2017/04/28

超低出生体重児のキャッチアップ こども小説『ちびまるこちゃん』から新田次郎著『八甲田山死の彷徨』へ その2

●冬のスキー場で道に迷う もし悪条件が重なっていたら、死んでいたかもしれない

あれほど怖がっていた息子が、『八甲田山死の彷徨』を読みたいと言い出したのは、もしかしたらスキー場での出来事が原因かもしれない。私には思い当たる出来事があった。


一昨年、息子はスキー場で道に迷ったことがあったのだ。


最近スピードを出せるようになった息子は油断したらしい。私を追い越そうとして急いで滑るうちに転倒したそうだ。ちょうど夕暮れで人もまばらな時間帯だった。気づけばコースを外れ林に迷いこんでしまったという。


なんとか自力で下山してきたものの「怖かった」と泣きそうな顔をしていた。


私たちが毎年訪れるのは長野県野沢温泉スキー場だ。このスキー場では、2、3年に一度ぐらいの割合でコースを外れ、帰れなくなるという事故があるようだ。昔と違って今は外国人のスキーヤーが多い。だから外国人遭難者も増えている。つい最近もオーストラリアの方が遭難したというニュースがあったばかり。




私は息子にニュース動画をみせてこう言った。


「もしも真っ暗だったら誰も来てくれないよ。助けてくれる人がいても、外国の人かもしれないんだよ。日本語で「助けて!」と言っても通じないかもしれないよ。それに、コースを外れたら携帯電話を持っていても、つながらないかもしれないよ!八甲田山の雪中行軍を怖い怖いというけれど、皆、好きで死んでいったわけじゃないんだよ!もし吹雪いていてホワイトアウトだったら、同じように死んでいてもおかしくないじゃない!」


さすがに堪えたようだった。


●雪中行軍の教訓 情報収集の大切さ


私は雪中行軍の遭難事故がなぜ起きたのかを教えた。


訓練には青森歩兵第5連隊と、弘前歩兵第31連隊の2つの部隊が参加していた。犠牲者は青森歩兵第5連隊の兵士で、弘前歩兵第31連隊はほぼ全員が無事に帰還している。


2つの隊の生死を分けた理由はいくつか考えられるが、最大の原因は情報収集の不足だったと言われている。死者を多数出した青森歩兵第5連隊には、雪深い地方の出身者が少なく、防寒対策が不十分だったそうだ。


(※ 資料館の展示物と案内板の説明を記録してあります↓)
幸畑墓苑・『八甲田山雪中行軍遭難資料館』 悲劇の記録 その2


私のように、初心者レベルの登山愛好家でも、資料館に展示してある装備には驚いた。死にに行くようなものだと思ったからだ。

◇  ◇  ◇
幸畑墓苑・『八甲田山雪中行軍遭難資料館』 悲劇の記録 その4

【 第五連隊捜索隊の服装 】
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神成大尉の計画書や出発前の「略装ニシテ防寒外套ヲ着用シ、藁靴ヲ穿チ・・・・」という通達から、一般の兵卒は小倉と呼ばれる綿の夏服、下士官(曹長・軍曹・伍長)と将校(少尉以上の士官)は羅紗という毛織物の軍服に厚手のマントを着用

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当時の防寒装備は現代のそれと比べようもなく貧弱で、手袋や耳覆いこそあったものの、足を唐辛子と一緒に油紙で包み込んでわら靴をはく程度

【 藁靴 】
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◇  ◇  ◇

だから展示館で一番印象に残っているのはゴム長靴だった。当時珍しかったゴム長靴を買い求め、東京に行った方もいらしたそうだ。もちろんその方は生還している。

【 救出された石倉大尉が履いていたゴム長靴 】
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●電通の過労死と雪中行軍 私たち大人が怖がらないのは、自分の人生を重ねて考えるから 


次に電通の過労死問題を伝える動画をみせて、大人が雪中行軍を怖がらない理由を教えた。


「電通のように、大きな組織だと、軍隊と似たようなことが起きる。無謀な要求をする上司がいても、部下は簡単に逆らえない。今回の過労自殺だって、構造的には同じ問題だと思う。大人になると皆、いろいろな経験をする。毎日楽しいことばかりじゃない。皆、自分の境遇に重ねて考えるから、子どものように怖いとは思わなくなる」と説明した。





そして最後に、受験生の息子に、受験も雪中行軍から学ぶことがあるんじゃないかと言ってみた。準備不足だったら、合格できないからだ。


息子は熱心に耳を傾けていた。


小学生の頃、息子がちゃんとした本を読まなくて私は悩んでいた。あの時確か、こども小説『ちびまるこちゃん』を買って夫に怒られたはず。まさかそれからたった4、5年で『八甲田山死の彷徨』を読めるようになるとは。


●超低出生体重児のキャッチアップ 失敗の経験が急激な成長につながる


超低出生体重児のキャッチアップは、社会的な経験が後押ししているようだ。特に失敗の経験は、大人がフォローすることで、成長を促せる。子どもにあった働きかけをすれば、逆にチャンスに変えることができるのだ。


発達検診医は、急激な成長を生み出す、こうした複雑なアルゴリズムに気づいていただろうか?


子どもの発達を促すものは「療育」や「訓練」という単純なことではないだろう。



だから私は今までのフォローアップや発達検診のあり方に疑問を持っている。


(※ 完成した作文を公開しました↓)

超低出生体重児の長期予後 微細運動や認知面での遅れは改善しないのか?

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