2016/05/26

小児の治験 薬害被害者になって 『子どもは小さな大人ではない』という意味を知る その2

●ナショナルセンターの心の専門家 安易に向精神薬を処方する一方で、断薬の方法を知らない


こちらは私も取材に協力した、東京新聞(2012年09月03日 )の記事。産後うつと、中川聡さんを取り上げている。


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私のような被害者は、断薬するために必死に勉強しないといけない。成育のような国を代表する医療機関の心の専門家でも、患者の同意を得ず、向精神薬を簡単に処方する。しかしその一方で、断薬の方法を知らない。特に私の主治医となった児童精神科医は、古い考えの医師だったから、「統合失調症」の患者には自己決定権など必要ないと考えていたようだ。


●なぜ小児に治験に、莫大な費用がかかるのか


仕方がないから、治験に関する文書にも目を通すようになった。当時読んだ資料を、一部文字におこした。最後に引用させていただくので、興味がある方は読んで欲しい。はじめて読んだ時は驚いてしまった。子どもの身体は発展途上だから、CYPが劇的に変化するそうだ。


牧本医師の講演で印象に残ったのは、薬の開発だけでなく、治験に莫大な費用がかかることだった。CYPをみても、これだけ複雑に変化するなら、時間やお金がかかることも納得できる。私が小児の治験の重要性を知ったのは、皮肉なことに薬害被害者になったからだ。自分が薬の副作用で苦しんだからこそ、わかることがある。息子が産まれてNICUに入院した時に、山のような同意書にサインをした。けれどあの時私はどこまで理解していたのだろう。


今は、厳しい環境の中で、地道に誠実な研究を行ってきた薬の専門家に感謝せずにはいられない。


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第27回 日本TDM学会・学術大会 「小児の薬物動態、用量設定とTDM」 国立成育医療研究センター臨床研究センター 中村秀文

子どもは小さな大人ではない。


低出生体重児・新生児から思春期までの幅広い年齢群が含まれており、その薬物動態は発達に伴う生理的変化の影響を受ける。成人における個人差に加えてさらに発達の要素が加わるわけである。


薬物分布も、成人と小児で異なることがある。水溶性の薬物では、新生児あるいは未熟児など水分率が高いために、アミノグリコシドなどのように体重あたりの投与量が高めに設定されているものもある。また、新生児は生理的に血中アルブミン濃度が低い。このため、アルブミンとの淡白結合率が高いフェニトインのような医薬品では、血中濃度の評価に注意を要する。すなわち、低アルブミン血症では、フェニトインの総血中濃度は下がるけれども遊離の血中濃度は、血中アルブミン濃度が正常な場合とさほど変わらない。


薬物代謝酵素の活性の成熟における変化についても少しずつ解明されつつある。例えば、フェニトイン(商品名 : アレビアチン)の代謝をつかさどるCYP2C9は、胎児期にはほとんど存在せず、出生後一周間以内に発現を開始する。


一方CYP 1A2の発現は遅く、生後1-3ヶ月で初めて発現を開始する。


成人の肝臓で最も豊富に存在するCYPであるCYP 3A4は胎児の肝臓にはほとんどなく、CYP3A7が主なCYP3Aである。出生後は、CYP3A7は生後1週間をピークにその後徐々に消失し、一方CYP3A4 は生後一週間以内に発現し、生後3ヶ月の間に急速に増加する。CYP3A4により主に代謝されるカルバマゼピンのクリアランスはむしろ成人より小児期が高いために、体重当たり投与量は小児期のほうが高い。


出生後は、日齢の増加にともない次第に心拍出量が増加し、また末梢血管抵抗が減少していく。このために日齢とともに腎血流量は徐々に増加する。そして体表面積あたりに換算した腎血流量は出生後30週位までに成人の値に近づくとされている。


糸球体濾過量(GFR)は、妊娠34週以降は妊娠集数と相関して増えていくといわれている。出生後のGFRの増加は生日よりもむしろ妊娠後週数と良く相関するようで、満期産児では体表面積に換算したGFRは出生後2.5-5か月位までに、ほぼ成人に近づく。


近位尿細管におけるp-アミノ馬尿酸の体重あたりで補正した排泄能は新生児期には低く出生後30週位までに成人値に達する。その他の、排泄機能についての発達による変化についてはまだ解明されていないことが多いが、一般的にみると多くの薬物の(体表面積で補正した)尿中への排泄能は、生後6ヶ月から2 歳位までに成人値に近づくということがいえる。これら発達による薬物動態の変化を念頭に置いて、薬物の用量設定やTDMはおこなわねばならない。


また、添付文書についても小児についての記載は乏しいものも多いため、鵜呑みにできないことも多い。例えば、ゲンタマイシンの添付文書を見てみると、用法・用量の項に「小児では1回0.4~0.8mg(力価)/kgを1日2〜3回筋肉注射する」とある一方で、使用上の注意の項には、「低出生体重児、新生児における筋肉内注射での安全性は確立していない」とあり、さらに、「低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児における点滴静注で使用しないこと」とされている。


実際には、筋肉内投与を行うことはなく、点滴静注で投与することが世界標準であり、投与量も添付文書に記載された用量より多く、特に低出生体重児では、細かい調整が必要である。


腎排泄の薬の投与量設定にしばしば用いられるクレアチニンクリアランスも小児では正確に測定できないことが多い。また血清クレアチニン値も成人値よりも低く、正常値の幅の中でも、その変化から腎機能の変化を用心深く読み取る注意が必要である。

(以下略)



※ TDMとは

薬学用語解説 公益社団法人日本薬学会
therapeutic drug monitoring、治療薬物モニタリング


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