2014/04/11

「希望のちから」をみて考える 小児医療における子どもの自己決定権 その1

映画「希望のちから」 治療法がないステージ4の娘が「まだあきらめるな」という母親に向かっていう場面。

2014-2-2-1.jpg

私は乳がんのステージ4なの
現実を受け入れた方が楽に生きられるわ


*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*


「薬害オンブズパースン会議」の記者会見の記事がなぜかヒットしてしまった。


薬害オンブズパースン会議の記者会見を見て考える 日本の小児医療に足りないもの


ある人に「あなたはブレている」と言われたことがある。もともと医療崩壊を食い止めるために活動をはじめたはずなのに、薬害にも関わっていったからそう思ったのだろう。最近はその反対に、薬害に関わっておられる方々には、「あなたは医療の良い面ばかりを強調しすぎる」と批判されることも多くなっている。


だから今日はこれまでどんなことを考えてきたかを、書いておこうと思う。これからどうするのか、答えを出さないといけないだろうから・・・。「希望のちから」は説明するのに、ちょうどいい。


まずはじめに「子どもの薬の問題」


日本の小児医療において長い間、薬の問題は置き去りにされていた。私には治験を専門にしている小児科医の友人がいるからよく知っている。本当は子どものための薬が開発されればいいのに、それができないそうだ。息子には救命するために様々な薬が投与されたが、その中には適応外使用のものも数多くあったそうだ。だから一日も早く改善されれば、と願っている。


子どもの薬が置き去りにされてきた大きな理由は、以下にあるように日本の小児医療が崩壊寸前だからだそうだ。


*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*


小児治験ネットワーク 小児医療現状


本来であれば、大人用と小児用医薬品が一緒に開発され、同時に承認されるのが理想的ですが、過去(現在も)の小児医薬品の開発スケジュールでは、最初の開発では小児用は置き去りにされています。

「こどもは大人のミニチュアではない」というように、子どもは成長過程であり、病気の特殊性もあるため、単純に大人の薬の数分の1を子どもに与えれば良い、ということではありません。

また、与えられる薬の量が決まったとしても、錠剤やカプセル剤などを小さな子どもにそのまま飲ますことは出来ません。その場合は、飲ます薬がないからといって、薬を使わずに治療を諦めることはありません。錠剤を潰したり、カプセルの中身を取り出したりして子どもたちに与えていますが、これも適応外使用の一つなのです。

日本各地の小児医療現場では、これらの問題が日常的に発生していますが、医師をはじめとする医療従事者の努力で補われています。しかしこのような努力にも限界があります。大人だけに有効かつ安全で飲みやすい薬が開発されるのではなく、子どもにも「適切な量」のくすりを、「飲みやすい」くすりを開発するために、子どもの治験が必要となってくるのです。適応外使用を出来るだけなくせるよう、大人のくすりを開発してから、子どものくすりを開発するのではなく、同時に開発していくことが望まれます。



*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*


つい最近以下の報道があった。


*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*


小児がん「神経芽腫」の新薬 治験開始 4月5日 20時27分 NHKニュース


小児がんの一種「神経芽腫」は、再発を繰り返す治療の難しいがんですが、このがんの再発を抑える国内初の新薬の治験が今月から始まりました。

治験を始めたのは、国立がん研究センターと大阪市立総合医療センターなどのグループです。「抗GD2抗体」と呼ばれる新薬を「神経芽腫」の子どもに投与し、再発を予防できるかや、副作用がないかなどを確かめます。

「神経芽腫」は毎年200人ほどの子どもが発症し、そのおよそ半数が再発を繰り返す治療の難しいがんですが、海外の研究ではこの薬の投与で再発率を20%ほど減らすことができたということです。小児がんは通常、大人の抗がん剤をそのまま使うことが多く、新薬の承認を目指した治験が行われるのは国内ではこれが初めてです。国立がん研究センター小児腫瘍科の河本博医師は、「小児がんは患者が少ないため日本では新薬の開発はほとんど行われてこなかった。これをきっかけに小児がんの新薬開発が進んでほしいと期待している」と話しています。


