2016/05/31

『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その6

様々なメディアで一方的にバッシングされた牧本医師。報道が真実なのか検証していきます。

●2011年7月13日 第5回小児がん専門委員会議事録 厚生労働省 健康局総務課がん対策推進室

牧本敦医師の発言を一部引用


(※ 一定の年齢に達した小児がんの子ども達を、どうやってフォローアップしていくか、についてお話しています。後半では治せない、治せなかったがんの患者さんのために「ドラッグラグを解消していきましょう」と牧本医師がおしゃっています)


○牧本委員

私が電話相談を受けている肉腫の状況と似ていますけれども、結局、患者さんがどの病院の何科を受診したらいいかわからないというのが問題です。電話相談を受けているので感じるんですが、もともと電話相談体制(肉腫ホットライン)ができた理由もそこなんですけれども、「肉腫」といわれても部位がわからないですね。何肉腫だったらどこにできやすいという傾向しかなくて、その肉腫はそこにはできないという除外はできなくて、つまり、いろいろ細かく個人個人の患者さんの特徴を聞かなければ、最初に行く診療科が決まらないんです。


小児がんの場合は、小児科。15歳未満であれば小児科で受けることができるけれども、16歳になった途端に日本の診療科の分け方では、あぶれてしまう。多分馬上委員が言われたことも同じだと思うんですが、一番入口のところで受入れが明確化されていないところが原因だから、堀部委員が言われたように、診療科を標榜させることは非常に重要だと思っています。


 その考えは今の国立がん研究センターの肉腫診療グループというものにつながるんですが、ここで原委員長がよくされるお話、英国には小児センターの中に思春期を診るというセンターをつくっているということがあります。


 例えば16歳~25歳という枠を堀部委員が提示されていますけれども、私の考えでは、30歳ぐらいまで別にあってもいい。明確に分ける必要は全くないのではないかと思っていて、そのような患者さんがどこに行ったらいいかわからない場合に、受診できる思春期センターがあれば
、死亡統計を見れば死亡率が高い年齢層ですから、その患者さんが迷わなくて済む一番いい方法かなと思っていますので、是非御検討いただければと思います。


○牧本委員

追加ですが、原委員長が言われている地域の医療機関についても、多分標榜をしっかりすることでアピールになるので、実際には肉腫ホットラインとか肉腫診療グループを標榜することで患者さんは集まってきますし、それほど困っている患者さんがたくさんいらっしゃるということの裏返しだとは思っているというのが1点。


 もう一つは、当院で高校生がたくさん受診、あるいは入院できる背景に、先ほどのお話に戻って、分教室で高校生を受け入れられる事実があるんです。分教室に高校があるから、あそこへ行ったらという言われ方をして来られる方も逆にいらっしゃいます。


 ですから、先ほどの話に戻ってしまったんですけれども、思春期の患者さんでも学校教育のできる制度を取り入れることも1つ、そういう思春期を標榜するセンターであれば、考慮いただきたいところかなと思います。


○牧本委員

この意見書を書いていて迷ったのが、先ほどのお話とかぶりますけれども、青年期に多い肉腫の患者が診療体制の整わない病院にまず、行ってしまって、何とか頑張って治療したが、不適切な治療だったという例が非常に多いんです。


 そういう場合は社会的な難治というか、科学的には適切に初期に治療されれば治るはずの人が進行期に入ってしまい、それで高次病院に送られてくるという例が年間でも何例か経験されますので、こういうケースは我が国で社会的に難治かなと思います。それも含めて書こうとしたらものすごく長くなったのでやめたんですけれども、檜山委員が言われたような定義であれば議論はしやすいので、この場の議論は標準的な治療が確立されていないものに限るでもいいのかなと思います。一方で、そういう制度的・社会的な難治がんを考える時間があれば、考えてもいいのかなと思います。


○牧本委員

結局多分はっきり言うと、臨床試験の議論になると思います。なぜならば、標準的な治療で治らないわけですから、すべて試験治療といってもいい部分になってくるので。


 森委員の御発言はファーストラインの治療も臨床試験によって改善し得るという話だと思うんですが、そこのところが臨床試験の世界では、後期治療開発という部分になるから、そこのところはある程度成熟したがんの治療センターが幾つかあって、診療体制が整っていればおのずと上がっていく部分だとは思われるんです。


 一方で、再発を繰り返したり、初めから薬が効かないものに対しては、薬の開発から始まるんです。あるいは集学的治療であれば、新しい放射線治療とか、そういうところを十分なデータがなくても開発していかないといけないという、レベルの違った議論になってしまうので、両方議論しても構わないんですけれども、多分もともとの意とは後者。つまり、標準的には治っていかない、よくなっていかない部分。しかも、日本で新しい治験も進まなくて、新しい治療薬も新しい治療技術も出てこないというところに、どうやってアプローチしていくのかという議論の方がよっぽど難しい問題になるので、そこにある程度スポットを当てていくべきかとは思っています。


○牧本委員

責任の問題と森委員もおっしゃっているので、同じような意見なんですけれども、結局診断は1施設でどこか責任を持つしかないと思っているし、我々もがんの専門病院で考えると、やはり自施設の病理医がうんと言ってくれなければ、最終的に治療を開始できないと思うんです。


 我々が勿論、臨床情報はほかの臨床情報も加味して、そこと議論することが可能なんですけれども、逆に遠く離れた中央診断施設と議論することは不可能だと思います。事実上限られた時間の中ではですよ。


