2017/03/22

超低出生体重児のフォローアップ ある発達小児科医の転送メール 『専門家』の気遣いが、かえって私たちを追い込むこともある

●『発達検診』にエビデンスはあるのか 私が失望した発達小児科医のメール


中学2年の一次関数小テスト
2017-1-9.png


同じように、超低出生体重児を育てているお母さんから、コメントをいただいた。お返事を書いていて、資料を探していたら、あるメールを見つけた。


私はいぜん、手記を書いて発表したことがあった。退院後のフォローアップにはもっと科学的なアプローチが必要で、教育支援は、医療者ではなく教育の専門家に任せるべきじゃないかと考えてきたからだ。


ところが取り上げてくれたのが、医療系のメルマガだったため、注目するのはどうしても医療者。


ある周産期医療に関わる医師が、医療者だけがみる掲示板に私の手記を投稿したそうだ。そこに書き込まれた意見を、私に転送してきたことがあった。私が「喜ぶ」と思って。


どんどん送られてきた転送メールを読んで私は愕然とした。ある発達小児科医の書いたメールに「障害があるんじゃないのか」ということが書かれていたからだ。


子供に必要なのは、社会的支援であり、「障害名」じゃないと言っているのに。また同じことの繰り返し。どうして医療者は、私たちの声をかき消そうとするのだろう?


ちょうど良い機会なので、問題のメールを公開しよう。私はこのメールを読んで、数日間食事が喉を通らないほどショックを受けた。だけど私はあの日決心した。「違う」というエビデンスを出してみようと心に誓ったのだ。

◇  ◇  ◇ 
※青は、私の書いた手記の引用
●●大学発達小児科の●●です。
(中略)
転載いただいた記事、普通見逃しやすい乳児胆石をものの数時間で診断できてしまうレベルの高さに感心したりついつい全部読んでしまいました。正書に載っている「NICU退院後の問題点」を読むのも大事ですがたったひとりの事例を具体的に読む方がよほど勉強になる面もありますよね。

 
私自身は今はNICU児には気管切開(〜人工呼吸)の児を在宅管理に持っていくというくらいしか関わってませんが、このメルマガで問題提起されている療育を含めた医療、福祉、教育の人的資源の不足感は私が関わっている小児神経学の領域でも私の地域では同じ問題点を感じています。 小児神経疾患であろうとNICU退院児であろうとその子が関わってくる医療福祉教育はその地域に共通のものなので。



手先の不器用さ、運動能力、読み書きなどには、若干の遅れがありました。特に困るのは、算数の授業です。数の概念が十分に身についておらず、一桁の計算がまだ完全ではありません。それに加え、日本語の理解不足から、言葉で説明している問題の意味が、よくわからない時があります。



この子はおそらく軽いLDなど発達障害が隠れているかも、と感じます。そういう子であれば、必要に応じて特別支援学級を利用していく手もありですが診断名がついてないと学校側はなかなか動かないですし、学校の先生ももしかするとそうした必要性を感じながら、「病院に行ってみて」と告知するタイミングを見計らっているのかもしれませんし、個人では必要と感じながらも予算や人的資源不足の関係で導入できない場合もあると思います。 


低学年の頃は「困り感」が目立たなくて高学年になってから支援が必要になる子もいますし。しかしすでにこの子は学習面で困っているようなので支援が必要な事例かもしれませんね。


発育発達検診へ行くのをやめました。体を大きく丈夫にすることを第一に考える私の方針と、問題点ばかりを指摘する担当医師の方針には、隔たりがあったからです。



このように、健診に行くのをやめた、というショッキングなことも書いてあります。そしてその理由にも反省させられました。果たして今まで自分はどうだったのか、と。健診に行かなくなったのも、学校でのもしかすると必要かもしれない支援の開始を遅らせている一因となっているのでしょうか。NICUを退院した一見問題ないように見える児の「ちょっと気になるところ」に就学前に気づいてあげて必要な介入をしていくことが大事だとこれを読んで思いを新たにしました。
◇  ◇  ◇ 

●私が手記に、個人的な事情を書かなかった理由 


私はこのメールを久しぶりに読んだが、やっぱり嫌な気持ちになる。あの頃は、先が見えなかったから、深く傷ついただろうな。ちなみにこの時、「もう転送するのはやめてください!」と私が言ったら、その医師が言ったのが「あんまり間に受けなくてもいいです」だった。今では、この時のやり取りは、私のブログの中でダントツにアクセス数が多い。


超低出生体重児のフォローアップ 「あんまり間にうけなくていい」程度のことが、子どもの将来を決めてしまうかもしれない その1


ところでメールを転送してきた医師は、夫が教員であることも知らなった。


夫の知り合いには厚労省や文科省の審議員をしておられる専門家もいる。その中のお一人は外務大臣から表彰された国際社会で活躍する言語学のプロだった。病院の発達検診が、あまりにも頼りなかったから、生まれたばかりの頃から、知り合いの専門家のアドバイスなどは受けていた。だからこそ訴えないと、という気持ちになったのだ。中には、明らかに間違っているアドバイスもあるからだ。


ただ、メルマガは個人的な経験をもとにしても、教育問題を社会に訴えるためのもの。細かい事情を書いてしまうと、読んだ方にすっと入っていかないかもしれない。あえて詳しく書かなかったのだ。


●私が反論しなかった理由 いっても無駄だと思ってしまったから


この時発達小児科医に反論しようとしたけれど、やめた。いくら医療者の内輪の議論でも、この方々の感覚に私はついていけなかったからだ。どこかで私たちを「素人だから」と、侮っているというか、見下しているような、そんな感じがする。私がなぜ不満に思うのか、理解しようという姿勢がみえない。


一番気になったのは「障害名」に対する人権意識だ。友人の医師や野田正彰医師などとは全く違う。そもそも診察してもいないし、私がお願いしたわけでもないのに「障害があるのでは?」とアドバイスするなんて、リスクマネジメントの観点からも、やってはいけないことだと思う。


●私が小児がんの議事録を読んで希望を持った理由 子どもの患者の人権について、きちんと議論していたから


このメール転送事件の時から、私は日本の小児医療に失望した。てっきり、ほとんどの小児科医が、子どもの人権を深く考えてこなかったのかと思ったから。ところが牧本事件について、調べている時だった。患者さんのお父様に教えていただき、議事録を読んで驚いた。小児がんの専門医は、子どもの人権について真剣に議論していたからだ。それも参考人に招致されたのは、ただの弁護士さんじゃない。お子さんが小児がんの経験者でおまけに人権の専門家という、ピッタリの方。


『どんなことがあっても息子の主治医は牧本先生』 小児がん専門委員会議事録を読む その1

(※第2回小児がん専門委員会議事録から、増子孝徳参考人のご発言を一部引用↓)
牧本医師と『小児がん患児支援 NPO法人エスビューロー』 インクルーシブ 「仲間はずれにしない」という考え方 その2


●フォローアップ体制を本気で充実させたいと考えているなら、ネガティブな意見も、取り上げるべき


最近の研究報告には、成人までフォローする、ということが盛り込まれるようになってきた。


体に関することなら賛成するけれど、「発達」を診るのは正直勘弁して欲しい。


もしも、フォローアップ体制を充実させたいと考えているなら、発達検診で嫌な思いをした私のような親の意見も、きちんと取り上げるべきだろう。今、私のまわりにいる専門家は、「(この子の場合は)もし支援級などを選んでいたら、がんばろうとしなかった」と皆、言っているんだから。

コメント

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます