2017/04/24

超低出生体重児とフォローアップ 「早期発見・早期支援」に問題はないのか?

●発達検診の問題点

これは最近の息子の数学のノート(多項式)だ。いつのまにか文字が小さくなり、ノートが普通にとれるようになっている。


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発達検診医には、とにかく「手先の訓練を」と言われ続けてきた。


しかし長年教育現場で学生の指導をしてきた夫は、医師の方針に反対した。「子どもの発達とは、複合的な要因が重なって生み出される結果だ。今この子に必要なのは訓練ではなく、楽しく体を動かすことだ。直近の数値に一喜一憂せず、もっと長い目でみないといけない。」と私に言った。


それ以来フォローアップ外来の通院をやめ、自分たちで工夫し様々な刺激を与えてきた。


やっと今、成果が出はじめているようだ。


●きっかけはカンニングペーパー


細かい字を書くようになったきっかけは、予想していないことだった。


息子は家で問題集をやらせると、よく間違える。ところがある時、急にできるようになった。はじめは喜んでいた私だったが、急激に正解できるなんて、おかしい。。


本を読むふりをして息子を観察すると…目の動きだけでなく、手の動きも不自然。視線を落として手元をよ〜くみると問題集で手を隠し、机に鉛筆で答えを書いたり、手のひらに収まる大きさのカンニングペーパーをつくっていた!


もちろん怒ったけれど、心の中ではガッツポーズ!!


私の気持ちは超低出生体重児の親じゃないとわからないだろう。超低出生体重児の予後に関する論文などには、「微細運動が苦手」というようなことが必ず書かれているのだ。医師が訓練をすすめた理由も「黒板の文字を、ノートにうつせないから」だった。


「低出生体重児の長期予後」という研究報告を引用させていただこう。

◇  ◇  ◇
(2)レクチャーシリーズ(2);他科領域の専門家に聞く 低出生体重児の長期予後 - 日本産科婦人科学会 2006年9月 を一文引用

6.学齢期の予後

超低出生体重児は障害合併頻度が高いため,特殊教育を必要とする頻度は高い.本邦の調査では,約10%が特殊教育を受けている8)9).明らかな神経学的障害を持たない児でも 入学後に,学習障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの軽度発達障害の頻度が高いことなどが指摘されてきた.

学習障害(LD)の頻度は一般の小学生の中では約15%とされ,男児が多いことが知られているが,低出生体重児では,神経学的障害を認めない場合でも,学習障害(LD)や行動 障害のリスクが高く,入学後に学習上および行動上の問題を生じる頻度が高い.極低出生体重児の約半数が学習障害のリスクを持ち,言語能力,読書力,書字,算数,注意集中, 運動のすべての分野で対照群に劣ることが報告されている.また,精神発達が正常な学童期の超低出生体重児のうち,学習行動上にも影響する注意欠陥多動性障害(ADHD)も, 一般の学童より高頻度である.

厚生科学研究によるわが国の超低出生体重児追跡調査の1990年出生児の9歳時の調査結果では,算数と体育が苦手な子どもが多かったが,社会生活能力を示す社会生活指数(SQ)約80%が85以上で,社会適応は良好であった9).

(中略)

9.ハイリスク児のフォロ-アップと早期支援

ハイリスク児のフォロ-アップは,NICU から退院した児の発育・発達を支援することが主要な目的であるが,フォロ-アップの結果を新生児医療にフィードバックすることも新生児医療の進歩のうえで重要である.ハイリスク児は神経学的合併症の頻度が高く,そ の早期発見・早期支援はフォロ-アップの重要な課題である.また,神経学的合併症のない児であっても,出生体重の少ない児では,身体発育,精神運動発達は正期産児とは異な り,両親の不安も大きい.一人一人の発育・発達を見守り,適切な支援をすることが必要である.また,神経学的障害を認めない場合においても,学童期における学習障害や行動障害などの問題が発生する頻度が正期産児に比して高い事が示されている.更には,IUGR児のmetabolic syndrome 発症のリスクが近年,問題になっており,成人期までの長期 間にわたるフォロ-アップの重要性が示されている.
また,退院後のハイリスク児に対して,発達支援を目的に,自治体や病院単位での,Early Intervention(早期支援)が実施されている.

◇  ◇  ◇

読めばわかるように、息子のような未熟児は一般的に「学童期における学習障害や行動障害などの問題が発生する頻度が正期産児に比して高い」といわれているのだ。おまけに男児だから、数値だけをみたら、疑われるはずだ。


●キャッチアップを引き起こす要因について、詳しい分析がなされていない

でも私は最近、こうした報告書には記載されていない、驚異的なキャッチアップに何度も遭遇する。繰り返し教えてもできないことが、諦めかけた頃、スッとできてしまうのだ。もしかしたら成長過程でカバーできる(発達の)差は、私が想像していたより、遥かに大きいかもしれない。


●「早期発見・早期支援」が良いとされる根拠は?


というよりも、私はある疑いを持っている。


報告書にある「発達障害」などのパーセンテージが、どのように導き出されたのかがみえてこない。(本当に「発達障害」だったのかわからない)そもそも、「早期支援」が良いことだとされているけれど、その根拠はあるのだろうか?


超低出生体重児のフォローアップ ある発達小児科医の転送メール 『専門家』の気遣いが、かえって私たちを追い込むこともある

超低出生体重児の育児 再び手紙を書いて送る ナショナルセンターは日本全国の子供たちのためにあって欲しい


むしろ繰り返し出されたこうした報告書の数字が、一人歩きし、マイナスの作用を生んでいるんじゃないのか?「超低出生体重児は、発達障害が多い」などが検証なしに、医療者に刷り込まれてしまっているんじゃないのか?


実際に育ててきた私からすると、突っ込みどころ満載という感じ。


●私が知りたいのは、良い症例が出るまでの経緯


ちなみに、息子はフォローアップに行かなくなったのでカウントされないだろう。


私は、上手くキャッチアップした症例が知りたい。どのようにキャッチアップしたのか、そのメカニズムが知りたいのだ。先日紹介した、友人のお子さんの回復事例は、拠点病院事業に参加している医療機関のもの。お嬢さんの主治医は知らないだろうが、彼女は血のにじむような努力をしてきたし、様々な人たちの協力と働きかけもあったのだ。


『うつを治したければ医者を疑え! 』と小学生の摂食障害 摂食障害を回復させたもの1


今までこの「拠点病院事業」って何のためにあるのかと不満に思ってきたけれど、私は見直した。事業として行うなら、良い症例が出るまでの詳しい経緯などを発表してくれたらいいのに。皆が知りたいのは数字ではなく、そういうことじゃないの!?

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Re: タイトルなし

こんにちは。

毎回、コメントをいただくのがいつも遅い時間なので気になっていました。

私も同じように不安な毎日を過ごしていたことがあります。こういう時に医療者は「頑張らないでくださいね」と言うんですよね。私はそう言われると余計に落ち込みました。私しかがんばる人がいないから、頑張っているわけですから。

きっとそのような状況なのでしょう。

ただ今になって思うのです。


周りにいる医師や臨床心理士は、なんてアドバイスしたらいいのかわからないのかもしれません。もしかしたらはじめての経験なのかもしれません。私は、わからないのならわからないとハッキリさせて欲しいと思っています。そうしないと何もはじまらないから。

ある時、発達検診医が療育について何もアドバイスしないので、(毎回「遅れている」としか言わないから)その医師の専門を調べ、発表した論文なども読んでみたんです。よく海外の学会に参加すると、資料が入った学会のカバンがおまけについていたりしますが、その医師が学会の名前が入ったカバンを手にしていたので、どんな研究をしているのか気になったのです。研究内容を知れば、主治医が発達検診で何を狙っているのかわかりますからね。

