2014/04/12

「希望のちから」をみて考える 小児医療と子どもの自己決定権 その2

「希望のちから」をみて考える 小児医療と子どもの自己決定権 その1 の続き


最後の場面。スレイモン医師を多くの女性達が笑顔で迎える。一つの有効な抗がん剤が開発されれば、これだけの女性を救うのだ。


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1998年認可以来、ハーセプチンは何十万人もの命を救った。現在スレイモン医師はUCLAで血液・腫瘍学部門長を務めている。リリーとペレルマンは18年間で一千万ドルの研究費を集めた。ハーセプチンは臨床試験を重ね、FDAより適応拡大が承認された。


映画の最後で寄付金の総額を知って驚いた。日本では18年間という長い間、一千万ドルの研究費を集め続ける真剣さがあるだろうか。医師にも患者にも、市民にも企業にもないだろうと思うのだ。夫がお世話になっている研究室の先生の口癖は「99%成功はない」。日本はそもそもの前提が間違っているような気がしてならない。


様々な立場の人達の努力で承認されたハーセプチンだが、映画の中で「副作用がない」という言葉が何度も出てくる。「副作用」は本当にないのだろうか。


同じような分子標的薬で「イレッサ」が薬害裁判になったのは記憶に新しい。当時、医療者だけでなく、がんの患者会からも「薬害」ということに関して反発があいついだ。先日「宮頸がんワクチン定期接種の積極勧奨再開に反対する緊急院内集会」に参加した時、「薬害オンブズパースン会議」が配布した資料の中に「薬害イレッサ」に関するものもあった。私はイレッサに関しては「薬害オンブズパースン会議」の主張に全面的に賛同できない。


薬そのものに問題がない、薬害ではないとしたら何が問題だったのだろうか。私には腫瘍内科医の勝俣範之医師の主張がしっくりくる。せっかく認可された抗がん剤が「薬害」とされると使えなくなって困る患者さんもおられるだろうから・・・。


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Dr.勝俣による「イレッサ問題」のポイント から一部引用


イレッサ問題の一番の問題点は、専門家が処方しなかったことと思います。


抗がん剤には副作用はつきものです。まだまだ夢の新薬などは存在しません。手術死亡率0~3%です。抗がん剤の死亡率は0~10%です。手術死亡率よりも、抗がん剤死亡率の方が高いのです。あなたは誰に抗がん剤を処方されたいですか?


イレッサは、専門医どころか、開業医さんも、歯医者さんも処方したいた事実があります。夢の新薬と言われ、肺がんどころか、乳がんや子宮がんにも処方した医者がいます。専門家は誰も「夢の新薬」などと言っていません。メディアがはやしたてただけです。それを真に受けたのは、非専門家医です。


本当に訴えられるべきは、不適切に過剰な処方をした医師だったと思います。これが、海外の先進国であれば、確実に処方した医者が訴えられ、裁判で負けます。弁護士は、医師を訴えるよりも、国を訴えた方が勝ちやすいと思ったから国を訴えたのだけだと思います。問題の本質を履き違えています。


イレッサ問題から何を教訓にすべきでしょうか?添付文書にきちんと記載をするべき?患者さんの補償制度をつくるべき?もっと大切な問題は、専門医を育て、専門医に適切な処方をさせる社会・医療界にすべきなのではないでしょうか?


抗がん剤を専門医が処方していないことが問題なのに、抗がん剤自体が問題としているのは、問題のすりかえです。そのようなことをあたかも専門家のように言っている医師がいるのも問題ですが、それを賞賛しているメディアも先進国では日本以外では存在しません。国民は間違った情報に洗脳されているだけ


メディアも勉強しなさすぎ、医療情報を適切に流しているメディアがいかに少ないことか。耳障りのよい素人的な情報ばかりを流そうとします。「抗がん剤は効かない」、「体にやさしい免疫療法が良い」、「食事療法で免疫力をつけてがんを治そう」、騙されているのは国民・患者さんのみだけだ。


抗がん剤の非専門家とは、抗がん剤をやってはいけない患者さんに、抗がん剤を投与してしまう医師のことです。抗がん剤をやってはいけない患者さんとは、抗がん剤が効く可能性が限りなく低い患者さん、合併症をもち全身状態が悪い患者さんなどのことです。


もう一つ、抗がん剤の非専門家とは、抗がん剤の処方はできるが、抗がん剤の副作用マネージメントができない医師のことです。抗がん剤の副作用のマネージメントができない医者は、患者さんを抗がん剤の副作用で殺してしまいます。


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でも、「子宮頸がんワクチン」はどうだろう。抗がん剤と違いその薬がなければ死んでしまうわけではない。そもそも「子宮頸がんワクチン」という名前からしておかしくはないだろうか・・・。子どもには「自己決定権」があったのだろうか・・・。


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自己決定権 wikipediaより一分引用

自己決定権(じこけっていけん、autonomy、right of self-determination)は、自分の生き方や生活についてを自由に決定する権利。権利の保障を行う憲法や、権利のそもそもを考える法哲学的にしばしば議論の的となる。医療に関しては、患者の最も重要なものの一つとして自己決定権が考えられており、このことに関しての問題が多々ある。


