2016/04/12

『医療崩壊』と『メディア戦略』 世の中を動かすには『ワイドショーに出ないといけない!』その3


前回まで、上昌広医師の講演を文字におこした。私が実際に聴いた講演では、もう少し具体的に話していらしたと思う。ポイントは二つある。


●医者だけだとメディアは記事にしてくれない。 メディアが好む、市民や若者(学生)を入れるようにしている
●日本はこれから高齢化社会だから、「医療」報道には需要がある



『メディア戦略』などと大げさに考えなくても、普段私たちが目にする企業の宣伝や広告を思い浮かべてみるとわかりやすい。コマーシャルに出てくるのは、女性や若者や動物が多い。華になるからだろう。


ちなみに、上医師の研究室に所属していた松村有子医師は、様々なメディアの「がん報道」を、調査・分析している。例えば週刊誌と新聞とでは取り上げ方が違うことに注目しているのだ。「細かく分析している」と感心する半面、こういった研究の成果が、HPVワクチンのロビー活動に応用されたんだろうなと思うと複雑だ。


「研究課題:がん医療に関するメディア報道が国民に与える影響の分析研究及び 適正な医療報道のあり方の研究」 研究者代表 東京大学医科学研究所. 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 特任助教 松村氏有子
http://jcancer1.asaren.jp/kinten/happyoukai_h22/pdf/30.pdf


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(がん報道について)週刊誌で特徴的だったのは、著名人ががんに罹患した闘病記事や がんで亡くなった記事が発表されたあとに、そのがん種の医療特集記事が数週間に渡って組まれていることだった。


● 政策に反映させるために何をしたか


先ほどの講演にあったように上医師は当時厚労大臣だった舛添要一氏にコンタクトをとった。その後、どんなことがあったのだろう。


これは舛添氏が独自に選んだとされる「安心と希望の医療確保ビジョン」のメンバー。パッとみて、上医師の講演に登場した方が多いことがわかる。


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安心と希望の医療確保ビジョン
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/s0717-8.html
(肩書きは当時)


土屋了介(国立がんセンター中央病院長)
海野信也(北里大学医学部産婦人科教授)
高久史麿(自治医科大学長)
嘉山孝正(山形大学医学部長)
和田仁孝(早稲田大学大学院法務研究科教授)
小川秀興(学校法人順天堂理事長)
岡井崇(昭和大学医学部産婦人科学教室主任教授)
川越厚(ホームケアクリニック川越院長)
丹生裕子(県立柏原病院の小児科を守る会代表)
大熊由紀子(国際医療福祉大学大学院医療福祉ジャーナリズム分野教授)
吉村博邦(学校法人北里研究所理事)


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●「病院族」


上医師の講演に、「(元通産省の官僚だった鈴木寬氏は)霞ヶ関の弱点は審議会だという持論をお持ちです」とあった。「安心と希望の医療確保ビジョン」はつまり、この時の鈴木氏のアドバイスを実行したんだろう。当時の新聞に「病院族」なんていう記事も掲載されていたから・・・。


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ガバナンス・国を動かす:第1部・政と官/3(その1) 日医退けた「病院族」 毎日新聞 2010年1月4日 

◇審議会崩しを官僚警戒

「密会」の場所は、東京都文京区のJR御茶ノ水駅に近い日本救急医学会の事務所が主に指定された。昨年11月初めから月末まで計5回、厚生労働省の足立信也政務官(52)は通称「検討チーム」の医師6人と人目を避けて会合を重ねた。チームは、診療報酬のあり方を議論するため、足立氏の肝いりで作られた。医師不足が深刻な周産期医療の再生策を提言している海野信也・北里大教授ら大学病院系の医師が中心だ。

6人は足立氏の非公式アドバイザーとして、診療報酬の改定に深く関与した。

診療報酬の配分を決める正式な機関は「中央社会保険医療協議会」(中医協)だ。健康保険組合など支払い側と医師ら診療側、学者ら公益委員をメンバーとする審議会だが、複雑な利害調整は厚生官僚が担ってきた。医師で元筑波大助教授の足立氏は、長妻昭厚労相と連携しながら、中医協主導の配分方式を見直したかった。ひそかに検討チームとの会合を重ねたのは、動きを知られたくなかったからだ。

足立氏らの最終目標は、診療報酬の配分を医師不足の病院に手厚くすることだった。そのためには開業医の利益を代表し、自民党厚労族と結びついている日本医師会(日医)を、中医協メンバーから排除する必要があった。

ただ、中医協の新メンバーはすんなりとは決まらなかった。

「長妻さん、本当にしっかりしてほしいところです」。昨年10月12日夜、足立氏や仙谷由人行政刷新担当相に後任選びを催促する携帯メールが送られた。送り主は、東京大医科学研究所の上(かみ)昌広特任准教授。長妻厚労相が日医の排除をためらっているのではないか、との危機感がにじみ出ていた。上氏は全国の勤務医と幅広いネットワークを持ち、足立氏らと医療改革に取り組むグループを作っている。日医に代わる中医協人事についても相談を受けてきた。

10月26日、長妻氏は足立氏らの意向に沿って、日医の代表3人全員を排除する人事を発表した。「病院族」。厚労省内には、検討チームのメンバーや上氏らをこう呼ぶ官僚がいる。自民党の族議員や日医に代わり、自分たちの知らないところで政策に影響力を及ぼしつつあることに対する官僚の警戒感がそこに表れている。

10年度の診療報酬は昨年12月23日、プラス0・19%と10年ぶりの引き上げで決着した。予算案には「急性期入院医療におおむね4000億円程度を配分」と異例のただし書きがあった。中医協で決まるはずの配分を、先取りしたものだ。これにより救急患者を受け入れた病院の報酬が手厚くなる。病院族の勝利だった。

「彼らはこんなに世の中を動かせるんだと分かってしまったから、今は楽しいだろう。ただ下手をすると、火遊びになる」。

厚労省の幹部官僚はいまいましそうに語った。



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続く

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