そのほかにその専門分野のレジデントが読む本も購入して調べたのですが…。


やはり思った通りでした。息子はストライクゾーンじゃないようです。「遅れの幅(数値)」しか頭になかったのでしょう。

その後、知り合いのお母さんがその医師を褒めていたので、理由を教えてもらいました。遅れの幅が大きい場合には、親身に療育先を紹介してくれる(紹介状を書いてくれる)ということでした。

つまり「親切」といってもお子さんの状態によって違うのです。療育先を紹介する時にパイプ役になってくれるというだけなんです。どんな刺激を与えると、伸びるのか、というのは、むしろ夫のほうが専門家じゃないかと思いました。

療育を行う専門家ではないので仕方がないんだと思いますが「私には療育のことはよくわかりません」とはじめに言って欲しいですね。療育先はもともと少ないですし、先にすすめませんから。

リンク先を拝見しました。それで思い出したのが、こちらの本です。

わが子の発達に合わせた1日30分間「語りかけ」育児 サリー-ウォード
https://www.amazon.co.jp/0~4歳-わが子の発達に合わせた1日30分間「語りかけ」育児-サリー-ウォード/dp/4093112517

出産直後に購入し、紹介されていた「語りかけ」を産まれてから毎日してきました。語りかけといっても、私がいつもニコニコというわけじゃないので、書いてあるようにはできません。例えば、私はテレビをつけて(テレビはみないで音声だけをイヤホンで聞く)、絵本を読んだりしました。そうでもしないとやっていられないからです。他にも皆には「ええっ」と言われました、お酒が飲みたいので母乳を早々にやめてしまいました。専門家のいうことは、理想だと思います。ただ、常に実行するのは難しいですね。だから、できることをすればいいと思います。

それから市の療育施設に見学にも行きましたが(声をかけてもらえないので、自分でコンタクトをとりました)とても良い場所で、通いたいと思いました。しかし私が希望しても、息子は基準には達しないため(臨床心理士も、この子に療育が必要なのかわからないという感じでした)ので諦めました。まあ、療育先がないのは非常に困りますが、逆に考えれば、順調に発達しているほうなのかなと良いほうにとるようにしています。最近、公的な支援については諦めました。

ただ、御世話になったNPOはとても良い場所で、市の施設に通えないお子さんが何人かいらしていました。市も私のような親を紹介しているようなことを教えてくれました。ただその施設は料金が結構高いのです。。東京にしかないようですし。

私自身の経験を細かく書くのが良いことがどうかわからず、ブログにはあまり詳しく書きませんでした。

言葉が出ない頃、発達検診で追い詰められ、息子に無理やりぬいぐるみの名前を言わせようとしたことがあったからです。帰宅した夫がギョッとして止めました。

「よく考えてごらんよ。もう何日も、このぬいぐるみであそんでいないんだよ未熟児じゃなくても、子供はすぐに忘れるんだよ」

それで正気にかえったんです。

SNSというのも、良い面と悪い面とがあり、文字だけだと真意が伝わない場合もあるんです。書く方も良いことを書いてしまいがちです。そのため、ご覧になる方が、ご自身と比べてしまうこともあるでしょう。こちらに全くその気がなくても、傷つけてしまうこともあるかもしれません。あと、私が住んでいるのは東京です。東京だから施設やサービスがある場合もあるでしょう。都市部ででしかできない(都市部にしかないことを)紹介しても、と思っています。お顔をみて、話せればいいのですが。。

わからなくてもいいから「私たちもわからないけれど、一緒に考えて行きましょう」と言ってくれればいいんですけれどね。私の知り合いも同じように、病院で手術を受けた時に悩んでいました。私は「なんのために手術してくれたんだろう」と思ってしまいました。その後を支えるのが母親しかいないことがわかっているなら、もう少し親身になって欲しいですね。