2017/05/07

超低出生体重児の長期予後 『サポート』と『人権侵害』は紙一重

●根拠は「〜と言われている」

周産期医療の関心は、このブログのテーマでもある、超低出生体重児の長期予後にうつってきているようだ。平成11に出された「早産児の長期予後」という報告書をみつけたので一部引用させていただく。


◇  ◇  ◇
平成11年10月18日放送 早産児の長期予後 神戸大学小児科助教授 上谷 良行

【学童期以降の長期予後】

 さて、小学校入学以後の問題として、一般的な知能のレベルは正常であるものの計算だけができなかったり、字を書くことだけができないいわゆる学習障害の頻度が高くなると言われていますが、詳細については未だ不明であります。

 

 今回の超低出生体重児の就学前の全国調査においても養護学校や障害児学級に就学予定の児の比率は8.6%あり、就学猶予の児を加えると約10%の児が普通学級への入学ができず、特殊な教育を必要とすると考えられます。諸外国の報告を見ても米国のHack らは出生体重750g未満の児の45%、750から1500gの児の25%が特殊教育を受けていると言っています。またオランダのHilleらの報告でも32週未満の児の19%が9歳で特殊教育を受けています。ただ、普通学級に通っている児のなかでも書字困難や計算困難な児が含まれていることがあり、このような学習障害のリスクの高い児を早期に見い出して、適切な指導や教育を実施するシステムを確立する必要があると考えられます。

 また、これまで超低出生体重児の長期予後の重要性が指摘されてきましたが、その評価については常に客観的なものばかりでした。しかし、ようやく超低出生体重児が自分自身を主観的にどのように評価しているかを調査した結果がSaigalらによって報告されました。それによると客観的に評価した健康状態では超低出生体重児は対照にくらべて劣っているものの、主観的な評価では自分自身をほぼ健康と考えている頻度が超低出生体重児群で71%、対照のティーンエージャーで73%と差がなく、健康という側面から見たquality of lifeには自分自身でほぼ満足していることが明かになりました。また、別の報告では我々医療専門家の方がQOLに関して本人自身やその両親が考えているよりも低く評価していることが述べられています。この結果は周産期医療に携わってきた我々にとって非常に勇気づけられることでありますが、これに満足することなく、超低出生体重児を含めて早産児が大きくなって、より充実した生活が送れるように周産期から一貫した医療と、それをサポートする福祉が展開されるようにあらゆる職種が努力しなければならないと思います。

◇  ◇  ◇


私が注目したのは、超低出生体重児が就学以降、学習障害の頻度が高くなると言われている「根拠」だ。やはり非常に曖昧だ。


なんらかの原因で、いくら練習しても「字が上手くかけない」「計算も早くできない」ということはあると思う。しかしそれが「発達障害」なのかどうか。夫は息子に関しては違うだろうと言っていた。


文字に関していうと、息子は中学3年の今になり急激に上達している。

(※ 数学のノート)
2017-4-22-1.png

1年前との差に私も驚いている。


ちょうど1年前の今頃、字が上手くかけないために、ちょっとしたトラブルがあったからだ。担任の先生がクラスの班で、交換ノートを書くように指導したから、私は「やめて欲しい」とお願いしたことがあった。交換ノートは細かい字で書かないといけない。文章も上手くかけない息子には、負担が大きかった。友達との差があからさまにわかってしまい、からかわれる原因にもなっていた。


超低出生体重児の中学生活 その後 明るく前向きに生きよという偽善 その1


ところが1年経ち、息子が昨日「雪中行軍の感想を作文にかく」というので校正を手伝った。完成した作文を読んで私はビックリした!新田次郎の「八甲田山死の彷徨」をちゃんと読んだことがわかるからだ。お世辞にも上手いとはいえないけれど、一応作文になっている…。


超低出生体重児のキャッチアップ こども小説『ちびまるこちゃん』から新田次郎著『八甲田山死の彷徨』へ その1



●教育問題に、医療者がどこまで関わるべきなのか


こういう経験をしてきたから、私は報告に書かれていることより、教育者である夫が言うことのほうがしっくりくる。子どもの成長や発達は直近の数字に一喜一憂しないで、長い目でみないといけない。第二次性徴期に焦点をあわせ、子どものやる気を引き出していったほうが良いということだ。


知り合いのお子さんも超低出生体重児だ。小学校までは普通学級だった。病院の発達検診医に訓練をすすめられ、療育をがんばっていた。一度そのお子さんの描いた絵をみたことがある。「療育や訓練の効果があるんだろうな」と思わせるような良い絵だった。しかし中学生になり、ある時、支援学級へ移っていった。


一方息子は、字の訓練などをさほど熱心にせずにきた。中学生になり自分と友達との差がわかるようになると、自分から意識して練習をするようになった。


他にも知り合いには超低出生体重児がいる。様々なお子さんをみてきて私も発達には、訓練とか療育では埋められない何かが関係しているように思う。


●『サポート』と『人権侵害』は紙一重


なのでここに書いてあるような「周産期から一貫した医療と、それをサポートする福祉が展開されるようにあらゆる職種が努力しなければならないと思います」ということには賛成できない。


今までの支援の反省がなければ、それこそ、転送メール事件のように、「あなたのお子さんには、障害があると思う」というような介入がはじまると思うからだ。一歩間違えると人権侵害になるだろう。


私が国立成育医療研究センターに手紙を送った理由


そもそも、私がブログで取り上げたウサギさんやトンンボの掛け算の教え方だって、教育者だったら、皆知っているというか常識だと思う。

◇  ◇  ◇
超低出生体重児と算数 私が毎日勉強をみてあげた方がいいと思う理由

ウサギの耳は4匹になれば2×4=8本
rabbit4.gif
◇  ◇  ◇

今の先生は忙しい。「ウサギさんの耳」のような指導をしようと思ってもできないのだ。現場の教員が一人一人とじっくり向き合う余裕がないことだって問題じゃない?


今後は掛け算の教え方のようなことまで、福祉が関わるのだろうか?教育がやるべきことまで医療や福祉が介入するのって、私には抵抗があるなぁ。


それよりも文科省や教育機関にお願いして、学ぶスピードをゆっくりしてもらったほうがいいんじゃないかと思う。小学生の算数は、これからの勉強の土台になる。もともと普通に産まれたお子さんだってつまずくことが多いんだし、早くできればいいというものでもないんだから。


●これまでの調査は、本当に『客観的』なのか 救命されて、有難いと思えない人の意見は、切り捨ててしまっていいのか?


あと、最後にもう一つ。「超低出生体重児の長期予後の重要性が指摘されてきましたが、その評価については常に客観的なものばかりでした」とあるけれど本当に客観的といえるのかな?これまでの調査の多くはアンケートを元に作成されている。


もともとアンケートに答える人は限られる。答えない人は、心配ごとがない人かもしれないし、その反対に書いても無駄だと思って書かないのかもしれない。いずれにしても、アンケートを元にした報告書だとしたら、「客観的」がどこまで「客観的」なんだろうと思う。


私に届くような、「超低出生体重児はすべての家庭に育てられると思えません」「今の医療に疑問を持っています」「生活が厳しくて生きていけません。裁判を考えています」というような意見は、反映されていないんじゃないかと思うからだ。

コメント

非公開コメント