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「見えないビジネス」を可視化しよう 

これは2009年に公開された映画「ハゲタカ」の派遣社員によるデモのシーンだ。映画では派遣社員の労働環境改善のための市民運動が、お金で買収されていく様子がえがかれている。


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「最初っから俺を騙すつもりだったんだろう!」


「ハゲタカ」の予告編は週刊金曜日で取り上げられていた「子宮頸がんワクチンのロビー活動」、「見えないビジネス」とどこかだぶって見える。この映画が公開されたのは、HPVワクチンのロビー活動が行われていた2009年だった。

(中略)

寺島
ワクチンの承認とか定期接種化、これはやはりロビイストの活動、これが大きく効果があったということですか?



平井
はい。「大きかった」とは言えると思いますね。働きかけるプロですから。いろいろな市民団体を作ったり、患者団体にお金を出すということも間に入ってコーディネートしたりとかしているらしいですし、勉強会をやったりシンポジウムをやったりとかメディアを使ったりとか、本当に上手い、宣伝のプロであり、黒子でもあるんです。見えないビジネスの一つなんじゃないですかね。


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2014/02/12 舛添要一氏が都知事就任 子宮頸がんワクチン問題について「厚労省と協議して考えたい」 IWJ Independent Web Journal


IWJ安斎さや香記者「厚労大臣時代の子宮頸がんワクチン『優先承認』推進について。現在副反応被害が相次ぎ、承認の当時も『時期尚早』の声があった。当時の厚労行政のトップとしてどのような責任を感じているか? また東京都での対策は?」

舛添都知事「当時、女性議員の先生方が毎日のように大臣室に陳情に来られ『早く進めてくれ』と。グラクソ・スミスクライン社を含め製薬会社の臨床データを見て、単純にデータでいうと打った方がはるかに良いと…。それで承認した。

当時、打たないで子宮頸がんにかかる方々がたくさんいる、それは、こういう席では申し上げにくいのですけれども、未成年で、ある段階で、いろんな経験をなさる。その前にやっておかないとというご意見が、女性議員からあった。

今、特にそういう年齢の方々に、非常に副反応被害が出てますので、東京都としても実態を把握して、何らかの救済手段ができるか。
厚労大臣時代に私も関わっておりますので、厚労省とも協議しながら、一番良い方法を考えていきたい」



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「希望のちから」に出てくるがん医療の場合は、医師も患者も同じ方向を向いているように思う。しかし小児医療はどうなんだろうか。


私は日本の教育にはそもそも、「薬剤を売り出す時のキャンペーンからどのように子どもを守るのか」という観点がすっぽり抜け落ちているような気がしてならない。


医師や医療を信じなければ、息子の奇跡的な成長はあり得なかったと思っている。医師や医療を信じる心は大切である。しかしだからといって「なんでもお医者様におまかせ」では、それもいけない。昨年からディオバン事件など製薬企業の不祥事が何度も続いている。これでは「信じろ」というほうが無理である。


薬剤には必ず「副作用」があるし、製薬企業が営利企業だということも教えなくてはいけないだろう。私達大人は子どもの自己決定権について、もっときちんと考えないといけないのではないだろうか。小児医療は親と医師とで治療が進められてしまうことが多い。


正直なことをいえば、周産期医療では子どもが本当に「救って欲しい」と訴えているのか不安になる時があった。子どもが保育器にいる時、私は何がなんでも助けて欲しいとは思わなかった。冷たい母だと思われても、医学の前には生理学があると思って生きてきたからだ。


もし「臓器移植を考えて」といわれたら私は・・・。私はしないつもりだった。移植をした患者さんが苦労している姿を知っているからだ。


子どもの頃は「●ちゃんの移植のために募金を!」などと社会も好意的だし、マスコミも取り上げてくれる。大変なのは移植が成功した後かもしれないのに、その頃には世間の関心は薄れている。ちなみに私が多くの人にワクチン接種をして欲しいと考えたのは、免疫抑制剤を手放せない患者さんがおられるからだ。


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夢の治療が始まった 驚異の“免疫寛容” NHKクローズアップ現代 から一部引用

肝臓を移植すると、司令塔の免疫細胞が敵だと判断し攻撃を始めます。拒絶反応です。

(中略)

拒絶反応を防ぐために使われるのが、免疫抑制剤と呼ばれる薬です。

(中略)

しかし、免疫抑制剤には問題があります。体にとって必要な免疫機能も弱まるため、ウイルスや細菌の侵入を防ぎにくくなります。そのため感染症のリスクが高まり、軽いかぜがきっかけで死に至る可能性があります。人混みの多い場所への外出を控えるなど、生活は大きく制限されるのです。

また、薬の副作用によって新しいがんが発生する不安もあります。こうした合併症によって、移植した人のうち2割が10年以内に亡くなるといわれています。



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私が危惧してきたのは「子どもの知る権利」「子どもの選択する権利」がきちんと守られているのか、という点だった。大人の場合とはやはり違うと思うのだ・・・


