2016/06/22

『牧本事件』と国の戦略 その3

●『お手盛り』と捉えるのか、『小児がんの子ども達のため』と捉えるのか


さて、前回紹介した研究費流用問題では、科研費の使い方が『お手盛り』と批判されていた。


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2013.3 研究費流用問題_19I3.docx
http://ow.ly/d/19I3

2010年度の同事業では、63課題のうち、29課題で国がん関係者が主任研究者を務めた。総額32億8千万円の予算のうち、19億7千万円(60%)が彼らに交付されている。

なぜ、こんなお手盛りになるのだろうか厚労科研が厚労省のアリバイとして利用されることが多いからだ。医師不足やドラッグラグなどがメディアで話題になると、厚労省は対策を取らざるをえない。多くの場合、予算を増やし、研究班を立ち上げる。その際、班長は、国がんなど厚労省関連の施設から選出されることが多い。

厚労省の意向を忖度して動くからだ。現に、牧本医師が主任研究者として獲得した厚労科研は、臨床試験の基盤整備(2002年)、医師主導治験(2007年)、適応外医薬品の臨床導入(2008年)など、行政課題と関係したものばかりだ。

そもそも、がん難民やドラッグラグの一因は厚労省の失敗にある。ところが、問題が社会問題化すれば、彼らの責任は追及されることなく、厚労省と、その下部組織である国がんが焼け太る構造になっている。



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そこで、厚生労働省の公式サイトに残る記録をあたる。牧本医師がはじめて主任研究者に撰ばれたのは、平成14年(2002年)度だろうか。

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平成14年(2002年)度 厚生労働科学研究費補助金の概要
http://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/gaiyo02/index.html

2. 各研究事業の概要
http://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/gaiyo02/2.html

6 効果的医療技術の確立推進臨床研究経費

がん、心筋梗塞、脳卒中、痴呆、小児疾患等について、より効果的な保健医療技術の確立を目指した臨床研究を推進し、根拠に基づく医療の推進を図ることを目的とする研究

効果的医療技術の確立推進臨床研究事業(小児疾患分野)採択課題一覧
http://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/gaiyo02/kenkyu/14.html


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厚生労働科学研究費補助金研究事業の概要
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/05/s0509-6c11.html

研究事業の目的

根拠に基づく医療(Evidence Based Medicine)の推進を図るため、がん、心筋梗塞・脳卒中等の生活習慣病、痴呆・骨折、小児疾患に関して、より効果的な保健医療技術の確立を目指し、研究体制の整備を図りつつ、日本人の特性や小児における安全性に留意した質の高い大規模な臨床研究を実施することを目的とする。

<平成14年度新規採択方針>

がん、心筋梗塞、脳卒中、その他の生活習慣病、小児疾患について、より効果的かつ効率的な予防、診断、治療等を確立するための質の高い臨床研究


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上医師の批判は、一般論としては、間違っていないと思う。研究者なら、同様の疑問や不満を感じることもあるだろう。また、私自身が、厚生労働省の「こころの健康科学研究事業」のせいで酷い目にあった。「アリバイ工作」という批判は必ずしも、的外れではないだろう。しかしそんな私でも、小児がんの子どものための事業が「お手盛り」だと、どうしても思えない。むしろ、国も本腰を入れて、小児がんの子ども達のために、がんばろうとしているようにみえる。


こちらは前回紹介した、特定非営利活動法人サクセスこども総合基金(SUCCESS)アピールポイント。同じ景色をみていても、とらえ方が全く違う。


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特定非営利活動法人サクセスこども総合基金 SUCCESS CANPAN

患者家族、市民、多様な実務家・専門家、医療者など、マルチステークホルダーの協働により、こどものがんの治療環境改善に取り組んできました。

「より多くの患者とその家族が、十分な診断と治療を受けることができる社会システムの構築」が弊会の目的であり、そのために具体的な治療開発を進める団体であることがアピールポイントです。

治療開発は医師だけでも出来ません。製薬会社だけも出来ません。患者だけでも出来ません。弊会では多様なステークホルダーの力を結集し、まさに市民総力戦で治療を開発することにチャレンジしてきました。


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子どもの病気は、患者さんの数が限られる。製薬企業は利益にならないから、開発をしたがらない。予算も少ない。あれもこれも足りないのだ。だから利権やお手盛りというよりも、国も一緒になって、皆で困難を乗り越えていこうよ、ということだったんじゃないのだろうか?私のイメージは、昨年の年末大ヒットしたTBSのドラマ『下町ロケット』のような感じだ。

(※ 『下町ロケット』の第7話から最終話までは『臨床試験』がテーマです。心臓病の子ども達のためにがんばる医師と、お嬢さんを心臓病で亡くした中小企業の経営者が登場します)



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臨床試験とは 特定非営利活動法人サクセスこども総合基金(SUCCESS)


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小児がんの分野においてはそれぞれの病気の患者数がきわめて少ないため、我が国だけで第Ⅲ相試験を行うことは困難です。このためSUCCESSでは、医学常識を変えるような大規模な臨床試験は欧米に任せ、我が国では第Ⅰ相試験や第Ⅱ相試験を数多く行って、小児がんに使える薬剤を増やすことに貢献すべきと考えています。このような理由から、SUCCESS治療開発支援センターでは医学研究者が臨床試験を行うために必要なデータ登録や解析などの業務を受託し、事務支援を行っています。

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続く


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