*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*


次に薬と薬害裁判や報道の問題。


「日本では、新薬が認可されても、一部の人達とマスコミがすぐに『薬害』だと大騒ぎしてしまう。薬害裁判はお金になるから弁護士も放っておかない。しかし訴訟が濫発されれば、困るのは国民ではないのか。解消されつつあったドラッグラグ・ラグが再び悪化するかもしれない。新薬の認可までの時間も長くなり、海外で広く使われている薬がすぐに使えなくなるだろう」ーーーそういう批判がある。しかし私には裁判やマスコミだけが悪いとは思えないのだ。


私がずっと悩んできたのは「薬害オンブズパースン」も指摘していた「子どもの自己決定権」なのだ。私は薬害を生み出すものの一つに、「利益相反」があると思っている。幼い子どもは自分の意思で決定できないからだ。だから利益相反を、大人よりも厳格に考えなくてはいけないのではないだろうか。


*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*


「希望のちから」をみて考える 小児医療における子どもの自己決定権 その1


映画「希望のちから」は乳がん治療薬、「ハーセプチン」を世に送り出すまでの道のりを描いた作品だ。「ハーセプチン」は癌の増殖などに関係する特定の分子を狙い撃ちする分子標的薬の一種である。


新薬の認可は以下のステップ1〜7の順番ですすめられる。映画の中でスレイモン医師が、医学の知識が全くない文学部の大学生アルバイトに説明するのだ。「こういう順番で新薬がつくられるんだ。今はステップ2の段階」と。


【 ステップ1】 発見
Her2蛋白乳房の細胞の増殖に関連するのを発見

【 ステップ2】 新薬の開発
ジェネンテック社(バイオテク)と共同研究。分子生物学に基づく薬品研究 


【 ステップ3】 マウス抗体実験

【 ステップ4〜6】 FDAの臨床試験

【 ステップ7 新薬の認可


臨床試験に進む前、マウス抗体の実験がなかなかはじまらなかった。Her2の抗体を人体で作るのは違法だ。だからその前に、マウスで作った抗体で安全性を確認しないといけない。人に耐性があるか調べるためにテストをしなればならないのだ。しかし会社は許可をしようとしない。本当に効果があるのか。もし失敗したら経営危機に陥るかもしれないからだ。


やっと許可が下りたのは1990年。マウス抗体実験がUCLAで行われた。投与は一回きり。しかし効果があれば時間がのばせる。生きる時間がーーーーーーー


2014-2-2-2.jpg



抗体実験は上手くいった。最後に出てくるが驚くべきことに冒頭で紹介した「乳がんステージ4」の女性は、その後二年も生きたそうだ。「ステージ4」と「20代」という年齢を考えると私は驚いてしまう。「私はステージ4なのよ」と母に言った彼女だったが、投与された時の顔が「本当はもっと生きていたい!」と訴えていた・・・。


ところが今度は第1相試験の許可がなかなかおりない。これはスレイモン医師が会社の上層部に許可を出すよう訴える場面だ。


2014-2-2-3.jpg


金勘定だけで人を救うチャンスを潰すな!
私は現場しか知らない。だが我々は何者なんだ?
商売人じゃない。
我々は医者だ!
第一相の許可を。


私は様々な人の気持ちを考えながら見入ってしまった。私は高度医療で救命された元患者であるが同時に薬害被害者でもある。複雑だ。「マウスの実験と人の体は違う」という上層部の言葉はその通りだと思った。どうしても、予想外の副作用は必ず後から出てくるだろうと思ってしまうのだ。


しかし夫は基礎研究に長いこと関わってきたからスレイモン医師や妻にも感情移入してしまう。実験を手伝ってくれた外科医の友人は気づいた時には末期で、あっという間に亡くなってしまった。可能性があるなら大勢の命を救える!「続けさせて」と心から思う。


