をかみしめて今日の医療と技術を作り上げてきたんだ。あんたのような、人間が今さら知ったような顔をして、軽々しく口に出せるような問題じゃない。あんたに、命のうんぬんを語るべき資格などない!」

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