とりわけ不安に思うのは「発達障害」などの診断を巡る問題である。その「障害名」が本当に正しいのか。子どもが納得しているのか甚だ疑問なのだ。もしも支援がないからとりあえず「障害名」ということであったなら子どもの人権をどのように考えればよいのだろうか。


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小さく生まれた子供を社会でどう支えるか「その15」 発達検診の問題点 からある新生児科医の言葉を引用


新生児医療現場は日々の集中治療の模索、3-4 日に1回の3̶6時間以上の連続勤務などで なんとか当直体制を保っている状況で、その後のご家族のケアまで手と気持ちが回っている人間 は少ない。これも杜撰な状況だと反省する部分。


私自身も在宅で人工呼吸管理で集中治療をするようなご家族も含め、我々の課題は山積していて、NICU 医療自体の救命率が上がったことで生じるその後の生活への広がった役目に皆、現場はもがいている現状だと感じる。


一方、私のような集中治療医はいいフォローアップ医がいるのな ら信じて託したい、私は後遺 症を少なくすべく集中治療を探し出すことに心と力を尽くすから、私達の気持ちを受け継ぎ、その後のご家族とお子さんの未来を見守る方々がでてきてくれないかと願う気持ちがある。 適材適所で協力できる真の専門医が生まれてくれるのなら。


(発達検診で)ADHD、アスペルガー、自閉症などとすぐについて、私の外来で涙ながらにその時の話しをしてくれるご家族がいる。発達指数をだしてくれるだけで両親を支えてくれる雰囲気はあまりない。


私も早産児は発達にはムラがあり、独特なところがあると思っている。これを小児精神や発達の医師がみると ADHD、アスペルガー、自閉症と診断しているが、どうも早産児でないこれらの疾患のお子さん達とその後の経過も違う気がする。



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つい先日も高度生殖医療の問題がニュースになった。校長先生に伺ったが食物アレルギーがあるお子さんの親御さんの中にも「子どもにアレルギーだと知らせたくない」という方がおられるそうだ。


しかしこの先、個別化医療が現実のものとなるだろう。子どもの権利について、もっと踏み込んで考えるべき時ではないだろうか。将来、振り回されるのは子どもなのだから。


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精子提供で生まれた医師、「父」の情報開示請求 (2014年3月7日22時44分 読売新聞)


不妊治療の精子提供で生まれた横浜市の医師、加藤英明さん(40)が、遺伝上の父親を知りたいとして7日、治療を行った慶応大病院(東京都)に対し、精子の提供者に関する情報開示を文書で求めた。


 海外では、こうした子供が遺伝上の父親を知る権利を認める国もあり、この権利を巡り議論を呼びそうだ。


 加藤さんは医学生だった2002年、授業で行ったDNA検査がきっかけとなり、自分が慶応大医学部生とみられる男性から精子提供を受け、同病院で生まれたことを知った。同病院産婦人科の吉村泰典教授を訪ね、提供者を教えるよう求めたが、「提供者を匿名にすることが治療の条件。両親も同意している」として回答は得られなかった。


 加藤さんは、その後も同大の卒業生名簿を頼りに提供者を捜し続けたがかなわず、この日、情報開示を求める文書を同病院に郵送。「遺伝上の父親が分からず、ずっと苦しみ続けてきた」と訴えている。吉村教授は「保存期間を過ぎてカルテも廃棄されており、調べようがない」としている。


(2014年3月7日22時44分 読売新聞)


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オーダーメイド医療 wikipediaより引用

オーダーメイド医療(オーダーメイドいりょう Order-made Medicineまたはmade-to-order medicine)とは、個々人の個性にかなった医療を行うこと。なおOrder-made Medicine(オーダーメイドメディシン)とは和製英語であり、他にはテーラーメード医療(tailor-made medicine)、個別化医療(personalized medicine)、カスタムメード医療(Custom-made Medicine)ともいう。


これまで医療は疾患中心であり、疾患の原因を探索したりその治療法を開発することが主な目的であった。 しかし疾患の状態は個々人で千差万別であり、同じ病気であっても同じ治療法を適用することが必ずしも正しくないことは以前より知られてきた。 しかし一方でそのような治療効果の個人差は治療とその効果を観察しなければ分からないものであり、個々人に最適な治療計画を行うことは難しかった。


一方、ヒトゲノム計画によるDNA配列の解読や個々人で異なる一塩基多型 (SNP) の特定、DNAマイクロアレイなどによる大量の情報を瞬時に取得できる技術の発達によってある個人が他人とどのように異なるかを観測できるようになってきた。 そこでこれらの情報を利用して、ある患者個人に最適な治療方法を計画することをオーダーメイド医療という。


具体的にはある治療薬がその患者に有効であるかどうか、あるいは投薬量や副作用について見積もることでどの治療薬を用いるのが正しいか、どの程度の投与を行うかと行ったことが分かるようになると期待されている。


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