その一方で全く異なる気持ちも私の中にはある。父が役員をしていたからだ。昔はお金儲けのために弱い立場の方々を泣かせているのだろうと思ってきたけれど・・・


高度医療で救命されてから、また違う感情も芽生えている。何か不祥事があったり会社の業績が悪化した時など、株主だけでなくマスメディアに一斉にバッシングされる。一研究者と経営陣とでは問われる責任の重さが違うし、従業員の人生もかかっているのだ。


これはNHKで放送された「ハゲタカ」というドラマでの、業績が悪化した大空電気の株主総会の場面。社長の一言が胸につきささる。


2014-2-2-4.jpg

4万人の従業員の人生を背負うプレッシャーが
おまえにはわかるのか


今年はじめに報道された「がんワクチン療法」で有名な「オンコセラピー・サイエンス」の業績。上手くいっていないようだ。↓


*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*


オンコセラピー・サイエンス <4564>【連結決算】2014年01月31日17時00分 日経会社情報

オンコセラピ、今期最終を一転赤字に下方修正、対純資産で33%の赤字

 OTS <4564> [東証M] が1月31日大引け後(17:00)に決算を発表。14年3月期第3四半期累計(4-12月)の連結最終損益は29億円の赤字(前年同期は15.7億円の赤字)に赤字幅が拡大した。

 併せて、通期の同損益を従来予想の2.7億円の黒字→34.5億円の赤字(前期は11億円の赤字)に下方修正し、一転して赤字見通しとなった。赤字額は前期末の純資産を33.3%毀損する規模となった。

 会社側が発表した下方修正後の通期計画に基づいて、当社が試算した10-3月期(下期)の連結最終損益も従来予想の22.8億円の黒字→14.3億円の赤字(前年同期は0.1億円の黒字)に減額し、一転して赤字見通しとなった。

 直近3ヵ月の実績である10-12月期(3Q)の連結最終損益は8.8億円の赤字(前年同期は4.5億円の赤字)に赤字幅が拡大し、売上営業損益率は前年同期の-75.9%→-211.8%に急悪化した。


*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*


そんな複雑な気持ちを抱えながら、それでも次第にスレイモン医師のセリフに心を奪われてしまった。「患者を救うことはその家族をも救うのだ」という言葉に共感するのだろう。息子が元気に走り回っている姿を毎日みているからだ。この子がもし結婚して子どもがうまれたらーーーー本当にその通りだと思う。


「Her2は最も有望な薬です。6滴で悪性腫瘍が縮小した。抗がん剤を使わず抗体だけで」


「容器の中で腫瘍が縮むのとがんの治療は別物だ」


「治療じゃない、不活性化するんです。抗がん剤と違って副作用もない」


「臨床試験はリスクが大きい。結果が悪かったら、インターフェロンの二の舞だ。我々が開発し、巨額の損失を出した」


「科学的根拠もなく開発したからだ。Her2は違う」


「我々は経営面も考慮しなくてはならない。Her2に大金を投じれば他の新薬が開発できなくなる総合的にみて、マイナス面が大きい」


「知り合いにがんの患者がいないようだ。それは幸運だ。私は違う。毎日がん患者と向き合っています。体を切り刻み、焼く以外の治療をしてやりたい。子どもの頃、医者が父を救ってくれた。だから私は医者を目指した。患者のみならず、家族も救えるからだ。末期がんの患者が私に尋ねます。ほかの治療はないのですか?私はないと答える。あるんです!」


「効くかわからない」


「分かってます!効くんです!金勘定だけで人を救うチャンスを潰すな!私は現場しか知らない。だが我々は何者なんだ?商売人じゃない。我々は医者だ!第一相の許可を」

*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*

続きはこちら↓

「希望のちから」をみて考える 小児医療における子どもの自己決定権 その2













コメント

非公開コメント