 ですから、最終的に実地診療で使える病理診断のデータは、自施設で最終的に確定してほしい、というか、それができなければ拠点病院の機能としては不十分だと思いますので、それは絶対に守られるべきだと思います。


 一方、診断が難しい病気はあるんです。ですから、当院でも乳児の例は少ないですから、肝臓にしても腎臓にしても未熟な正常組織から出たがんというのは、特別な所見があるらしくて、がんセンターの腎臓の専門の病理医ですら、子どもの腎臓のがんは難しいという考えを持っているんです。


 ですから、その場合は当然こども病院、あるいは成育医療研究センターの先生に相談に行きます。すなわち、限界を知っているある程度成熟した病理医であれば、自分の限界もわかっていて、どこでコンサルテーションをかけて、最終的にはそのデータを併せて自分で診断しているんですよ。


 施設の最終診断がどの時点で確定されてというのは、施設の能力にも関わりますけれども、最終的には自施設の診断に基づいてやるのが今の医療の在り方ですし、そこは外せないかなと考えています。


○牧本委員

私がこの資料に書きましたのは、檜山委員にまとめていただいた資料で見ますと、臨床試験施設の集約化ということなんですが、これはまた数が出てしまうんですけれども、拠点病院が例えば10施設だとして、それぐらいの施設でないと適用外薬を扱う臨床試験とか対象患者の少ない治験とかいうものを、うまく実行、あるいは成功できないということは、臨床試験の領域では常識だと思っていますので、拠点病院は早期治療開発というところもしっかり役割として担っていく必要があると思っています。


 そういうことによって、標準的なものでは治せない患者を集約すると、そこではそういう治療オプションが提示できますという、アメリカなどではある程度実現している体制になるんだと思います。今までは、そういう治験もなかったですし、臨床試験にしても標準的な治療を改善するような後期開発臨床試験が主だったために、全然そういうオプションがなかったのが現状なんです。


 ところが、この10年ぐらいで適用外薬の問題、あるいは未承認薬の問題が成人がんの分野でも出てきて、我々も何とかしたいと思って、厚生労働省の研究費や日本医師会の治験推進研究事業などを利用して早期開発の臨床試験や医師主導治験をやってきた。


 でも、やはり数えるほどしかできないんです。1人の研究者では2~3しかできないのが現状ですので、こういう拠点病院の医師、研究者が力を合わせて、体系的に幾つもの多がん種を対象に、多くの薬を対象として臨床試験を幾つも立てて、それを共有して受け入れていくという体制が必要だと思っています。


○牧本委員

未承認薬の方が当然問題になるわけです。適用外薬は何とか薬(現物)がありますので、ですから、医師の裁量の範囲内で使っていけるということなんです。未承認薬に至っては、特に日本の企業、あるいは関連企業が開発中の薬剤であれば、コンパッショネートユースは可能だと思いますが、実際に日本の企業、我々がコンタクトできる企業が全くタッチしていない未承認薬でも、既に標準治療薬になりつつあるものが複数あります。


 だから、そういうものに関してどうしていくかというと、結局幾つかしか対策がなくて、そのような薬剤は研究レベルだという政府の見なしがあると思いますので、我々は研究者として海外と共同するか、あるいは海外のベンチャーに直接交渉して医師主導治験などをやるかという2種類しかなくて、
そんな事実を成人がんの先生が聞いたら多分びっくりされると思います。なぜそんなことをしないと開発できないのか。それは先ほど申し上げた理由によるものです。


 ですから、成人がんの世界では市場が大きいために、企業がどんどん新しい薬を入れてくださる。ところが、小児の世界では本当に有効なもので、第?相試験でそれを加えたら優越性が証明されたようなすごい薬であっても、まだ日本からコンタクトできる企業はだれも手を出そうとしない状況があって、それは完全なドラッグラグなんです。


 なぜならば、原委員長が言われたように、アメリカでは9割方の小児がんの患者さんがすべて臨床試験に入っているので、逆に言うと、9割方の患者さんはその治療を受けているわけなんです。ですから、標準治療なんです。


 その薬すら使えない状況がある。それに対して、「小児がん専門委員会」というメンバーになるような我々は、何ができるかというと、先ほどの2つの方法しかない。これだけたくさん(成人も含めた)がんの専門医がいらっしゃる中で、最も先鋭化した活動をしていかないと解決しない。解決もしないですが、それ以前に、手がかりもつかめないような状況にあるということがおわかりいただいた方がいいかなと思って、発言させていただきました。


 つまり、小児、希少疾患の分野というのは、未承認薬で、しかも手がかりすらつかめないものがたくさんあって、そこは世界的にも研究段階と見なされるために、臨床研究、臨床試験を推進していかなければ、患者さんに届けることは不可能なんです。


 コンパッショネートユースはあくまで海外で少なくとも製品になっていないと手が届かないということですが、小児がんの世界では海外で製品になっていないものも、かなり有効なものがまだ複数あるという状況になっている。


 科学が進めば進むほど、それは増えてくるだろうと思いますので、そういう問題を酌み上げて、対策を立てていけるものが欲しくて、私は小児がんセンターがもしできるであれば、そこの機能は絶対担うべきだと思うし、唯一で構わないので、指導とか戦略を立てていくということができないと、日本がどんどん米国、欧州に比べて遅れていくだろうと思います。
 是非、お願いします。


◆  ◆  ◆

続く




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