2014/02/13

小さく生まれた子供を社会でどう支えるか「その3」 超低出生体重児の育児とは

小さく生まれた子供を社会でどう支えるか「その2」 もう一度『 前へ』! の続き

社会に訴えるためにいろいろ活動してきたけれど、一番はじめに書いた「手記」は弱々しい感じに受け取られ、実際にあった人に笑われたことがあった。あまりにも子どもが病弱で発達が遅れているように思ったらしい。言葉だけって難しい。テレビ番組制作会社の方も取材にみえたが、実際の私とイメージがかなり違うらしい。あの時番組にならなくて本当に良かった、と後で思ってしまった・・・。


昨年、ある医療系大学に所属している社会学者の方が私のことを取り上げて下さった。これまで書いた手記や病院に送った要望書などに目を通し学生さんに講義をしてくれた。クローズアップ現代「幼い命を守れ~小児在宅ケア・地域の挑戦~」も取り上げ退院後の支援について、皆で考えてくれたそうだ。昨年6月、社会学の学会でも発表してくれた。これは2012年に、学会発表の資料のために私が書いた手記だ。せっかくだからブログにアップしておこうと思う。


ある虐待事件が起きた時、新聞に掲載された冒頭陳述を朗読したら夫は泣いてしまった。そう、超低出生体重児の親にならなければわからない、この世の矛盾があるのだ。放り込まれた当事者にしかきっとわからないだろう。それは、「こころの問題」などではないはずだ。


クローズアップ現代の内容が斬新だと思ったのは、個人のこころの問題にしなかった点だ。ちゃんと「私達は救命することだけに力を注いできたかもしれない。障害を抱えた子どもが生きていくには、社会的支援が足りない」と小児科医も認めておられたからだ。やっと、やっと変わっていくのかもしれないね。


[はじめに]

赤ちゃんパンダ 出産映像!
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今年2012年、上野動物園でパンダの赤ちゃんが24年ぶりに生まれた。パンダの赤ちゃんは150グラム程度と信じられないほど小ちゃい。 私はニュース映像を見た時、産まれたばかりの息子の姿を思い出してしまった。今年小学4年生になる息子も800グラム程度で産まれ同じように保育器に入ったからだ。


当たり前だが人間の未熟児はパンダとは違う。人工呼吸器をはじめ、いろいろな管が入れられ、輸血もしなくては生きていけない。 はじめて見た時には卒倒しそうになった。


ある日突然超低出生体重児の母になって、一番励みになったのはこのパンダの赤ちゃんの映像だった。日本で初めて人工哺育に成功した 愛媛県立とべ動物園のホッキョクグマ、ピースの映像も食い入るように見た記憶がある。母親に育児放棄されたピースを、高市さんと いう飼育員さんが自宅に連れ帰り、懸命に育てるのだ。


sgWANNABE+とピースのサポーターです。
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超低出生体重児の育児は、育児書など通用しない。発達はゆっくり、体も弱い。神経質でなかなか寝ない。次から次へと病気にかかる。休んでいる暇もない。


緊急帝王切開手術がナイフで刺された衝撃ならば、その後の育児は、真綿でジワジワと首を締められるような恐怖だろうか。少し成長し考える時間が増えると別の悩みが待っている。今度は発達の遅れが母親を苦しめるようになるのだ。歩き方、しゃべり方、どれをとっても、「うちの子だけが何もかも遅れている」のだ。いくらがんばってもすぐには追いつけない。「生きているだけでいい」と思っていてもそれだけでは生きていけない現実に突き当たる。そこが動物園のパンダや白熊と違う点だ。


私は超低出生体重児の育児を、「海図を持たずに、大海にいかだでこぎ出していくようなもの」と言うようにしている。たまたま知り合った新生児科医師にそう言ったところ、「なるほど、サクラさんの言葉は気づきを与えてくれる」と感心されたことがあった。私はその医師の言葉にがっかりしてしまった。これまでにも、発達に悩む母親が我が子に手をかけた事件はいくらでもあったはずだ。

ルポ 児童虐待 (朝日新書)ルポ 児童虐待 (朝日新書)
(2008/07/11)
朝日新聞 大阪本社編集局

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「ルポ児童虐待」(朝日新聞大阪本社編集局)という本がある。私は本屋で偶然手にした時、苦しくなりすぐに本棚に戻してしまった。冒頭に紹介されていたのは、双子の未熟児の親だったからだ。どこにでもいる夫婦が殺人鬼に変わり果てていく姿が克明に描かれている。このような「泣ける裁判」と呼ばれる事件はいくらでもあったではないか。そのたびに「皆で考えましょう」というけれどその結果何が変わったのだろうか。


増えたのはカウンセリングなどの「母親のこころのケア」。「産後うつ」のキャンペーンだ。しかし、母親が事件を起こすのは母親の「心の問題」なんだろうか。夫が育児を手伝ってくれないから?生育歴に問題があるから?

◇  ◇  ◇
第一章「殺人鬼」と呼ばれた夫婦 より一部引用

4歳ーー徐々に家に閉じこもり始める

この頃から洋子さんは家に閉じこもりがちになっていく。双子を連れて外に出るたびに「子どもさん、小さいね」と言われることが苦痛だった。佳奈ちゃんと陸君は生まれた頃からミルクをあまり飲まなかった。離乳食がはじまると洋子さんはできるだけ食材を細かくして食べさせようとした。それでも身長、体重はいつも標準以下だった。

・・・

検診や予防接種で病院に行くたびに「食が細くて食べてくれないんです」と医師にも相談した。「お母さん気にしすぎ。お母さんこんなに元気なんだから心配いりません。小さく生まれてきたんだから、ほかの子と比べちゃだめ」看護師はそういうけれど、洋子さんにとっては深刻な問題だった。

◇  ◇  ◇

今年の8月で、息子が生まれて十年になった。この十年の間、私達の置かれた状況を知ってもらうために、私はできるかぎりのことをしてきた。 超低出生体重児の予後は様々だが、発達はどのお子さんもゆっくりで、追いつくまでには十年ほどの時間が必要だと言われている。十年という歳月は生まれたばかりの超低出生体重児の親にとったら、気の遠くなるように長い時間だ。


しかしもし、どのように成長するのか社会にもう少し知られれば、今よりも楽に生きていけるのではないだろうか?それが様々な活動をはじめたきっかけだった。正しい情報が社会に伝わらないということが母親を苦しめているような気がしてならないからだ。


続きはこちら↓

小さく生まれた子供を社会でどう支えるか「その4」 産まれた日  

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